没落令嬢の悪党賛歌   作:もちもち物質@布団

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おまけ
後奏1「ゲソがいい働きしましたわね」


 ごきげんよう!ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアよ!

 革命から2か月、国内情勢はゴタゴタ、しかもそこに穀倉地帯への放火で食糧難が降りかかり!オペリア王国が麻薬売買のショバを荒らしに来ていて!そしてソーラス王国が!関税爆上げの上、食料供給でボッタクろうとしてやがりますのよ!更に我がエルゼマリンの港にはクラーケンが出ていますわ!

 でも私、めげませんわ!そして転んでもただでは起きませんのよ!

 ということで、クラーケンをオペリア王国に嗾けることにしましたわ。おほほほほ。

 

 

 

「……えーと、つまり、エルゼマリンの港に居るクラーケンを捕まえて、それをオペリア近海に放つ、ってこと?」

「ええ、その通りですわ。うちからオペリアの船を遮断するのではなく、そもそものオペリアから船を出せないようにしてやればよくってよ!」

 そう、そうですわ!何もうちばっかり災害めいた被害に遭ってやる義理はありませんもの!うちじゃない国が苦しんで滅びりゃーよくってよ!その点、魔物を嗾けるのは私達の十八番みたいなモンですもの!慣れたもんですわ!おほほほほほ!

「あの国からの貿易船を全て潰せば、うちに麻薬が入ってくることは当面ありませんわね?」

「まあ……陸路で来るなら、相当に時間がかかるだろうな」

「そして時間が稼げるなら国内で対策ができますから、オペリアくんだりまでカチコミに行ってやらなくても、相手が来たところをふん捕まえて拷問にかけて、もっと詳しい情報を吐かせることができますわ。オペリアへのカチコミはその後でも十分ですわね」

 ああ、考えていたら少し気分が明るくなって参りましたわ!解決の糸口が見えると一気に視界が開けましてよ!

 

「それから、ソーラスもクラーケンで対処できるはずですわね」

「えっ?どういうことですか?クラーケンを放つ、というのはオペリア近海でのお話では……?」

 リタルが首を傾げて居ますけれど、まあ、物事には繋がりというものがありますのよ。

「ソーラス王国は食料こそ豊かですけど、それ以外は大したことありませんわね。軍事力も然程ありませんし……となると、武器が必要になったらオペリアかアサンブラあたりから輸入するしかありませんのよね」

 他にもいくつか、生活用の油ですとか、まあ、輸入が必要そうなものには心当たりがありますわねえ。

 小国ってそういうところが弱いんですのよ。国土が小さくて資源が少ないような国だと、どうしても貿易で有利に立ち回らないと生きていけない運命なのですわ。だからこそ、こっちに吹っかけられそうな時を見計らって『関税爆上げ、食料価格3倍』なんていう吹っかけ方をしてきたんでしょうけれど……もっと上手くおやりなさいな、と言ってやりたいところですわね!

「ソーラスが頼りたい国の1つであるアサンブラは魔物に襲われて困窮状態。そしてオペリアがクラーケンのせいで船を出せない、というところで武装蜂起でも魔物の大増殖でも起きたら……どうなると思いますこと?」

「……成程ね。お嬢さん、中々あくどいこと考えるじゃない?」

 ジョヴァンがにやにやし始めて、キーブもにやっ、て笑って……リタルとドランが大体気づいて、チェスタが『空が青いなー』なんてやってるところで。

 私、満面の笑みになっちゃいますわ。

「その時、ソーラス王国は関税と頭の位置とを馬鹿みたいに低くして我が国からの輸出品を頼るしかなくってよ」

 ええ。私、舐め腐った態度を取ってくる国を土下座させてやりますわよ。

 

 

 

 ワクワクな目標が決まったら、後は早いもんですわ!全速前進あるのみですわ!

 まず、私とキーブとリタルとの3人……つまり、『表舞台に立っていい3人組』でクラーケンの捕獲に向かいますわよ!

