没落令嬢の悪党賛歌   作:もちもち物質@布団

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22話「私、平和の使者になりますわ」

 ごきげんよう。ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアよ!

 私は今、大儲けしているところですわ!

 ……それ以外に言いようが無くってよ!

 

 

 

 王家はもう、戦争の準備を秘密裏に進めることを決定していますの。おかげでまあ、食料も武器も王家によく売れる、という訳ですわね。

 これについては当然、もうこっちで手を回してありますわ。キャロルが王家に呼ばれた時点でもう、こちらが先に武器集めを始めておりますのよ。

 ですから王家は基本的に全て、私達の後に動くことになりますから……動かしやすそうな位置の武器は全て売約済み、ということになりますわ!

 ……それでも王家が頑張って武器を集めようとしていますから、市場の武器は一気に品薄になりますわね。

 そこで買い占めておいた武器をちょっとずつ放出していけば、まあ儲かりますわよねえ?当然のことですわ!

 武器だけじゃありませんの。穀類や薬についても同じようにしていますわ。こちらは多少、王家の動きが遅いかしら。恐らく穀類に関してはスライム不作にかこつけて公に買い占めを始めると思いますから、それまでにこっちが買い占めに走れますわね!

 

 

 

 ……ということで、私達は今、待ちの一手ですわ。

 武器や薬、食料の買い占めは上手くいきましたから、あとはほっといても王家が困りますし、こちらが儲かりますわ。

 そして私達が何を待っているか、といえば……。

「結局、兵士はどうなったんだ。国の動きが見えないが」

 これですわ。

 

「そうですわね。兵士を集める口実は作れる、というようなことをあの国王は言っていましたから、動いてくると思ったのですけれど……」

 食糧については案の定、スライム不作にかこつけた買い占めが行われましたわ。国が穀類を管理することで全員に行きわたるようにする、という名目で、あちこちから搾り取っていますわね。

 これに民衆は反発。民衆に担ぎ上げられる形で大聖堂も王家にそっぽを向いている状態ですわ。国王としてはそんなことより戦争の準備が重要なのでしょうけれど。

 ……そうなのですわ。

 戦争の準備を進めているはずの国王が、兵士については未だ、動きを見せていませんのよ。

 

「大規模に徴兵する予定でもあるのかね」

「もし徴兵されてもお前は連れていかれないな、確実に」

「まあ俺みたいなヒョロいの連れて行ったら勝てるもんも勝てないでしょうよ」

 そうですわね。ジョヴァンが戦力になるとは思えませんわねえ……。

「徴兵?だったら全然名目が立ってないじゃん。徴兵とか、戦争の準備以外の何だってんだよ」

「そうですわねえ、まるで隠れる気が無いですものね……」

 何にせよ、徴兵、というのはあり得ませんわね。

 国王はアサンブラ王国や私にバレないように戦争の準備を進めようとしているんですもの。一見そうとは分からない形で、兵士を集めようとするはずですわ。

 だから、徴兵なんかじゃなくて……うーん、もしかして秘密裏に城の地下でゴーレムでも作っているのかしら……?いえ、そんなお金、無いですわよね……?

 

「え?簡単な事だろ?」

 私達が悩んでいたら、チェスタが首を傾げましたわ。なんか腹立ちますわね!

「何ですの?下手な考えでしたらあなたの首を今の逆方向に強制的に曲げてやりましてよ」

「ええ……?いや、強い奴が集まればいいんだよな?だったらそういう集め方すればいいんじゃねえの?ほら、適当に武道大会とか開いてさあ」

 ……ええ?

 それは……ええと。

「ふはははは!面白い!実に馬鹿げてはいるが、あの国王のやりそうなことではあるな!」

 ……実に、そんなかんじですわぁ……。

 

 

 

 そして、恐ろしいことに。

 チェスタの予言は、大当たりしましたのよ。

 届いた報せは……初夏に行われる予定の、オーケスタ王家主催の武道大会のお知らせでしたの……。

 

 

 

「確かに武道大会で人を集めれば強者が集まるが……王家は流れの傭兵を取り立てるつもりか?」

 武道大会のお知らせのチラシを見て、ドランが呆れかえってますわね。ええ。私も呆れかえりたいところですけれど、まあ、全くの愚策という訳ではないと思いますわ。

「相手国の戦力減少も狙っているのではないかしら。アサンブラ王国は小国ですから、あっちの国こそ、兵士を集めようと思ったら傭兵頼りになりますわ。ですから、先に傭兵になりそうな者達を集めてしまおうとしているのではないかしら」

「あとは娯楽かね。王国祭がポシャった分、こっちで盛り上げるつもりなのかもね」

 なんというか、適当に理由つけて妥当に軍備増強すればいいんじゃないかと思うのですけれど、あの国王は一捻りしないと死ぬ病でも患っているのかしら……。

 

 それにしても、武道大会、ね。ちょっぴり懐かしいですわ。

 私、学園に居た時の学園内武道大会では毎回ぶっちぎりの優勝でしたの。ですから武道大会と名の付く催し物にはちょっぴり心惹かれますわね。

 ……そうですわねえ。

 この武道大会、優勝者には『望みを1つ叶える権利』が与えられるそうですの。

 なんというか、太っ腹というか、無謀というか……。

 ……やっぱり心惹かれますわねえ……。

 

