没落令嬢の悪党賛歌   作:もちもち物質@布団

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12話「降伏勧告ですわ!」

 ごきげんよう!ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアよ!

 私は今、王城の会議室に居ますの!

 

 

 

「ごきげんよう。ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアよ!」

 会議室へ入場すると、国王やその他、大勢の王族貴族達に出迎えられましたわ。

 ……当然ですけれど、会議室には異質な緊張が漂っていますわ。

 ええ。何と言っても、今、この会議室に集まっている王族貴族達の未来を打ち滅ぼそうとしている革命家の私がここに居るのですもの。緊張もするでしょうね!

 

 

 

 私が正面から堂々と訪ねてくるとは思っていなかったのでしょう。私が訪れた時、城の兵士も、兵士の報告を受けて飛んできた大臣も、バルコニーから私を見ていた王子王女達も、全員がとんでもなく驚いていましたわ。王女達なんて、その場で失神してしまう者まで居ましたのよ。おほほほ。

 ……そして、私が攻め入ってきたわけでもなく、ただ『交渉に来た』と申し出れば、相当に困ったらしいですわ。

 ええ。だって今、この状況で『交渉』したいのは、間違いなく王家の方。

 逃げ場も選択肢も最早失って、後は落城を待つばかりとなった彼らですもの。私からの『交渉』の申し出はとても嬉しいものであるはず。

 勿論、私は武器も持っていませんし、兵士や奴隷を連れてきたわけでもありませんわ。ですから、罠だと判断して放り出すにはあまりにも惜しかったようで……。

 ……その結果、私を城に入れるかどうか、とーっても長い議論が始まりましたのよ。

 

 王族貴族の重鎮が議論する間、私はずーっと、ほっとかれっぱなしですわ。

 王城の前で、多数の兵士達に見張られながら。……途中で『もう私帰ろうかしら』と言ってみたところ、王城前にテーブルセットとパラソルが用意されて、そこにお茶とお菓子が運ばれてきましたわ。何と言うか、必死ですわねえ……。

 

 ……そうして3時間ほどほっぽっておかれましたかしら。その間、王城前に集結して私を警戒し続けていた兵士の皆さんは本当にご苦労様でしたわね。ええ。

 でも待った甲斐がありましたわね。私は大臣と大量の兵士達に導かれ、王城の会議室へと入りましたのよ。

 

 ……そして私が会議室で名乗ると同時、会議室に緊張が走った、という訳ですわね。ええ。

 

 

 

 

 

「私、オーケスタ王家の皆様へ、降伏勧告をさせて頂きに参りましたの」

 私はそう言って、国王の足元へ書状を投げ渡しましたわ。

 国王へ物を投げるなんて、不敬罪で捕まる所業ですけれど、今の私に文句を言える奴なんてここに居るはずがなくってよ!

 国王は慌てて書状を拾い上げながら、書状を開いて……そして、絶句しましたわ!

「こ、これは……」

「ええ。それが私の提示する『降伏』の条件ですの」

 

 私が提示した条件は以下の通りですの。

 まず、1つ目。

 王族が全員、1人残らず身柄を差し出してくることを条件に、この国の貴族共は見逃してやる、という条件ですわ。

 王族と貴族の醜い争いも楽しみですけれど、それ以上に『王族を1人残らず』というところが重要ですわね。ええ。

 次に2つ目。

 王族の持つ全権を革命軍に譲渡せよ、という条件ですわ。

 まあ当然の条件ですわね。武力で奪い取れるこれをこうして交渉の席に持ってきたというのが私の良心ですわ。

 そして3つ目。

 以上の条件を飲むのならば、身柄を預かった王族達の命は保障してやる、という条件ですわ。

 最後の4つ目。

 以上の条件が守られないのならば、革命軍は王族も貴族も皆殺しにする、という条件でしてよ。

 さあ、ここまで来て亡命を選ぶかしら?それとも条件を飲みに来るかしら?

 まあこいつらがどう足掻こうが、既に未来は1つとなっておりますのよ!

 

 

 

 それからまた、長ーい審議が始まりましたわ。

 私が目の前に居るからか、王族貴族達の言葉は全て歯切れの悪い、遠慮がちなものではありましたけれど……まあ、優雅に罵り合っていましたわねえ。

 貴族達としては、自分達が見逃されるのですから、条件を飲ませて自分達は助かりたい。

 王族達としては、条件を飲んだら自分達は確実に碌でもない目に遭うのですから、条件を飲みたくない。

 この両者が1つの会議室に収まっているのですから、それはそれは混沌とした様相を呈しますわね。ええ。

「……あ、あの」

 そんな中、第6王女、スコーラ姫がおずおずと手を挙げて、私の方を窺ってきましたわ。

 どうぞ、と促すと、彼女は早速、質問を始めましたの。

「あの、王族の命は保証する、ということでしたが……その場合、私達の扱いはどのようなものになるのでしょうか?」

 ああ、そこはやっぱり気になりますわよねえ。まあ、言うまでもなく想像できることでしょうけれど……。

「奴隷ですわねえ」

 私がそう言った途端、スコーラ姫は『ああやっぱり……』というような顔をして、他の王族連中はざわつき始めましたわ。

「なっ……それでは何の意味もないではないか!我ら王族を何だと思っている!」

「ゴミだと思ってますわ」

 正直に申し上げましたところ、第3王子らへんの誰かはプルプルしながら黙りましたわ。流石のゴミですわね。

「あなた達が降伏することに、今まで振り回し続けてきた国民達に詫びる以外の何の意味が必要ですの?今回、私は寛大にも、貴族連中は見逃すと申し上げておりますのよ?」

「そ、そんなこと……」

 第4王女らへんの誰かは『そんなこと』と言ってしまってから、この場に貴族も居るのだということを思い出したらしく、口を噤みましたわ。ええ、もう貴族連中には聞こえていたと思いますけれどね。

