没落令嬢の悪党賛歌   作:もちもち物質@布団

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10話「ややこしいことするんじゃありませんわー!」

 ごきげんよう!ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアよ!

 

 第5王女と第8王女は、薬を飲んだら豹変してしまいましたわ。

 理性は精々『少し興奮気味』という程度だというのに、その傲慢なことといったら!

 まるで自分を神か何かのように思っているのではないかしらという程に傲慢で、尚且つ非常に攻撃的な2人の王女様ができてしまって、私、本当に感激していますわ!

 チェスタのアドバイスを受けてやったことですけれど、まさかここまで大成功するとは思いませんでしたの。これはチェスタを褒めなければなりませんわね!

 

 

 

「何をしているの!下賤なフォルテシアの娘風情が!私達に触らないで頂戴!」

「今まで散々私達に無礼なことをしてくれたわね!その非礼を詫びて今すぐここで死になさい!今すぐ!死になさい!」

 おっとりして怯えた様子はどこへやら、全能感と怒りと活力に支配された王女様達は、それはそれはもう酷い有様ですわねえ。

 とりあえず目の前に現れた者に文句を言い、ついでに小突いたり殴りかかったりするくらいのお転婆加減になってしまって、まあ楽しくって仕方ありませんわ。

「では王女様達。王城へ帰して差し上げますわ」

「当然のことでしょう!さっさとしなさい!」

「この首輪をこのままにしておくつもり!?高貴な私達を奴隷にするなんてことが許されるとでも思っているの!?」

 話しかけてもほとんどが会話になりませんわ。攻撃ばかりが先に来ますから、意思の疎通が難しいですわねえ……。

 まあよくってよ。とりあえずサキ様に2人の首輪を外していただいたら、空間鞄を使って2人とも収納。

 その後、私はドラゴンに乗って王都へ向かいましたわ!

 さあ!所持が面倒な王女様達には王家の味方を減らす大切な役割を演じて頂きましょう!

 

 

 

 動くならまだ明るい内、ですわ。

 王都の外れの森に隠れるように着陸したら、早速ドラゴンをしまって王都へ向かいますわ。

 近くにドラゴンが降り立ったということは、王家の兵士達にも見えているでしょう。でも私、躊躇わずに進みますわよ!

 王都の周りをぐるりと回り込むようにして、森の反対側の門から王都へ潜入すれば、私を探しに来た兵士達と鉢合わせすることもありませんでしたわ。そのまま止まることなく王都の中心へと向かいますわよ!

 

 王都の中心の広場は、今日も活気にあふれていますわ。人が沢山居て、それはそれは賑やかですの。

 私はその広場の近くの路地に入り込んで……そこで、鞄から王女2人を取り出しましたわ!

「な……何なの!?急に光が……!?」

「私達に何をしたの!許さないわよ!」

 空間鞄にしまわれていた2人はすっかり怒り狂っておいでですわねえ。おほほほ。

「ほら王女様達?周りを御覧なさいな。あそこに見えるのは王都の広場ですのよ?」

 けれど、怒り狂っていた王女様達は周囲を見回して、路地の向こうの広場を見て……表情を明るくしましたわ!

「やったわ!私達は帰ってきたのよ!」

「当然のことよ!私達を丁重に扱って私達の希望を通すのは当然のことでしょう?」

 何とも言えない会話を繰り広げながら王女2人は喜び合っていますわ。本当に何とも言えない頭の悪さが露呈していますわねえ……。

「よろしくて?王女様方」

 そこへ私、話しかけましたわ。当然の権利のように王女2人は私を睨んできますけれど、構わず続けますわよ。

「あなた達がどうして解放されるか分かるかしら?」

 私がそう尋ねると、王女2人は顔を見合わせて……それから即座に言い募り始めましたわ!

「それが当然のことだからよ!私達があなたのような者のせいで害されるようなことが在ってはいけないからだわ!」

「あなたのせいで私達が不自由な身になったというのに、まるで救ってやったかのような口を利くのね!気に入らないわね!」

 

「価値が無いからですわ」

 ……でも、私が一言そう言ってやれば、2人とも黙りましたわ。

「あなた達に、価値が無いからですわ。ですから、解放しますの。あなた方が居ても何の役にも立ちませんもの」

 王女2人は、しばらく私の言葉を理解できないようでしたわ。でも、だんだん理解が進んで……喚こうとしたその瞬間、遮るように言ってやりますのよ!

