ごきげんよう!ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアよ!
私は決めましたわ。この国の女王となってやろうとね!
正義なんて追い求めませんわ!何故なら、私こそが正義だからよ!
決めた以上、もう私、躊躇いませんわよ!何故なら私、悪党ですもの!おほほほほほ!
ということで、早速、躊躇わずに侵攻を開始しますわ!
『城を燃やす』と決めたのですから、燃やすまでの道のりを完璧に舗装していかなければなりませんわね!
王家はいよいよ逃げ場が無くなって、城に閉じこもってきゅうきゅうやってますわ。馬も無く、ドラゴンも無い状態ですから、助けが来ない限りは亡命できませんわね。
でも、念には念を入れて、王家の逃げ道を徹底的に潰しますわ!
まず、大聖堂のキャロルから声明を発表してもらいましたわ。
王家が聖女を殺そうとしたこと。その手口。大聖堂を我が物にして革命軍との戦いに利用しようとした、その悪辣さ。
それらを全部ぶちまけた後で、キャロルは……いよいよ、発表しましたのよ。
『大聖堂は革命軍と全ての民衆を支援する』という内容をね!
これで迷っていた民衆は、全員革命軍側へとつきましたわ。正義は革命軍、そして王家は悪、と神の裁定が下ったのですから。
今や、都市はもちろん、地方の村でも王家を支持する者は居ませんの。民衆は皆、この国の革命を願って一致団結したのですわ。
……ちなみに、これを受けた王家は抗議文をキャロルへ送ってきましたけれど、殺そうとした相手に抗議文って、相当に厚かましいんじゃなくって?キャロルが抗議文をまた公開しますと、より一層、反王家の流れは大きくなりましたわ。王家としては火に油を注いだ形になりますわね。おほほほほ。
次に、海を渡れないようにエルゼマリンの港を監視しますわ。
エルゼマリンを出る船には逐一厳しい監査を入れて、誰も密出国できないようにしますのよ。そしてエルゼマリンの入り口は、ギルドに守らせますわ。
これでエルゼマリンのギルドがこちらの味方だと言っているようなものですけれど、一応、ギルドの名目は『革命軍の取り締まり』ですの。おほほほ。
……他にもポアリスやその他の港についても、監視するか潰すかしましたわ。これで王族は誰も、海の外には出られませんわね。
それから、陸路を奪いましたわ。王城の周囲を革命軍で取り囲むのは勿論、他国へ逃げるために使うであろう道を悉く潰してやりましたの。具体的には、落石ですとか、地割れですとか……。ええ、火薬を大量にしかけてボン、とやれば、案外簡単にできますのよ。おほほほほ。
……まあ、これだけやっても、山道を無理矢理進んだりすることはできますわね。どう頑張っても、道なき道を進まれたら対応できませんわ。
ですから、山には山賊を配備しましたわ。
全ての山に配備する必要はありませんの。ただ『山賊が出ている』という情報を流しつつ、適度に貴族でも襲って実害を出せばそれでいいのですわ。山賊を配備していない山にも山賊が出たという噂を流せば、配備したのとほとんど同じですわ!
そうすれば王家が亡命しようとして選ぶのは、山賊が出ていない山に限られますもの。後はそこに山賊を金で雇って、静かに山を見張らせておけば良いのですわ!
……そして最後に、王家がドラゴンを他にも飼っている可能性を考えましたわ。
ええ。私、空路も潰しに行きますわ。容赦はしなくってよ。
やり方は簡単。うちで飼っているドラゴンちゃん達をお城の傍に放し飼いにするだけですわね。飛び交うドラゴンちゃん達を見つけた王家の連中が怖がるおまけつきですわ。
ドラゴン達はとても賢いですから、王城から飛び出してくる別のドラゴンが居れば寄って集ってしっかり潰してくれますわ!何なら、城からこっそり出てくる高貴な格好をした一団とか、そういったものもきっとブレスで牽制してくれるでしょうね!
ついでに、時々ドラゴンちゃん達を入れ替えて休ませたり、こちらの面子の誰かを上に乗せて飛ばしたりしておけば、十分に牽制できますわね。
……ということで、王家はいよいよ逃げられなくなりましたの。勿論、王家がそのことを知っているかどうかは分かりませんわ。
ドラゴンが見えていないということはないでしょうけれど、陸路や海路まで潰れているとは思っていないのではないかしら。
……そして数日後、やっぱり、王城を抜け出して山で山賊に捕まった第5王子と第4王子、海へ出ようとした貴族の一族とそれについていったらしい第6王女を捕らえることができましたわ!
捕らえた王子王女は王城の前の広場に専用の檻を設けて、そこに入れておくことにしましたの。
……ええ。全面硝子張りの豪華な檻ですわ!聖女投票の時の檻ですわね!ただし今回のは特別製ですわ!何と言っても、中で数日間は暮らせるように、食料の用意は勿論、お風呂もお手洗いも完備してありますの!まあ、それらも全面硝子張りですけれど!おほほほほ!
雑に逃げ出そうとした愚かな王族は民衆の見世物になりながら、適当にちょっかい出されて辛い思いをすればよくってよ!