「ええ。『そんなこと』ですわ。貴族が助かろうが助からなかろうが、あなた達王族としてはどうでもいいのでしょう。何なら、貴族も国民も全員死んで、王族だけ助かるというのならその道を選ぶのでしょうね?」

 私がそう言ってやれば、もう言葉を発せる王族は居ませんわ。貴族達も胡乱気に王族を見るばかりで、誰も発言しませんわね。

「ですから、これはあなた達王族が、本来王族として果たすべきだった責務を果たす機会を、最後に設けてやろうというだけの話ですのよ。今まで散々好き勝手やってきたのですから、最後の最後くらい、観念して自分達の身柄で罪を雪ぎなさいな」

 さて、私がそう言ってにっこり笑って差し上げれば、いよいよ王族達は真っ青になってしまいましたわねえ!

 これから彼らがどういった結論を出すのか、非常に楽しみですわ!

 

 

 

 ……さて、またしても会議が始まってしまいましたわ。私は会議室から締め出されそうになりましたけれど、『私1人が別室に連れていかれたら聖女キャロルのように殺されかける可能性がある』として突っぱねましたわ。

 ということで、王族貴族の連中は私が居る前で見苦しく罵り合い、責任を押し付け合っていたのですけれど……。

 ……この『交渉』、正直なところ、私にとっては非常にどうでもいいことなんですのよね。

 どうせこの交渉はどう足掻いても決裂なのですわ!精々時間を無駄にお使いなさい!そして兵士をこの会議室に集めて、私を警戒なさい!

 その間に私のところの悪党共が、王家のお宝を1つ残らず盗み取っていますわよ!

 

 

 

 そうしてしばらく会議室で罵り合いを眺めて……そんな折、会議室の外の窓で、ひらひらとハンカチが翻りましたわね。予めリタルに預けておいたレースのハンカチですわ。

 リタルが風の魔法でふわふわと滞空させているレースのハンカチは、中々に目立ちましてよ。ええ。合図としては十分ですわ。

「時間切れですわね」

 そこで私、立ち上がってそう言いましたわ。

 

「時間切れ?それは……」

「交渉決裂、ですわ。王家の皆様が責任を果たそうとするおつもりはないのだと、よーく分かりましたもの。ならこれ以上待っていても仕方ありませんわね」

 少しほっとしたように見える王族と、絶望した表情の貴族を眺めて、私、申し上げましたわ。

「あなた達全員、奴隷にされるより碌でもない目に遭いますから、どうぞお覚悟なさって?」

 

「ま、待ってくれ!条件は飲む!王族は全員、お前達革命軍に身柄を渡そう!」

 あら。予想外でしたけれど、国王が唐突にそう言い始めましたわ。

 どうせ『ここは条件を飲んでおいて、後で裏切ってやろう』とでも思っているのでしょうけれど……まあ、よくってよ。

「あら。それはご英断ですわね」

 私は国王を誉めつつ、王子王女達が国王へ非難の眼差しを向けるのを楽しく眺めて……。

「では出していただきましょうか。『1人残らず』」

 

 ええ。私、『王族を1人残らず出せ』と言っておりますの。

 となると、そこには当然、『失踪中』のダクター様も含まれますのよ。

 失踪した王子とやらを連れてこられるわけがありませんわね!ということで、どうせこの交渉は決裂すると、始めから分かっていたのですわ!

 

 

 

 この交渉の条件にダクター様も含まれていたのだと、王家と貴族の両方が気づいた時にはもう遅くってよ。

「交渉は決裂ですわね。では私は帰らせていただきますわ」

「ま、待ってくれ!」

 止める言葉も聞かず、私は颯爽と去りますわ!精々色々と悔やみなさい!そして後から、王家の宝物が盗まれていることに気づいて、私が交渉なんて持ってきた理由をお知りなさい!

『交渉』なんて名ばかりで、最初から注意と時間を稼ぐためだけに私がわざわざやってきたのだと知って、精々悔しがりなさいな!おほほほほほほ!

 

 

 

 さて。そのまま素直に王城を出られるわきゃーありませんわね。ええ。

 交渉決裂、となった途端、王家の兵士達が襲い掛かってきましたから……私、その場に薬瓶を投げましたわ。

 薬瓶は割れると同時、煙をもくもくと放ち始めますの。それを見た王家の連中や兵士達が思った事は……当然、つい最近、自分達がやったこと。

 そう!キャロル達を暗殺しようとして、空気に溶ける毒を使ったことを思い出すのですわ!

「に、逃げろ!毒だ!」

「革命軍が毒を使ったぞ!」

 兵士達は勝手に混乱して、勝手に私から離れていきますわ!……この煙、毒でもなんでもなく、ただ煙が出るだけの液体なのですけれどね。ええ。

 

 さて、兵士が怯んでいる間に私は窓に向かって逃げますわよ!

「それではごきげんようッ!」

 兵士数人を勢い任せに蹴り倒して、踏み台にして、会議室の窓に向かって飛んで……硝子の窓を破って、そのまま外へと出ましたわ!

 窓の外は空中ですし、この会議室は3階にある会議室ですから、当然、私はその高さから転落することになるのですけれど……それを無視して、私は窓の外へ出ましたわ!

 ……そして!

「よいしょ!……ヴァイオリア様!僕、お役に立てましたか!?」

「ええ、勿論よ!」

 リタルの風の魔法で受け止めてもらって、私は無事、城の外へと脱出することに成功しましたわ!

「さて、他の皆はもう出ていますわね?帰りますわよ!」

「はい!」

 ということで私達、さっさと王城を後にしますわ!それではごきげんよう!

 

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