「だってそうでしょう?力も無くて、技術も無くて、頭が悪くて品が無くてついでに顔も大した作りではないただの女2人が一体何の役に立ちますの?」

 

 

 

 王族が面と向かって罵倒されることって、無いでしょうね。ですからその分、2人には大きな衝撃となったようですわ。

 口をパクパクさせる2人に微笑んで、私はさっさと帰りますわ!

「それでは『価値のない』王女様達、ごきげんよう」

 

 勿論、帰りませんわよ?路地の向こうへ曲がってしまってから、家屋の屋根に上ってそこから王女2人の様子を観察し続けましたわ!

 王女2人は私が去った後、しばらくしてから動き出しましたわ。

 私から受けた侮辱によって怒りはいよいよ高まって、これ以上無いまでになっておりましたの。

 そんな王女2人は怒りを露わにしながら、王城の方へ……つまり、広場の方へと向かっていきましたわ。

 

 

 

「邪魔よ!お退きなさい!」

 さて、怒りが爆発している王女様達は、広場に居た民衆達に当たり散らし始めましたわ!

 民衆は驚いて、何が起きているのか、というような顔をしていましたけれど、王女様がそんな愚民共をお気になさる訳がありませんわね。

「本当に役に立たない愚民共ね!私達が危険な目に遭っていたというのに、あなた達は暢気に暮らしているなんて!不敬だわ!」

「今、私にぶつかった者は名乗り出なさい!死罪にしてやるわ!死罪よ!」

 ……こんな調子でがなり始めた王女様達に、民衆はいよいよ、異常を感じ始めましたわ。

 この王女達はニセモノなのではないかとも疑うでしょうし、或いは私の仕業によるものだと思う者も、中には居るでしょうね。

「控えなさい!頭が高くってよ!私達はオーケスタ王家の王女よ!?どうして跪かないの!?」

 ただ、彼女ら自身が名乗りを上げていますし、その騒ぎに駆けつけてきた兵士達がどうしたものかとオロオロしていることからも、彼女達が本物の王女様達だということが証明されてしまっていますのよね。

 ええ。私、王女様達の服はそのままにしましたの。全部剥いでから野に帰してやってもよかったのですけれど……やっぱり見苦しい姿を見せるなら、王家の紋章が燦然と輝くネックレスや腕輪を身に着けたまま、豪奢なドレス姿での方がいいですものね?

 

「王女様、どうなさったのですか!?」

 さて、王女2人の豹変ぶりに驚いた民衆の1人が、心配そうに第8王女へ駆け寄りましたわ。

「触らないで!汚らわしい!」

 けれど、王女を心配して駆け寄った者は、見事、王女様に蹴り飛ばされてしまいましたのよ。

「何を勘違いしているの!?どうして私に触れていいと思ったの!?ああ、思いあがった愚民め!いつもいつも、あなた達愚民共に笑顔を振りまいてやるのが苦痛だったわ!ああ汚らわしい!」

「都合のいい時だけ擦り寄ってくるなんて、国民失格だわ!兵士!兵士は居ないの!?この無礼者の首を刎ねなさい!何を躊躇っているの!?まさか愚民1人を殺すことを躊躇しているとでもいうの!?王家への忠誠は何所へいったの!?」

 王女様からの命令ですけれど、兵士は当然、動けませんし、それに王女様達はますます腹を立てますし、民衆はますます慄くばかり。

 かといって王女様ですから手荒に扱う訳にもいかず、かといって放っておいても被害は拡大していく一方で……。

 まあ……控えめに言っても、阿鼻叫喚の地獄ですわね!

 

 ……そうして、兵士達が王女2人を王城へと連れて帰るまで、王女2人は民衆相手に怒鳴り散らし、威張り散らして見苦しい姿を晒しておりましたのよ。

 一通り、広場での見世物が終わった後、げんなりと疲れ果てた表情の民衆がそれぞれに帰っていきましたわ。王女達についてヒソヒソと囁き交わしながら、ね。

 私も屋根の上、煙突の陰に隠れて見ていましたけれど……え、ええと、思っていたよりも少々お派手だったといいいますの?予想とは少し違った、といいますか……少々、王女様方の本心がノリにノッてしまわれていたようで……。

 

 ……ええ。白状しますわ。

 私!流石に!王女様達がここまで豹変するとは!思っていませんでしたわッ!

