ごきげんよう!ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアよ!
私は今、半狂乱のダクター様をゆったり追い掛け回して楽しんでいるところですのよ!
「来るな、来るなぁー!」
「あら。酷いですわね、ダクター様。私のことを愛していると仰ったのは嘘だったのかしら?」
部屋の中を追いかけ回してやりつつ、ダクター様が怯える様子を存分に楽しませてもらいますわ。
彼、ちょこっとは既に毒に中ってますのよ。出したワインには鉛が入っていますし、牡蠣はちょいと特殊な方法で育てた特別製。クリームソースの白い輝きにも鉛が入っていましたの。スープにはバジリスクの血がちょいと入っていましたし、ごくごく少量、ハーブやスパイスに混ぜて毒草の類を入れさせてもらいましたわ。
メインのドラゴン肉は私の血で殺した奴ですわね。まあ、食べても多少、動悸が増すくらいだと思いますけれど……後は、最後のデザートで、ダクター様は一気に疑心暗鬼になってしまわれましたものねえ。
ええ。実際に食べた毒はごく少量。多少の体調不良はあれども、すぐさま死につながるようなことはありませんでしたわね。
でも、その体調不良に不安や疑念が纏わりついたら……たった1滴の毒が、死神の鎌にだって、なりますのよ。
「く、来るな」
「黙らっしゃい」
ダクター様ったら、カトラリーのナイフを一生懸命に両手で握りしめて構えていましたの。なんとも哀れを誘う姿でしたわね。ですから私、お誕生日プレゼントに頂いた銃で、ダクター様の手の中のナイフを撃って、弾き飛ばしてやりましたわ。
心のよすがになっていたらしいナイフを失って、ついでに銃声も一発聞かされて、ダクター様はいよいよ震えあがりましたわ。
「ねえ、私のことを愛しているなんて仰ったんですもの。当然、抱きしめて下さりますわね?まさか地位や金が目当てで求婚してくださったわけではないでしょう?」
「あ、あ……」
「ほら、ダクター様。女王の夫となるお方がこれでは示しがつきませんわ。それとも、この程度の覚悟も無く、女王の夫になろうとしていたのかしら?」
部屋の隅に追い詰められて縮こまるダクター様を見下ろして、私、とっても楽しませてもらっていますわ!
言葉を投げかければ投げかける程、ダクター様は恐怖と後悔に支配されていきますのよ。
あの時あんなことを言わなければ、とか思ってるんでしょうし、希望を掴んだような気がしていたけれどそれは地獄への片道切符だった、とか気づいているんでしょうし。まあ、そうですわね。私が望む限りのことは思ってもらいますし、気づいてもらいたいところですけれどね。
「……ねえ?ダクター様。あなた、一度婚約を破棄したのですもの。その埋め合わせは必要だと思いませんこと?」
「え、あ、ご、ごめんなさい、ごめんなさい、ぼ、僕は」
「あなた、あそこで婚約破棄せずに私についてきていたら、今頃は何の障害も無く、女王の夫でしたのにねえ。でももう遅くってよ」
もしかしたらあったかもしれない未来、ですわね。
あそこで、ダクター様が国王を説き伏せて、私への愛を貫いたのなら、その時は……まあ、順当に彼が私の夫になっていたのでしょうね。今となっては考えられないことですけれど。
「私、愛も無いのに結婚なんてしたくありませんわ。ですから、さあ、証明してくださいな。あなたが私を愛しているというのなら、その証明を」
さあ。あったかもしれない未来に明るい幻想を見ながら、幻想と現実の落差に絶望するといいですわ。
「自分の命程度、惜しくないと。証明して頂戴な」
「っ!」
ダクター様は残された力を振り絞って、私の前から逃げて部屋の出口へ向かいましたわ。