 

 

 その翌々日。

「是非、聖女様にもご出席いただきたく!」

「それは……構いませんが、どうして私が?」

「それは当然、民衆の士気を高めるためでございます!聖女様が見ているとなれば、戦士達は大いに奮うでしょう!そして観客達もあなたの姿を一目見ようと会場へ押しかけるはず!これは良い効果ですとも!」

 ……はい。ということで、王城に来ていますわ。キャロルのお付きの聖騎士として。

 どうやら大臣はキャロルをアテにして武道大会の計画を立てているようですわね。

 ……キャロルが居ても居なくても、多分、武道大会なんて開いたら民衆は押しかけるでしょうよ。娯楽が無いんですもの。

 それでもキャロルを出席させたいのは、王家と大聖堂のつながりが強固であることを民衆に見せつけたいから、ですわね。

 

 大聖堂は順調に民衆の支持を得ていますのよ。ええ。私、買い占めた食料はそれなりの量を大聖堂に融通しておりますのよ。貧民救済のためにね。

 貧民救済の基本は炊き出しですわ。大聖堂が定期的に炊き出しを行って、しかも聖女自らパンを焼きスープを煮込んでいるともなれば、そりゃあ貧民層からの支持は厚くなりますわよ。

 更にスライム不作にかこつけて王家が食料の買い占めなんてしてくれているものですから、余計に大聖堂のありがたみが増すというものですわね。王家が不人気になればなるほど、その分の人気は大聖堂に向かいますわ!

 ……ですから、王家としてはここで大人気の大聖堂としっかり手を組んでおきたい、ということですわね。大聖堂の人気にあやかって、王家への不満を少しでも軽減したいのでしょうから。

「ところで、聖女様」

「はい?」

 キャロルの出席を取りつけた大臣は、ニコニコしながら次の要求まで重ねてきやがりましたわ。

「大聖堂の聖騎士の中に、武道大会に出場する者は居ませんか?そのお付きの方など、いかがでしょうか?」

 

「え?……それは、本人が決めることですから……」

 キャロルもなんと答えたものか、といった表情で曖昧に答えるしかありませんわね、これは。

 私以外でも、大聖堂の聖騎士は沢山居ますし、彼らに声を掛ければ何人かは出場しそうな気もしますけれど、それを今ここでキャロルに答えろというのは酷ですわね。

「もし聖女様からの推薦で出場する聖騎士が居ましたら、お声がけ下さい。トーナメントでは優遇いたしますので……」

 ……堂々と不正を告白して、この大臣は懺悔のつもりかしら?

「いえ。私から推薦することはありません。彼らが出場するのは彼らの自由ですが、同時に私が関与するべきではないと思っています」

「おや?そうですか……?それは残念ですな。聖女様推薦の戦士が出場するとなれば会場が盛り上がりそうな物ですが……ま、まあ、武道大会まではまだまだ時間があります。杏の花の咲く頃までにお返事を頂ければ結構ですので」

 さっきから浅ましいですわねえ、この大臣は。今すぐ首の骨へし折ってやりたいところですわ!

 

 

 

 それから、国王と会って、今の国の状況や物資の収集状況を確認してきましたわ。

 武器については私達が転売してやりましたから、収集に苦労させられたようですわね。まあ良い気味ですこと。こちらも儲けさせて頂きましたから万々歳でしてよ。

 食糧については大聖堂での炊き出しに回っている分も接収したいようですけれど、流石にそれを言い出したら大聖堂との縁が切れると分かっているようで、何も言ってきませんでしたわ。

「それでは、戦争に立ち向かう準備が整ったということですね?アサンブラ王国との交渉はいつ頃始まりますか?」

 そして、今一番国王が突かれたくないであろう部分にキャロルがツッコミを入れますわ。

 国王は戦争やる気満々ですから、これを言われても困るでしょうねえ!

「む?そ、それは……兵士が集まってからだ。5月の武道大会の後だな。何なら、向こうが進軍してきてからでも間に合うだろう」

「進軍してきてから、ですって!?それでは間に合いませんわ!それでは交渉している間に多くの人々が傷つきます!」

「しかし、今すぐに交渉しようにも、相手が戦争を仕掛けようとしている、という情報がアマヴィレ・レントの密告以外に無いのだ。より確かな証拠を押さえてからでなければ……」

 そんな証拠はこの世に存在しませんけれどね。でも証拠が無いという証明はとても難しいですから、国王はこれからも密偵をあちこちに派遣して、アサンブラ王国の秘密を探り続けるのでしょうね。ええ。ピンハネ嬢の告白を信じて。

 ……そう。ピンハネ嬢を、信じて……。

 

 ……あら。

 私、思いついてしまったのですけれど……もし、ですわよ?

 もし、今更、このタイミングで……『アサンブラ王国は本当に戦争なんてするつもりが無い』と分かってしまったら、この国が一生懸命準備してきたこと、全部無駄になりますわね。

 そして……その時、ピンハネ嬢って、どうなりますの?

 

 

 

 ……決めましたわ。

 私、アサンブラ王国とオーケスタ王国を結ぶ架け橋となって、この世界の平和に寄与することにしますわ!楽しみですわ!楽しみですわ!

 

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