没落令嬢の悪党賛歌   作:もちもち物質@布団

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11話「対魔法装備って何だったのかしら?」

 ごきげんよう!ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアよ!

 昨日はキーブが私の元婚約者をぶちのめしてくれてとっても気分が良いですわ!

 そしてそんな今日は、ドランがリタルと当たる日ですわねえ……。

 どうなるのか、楽しみなような、不安なような、微妙な気分でしてよ。

 

 

 

 とりあえず朝食を食べて居たら、ふと、ドランが言い出しましたわ。

「そういえば、昨夜のキーブを見ていて思ったんだが」

 唐突な発言に皆がドランに注目していたら、こう続きましたのよ。

「ヴァイオリアと因縁のある相手を倒すと褒美が貰えるのか?」

 

「……ええ、そうね。可愛い子限定ですけれど」

「そうか」

 昨日、キーブへのご褒美に私がケーキを焼いたことを言っているんでしょうけれど……えっ、ドランも何かねだる気でしたのッ!?

「ふむ、私はよく可愛げが無いと社交界から言われてきたが……我が妹よ。私はその限定の中に入っているか?」

「勿論!お兄様は特別ですわ!」

 ドランの方はちょっとビビりましたけれど、お兄様の方は全然構いませんわよ!だってお兄様ですもの!

「あっ、お嬢さん、じゃあ俺は?」

「外ですわ!」

 でも骸骨は外ですわ!

「俺は外っぽいよなー……あ、そうだ、そろそろお前の血、くれねえ?切らしたんだけど」

「薬中は当然外ですわッ!血はジョヴァンに預けてある奴で勝手にキメてなさいなッ!」

 こいつら図々しくってよ!

「へへ。僕だけ可愛くってごめんねー」

「うわあ、俺、このこまっしゃくれたガキぶん殴りたくなってきたわ」

 あらそう!私は撫でまわしたくなってきましたわ!

 

 

 

「……で、ドラン。あなた、何か欲しいものでもありましたの?」

 さて、話が大分逸れましたけれど、ここらで戻しますわよ。

 ドランがあんなことを言い出すなんて、珍しい、というか、らしくない、というか……気になりますのよね。

 ……と思って尋ねたら。

「そうだな。お前の血を貰おうかと思っていたんだが」

 衝撃の回答でしたわ。

 

「あ、あなたまで薬中になるつもりですのーッ!?」

 私の血って!私の血って!つまりそれって薬の原料ってことですわよねえ!?或いはドラゴン殺しの猛毒ってことですわよねえ!?どちらにせよ、そんなもん欲しがるなんて、碌な理由が思いつきませんわーッ!

「そういうわけじゃない。毒殺の予定は無いし、麻薬が欲しければジョヴァンから買う。ただ少し、気になることがあってな」

「へ?気になること?」

 ……気になることって何ですの?逆にこっちが気になりましてよ!

「……え、ええと……私の血でしたら、ジョヴァンにある程度預けてありますけれど」

「いや、俺が今日の試合で勝ったら、でいい」

 ……あくまでもご褒美としてねだる、ということですの?私の血を?毒殺の用事もラリる用事も無いのに?

 う、うーん……?だ、駄目ですわ、全然分かりませんわ……?

 

 

 

 さて、そういうわけで朝食も終えたら今日の試合の始まりですわね。ドランのご所望については気になりますけれど、今は置いておきますわよ!

 今日はいよいよ第四試合、準々決勝、ですわ。ここでドランはリタルと当たりますのよ。

 私?私は当然のように面白みも無く貴族のボンボンですわッ!もっと歯応えのある相手をお寄越しなさいなッ!これじゃあフォルテシアの無駄遣いでしてよ!男子女子フォルテシアに区分分けされた私の実力が発揮できないじゃあありませんの!ムキーッ!

 

「……どうなるかな」

「さあ……まあ、ドランですから。何とかしてくるでしょうね。でも魔法使い相手じゃ分が悪い、というのは事実ですわ」

 さて、今日は私とキーブ、2人で観戦ですわ。当然のように関係者以外立ち入り禁止のお部屋からステージ上を眺めていてよ!