……でも、開きませんわよ。ドアは。ダクター様がいよいよ狂ったようにドアをガチャガチャやってらっしゃいますけれど、残念ながらそのドア、開きませんの。
「あらあら、駄目よ」
ダクター様がとりついた扉には、外から鍵が掛けてありますの。ですからもう、彼はここから出られなくってよ。
「あなたが選ぶのは2つに1つ。この部屋で残り少ない一生を過ごすか、私を抱きしめて愛を証明してくださるか。ね?簡単なことですわね?」
「い、嫌だ。出してくれ。出して」
「愛を証明してくださればすぐにでも出して差し上げますわ。或いは、あなたが死んだあとで出して差し上げてもよくってよ」
ダクター様は私が近づくとどんどん後ずさっていきますわ。……まあ、つまり、私を抱きしめて嘘を貫き通す度胸すら無い、ということですのね。
うふふ。私、彼がここで私を抱きしめて愛を囁くくらいのことをしてくれるなら、本当に彼をここから出してもいいと思いましたのよ。それだけの度胸があるのなら、まあ、何かの役には立つかもしれませんし、クリスと同じように奴隷にして使ってやってもいいかと思いましたのよね。
……でも。駄目でしたわね。
ダクター様はもうすっかり怯えて、只々恐怖と後悔、そして深い絶望に震えるばかり。本当にただの小物でしたわねえ。
「……さあ、ダクター様。私を愛する覚悟はできましたかしら?或いは、嘘を貫き通して、地位と名誉を得る覚悟は……できましたの?」
私、ダクター様への距離を縮めて、そして……彼に腕を伸ばしましたわ。
……なんというか。
人間の不思議を目の当たりにしましたわ。
「し、死んでますわぁ……」
ええ。ダクター様、死にましたのよ。ここで死にましたわ。びっくりですわ。
私が抱きしめて、ドレスやアクセサリーの毒をじわじわ与えてやりつつ、ついでに猛毒でもぶっ刺してやろうか、はたまた猛毒を塗った唇で口付けでもしてやろうか、それとも銃でドタマ一発ぶち抜いて、見るも無残な姿にしてやろうかしら……なんて、思っていたのですけれど。
……ええ。ダクター様ったら、追い詰めて私が手を伸ばしたその瞬間……絶叫を上げて死にましたわ!
「人間って、恐怖だけでも死ねちゃうもんなのですわねえ……」
どうやらダクター様ったら、恐怖と絶望によって死んでしまったらしいんですのよ。ええ。『死ぬ』と思ったら『死んだ』といったところかしら……。
下手な毒よりよっぽど苦しい死に方だったと思いますわ。死に顔が全く以て安らかの対極にありましてよ。まあ……彼の脳みその中で考えられる限りの猛毒とその効果、痛み、苦しみ、その他諸々を想像して、その想像で死んでしまったのですから……『考え得る限り最悪の死に方』とも言えるでしょうね。ええ。
さて。
「ホント美味しいですわぁ、このムース」
そんな最期を迎えたダクター様を眺めながら、私は食べ残したムースケーキとワインを頂きますわ!まずは1人でささやかに勝利をお祝いしますわよ!
……色々なことがありましたわねえ。
屋敷が燃えていた時から、もう2年近くなりますのね。
そしてその間に私、色んなことをやって……遂に、殺したい奴は全員殺したのですわ。あ、クリスは殺してませんわね。でもいいですわ、あれはあれで。
過去を振り返ると、少ししんみりしてしまいますわね。
長かった復讐物語も、これでおしまい。なんだか感慨深いですけれど、胸にぽっかりと穴が開いたようで……まあよくってよ。今はこの虚無感を肴に、ワインを嗜ませてもらうことにしますから。
全身毒塗れの女王の半生を振り返るなら、このくらいのささやかさで丁度いいですわね。
……と、思ったんですのよ。ええ。思いましたわ。
でも実現しませんでしたわ!
1人静かな反省会は、実現しませんでしたのよ!