……というようなことをしていたら、王家は当然、疲弊してきましたわ。
王城を取り囲む民の数は、いよいよ増えていき、王家へ向けられる怒号もまた、強いものへと変わっていきましたわ。
そして逃げ場も失い、籠城の限界も見えて、すっかり敗戦濃厚となった王家側は……いよいよ味方を失い始めることになるのですわ。
始めは簡単なことでしたわ。私が呼びかけるのですわ。
「今、王城に居る者達はよくお聞きなさい!」
私が声を張り上げれば、城を取り囲む革命軍達は黙って、私の言葉が王城へ届くように気を使ってくれましたわ。よく訓練されていますわねえ……。
「私は今から24時間待ちますわ!それまでの間に悪しきオーケスタ王家を捨て、新たに生まれる国のために忠誠を誓う者には慈悲を与えましょう!」
私の言葉は王城へと響いて……ざわめきを生みましたわ。
「投降しなさい。いいですの?24時間しか待ちませんわ!……それまでに出てこなかった者は、どうなっても文句を言わないことね!」
さあ、精々ざわめいて、困って……そして、決断なさい!こちらへ下る、とね!
私の言葉を聞いてまず、城から使用人達が逃げ出し始めましたわ。
私達革命軍は城の周囲を囲っていますから、投降してきた使用人達はすぐに分かりますわ。
そこで、逃げてきた使用人達が武器も敵意も持っていないことが確認できれば、彼らを受け入れて革命軍の一員としましたの。
まあ、王族ではないどころか貴族の嫡子ですらない彼らを拒む理由はありませんわね。ちゃんと自らの意思でこちらへ下ると決めたのなら、それは歓迎しますわよ。
続いて、文官や魔法使いが逃げ出してきましたわ。
ええ。私、彼らを喜んで保護しましたわ。文官も魔法使いも、学者の類は全員貴重ですのよ。これからの国を発展させていくならば、彼らの存在は必要不可欠。彼らなくして国は作れませんもの。
彼らには好待遇を約束して、しっかりと心をこちらへ向けてもらいましたわ。……彼らには期待と研究費と寛大な心とたっぷりの時間、そして私自身の興味と好奇心を与えてやれば、素敵なものを沢山生み出してくれますわ。ええ。これからの国の未来に期待が持てますわね!
次に、兵士達も逃げ出してきましたわ。
勝ち目のない戦いに身を投じて命を落とす馬鹿よりは、勝ちそうな方へ乗り換えてこようとする奴の方が幾分、救いがありますわね。
ええ。彼らにも革命軍の戦力になってもらうことにしましたわ。裏切る可能性も無い訳ではない、とは思いますけれど……それ以上に、『兵士さえも寝返った』と王家に思わせてやる方が面白くってよ!
……そして、王城に滞在していた王族以外の貴族なんかも、逃げ出してきましたわ。
例えば、クラリノ家の一部は王族と婚姻関係にあるせいで、家の何人かが王城に居ついていたりしましたし、地方の貴族で領地についての報告や嘆願を持ってきていた者が城に居たりもしましたし、小規模な社交界を開いていた王子王女の取り巻き貴族なんかも城に居ましたのよ。
他にも『書類の手続きを王城へしに来たら革命軍に城を囲まれて出られなくなった』なんていう馬鹿もいましたわね。流石にこの時期に城へ来るってバカなんじゃあなくって……?
……彼らについては、手放しで受け入れる、という訳にはいきませんわね。ええ。特権階級は平民の敵でしてよ。
ということで、彼らについては一旦保留ですわ。殺しはしませんけれど、無罪放免、という訳にはいかない者も多いでしょうね。ええ。
ですから分かりやすく、適当に作った檻の中にでもぶち込んでおきますわ。彼らが貴族という身分を捨てて共に新たな国を作るというのであれば、その時は歓迎しますけれどね。
……そして。
23時間が経ちましたわ。
「残るは王族だけか」
「まあ、一部の兵士や一部の貴族も出てきていないようですけれど、そこらへんは仕方ありませんわね」
私達は城を囲みながら、その中の様子を窺いますわ。
……24時間が経ったら、王族は全員、城の中へ突入した私達の手によって捕らえられ、この広場で処刑される運びになりますわ。ですから、王族達にとっては最後の1時間、なのですけれどね。
奴ら、出てきませんわねえ……。
王家の者達にも、城下を制圧しに来た悪党共はしっかり見えた、ということは確かですのよ。
広場に集まった私達と、私達の後に続く奴隷達や他の協力者達。そして、王家を裏切ってこちらについた、城の使用人や兵士達。我ら『革命軍』が王城前の広場から王家を糾弾して声を上げていますわ。これが国王達に届いていないということはないでしょうね。
……これ、王家からはどう見えているでしょうね?自分達を裏切った国民達や臣下達に嘆いているかしら??それとも、いよいよ自分達の死を目前にして、それどころではないかしら?
或いは……起死回生の一撃でも、狙っているのかしら?
「あっ、来ましたわね!」
さて。王家は王城前を制圧されていよいよ、兵を出してきましたのよ!
ええ。この期に及んで王家側につこうとする、涙ぐましいまでに献身的で忠誠心に溢れる兵士達、ですわね!
数は大したことはありませんけれど、その心意気には感心させられますわねえ……。
王家の最後の抵抗かしら。残っていた兵士達は城壁から矢を射かけてきたり、或いは剣を抜いて襲い掛かってきたり。
成程。まるで勝ち目がないのに向かってくるとは、大したものですわね。
……でも、これを見て黙って頂きましょうか!
「用意!」
突如、お兄様の声が広場に響きましたわ。そして、いつの間に用意されたのか、革命軍の旗を翻して、お兄様は指示を出しましたの。
「撃て!」
広場の空気をつんざく轟音が鳴り響きましたわ。
そして次の瞬間、王城の城壁は見事に崩れていましたの。
「ふははははは!どうだ!これぞフォルテシアが開発した、最新兵器の威力だ!」
ええ!お兄様が用意してくださった大砲が火を吹いて、見事、王城を守る壁が崩れましたのよ!おほほほほほ!