 

「クラーケンって、鞄に入るのかしら?」

「どうだろ。相当でかいクラーケンだと、入らないかもね」

「最大規模の軍用鞄だとしても、空間鞄の中で暴れられてしまうと鞄から出てきてしまうかもしれませんね……」

 クラーケンって、バカでかいんですのよ。大きな商用船よりでっかいんですもの。大きさだけで言ったら世界一、ですわね。ですから軍用の空間鞄だったとしても、クラーケンを収めきれるかは微妙なところですわ。流石、海の王者は違いますわねえ。

 でも、図体がデカいだけなんて、さしたる問題ではありませんわ!

 入れられる空間鞄は軍用の一番でっかい奴だけですから、それでなんとかすることになりますわね。そして、『鞄の中で暴れられなければいい』のですわ。

「要は、半殺しにして鞄に突っ込んどきゃそれでいいってことじゃありませんこと?」

 そう。暴れられると困るなら、半殺しにしておく。これ、裏通りの鉄則ですわねえ。

 半殺しにしておけばまあ、体力が無くなって暴れられなくなりますし、そもそも、半殺しにしてくる相手に逆らう気が起きなくなりますわ。ドラゴンだって躾けられたんですもの。ちょいと図体のデカいゲソ野郎くらい躾けてみせなきゃ、女王の名が廃るってもんですわね!

 

 ということで軍用の空間鞄を持って、私達はエルゼマリンへと急行いたしましたわ。すると……。

「あらぁ……暴れてますわねえ」

「港にまで入ってきてないのが救いかな」

 エルゼマリンの港に到着してみれば、陸からでもはっきりと見えるクラーケンの姿がありましたわ。ううーん、あれじゃあ船なんて出せっこありませんわねえ……。このままほっといたら我が国の経済損失はとんでもないことになりますわ。ヤバいですわ。

「ま、よくってよ。あいつをゲソ焼きにしてやれないのは残念ですけれど、舐め腐った真似してくれやがったオペリアへの報復には丁度いいお手頃な魔物ですものね」

「お手頃、かあ……ま、クラーケンくらい『お手頃』だよね。僕とヴァイオリアなら」

「あ、あの、僕も頑張ります!」

「お前は足引っ張らないように引っ込んでろ。いいな?」

 相変わらず、キーブはリタルにちょいと警戒心が強いみたいなのですけど……仲良くおやりなさいなっ!

「で、クラーケンまではどうやって進む?」

 キーブは早速、リタルそっちのけでクラーケンの方に注目しているようですわねえ。

 クラーケンはエルゼマリンの港から見える位置に居ますけれど……当然、海の中に居やがりますわ。すると当然、私達は接近する手段を講じなければならない、ということになりますのよ。

「そうですわねえ、船を使ってもいいのですけれど……或いは、ドラゴンかしら?うーん、でも、クラーケンって時々、ドラゴン捕まえて食べてますのよねえ……」

 お手軽なところを考えるなら、ドラゴンですわね。ここへ来るまでもドラゴンに乗って参りましたけれど、やっぱり空を飛べるっていうのは大きな利になりましてよ。

 ただ、クラーケンは小さいドラゴンくらいなら捕まえて食べることがありますのよ。海面に近づいたらドラゴンごと捕まえられて海に叩き落される可能性がありますのよねえ。そして私達、残念ながら海中でも機動力を保っていられる生き物じゃありませんもの。海に落ちたら大体はおしまいですわ。

 ……と、いうことで。

「リタル。あなた、3人乗せて水の舟を走らせられますこと?」

 私、この国で一番水の魔法が上手な魔法使いにそう、聞いてみましたのよ。

 ……すると、途端にキーブは嫌そうな顔をして、そしてリタルは表情を輝かせて頷いてくれましたわ。

「はい!やってご覧に入れます!」

 リタルの水魔法があれば、クラーケンまで身軽に接近することができますわ。そして、最初から海上で戦えば、クラーケンの懐に潜り込むのが簡単ですわね。水の魔法で波を抑えてもらったり水の舟をうまく制御してもらったりすれば、下手なドラゴンより余程海戦に向きますわ。

「そして、キーブ。あなたは雷の魔法の準備をお願いね。あのゲソ野郎のドタマに雷ブチ当ててくださいな」

「いいけど、それ、クラーケン死なない?放し飼いにするんじゃないの?」

「多分、あの大きさのクラーケンなら雷一発でも死なないと思いますわ」

 何と言っても、相手は海の王者。そして私達は不利な戦場で戦うことを余儀なくされるわけですから、手を抜いて戦うなんてことはしませんわよ。

「そしてトドメの調整と鞄への回収は私が行いますわ。あなた達はゲソ野郎回収後の私を回収してくださいな」

「了解いたしました!」

「分かった。ヴァイオリアも気を付けてね」

 さあ、作戦会議は終了ですわ。いよいよ、あのゲソ野郎をぶちのめしに参りますわよ!