「よお。飲んでる?」
「あら、チェスタ。あなた、ここに入ってはいけませんわよ?魔法毒どころじゃない毒の塊ですのよ、この部屋」
「ん?長居しなけりゃ大した害じゃねえんだろ?ならいいじゃん」
……ささやかに1人でお祝いしようとしていたら、ずかずかと。チェスタが入り込んできましたわ。飲みかけの酒瓶片手に。
「寿命、縮みますわよ?」
「いいよ。寿命の1年2年っくらい、お前のお祝いにくれてやるって」
あらあら。本当に命知らずですこと。
「終わったか」
「ドラン。あなたも来ましたの?チェスタを止めてくれなきゃ困りますわ」
「悪いな。俺も今日は飲みたい気分だ」
チェスタの後からドランも来ましたわ。
「ま、いいよね。折角だし。ほら、ヴァイオリアの全快祝いってことでさ」
「私の全快祝いであなた達が死にかけるっていうのはナシですわよ……って、あらあら、駄目よ、キーブ」
キーブはにんまり笑ってやってくると、私にぎゅっと抱き着きましたわ。可愛いですわ!でもごめんあそばせ、私が今着てるドレス、毒ですのよ!
「ドレス舐めたりするわけじゃないんだからいいだろ、別に」
「そりゃそうなんですけれどぉ……」
……まあ、普通に考えりゃ、そうですのよね。ドレスに毒が染み込んでいたって、その毒が肌から浸透するようなもんでもない限り、ちょいと触るぐらいならなんてことないのですわ。肌から浸透する毒にしたって、長時間触れていない限りはそうそう問題は起きませんしね。
「おめでとうございます、ヴァイオリア様!これで晴れて、復讐を遂げられたということですね!」
「明るく言われるもんでもない気がしますわぁ……」
更に、リタルも遠慮がちに私にくっついてきましたわ。……理性で分かっていても、毒塗れのドレスにくっつくなんて中々に嫌なもんだと思いますけれど。彼ら、度胸がありますのねえ。
「おーい、お嬢さん。盛り上がってるとこ悪いけど、会場変えない?上の部屋にちょいとばかりご用意させて頂いてますぜ」
「あら」
「俺達はここでも構わないけど、お嬢さんが気にするでしょ?で、折角だからこの2年弱、ご一緒させていただいたモンとして、お祝いの御相伴に与らせて貰えませんか、ってことで。ねえ、女王陛下?」
部屋に入ってすぐのところでジョヴァンがウィンク飛ばして見せてきたのは……銀の盆に乗った、可愛らしい小さなケーキの数々。あら、素敵。
「そういうことだ。ダクターの片づけはクリスにでも任せればいいだろう」
「何故私が……!」
「あら、嫌なの?でしたら死体はしばらくこのままにしておくとして、クリスも参加しましょう」
「断る!何が悲しくて、自らが仕えた王家の滅びを祝わねばならないのだ!」
「あらそう。なら命令よ。私の快気祝いにつきあいなさい」
クリスの嫌がる顔は私のご褒美ですわよ。ええ。いい加減理解してもよさそうなもんですけれど。
ま、よくってよ。クリスには私の快気祝いと復讐完遂祝いのために沢山嫌がる顔をしてもらいましょう。おほほほ。
「そういうことなら早速参りましょうか、お嬢さん。美味しいお菓子といいワイン、そして何より、素敵なゲストがお待ちかねよ」
……あら?素敵なゲスト?
というと、もしかして……?
私が皆に連れられていった先には……ジョヴァンが言った通り、美味しそうなお菓子と軽食、そしてワインがたっぷりと並び……そして!
「お誕生日おめでとう、ヴァイオリア!」
「今年はあなたのお誕生日をこうして祝えてよかったわ」
「ヴァイオリア!さあ、こちらへ!お前は本日の主役なのだからな!」
部屋ではお父様とお母様、お兄様がお待ちでしたのよ!ああ、なんて素敵なのかしら!
……それから私、思い出しましたけれど、そういや今日って私の誕生日でしたわ。すっかり忘れていましたわ!
それからは少人数ながら、世界一楽しいパーティーが始まりましたわ。
お父様やお母様の方のお仕事も一段落されたようで、今夜はゆっくりお話しできるということでしたの。私、今までにあったこと、たくさんお話ししましたわ。ええ。ずっとずっと、お父様とお母様にお話ししたかったこと、山のようにあったのですもの。話は尽きませんわね!