「ドランって耐魔法の装備とか、持ってるんだっけ?」

「そういう話は特に聞いていませんわね。ジョヴァンが何か用意していないとも限らないですけれど……うーん、無さそうですわ」

 ジョヴァンは昨夜、『今のところガッポリ儲ける以外に俺の出番が無い!まあ無いに越したこたあないけど!』って愚痴ってましたもの。ええ。

「じゃあどうするんだろうね。魔法はステージ上ならどこへでも攻撃できる。ドランは素手だから接近戦に持ち込まないと勝てない。これ、どうしようもないんじゃ……」

「まあ、楽しんで見させてもらうことにしましょう」

 有利不利で言ったら、当然、ドランが不利でしょうね。リタルが以前のぽやぽやしたお子ちゃまなら有利不利なんてぶっ飛ばせると確信できましたけれど、どうやらリタルはこの1年で無駄に成長してきたようですし。

 ……さて、ドランはここをどうやって突破してくれるのかしら?『ご褒美』を所望してきたのですから、勝算はあるのでしょうね?

 

 

 

 ステージ上で両者が握手して挨拶。恒例の光景ですわね。

 けれど、キーブとダクター様の時のように会話があるようには見えませんわ。というかドランはフルフェイス甲冑ですから、口が動いているかどうかは見えませんわ!

 適当に司会の話が入って、いよいよ両者が対決、ですわね。

「構え!」

 審判の言葉で、リタルは杖を構えて、ドランは姿勢を低く、突撃の姿勢ですわ。

 もう、お互いに初手が分かりやすくて仕方ありませんわね。でもこれもアリですわ。裏を掻くだけが戦闘じゃありませんもの。『分かっていたけれど敵わなかった』ということなんて、いくらでもありますわ。予想させておいて、その予想を真っ直ぐ超えていくというのも1つの戦略ですわね。

「……始め!」

 さて、試合開始の合図と共に、リタルは集中を始めて……ドランは、愚直に真っ直ぐ、リタルに向けて突撃していきましたわね。

 

 

 

 ドランの動きはリタルにも予想できたはずですわね。当然、真っ直ぐ向かってくるドランは格好の的となりますわ。

 ……勿論、それが『普通の速さ』なら、ですけれど。

 ドランの速度はとんでもなくってよ。リタルから見たら、ほんの一瞬で間を詰められたように感じられたのではないかしら。

 その結果、ドランは真っ直ぐ突っ込んでいったにもかかわらず魔法で狙われることは無く、リタルはドランを回避するために大きく動くことになりましたわ。

 動き始めたら当然、速くて強いのはドランの方ですわ。ドランはリタルに魔法を発動させる隙も与えず、回し蹴りを放ってリタルをまた追い詰めましたわ。

 リタルはやっと、自分が規格外のバケモノ相手に戦っているということを理解したようですわね。作戦を変え始めましたわ。

 リタルは突然、魔法を使うと一気にふわり、と宙へ舞いましたのよ。

 

 ふわふわと宙に浮くリタルを見て、観客席はざわめきますわね。彼は天使か妖精か、なんて囁かれているようですわ。まあ、普通の人間が種も仕掛けも無く空中浮遊なんてできませんものね。

 ……まあ、種は割れてますわよ。恐らく風の魔法ですわ。空中で姿勢制御するのは中々難しいでしょうけれど、多少不安定ながらもリタルはそれをやってのけていますわ。

 そしてリタルは空中に浮いたまま、水の魔法を撃ち始めましたのよ。

 

 これには観客もドランもびっくりですわね。風の魔法で宙に浮きながら水の魔法で攻撃しているんですもの。風の魔法はコツさえ掴めてしまえばそれなりに安定するのでしょうけれど、それでも、同時に2つの魔法を使っているのって中々珍しくってよ。

 ……でもこれで、リタルがこの1年、どうやって強くなってきたのか、分かりましたわね。恐らくはああして自分はできるだけ安全圏に居ながら、水の魔法を飛ばして魔物を仕留める、という練習をしていたんだと思いますわ。

 これ、とっても有効な戦略ですし……相手にしているドランからしてみれば、最悪の戦略ですわね。

 相手は空中。手が届かない位置。それでいて相手は攻撃してくる。

 ……中々に絶望的じゃなくって?

