没落令嬢の悪党賛歌   作:もちもち物質@布団

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2話「暴力でお金でお酒で薬ですわ!」

 ごきげんよう!ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアよ!

 私は今、キーブとリタルを馬車に乗せて、開拓地へとやってきましたの!

 

「貴族が国民から奪っていったお金を取り戻してきました!これ、使ってください!」

 リタルが堂々と『盗んできました!』というようなことを言いつつ、開拓地の人々に袋を差し出せば、当然、困惑されますわねえ……。

「あの、突然だけど、よかったら使ってよ。僕達、革命軍に入ったんだ」

 そこへ、キーブが横から顔を出して、リタルと開拓者達との間に入りましたわ。ええ。キーブは開拓地で働いていましたから、顔が割れていますのよ。

「このままだと、貴族が益々財産を蓄えていくだけで、僕ら平民には金が下りてこない。稼ぎは吸い取られる一方だ。……この開拓地だってそうだよ。すごい額の税金を掛けられるかもしれないんだってさ」

 適当に上手い事を言いながら、キーブはさっさと開拓者の手に金の袋を手渡してしまいましたわ。

「だからこれは使って。金はあるべきところに与えられるべきだ」

「し、しかし……」

「もし、この後で王家の兵士が来たりしたら、その時は僕らが守りに来るから」

 キーブの言葉に、始めこそ只々困惑していた開拓者達も、勇気づけられ始めましたわね。

 そして、開拓者達は最終的に金の袋をしっかりと抱えて、キーブ達『義賊』へ感謝の言葉を述べるようになりましたのよ。ええ。

 ……口が巧いのはリタルよりキーブ、ですわねえ……。

 

 

 

 その後、リタルがその場で薪割りや井戸掘りなんかを手伝い始めて、リタルも無事、開拓者達からの株を上げることに成功したようですわ。まあよくってよ。嫌われているよりは好かれていた方が何かと動きやすいですもの。

 何だかんだ、資金提供だけでなく諸々の仕事も魔法の力で片付けていった2人に対して、開拓者達は良くは思っても悪くは思わなかったようですわ。上手くいったようですわね。

「お疲れ様。よくやりましたわね」

 馬車へ戻ってきた2人を労って、私は早速次の村へ向けて馬車を進めていきますわ。ちなみに昼の間いっぱいは馬車で村巡り町巡りをして、夜になったら馬車を鞄にしまいつつドラゴンを外に出してお山へ帰る予定ですわよ。

「僕、お役に立てましたか?」

「ええ。この調子で次もお願いね」

「はい!」

 ……ということで、昨夜のカツアゲ3人組からは程遠い、正義と慈愛の2人組を乗せた馬車は、ごとごとと平和に進んでいくのですわ!

 

 

 

 さて。夜になったらドラゴンで帰りますわ。私とキーブの2人乗りですわね。私が操縦、キーブは何かあった時に魔法で迎撃する係ですの。……まだリタルは1人でドラゴンに乗れませんから、彼だけ空間鞄に入れて運びますわよ。

 さて、夜空へ飛び立ってすぐ、キーブが私の後ろから話しかけてきましたわ。

「ヴァイオリア、今日もカツアゲに行くの?」

「そうね。行くつもりですわよ。連日連日貴族の被害者が出ていたら、流石の王家も動くと思いますし」

「ふーん。チェスタから話、聞いてる限りだと、ヴァイオリアは居ても居なくてもいいんじゃないかと思うけど」

 ……まあ、正直なところ、私が居なくてもドランとチェスタだけで事足りている気はしますわね。ええ。でも単純にカツアゲが楽しいので行きますわ!

 

「……あのさ、ヴァイオリア」

「ええ、どうしましたの?」

「この間の、ご褒美貰うって話だったけど」

「覚えていますわよ。何がお望みかしら?」

 私が尋ねると、キーブは少し迷ったように口籠ってから……物騒なことを言い出しましたのよ。

「僕にもヴァイオリアの血、ちょうだい」

 

「……なんですの?最近、私の血、流行ってますの?」

「いや、別にそういうんじゃないけど……」

 じゃあ何なんですの?ドランも私の血、持っていきましたわよね?何かありますの?何に使うんですの?考えれば考えるほど怖くってよ!

「……駄目?」

「いいえ?お屋敷に戻ったらすぐ小瓶に採って差し上げますわ」

 不安げな声を出したキーブを安心させるべくそう言ってあげると、キーブは私の後ろで明らかにほっとしたようなため息を漏らしましたわね。

「やった。よかった」

 ……なんだかじんわり嬉しそうですけれど、本当に何に使うのかしら?

「ねえ、キーブ。私の血なんて、何に使いますの?ドラゴン狩りにでも使いますの?」

「ん?内緒」

 あら、内緒……ですの?

 ドランからも結局、使い道を聞いていませんし、これはいよいよ気になりますわねえ。

 内緒って言われても、気になりますのよねえ。うーん、どうしたものかしら。

 

 

 

 私の血の話は置いておくとして、今日も今日とてカツアゲですわ。

 今日はロアンナを舞台にカツアゲしますわよ。王都よりはずっと小さな町ですけれど、エルゼマリンの貴族が全滅してからというものの、別荘をエルゼマリンではなくポアリスやロアンナに設ける貴族は一気に増えましたの。ここらへんはここ1年で随分と急成長した都市ですわね。

 ……ということで、まあ、ボロ儲けですわね!

 居るわ居るわ、夜の街を不用心にも護衛1人くらいしかつけずにほっつき歩いている貴族の数々!護衛1人くらい、チェスタが適当に殴り飛ばせば終わりですわ。もし護衛が3人いても、私達が1人につき1人転がせば終了ですわ!そしてその後は楽しいカツアゲですわ!