 

 

 

 早速、私達はクラーケンまで近づいていきますわ。クラーケンまではリタルが操る水の舟に乗っていきますわ。これ、高度な水魔法の産物なのですけれど、彼、安定して運用できていますわね。また腕を上げたようで何よりですわ!

 ……ちなみに、出航に際してエルゼマリンの港の者達からは『女王様が直々に!?そんな無茶な!』って声と『女王様が直々に!?ならもう大丈夫ですね!もうじき出航できるぞって皆に伝えてきます!』っていうそれぞれの反応を頂きましたわ。前者はエルゼマリン歴が浅くってよ。もうちょっと私について勉強しておきなさいな!

「もう少し近づいた方がよいでしょうか?」

「いや、ここで十分」

 さて。ある程度の所まで船で近づいたら、もうさっさとキーブ頼りですわね。ヨロシクですわ。

 キーブはすぐさま杖を構えて、じっとクラーケンを睨みつけて……そして、雷を落としましたのよ!

「あら、いい精度してますわね」

「鍛えてるから」

 雷は見事、クラーケンに命中しましたわ。素晴らしい精度ですわね。制御が難しい雷の魔法を、この遠距離でしっかり当てていくなんて。キーブの成長具合が嬉しくってよ!

「あ、でも気絶すらしてくれないのか……」

「まるでドランさんのようです……」

 けれどクラーケンはまだ動きますわねえ。普通、脳天に雷ブチ落とされたら大抵の生き物は死ぬのですけれど。……あの、ドランも多分、雷直撃したら死ぬと思いますわよ?多分。……死にますわよね?アッ、なんか死なないような気もしてきましたわぁ……。

「恐らく、咄嗟に水の魔法で雷を逃がしたのでしょうね。……まあ、その程度もできずに死ぬようなゲソ野郎なら『海の王者』なんて呼ばれませんものね」

「ああ、そう。ならもう一発いっとく?」

「いえ。流石の『海の王者』でも、あなたの魔法を2発も食らったら死んじゃいますわよ。あなただって『雷の貴公子』なのですもの」

 キーブはクラーケンを気絶させられなかったのが悔しいようなのですけれど、彼が優秀であることには変わりがありませんわ。国では早速、キーブのことを『雷の貴公子』『新時代を切り開く若き魔導士』『かわいい子!』と言うように称する声が聞こえてきているところですわ。おほほほほ。

「ということで、あなた達はここに居てくださいな」

 まあ、クラーケンは生きてはいますけれど、結構な傷を負っていることは確かですわ。雷の魔法って、要は体の内部に火傷を生み出すような魔法ですものね。多少逸らせたって、そもそもがずっと水の中でひんやりしているような魔物相手にはよく効くのですわ!

「ここは私が参りますわよ」

 ……ということで、クラーケンを鞄に入れられるくらい弱らせるため、ここは私が参りますわよ!久しぶりに一暴れできますわーッ!

 

「ゲソ野郎!こっちですわよ!」

 ということで私、早速クラーケンを挑発しますわ。すると、クラーケンはこっち目掛けてゲソを振り下ろしてきますから……私、それに飛び乗りますの。

 そしてゲソが着水するより先に、ゲソを蹴って飛んで、進んでいきますわ。

 クラーケンのゲソって長くてうにょうにょして厄介ですけれど、上手く使えば海上での足場にできましてよ。お兄様に教えていただいた技術ですの。おほほほほ。

 海上でうねるクラーケンの脚は、まるで繰り返す波のよう。その上を私は駆けて、駆けて……一気にクラーケンの胴まで突き進んでいきますわ。

「海の王者の栄冠も私が頂きますわーッ!」

 陸だけじゃなくて、海でも私が最強!ですわーッ!男子女子フォルテシアの区分けは伊達じゃなくってよ!