……それからキャロルがお祝いのワインを持って駆けつけてくれたり、今回ゴーレムを貸してくださったリューゲル様にもお祝いのお言葉を頂いたり、サキ様からお誕生日プレゼントに、と反王家派の残党だった奴隷達を頂いたりと、中々愉快なパーティーとなりましたわ!
そして、宴もたけなわ、という時。
「そういえばお父様とお母様は今までどちらにいらしたの?」
私、ずっと気になっていたことをお伺いしましたの。
だって、私がオーケスタ王国で頑張っている間、お父様もお母様もずっとこちらにはいらっしゃらなかった訳ですし……やっぱり気になりますわ。
「そうだったな。お前には何も言っていなかったか」
「ごめんなさいね、ヴァイオリア。どこかであなたには伝えておくべきだったのだけれど……」
お父様とお母様はそう仰ると……それぞれに、書状を出してらっしゃいましたわ。
「父はウィンドリィ、母さんはアサンブラをそれぞれ落としていたのだよ」
「……ということは、私がオーケスタを落としている間、お父様もお母様も、ウィンドリィやアサンブラを、落としてらっしゃったの……?」
「ああ、そうだとも。まずは周辺国を落として、それからじわじわとオーケスタ王国を落とす算段だったのだが……」
「思いのほか、あなたの活躍が目覚ましかったものですから。ですから、オーケスタはあなたに任せてしまってもいいでしょう、ということになったのよ」
そ、そうでしたのね?ということは、私がウィンドリィに行ったり、アサンブラに戦争の火種を吹っ掛けたりしていた時、そこではお父様やお母様が暗躍なさっておいでで……。
つまり私、大迷惑をかけていましたのね!?
「……はじめはね。お前1人でオーケスタ王国を落としきることはできないだろうと考えていたんだよ」
私が自分の失態に打ちひしがれているところに、お父様がそう、優しく仰いましたわ。
「だから、お前が動いているという情報を得ながら、周辺国を落としに行くことにした。オーケスタ王国内で国家転覆が上手くいかなくても修正できるように。いつでもお前を助けにいけるようにね」
「でも、あなたは立派でしたね、ヴァイオリア。私達の助けなんてなくても、あなた1人で、こんなに立派にやり遂げて……」
お母様に抱きしめられて、私、思わず嬉し涙がこぼれてしまいそうですわ。
私が成長したこと。それを認められること。とっても、幸せなことでしてよ。
「……1人じゃ、ありませんでしたのよ」
でも私、訂正させていただきますわ。
私が成長したことは本当のことでしょう。やり遂げたことだって、本当のことですわ。
でも……1人で、では、ありませんでしたわね。
「私、いろんな人に助けられましたわ。とりわけ、ここに居る皆には、本当に助けられましたの」
今思えば、私がムショから脱獄する時からして既にドランの助けを借りていたのですわね。エルゼマリンの貴族街を落とす時にはチェスタやジョヴァンの助けを借りて、それからはキーブも加わって。フルーティエを倒した後にはお兄様も助けて下さって……リタルまで来たのは想定外でしたけれど。
……ずっとずっと、私、1人ぼっちになることなくやってこれましたのね。
私が明るく楽しくぶっ飛びつつも犯罪に手を染めてこられたのは、きっと……1人じゃなかったからですわ。
もし私が1人だったなら、楽しむ余裕なんて無かったでしょう。そして、オーケスタを滅ぼして、人々を殺しに殺して……私もきっと、死んでいましたわ。そういう破滅への道を突き進んでいたのですわ。
私が楽しくやってこられたこと。私が今もこうして生きていること。私がこれからも楽しくやっていこうと思えること。
……それら全てに。それら全てをもたらしてくれた皆に。感謝しますわ。
「私への賛歌は、皆に。ここに居る悪党共全員へ、贈ってくださいまし」
「……改めて、誕生日おめでとう、ヴァイオリア。お前がこれからも周囲の人に恵まれ、楽しく生きていけることを願って、これを贈ろう」
お父様とお母様はそう言って笑って……私に、書状を渡して下さいましたわ。
「父からの誕生日プレゼントはウィンドリィ王国だ」
「母からはアサンブラ王国ですよ」
……本当に国がきましたわ。
お誕生日プレゼントに、国が、きましたわ。
つまり、これで私が治める国は3つですわ。
……3つも要りませんわッ!