 

 

 

 リタルの水の魔法が次々に飛んでくるのを、ドランは全て躱していきますわ。水の魔法って軌道が読みやすいですから、まあ、雷なんかと比べたら大分避けやすい、ですけれど……それでも、事前の動作無しに放たれる矢のようなものですから、本当でしたら見てから避ける、なんてできないはずなのですわ。

 それでもドランはそれをやっていますの。リタルが水の魔法を放った瞬間、放たれた水の矢を見てから、避けていますのよ。

 ……これにはリタルも焦りが出てきましたわね。そこらの魔物ぐらいなら、今までもこの戦法で勝てていたのでしょうけれど、何と言ってもリタルが今、対峙しているのは人狼ですわ。規格外のバケモノ相手じゃ、今まで通りにはいきませんのよ。

 リタルは勝負を急ぐつもりなのか、一気に水の矢を3本、飛ばしましたわね。立て続けに水の糸が飛んで、ドランの首に巻き付いて絞めようとし始めますわ。

 ……でもドランは水の糸を引き千切ると……宙に浮くリタルの真下に向かって、走り出しましたの。

 

 宙に浮いていて相手の攻撃は届かないとはいえ、リタルからすれば相手が接近してきたわけですから、結構怖いはずですわ。

 それでもリタルは慌てず騒がず、無防備にも自分の真下へやってきたドランに向かって、水の魔法を放ちましたわ。

 けれど、その後のドランの行動は、あまりにも予想外だったのでしょうね。

 

 ドランは水の魔法を避けることなく、むしろ水の魔法に当たりに行くようにして……。

 ……リタルに向かって跳んだのですわ。

 

 

 

 そして数秒後、人間離れした跳躍を見せたドランは、リタルの脚を掴んで、地面に引きずり落としましたのよ。

 風の魔法の制御を失って、リタルはそのまま転落。

 ドランは落ちたリタルの首を肘で絞める構えに入って……そこで勝負ありの合図が入りましたわ。

 

 

 

 人間離れした挙動。

 魔法に突っ込んでいく蛮勇。

 そして、天使か妖精かという見目の魔法使いを地面に引きずり落とす聖騎士、というちょっぴり背徳的な図。

 ……観客、大喜びですわ。そりゃあもう、絵になりますもの。

 強い戦士は好き。珍しいものも好き。美しいものもとっても好き。そんな観客が、ドランのこの戦いぶりを見て喜ばないわけは無いのですわ。

 引きずり落とされたリタルはぽかんとしていましたけれど、やがて、ぎゅっと唇を引き結んで悔しそうに項垂れましたわ。

 そこでキーブよろしく観客席なんて目に入っていないドランがリタルに向かって手を差し出すと、リタルは困惑しながらもその手をとって立ち上がりましたの。うーん、負けた直後にちゃんと相手の厚意を受け入れられるって、結構あの子、人間できてますわねえ……。

 その後、リタルが何か声をかけて、ドランがそれに応えたのかしら。少し何か話していますわね。

 ……そして何やら話し終わった直後、リタルの顔が悔しさや困惑から、一気に驚きに変わり……それから、へにゃ、と、天使みたいな笑顔になりましたわ。ええ、ゴツくなりましたけれど、笑顔はまだまだ天使の面影が残っていましてよ。6、7割は天使ですわ。

 ドランはそれを見て、気さくな様子で軽く手を挙げて、さっさとステージを降りましたわ。リタルもはっとして、観客席の貴賓席の方へしっかり一礼してからステージを降りて、この対戦は終わりましたの。

 ……2人のやり取りが気になりますわねえ。後で聞いてみましょうね。

 

 

 

 ……さて。

 そのままドランが救急室に運ばれたら、えらいことになりますわ。

 私も私ですけれど、彼も彼で犯罪者ですからね。ええ。

 ……まあ、彼の場合、人狼だから、という理由だけで投獄されたようなところがありますから、私とは色々と事情が違いますけれど……どのみち、鎧兜を脱いだら厄介ごとになりますのよね。

 ですから、ドランには処置が遅れることを承知の上で、救護室ではなく、適当な別室まで退避してもらいましたのよ。……キャロルの協力の下。

 ええ。キャロルは貴賓席に居ましたし、ドランは聖騎士の恰好ですわ。ですから、救護室行きになる前に、聖女に引き取られて会場を後にすれば抜け出せる、というわけですのよ。

 キャロルには少し手間をかけましたけれど、とりあえずドランは無事に会場を脱出できましたわ!