 ……チェスタって、街の中での戦闘、強いんですのよ。

 人工的な障害物を使うのが上手い、というか、それらを破壊したり盾にしたりすることに躊躇が無い、というか。

 まあ、薬中特有の容赦の無さと、路地裏で生きてきた人間特有の器用さとが合わさって、中々見ていて楽しい戦い方をしますのね。

 お陰で私が出る幕はありませんでしたわ。本当にキーブが言っていた通り、私が居ても居なくても変わらないですわね。おほほほ。

 

「今日も儲かったなあ」

「本当にボロい商売ですこと」

 そうして夜明け前にはたんまりと金貨や宝飾品を入手できましたのよ。今日も今日とてボロ儲けですわ。

「……恐喝はあとどのくらいやる」

「そうですわねえ……王都でもう1日、他の町でもう1日、くらいかしら。その後は予定通り、王都の貴族の屋敷に盗みに入ろうと思いますわ」

 被害をどんどん大きくしていって、最終的に王家の兵士達が動かざるを得ない程度にはしていかなければなりませんものね。

 後は、それでも王家が動かなかった場合ですけれど……まあ、その時は私達が王家の兵士に扮して平民達を襲うだけですものね!問題なくってよ!

 

 

 

 翌日は王都の貧民街で金貨や宝飾品をばら撒いて、夜にはまた王都でひと稼ぎ。

 翌々日はポアリスの貧民にばら撒いて、キャローラでカツアゲ。

 ……そして待ちに待った翌々翌日は、いよいよ王都の貴族街に盗みに入りますわよ!

 

「はい、ごめんあそばせ」

 見張りの兵士を蹴倒して、さっさと裏口から屋敷の中に潜入。そのまま目星が付いている方へと進んでいきますわ。リタルがこの屋敷に招かれたことがあったので、ある程度は屋敷の地図が頭の中に入っていますの。おかげで見張りの兵士との交戦も必要最小限で済んでいますわ。

 さて、そうして特に何の見どころも無くあっさりとたどり着いた隠し部屋の扉は暗号が分からなかったので爆破させていただくとして、爆音で起きてきた使用人や貴族の連中が駆けつけてくる前に頂くものは頂いて、さっさとこの場所を去りますわよ!

「あらぁ、いいワインがありますわねえ。頂きましょう」

「ヴァイオリア。すぐに換金できるものに狙いを絞れ」

「それは分かっていますけれど、自分達へのご褒美も必要なんじゃあなくって?」

「分かってんじゃん。俺も賛成賛成。あ、俺はこっち貰うぜ」

 チェスタが持って行ったのは少し珍しい国外の果実酒でしたわ。それから保管されていた麻薬らしいものの瓶も持って行きましたわね。チェスタは本当にブレないですわね。ええ、本当に……。

「全く……俺はこっちの瓶を貰うぞ」

「あら、ドラン。あなたも人のことは言えませんわねえ」

「俺だけ何も無しというのは癪だからな」

 にやり、と笑いつつ、ドランは棚に並んでいた小瓶を一切合切空間鞄の中に放り込んで、それからまた金品の回収を始めましたわ。

 やっぱり貴族の家の盗みは楽しくってよ!今回は家具の類をあんまり頂けないのが悔しいですけれど……まあ、金銀宝石の数々や高級酒の類を頂けるだけでも十分に楽しめますわね!

 

 その後当然のように駆けつけてきた見張りの者達や貴族達を適当に蹴散らして、私達は屋敷から脱出しましたわ!

 夜の貴族街に飛び出して、あとはまっすぐ王都郊外に向かって……なんてことは致しませんわよ!

「さあ!次はどこかしら!?」

「角を曲がって3軒先だ」

 ええ!私達、これからハシゴするところですのよ!一晩に1軒しか襲っちゃいけないなんてルールはどこにもありゃーしませんわ!私達、まだまだ行きますわよーッ!

 

 

 

「ということで王都の警備が強化されましたわ」

「……それだけ?」

「それだけですわ」

 ……私達が盗みに盗んで早5日。

 流石に王都の貴族街での騒ぎは王城にまで届いて、王都の警備が強化されましたの。

 ……逆に言うと、それだけですわ。

「開拓地が潤ったり、貧民達が宝飾品を売りに来たりっていうのも分かってるんじゃないの?それでも王家は動かないって?」

「そのようですわねえ」

 やっぱり、王家の腰は重いんですのねえ。高級ワインを飲みながらだというのに、重いため息が漏れてしまいましてよ。

「となると……やっぱりアレ?お嬢さんが最初に言ってた通り、こっちが王家の兵士の鎧着て、平民を襲うって奴?」

「そうですわね。できればもっとシンプルに解決したかったのですけれど……」

 私としてもここは迷いどころですわ。もう明後日にはキャロルとダクター様の会食が設定されていますし、キャロルはそこで、王家と大聖堂が協力関係になるかどうかを決定しなければならないのですもの。

 それまでになんとか、となると、やはりもう時間はありませんわねえ……。

「……分かりましたわ。革命軍の奴隷達に王家の兵士達の恰好をさせて適当な町を襲いに行きますわよ!」

 ということで、私、決断しましたわ。なんとしても、大聖堂から王家の要請を断るだけの材料を集めなければなりませんもの。ここは王家の出方なんて待っていられなくてよ!

 

「ちなみに今回の作戦の指揮を執るのはクリスですわ!」

「容赦ねえなー」

 ということで仕方ありませんけれど、早速、クリスには働いてもらいますわ!奴隷としてのお仕事、頑張って頂きましょうね!

 

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