「砲撃だと!?どうした!?」
「ええ砲撃ですのよ!玄関ホールから真っ直ぐ斜め上、玉座の間を狙ってぶちかましてくださいな!」
「なんだと!?まあいい、そういうことなら早速砲撃だ!」
とっても説明が難しいですわ、と思っていたのですけれど、流石はお兄様でしたわ。もう玄関ホールに大砲が一台入っていましたし、お兄様ったら躊躇わずに弾を込め始めましたわ!
それを確認したら、私、さっさと玉座の間へ戻りますわよ!
「ヴァイオリア!どうした!」
「ここにドデカい一発がきますから、皆、適当に避けて頂戴ね!」
私はドランとチェスタにそう言うと、キーブの手を引いてさっさと玉座の間の窓へと走りますわ!
玉座の間の後ろは中庭ですから、安心して飛び出しますわよーッ!
「それではごめんあそばせ!」
「えっ、ちょ、いやおかしいだろっ!?なんで僕が連れていかれる側なんだよ!」
私は窓を蹴破って、さっさと玉座の間から出ましたわ!
「リタル!私とキーブをお助けなさいッ!」
「え!?え、え、えええ!?わ、分かりました!」
はい。そこでリタルが中庭に居たおかげで、私とキーブは綺麗に着地できましたわ。流石に2人同時に風の魔法で浮かせるのは難しいらしくて多少の粗はありましたけれど、十分、及第点ですわね。ええ。
……そんな私とキーブの後に続いて、こちらも筋肉お化けのドランと薬中考えなしのチェスタも飛び降りてきましたわ。
ドランは身体強化魔法の権化みたいなもんですから何も心配は要らないでしょうけれど……。あ。
「クリス!あなたはチェスタを助けなさいッ!」
「貴様!この私を何だと思っているのだ!」
「奴隷ですわ!」
ええ。優秀な奴隷が居てよかったですわ。
クリスが全力疾走してきたら、飛び出したチェスタを受け止めるのに間に合ったようですわね。ああよかったですわぁ。
……そして、私達が脱出した直後。
耳をつんざくような音が響いて、玉座の間は吹っ飛んでましたのよ。
砲弾一発でも案外ガッツリいくもんですのねえ……。
窓の硝子は全て割れ砕けて、細かい刃のようになって降ってきましたわ。まあ、私とキーブはリタルが風の魔法で守ってくれましたし、ドランはこの程度で傷つきませんし、チェスタはクリスが身を挺して守っていますから問題ありませんわ。
……そして、硝子の雨と同じように、玉座の間の天井が玉座の間に降り注いでいましたのよ。ええ。
お兄様ったら、やっぱりいい腕をお持ちですわね。丁度、部屋の支えとなるような位置の柱か壁かを撃ち抜いたようですわ。
ですから……怪物や王子王女を守る魔法の壁には、『意識を持たない』瓦礫がバシバシと降り注いでいる、というわけですのよ。
そうして、瓦礫がある程度落ち着いた頃。
「ヴァイオリア!やはりこちら側へ出てきていたか!全く、突然砲撃しろなどと言うものだから驚かされたぞ!」
「ああ、お兄様!素敵な砲撃でしたわ!」
お兄様が横から回って中庭へいらっしゃっていましたわ。これで全戦力が集結、というわけですわね。
……さて。
「では、後片付けと参りましょうか」
私達が見つめる先、崩れかけた玉座の間から、のそのそと怪物が這い出してきましたのよ!
「貴様ら……一体、何をした……!」
「あーらごめんあそばせ。ただちょいと、文明の利器というものを使わせていただいただけですわぁ」
私は怪物の言葉に答えてやりつつ、適当に落ちていた石ころを投げてやりましたわ。
……すると、その石は見事、怪物の肌に傷をつけましたのよ。
「ば、馬鹿な!この魔法は完璧な守りを生むはずだ!どうして守りが消えている!?」
「そりゃあ、あなたのご先祖様が戦争吹っ掛けまくってた大昔には『大砲』なんて無かったでしょうしね。『人の意思なくして攻撃はできなかった』時代の魔法なのですもの。当然、こんな形の攻撃なんて、想定されてるはずがなくってよ」
怪物は理解しているのかいないのか、ただ悔しそうに唸りましたわね。でも、そんな唸りを上げていられるのも今の内、ですわ!
「さあ!殺し合いですわ!……楽しみましょうね!」
私達は武器を手に、怪物へと一気に向かって行きますわよ!
とりあえず、斬ったら斬れるって、当たり前ですけれど気分がいいですわねえ。私、怪物の強靭な皮膚を斬り裂いてやりましたわ。勿論、一撃でとどめにならない程度に。……というか、それしか斬れませんでしたのよ。ええ。皮膚が頑丈すぎて。私の剣でも血が出るぐらいにしかならなかったのですから、まだまだ魔法の強化は続いている、ということかしらね。
でも、あの憎い盾畜生は消えましたわ!思う存分ヤれるっていうのは気分がよくってよ!
ドランも思う存分殴りに行ってますし、チェスタはすっかりお気に入りらしい銃をぶっ放してゲタゲタ笑ってますわね。そしてお兄様は、いつの間にやら手にしていた鉄パイプを手に、高笑いしながら怪物をメッタメタにしておいででしてよ。
それにしても、あの鉄パイプ、一体どこから……あっ!あれ、革命軍の旗ですわ!旗を括りつけてた棒ですわッ!お兄様ったらこれを見越して旗なんて仕込んでらっしゃったのね!悪いお人!