 

 

 

 その後、私とキーブはそれぞれさっさと試合を終わらせて、私達はドランが先に帰っている宿へ急ぎましたわ。

「あらお帰り、お嬢さん達。この愛すべき馬鹿の処置はもう終わってるぜ」

 ドランと一緒に帰っていてくれたジョヴァンが、包帯巻き巻きになったドランを手で示しながら苦笑いして出迎えてくれましたわね。

「……怪我の具合は?」

「大したことはない。数か所穴が開いたが、鎧でほとんど防げた。肋骨は無事。腹に穴が開いたが、前よりずっと小さい。針を通したくらいでしかない。傷はそれだけだ」

 鎧でほとんど防げた、とは言いますけれど……ドランが座っているベッドの横、脱ぎ捨てられている聖騎士の鎧は、胴の部分に凹みが2か所、ついでに穴が2か所。

 そして鎧の内側は血でべったり、ですわ。……また腹に穴を開けましたの?いつぞやの再現のようですわぁ……。

「本当にあなた、無茶しますわねえ」

「風の魔法を制御されたら逃げられる。だから相手が水の魔法を撃った瞬間を狙いたかった」

 ドランは……まあ、自分が傷を負うことよりも、リタルを仕留めることを選んだ、という訳ですわね。その結果がこの穴なのですけれど。

 ……こうなることは分かっていたでしょうに、よくもまあ、魔法に真正面から突っ込んでいく気になりましたわねえ……。

 

「あなた、明日以降の試合、動けますの?」

「動くさ。今日は晴れている。月に当たっていればある程度は再生できるだろう」

 まー人狼ってほんと便利ですこと。

「こいつ、狼だからね。ちょいと俺が珍しい薬を仕入れておいたのよ。ほら、妖精の鱗粉」

 ジョヴァンが見せてくれたのは、きらきらと輝く綺麗な粉が入った小瓶ですわ。

 ……私も見たことがありましてよ。高級魔物素材ですもの。

 妖精って魔法がある程度使える人間じゃないと見ることすらできませんし、すばしっこい生き物ですから捕まえるのも一苦労なのですわ。まあ、コツが掴めれば割と捕まりますけれど。

 私も夏の休暇の時にはよく妖精の出る森に行って、妖精を捕まえては羽を毟って鱗粉を集めたものですわ。妖精の羽と鱗粉は高く売れますから、お小遣い稼ぎに丁度いいんですのよ。おほほほほほ。

 ……でも、私、そういえば妖精の鱗粉、採りはしても使ったことはありませんでしたわ。どういう効果がありますの?これ、魔法の触媒じゃなかったかしら?薬にすると何か効果が変わりまして?

「妖精の鱗粉は、月の光の効果を上げるの。普通は妖精の魔法とかの触媒であって傷薬に使うモンじゃあないんだけど、こいつには効くかと思ってさ」

「あ、そういうことでしたのね……」

 思い出しましたわ。妖精の鱗粉って月の光を使う魔法の触媒にするものでしたわ。

 ええ、月の光を浴びると傷が治る人狼にとっては、いい傷薬になるでしょうね……。

「それからね、包帯の間に月光石、入れといたよ。どーせうちの大将はケガの1つや2つ、平気でしてくるだろうと思って用意しておいたんだぜ?本当に俺ってば気が利くだろ?」

「ああ、助かった。おかげで明日もまた暴れられそうだ」

「いいね。その調子であの貴族の綺麗なツラした野郎もぶちのめしてやれよ、ドラン。また穴が開いたら適当になんかしてやるから」

「自分に穴が開くわけじゃないとなると調子がいいもんだな」

「そりゃー俺は頭脳労働担当だもの」

 まー、人狼と骸骨が楽しそうですこと。

 ……どうしてドランがジョヴァンと組んでるのか、なんか今更ながら分かってきましたわぁ……。

 

 

 

 さて、その日はそのまま外出もしないで、宿のお部屋で夕食会ですわ。

「ドラン、よかったよ。見てて格好良かった」

 早速、キーブはにや、と笑いながら上機嫌ですわね。ええ。

「キーブ。魔法使いとして、俺の戦い方はどうだった」

「馬鹿げてるけど、悪くはないんじゃない?正直、僕はドランと戦いたくないね」

 ツンツンしてはいますけれど、キーブからしてみたら最上級の賛美なのでしょうね、これ。『僕はドランと戦いたくない』ですもの。

「なら、コントラウス。もしお前なら、あの魔法使い相手にどう戦っていた?」

「ん?私か?そうだな、風の魔法で相手の風の魔法に干渉して落としたところに地の魔法で追い打ちをかける。相手が隙を見せたら殴りに行く。これでチェックメイトだろう」

「……魔法が使える奴だと参考にならないな」

「そうか。まあ、もし魔法を使わないとしたら、武器を投擲するだろうな。或いは君と同じように突撃するか。まあ、水魔法は適当に読んで武器で弾くと思うが。ああそうだ、案外読みさえ当たれば、対魔法ではない武器でも、魔法を弾き返すことができるものだぞ?特に水や地の魔法は弾きやすい。今度、試してみるといい」

