The Blank Card   作:カナヤン

9 / 34
今回も戦闘なし。静かな回です。


青の下で

 

ポルナレフが警察で事情聴取を受けることになった。

デーボがホテルのボーイを殺して、その容疑者として疑われているのだ。デーボ自身もホテル内で死んでいるのが発見されている。

私たちはポルナレフの無実を知っている。デーボについては正当防衛だ。でも、説明も証明もできない。

結局、SPW財団から派遣された弁護士の力で釈放されることになった。ポルナレフが戻って来たのはもちろんホッとした。

 

「でもなぁ……」

 

先輩たちがチケットを買いに誘ってくれたけど、ホテルに残った。どうも、出歩く気分になれない。

南国のシンガポール、太陽は強く、青空が濃い。日本は冬だったから、余計に明るく見えた。

出発してからまだ一週間も経っていないのに、日本にいたのが遠くに感じる。

飛行機のパイロット、船の乗組員、そしてホテルのボーイ。全員、ただ“私たちと関わりを持った”それだけで命を奪われた。

船員もホテルのボーイも、殺される理由なんてなかったはずだ。

……船員たちとは話もした分、堪える。ほんの数日前までは、笑って手を振ってくれてたのに。

 

プールサイドでぼんやりと水面を眺めていると、花京院くんに声をかけられた。

 

「どうしたんですか、こんな所で」

「花京院くんこそ、先輩たちと出かけるんじゃなかったの?」

「どうも置いて行かれてしまったみたいです」

「じゃあ、居心地のいいホテルで冷たいものでもすすっていようよ。トロピカルジュース美味しいよ」

「はは、たまにはのんびりもいいですね。……その、僕の気のせいならいいんですが……なにか元気がないですよね? 力になれることはありますか?」

 

鋭いな、隠してるつもりだったんだけど。……自分たちが狙われるのは覚悟してたんだけどな。

 

「……ちょっと考えちゃってね。思ってたよりも、人の命を踏みにじるのを躊躇わないやつがいるんだなって」

 

風が、プールの水面を揺らす。光の反射に目を細めた。

 

「……僕は、少しの間だけど、DIOのところにいた」

 

少し震えた声に、ハッとして花京院くんを見る。エジプトで彼の身に起きたことは聞いていた。でも、あえてその時のことは誰も尋ねてこなかった。軽々しく聞けることじゃないからだ。

花京院くんは視線を前に向けているが、ここではないどこか遠くを見ている。その表情は静かだ。

 

「肉の芽を埋め込まれていた間の記憶は、曖昧な部分もありますが……あいつは、“背中を押す”のが実に巧みなんです。人の中にある、ほんのわずかな闇や欲を……見逃さない。多分、あいつに会わなければ、ただの小悪党で終わった人間も多いでしょう。おそらく、DIOを放っておけば世界は確実に悪の方へ傾くと思いますよ」

「だからエジプトへ行くの?」

「僕にとっては、もっと……個人的な理由です。あいつへの恐怖で一度は完全に打ちのめされた。このまま……へし折られたままでは、僕は自分の人生を取り戻せない、そう思うんです」

「花京院くんは強いね。逃げないことを選んだんだ」

「そうありたいと思ってます」

 

花京院くんだけじゃない。先輩も、ポルナレフも、アヴドゥルさんも、ジョースターさんも――みんな、眩しいくらいに真っ直ぐだ。

 

「私は、ホリィさんを助けたいと思ったのが始まりだけど。……DIOみたいなのをそのままにしちゃいけないと思うようになったかな。いつか、私の大切な人たちが無事じゃいられなくなりそうだから」

「ふふ、あなたもとても強い人だ」

 

強がりも押し通せば、いつかは板につくのかもしれない。ま、やるだけやってみようか!

空を見上げる。目にも眩しい青、まるで何事も起こらなかったみたいに、世界は今日も綺麗だ。

旅はまだ続く。みんなと一緒に、歩いて行こう。

 

――ちょうどこの頃、先輩は敵のスタンド使いと戦っていた。しかも相手は、花京院くんに化けていたらしい。

……本当に、気の抜けない旅だ。

 

 

 

    

 

 

 

 

 




次回は、インド到着。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。