「愚民共が、調子に乗りおって……!」
「あーら。愚王に言われる筋合いはございませんわねえ」
ただ腕を振り回すだけでも相変わらずの威力ですけれど、その腕はひらりと躱してやりましたし、次に飛んできた蹴りはリタルが風の魔法でフワッと押し返しましたわ!ついでに私を蹴ろうとした不敬な足にはキーブの雷というお仕置きが落ちますのよ!おほほほほ!
「貴様らさえ居なければ!このようなことにはならなかったのだ!貴様らさえ居なければ!」
「こっちだってあなたさえ居なければもうちょっとばっかし楽に生きていられましたわよ」
国王としては私達が居なければ治世が終わることも無かったということなのでしょうけれど、私から見たら、絶対にそう遠くなく終わる国でしたわよ、ここは。
そもそも王子と婚約を結んだ娘の家を取り潰して財産を没収しよう、なんて考えに至るくらいの貧困っぷりに陥っていた時点でもう救いようがなくってよ。
全く、本当に碌でもない王でしたわね。こいつのせいで私は不名誉を着せられて、屋敷を燃やされて、それから……。
「ああ、でも……私、あなたには感謝していますわ」
……思い返してみると、まあ、悪くは、ありませんでしたわね。この一年半。
悪党に身を落とした、なんて思ってませんわ。私、元々こういう性分だったのでしょう。
一生化けの皮を脱がずに生きていたなら、それはそれできっと息苦しかった。
だから、これでよかったのですわ。
「おかげで楽しめましたから」
だって、楽しかったんですもの。
私の言葉を聞いた怪物は、その醜い顔をさらに醜く歪めましたわ。精々、私を楽しませたことを悔しがりなさい!おほほほほほ!
「あ。魔力切れっぽいね」
そして、キーブの言う通り……怪物は徐々に、魔力切れを明らかにしていきましたわ。
「な、なんだ、これは一体……貴様ら、何を……」
怪物は膨れ上がったその体を、徐々に縮ませていっていますわ。
伸びに伸びた体躯は徐々に萎んで、人間としておかしくない程度の大きさに。
銃弾を受け止めていた強靭な皮膚もすっかり萎びたようになって、やがて乾いて、瘡蓋のように剥がれ落ちていきましたわ。
鋭い爪は抜け落ちて、牙も抜け……あっ、牙は抜ける前にドランとお兄様がぶち折っておいででしたわね。おほほほほ。
さて。
そうして後に残ったのは、元の国王ただ1人だったんですのよ。
「あなたを守るものはもう無くなりましたわ」
呆然として座り込む国王に、私、一歩、近づきましたの。
「魔法はもう終わりよ。そして、魔法が終わっている、ということは……まあ当然、玉座の間に居た王子王女達も全員、もう死んでいるでしょうね」
「ば、馬鹿な!そんなはずは」
「クリス!玉座の間に王子王女は生きていたかしら!?」
そこで私はクリスへ声を掛けますわ。
クリスは国王への攻撃には参加せず、最初の命令であった『隠れている王家の者を探し出すように』の方に従って、玉座の間の瓦礫の中を探していたようですわ。
そしてクリスは……がっくりと肩を落としていましたわね!
「……生存者は、居ない……。全員、外傷を負って亡くなったわけではなく……生命力を、吸い取られて……くそっ」
あらあら。クリスの悔しそうな表情がまた一層、この状況に彩りを添えていますわねえ。私にとっては歓喜、国王にとっては絶望の色ですわ!
「ば、馬鹿な……こんなはずでは……ど、どうして死んでしまったのだ、どうして……」
それはあなたの魔法の腕がよっぽど酷かったか、はたまた急ぎ過ぎたからかのどっちかですわ。いえ、でもまあ多分、どっちもですわ。
ああ、それにしても哀れな王子様、王女様。国王に魔力も生命力も吸い取られて、発狂した挙句の衰弱死!これでは浮かばれませんわねえ!
「そういうことですのよ!さあ、国王陛下!あなたを守る魔法は消え、あなたを守る王子王女も死にましたわ!これがあなたの最期ですわ!」
さて。
ここで私は国王へ剣を突きつけますわ。
本当ならもっと早くに突きつけられていたはずの剣を、やっと、突きつけることができましたわ!
「ま……待て!謝罪しよう!我らが間違っていた!」
けれど国王は突然、そんなことを言い出しましたわ。
「フォルテシア家には本当に申し訳ないことをした!お前にも……そうだ、義理の娘になるはずだったお前にも、本当に、申し訳ないことを……」
「あら。謝ってくださるの?それはどうも」
地べたに這いつくばるようにして頭を下げる国王を見ていると、なんともいい気分になりますわねえ。後頭部を踏み躙ってやりたくなりますわぁ。
……でも、私が言うべき言葉はそう多くありませんし、私が為すべきことも、そう多くないのですわ。
ここまで随分と戦いが長引いてしまいましたもの。その分、終わりはあっさりと、しめやかに。それが美ってものでしてよ。
「……でしたら、お義父様。私、頂きたいものがありますの。謝罪の代わりに、それを頂けないかしら?」
「な、なんだ。何でも言ってみろ」
何でも、ですのね。気前のよろしいこと。……なら、おねだりさせていただきましょう!
「あなたの首と、この国ですわッ!」
そうして国王の顔が絶望に歪んだその一瞬後、私の剣は国王の首をしっかり刎ね飛ばしておりましたわ。
これでこの国の王は、死にましたのよ!
そして今日から、私が新たな王!ですわァーッ!おーほほほほほほほ!