 ドランはお兄様にも戦術を聞いていましたけれど、まあ、お兄様の戦い方は誰の参考にもならなくてよ!魔法を鉄パイプで弾くつもりのお兄様の戦い方なんて、絶対に参考にならなくてよ!ドランがバケモンならお兄様だってそれ以上にバケモンなのですわッ!

 

 それから対魔法使い戦について、ああでもないこうでもないと議論をしつつ、『お互いにほとんど参考にならない』という有意義なのかそうでないのかよく分からない時間を過ごした後。

「そういやドラン、ただの鎧で魔法に突っ込んじまったじゃん?だからさ、昨日キーブが負かした奴、何だっけ。あいつの立場、もっと無くなったんじゃねえかなぁ」

 唐突にチェスタがそう言いだしましたわ。

 チェスタは多分、ドランが活躍すれば何でもいいんだと思っていましたけれど、意外と他の人の視線でも物事を見ていますのよねえ。

 ……そう、ですわね。そう言われてみればそうですわ。昨日のダクター様の『耐魔法装備で魔法使いに敗北』という残念な結果が、ドランの『耐魔法じゃない装備で魔法使いに勝利』という素晴らしい結果でより一層際立ちますわね。

「昨日の王子様の立つ瀬がより一層無くなるなんて楽しいじゃない。煽れるだけ煽ってるみたいで。俺はお前の勝ち方好きよ、ドラン」

「まあ俺としても気分はいい。王族の評判が落ちたなら国の転覆にまた一歩近づくわけだしな」

「もっと単純に嫌な奴が嫌な目に遭って嬉しい、くらいでいいんじゃないのかね。俺はそんなもんだけど」

「……まあ、それでもいいが」

 まあ、私としては正にそれですわね。嫌な奴が嫌な目に遭ったら嬉しい。その通りですわね!

 今頃ダクター様はお城で泣き濡れているのではないかしら!ああ、想像するだけで今日もディナーが美味しくってよ!

 

 

 

 ……さて。

「はい。これ、私の血ですわ」

 私、食後に自分の血を採って小瓶に入れて、ドランに渡しましたわ。

「……ああ、今朝の話、か。可愛い奴限定じゃあなかったのか?」

「だってあなたがこれを何に使うのか、気になるんですもの。……ああ、当然ですけれど、悪用しちゃ駄目よ?」

「悪党が何を言っているんだかな」

 それもそうですわね。ええ。私もこいつも悪党でしたわ。

「まあ、構わない。悪用はしないと約束しよう。誰にも迷惑はかけない」

 ドランは血の小瓶を懐に仕舞い込みながらそう言いますけれど、つまりそれって自分でラリるため、じゃあないでしょうねえ……?

「お前の血は原液のままなら毒性はほとんど変わらないまま保存できるんだったな?」

「そうですわね。あ、でも長期保存するなら血が固まらないように薬剤を入れておいた方がよくってよ。ヘビ毒とかお勧めですわ。毒が嫌なら、少しお高くなりますけれどタイムキーパーの針とか、時の鏡でできた瓶に入れておくとか、或いはモッチリウニョーンの涙を加えておくとか……?ジョヴァンは確か、時の鏡の瓶に私の血をストックしているはずですけれど」

「成程な。分かった。聞いてみる」

 ……それにしても彼、私の血を長期間保存して何にするつもりかしら?使うのはずっと先、という事かしら?まさか飾っておくつもり、という訳ではない、でしょうけれど……。うーん、気になりますわねえ。

「……で、何に使いますの?これ」

「決勝戦でお前が俺に勝てたら教えてやる」

 え、それ、ここで引っ張りますの?

 まあ、ドランが『誰にも迷惑はかけない』と言っているのですから、とんでもない用途には使われないのでしょうけれど……気になりますわねえ。

 

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