……その後。
ダクター様の死体は適当に処分しましたわ。そして、『ダクター・フィーラ・オーケスタを処刑した』という旨と、ダクター様が行ってきた所業……私に求婚してきたですとか、そういう身の程知らずなところを含めて、そこら辺全部発表してやりましたのよ。
要は、旧王家の生き残りがどうしようもない馬鹿で、そいつは自らの馬鹿の埋め合わせとして死にましたのよ、と。あっさりさっくり色々差っ引いて発表してやりましたから、まあ、国民は安心しますし、それ以上の興味は特に持ちませんでしたわね。
逆に、反乱分子……旧王家派のアホ共は、これが見事に効いたようですわ。
王家最後の生き残りとして期待されていたダクター様が死んだということも、私がダクター様の死についてあっさりした発表しかしなかった……つまり、彼を大物扱いなどせず、いつものようにゴミを1つ処理しただけ、という風に振舞ったことも、旧王家派に衝撃を与えたようですわね。
おかげでまあ、手の平を返す旧王家派も多くて、毎日楽しませてもらっていますわよ。おほほほほ。
……ということで、私の治世も恙なく、安定して進んでいきましたの。
貴族の廃止に反対していたものは『何故か』消えましたし、旧王家の生き残りも死んで、最早私の邪魔をする者は誰も居なくなりましたわ。
悪い奴は沢山いますけれど、国で一番悪い事するのは私ですから、そこんとこは統制がとれていましてよ。
それから、他国もあんまり茶々を入れてこなくなりましたわ。なんでって、旧ウィンドリィがお父様とお母様に、旧アサンブラがお兄様にそれぞれ治められることになったからですわ。ここら一帯の国は私達の影響下にありますから、そうそう喧嘩を吹っ掛けてきやしませんのよ。
……ええ。大フォルテシア連合国が誕生しましたのよ。ここ3国は間違いなく、世界最大規模ですわね。ええ。
おかげで、隣国間の関係も極めて良好。物資もお金も融通を利かせて、互いに発展していく素敵な関係になっていますのよ。
勿論、そんなフォルテシア連合を排除しようとする国や、すり寄ってくる国なんかもありますし、中々手を煩わされていますけれど……これくらいで丁度いいのでしょうね。おかげで毎日、楽しくて仕方ありませんわ!
私、悪党でよかったですわ。
悪党だったおかげで毎日ご飯は美味しいですし、ドラゴン食べ放題ですし、薬の売り上げは上々ですし、無礼な他国には『滅ぼしますわよ』と躊躇いなく脅しをかけることができますし。
それに、今まで復讐を胸に抱いていたおかげで折れることもありませんでしたし。
そして何より、良き仲間を得ることができましたわ。
……だから私、悪党でよかった。
人の心を踏み躙り、食いものにし、作り上げられてきたものを笑いながら燃やし、あっさりと命を奪っていく。そしていつかきっと滅ぼされる。同時に、滅ぼされるその瞬間まで、最高に愉快な毎日を送ることができる。そんな悪党でいられて、本当に良かったですわ。
本当に、そう思いますの。
「今日も平和ですわねえ」
私は今日も玉座の間で、舐めた条件出してきた遠方の国の使者をしばき上げて、そいつらの上に腰かけながら窓の外を見やりますわ。
今日も、王城の前の広場では子供達が無邪気に歌を歌っていますわ。……それはこの国の国歌。この国を治める女王、つまり私を讃える賛歌。
悪党を讃える歌は明るく響いて、今日もこの国を包んでいますの。
きっとそれは今日だけじゃなくて、明日も、明後日も……いつか私達が滅ぼされるその日まで、ずっと続くことでしょう。
きっと迎える滅びの日まで!私はずっと、悪党で居続けますわよ!
いつか地獄でお会いしましょうね!それでは皆様、ごきげんよう!
完結しました。
明日以降、しばらくは数日おきにおまけが更新されます。