 

 

 

「無事に帰せましたわぁ……」

「ご苦労だったな」

 夜を待ってからドラゴンで飛び立って、アジトへ帰りましたわ。

 そして私、もう、疲れてしまって……とりあえずアジトのソファで休みますわよ!

「本当に……もう二度と王女様なんて誘拐しませんわよ」

「……余程疲れたんだな」

 ええ!疲れましたわ!

 なんというか、予想通りに過ぎる生活なんて面白くありませんけれど、今回のような方向に予想を飛び出していくのは面白くもなく只々疲れるだけですわね!

「よお、ヴァイオリア。俺の話、参考になったか?」

「なりすぎましたわ。ええ。世の薬中は恐ろしいものを嗜みますのね……」

 ドラゴンの心臓を盛ったからこそのアレなのか、それとも王女様達の本性がアレだったのかは分かりませんけれど……とりあえず、ドラゴンの心臓と葉っぱを併用したがる薬中は本当にヤベえ奴らですわね!

 

「ふわ」

「眠そうだな」

「眠そう、ではなく、眠いんですのよ、実際」

 何だかんだ、キャロルの会食からずっと夜通し働いて、そのまま王都へ行って、そのまま夜を待って帰ってきたわけですから……私、働きすぎですわね。ええ。更にその上で王女2人の豹変ぶりを見てきましたから、気疲れもしましてよ。

 でもとりあえずはこれで休めますわぁ……。

「お休みなさいましぃ……」

 私、ソファに横になってそのまま眠りますわ!だって眠いのですわ!とっても眠いのですわッ!

 

 

 

 ……そしてそのまま眠って起きて、翌朝……というより昼ですわね。ええ。

 私が起きた時、向かいのソファではキーブが本を読んでいましたわ。

「あら、おはよう」

「おはよう。よく寝てたね」

「ええ。よーく寝ましたわ。今、何時ですの?」

「13時」

 ……15時間ぐらい寝てましたわ。ええ。そりゃあ目覚めスッキリなわけですわね。ええ。

「お腹減ってない?パンなら買ってきてあるから好きなの食べていいよ」

「そうね。シャワーを浴びたら何か頂こうかしら」

 気の利く子ですこと。示された紙袋を覗いてみたら、チーズとクランベリーのパンが入っていましたわ。私、これ大好きなんですの。嬉しいですわぁ。

「……ところであなた、魔法薬の本なんて読んでるんですのね?」

「うん」

 ところで、ふとキーブが読んでいた本の表紙を覗き込んでみれば、魔法薬についての本であることが分かりましたのよ。著者や何やらを見る限り、錬金術やらなにやらに近い方かしらねえ。

「チェスタが、ドラゴンの心臓と大麻を一緒に摂取するととんでもないことになるって教えてくれたから調べてる」

 え……?あいつ、薬中を増やそうとしてるんじゃあないでしょうね……?

「僕さ。今まで勉強とかしたこと無いんだけどさあ……毒とか薬とか、勉強してみたら面白いね」

 ……でもまあ、いいですわ。キーブが嬉しそうですもの。チェスタの言葉が興味のきっかけになって、それがキーブの世界を広げたならそれは良い事でしてよ。

 まあ勿論、キーブまで薬中にしたら許しませんけれどね!

 

 

 

 シャワーを浴びて、お茶を淹れて、アジトの居間でパンを頂きながらキーブに魔法毒の講義を行っていた時のことでしたわ。

「あ、お嬢さん。丁度いいところに」

 ……ジョヴァンが来ましたわ。

 ええ。ジョヴァンが、来ましたわ。なんだかちょっぴり焦り気味な表情で、やってきましたわ。

 ……これって。

 これって絶対に何か善くないことの前触れですわね!?私、知ってますのよッ!?ジョヴァンがこうやって近づいてくる時は絶対に悲報を持ってくる時だって!私、知ってますのよー!?

「なんですのッ!?一体どういう悲報を持ってきたんですのッ!?どんな厄介事ですのー!?」

「何、お嬢さん。俺が持ってくる話は全部悪いニュースだって?」

「今までにいいニュースを運んできたこと、ありましたかしら……?」

「無いかもね。で、本題だけどダクター王子が失踪したってさ」

 

 ほらァーッ!言わんこっちゃーないですわーッ!やっぱり悪いニュースでしたわーッ!

 何ですのあの王子!失踪ってどういうことですのあの王子!

 あああああ!ややこしい事するんじゃありませんわァーッ!

 

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