 

 

 

「はい。大人しくしてなさいね」

 そうしてクラーケンを鞄に入れましたわ。でっかい生き物を空間鞄に入れるのってちょっぴり難しいのですけれど、暴れられないくらい大人しくなっちゃえばこっちのモンですわ!

「ヴァイオリア様、ご無事ですか!?」

「ありがとう!お迎えご苦労様!」

 そうしてクラーケンを鞄にしまっちゃった私は足場を失って海にポチャったのですけれど、そこにすぐリタルが水の舟を回してくれましたわ。

 けれど舟の上に上がろうとしたら、どうにも濡れたドレスが重くて動きにくいったらありゃーしませんわ。……ドレスのまま来るべきじゃーありませんでしたわね、これ。

「ヴァイオリア様、お手を」

「あらありがとう」

 身体強化の魔法を使おうとしていたら、リタルが水魔法で舟を固定しつつ、手を伸ばしてくれましたわ。有難く掴まって、そのまま引き上げて貰いますわ。

 ……引き上げてもらってから気づいたのですけれど、リタルってこういうことができるくらい大きくなっちゃいましたのねえ。なんか、なんか……ちょっぴり感慨深さと悲しさが入り混じった気分ですわぁ……。

 

 それから、リタルの水の魔法で私の水気を綺麗さっぱりしてもらいましたわ。こういう応用ができると生活が快適になりますのよねえ。流石、エリザバトリで修行の旅をしていただけのことはあって、こういうのもリタルは得意になってますのねえ……。

「ささ、獲れたてのイカですわー」

 さてさて、そうして快適になったら、早速空間鞄の中のイカちゃんを可愛がりますわ。

「一応、傷薬くらいは入れといてあげましょうね」

「あと海水も入れておいてやりましょう」

 クラーケンを入れた鞄の中には、一緒に傷薬の類と海水もドバドバ入れておいてやりますわ。こうすることによって空間鞄の中でイカがいいかんじに薬と海水とでマリネされてくれるはずでしてよ!

 今は大人しく鞄に入っててくれなきゃ困りますけど、オペリア近海に到着したら元気に暴れてくれなきゃこまりますもの。今の内に傷を治しておけばよくってよ!

 

「……ん?」

 さて、すぐにでもオペリア近海へクラーケンを放しに、と思っていたら、キーブが海の一点を見つめて、首を傾げましたわ。

「……何か、無い?クラーケンが居たあたり」

「え?……あら、本当ですわね。何か、魔法の気配がしますわ」

「ま、魔法の気配?どこですか?ええと……」

 なんだか波の下、海の底から、ちょっぴり不思議な気配がしますのよね。魔法の気配、なのですけれど……自然に生まれたものではなさそう、というか。

 まあ、裏通りで過ごした私やキーブにはなんとなく肌で感じ取れるものですわね。つまり、『陰謀の香り』とでも言いましょうか。ま、真っ当じゃなさそうなモンだってことは、薄々察しが付きましてよ。

「ちょっと潜って見てくる」

「えっ?大丈夫ですの?」

「あっ、あのっ、キーブさん!?僕の水魔法は……」

「要らない」

 どうしようかしら、なんて考えている間にも、キーブはシャツをさっと脱いで、さっ、と海へ飛び込んでしまいましたわ。ぽしゃん、と小さく水柱が上がって、それきりですわ。

 ……キーブって、泳ぐの、得意なんですのねえ。ちょっとびっくりでしてよ。

 

 ちょっとだけキーブを待っていたら、キーブがぽしゃ、と海面に顔を出しましたわ。早かったですわねえ。

「ヴァイオリア!これ!」

「あらぁ……魔石、ですの?」

 海上のキーブに手を伸ばすと、キーブは私の手を掴みつつ、舟へ戻ってきましたわ。リタルはその間、舟がひっくり返らないようにしつつキーブに手を伸ばしていたのですけれど、まあ、キーブは多分、リタルの手は借りたくないんだと思いますわ……。

 キーブは自前の魔法でざっと自分の体の海水を流したら、その手に握っていた大ぶりな水晶を渡してくれたのですけれど……これ、魔石、ですわねえ。

「カジノの闘技場とかで使ってるやつだろ、これ。多分これでクラーケンを縛ってたんじゃない?」

「えっ……!?クラーケンを、縛る、ですか……!?」

 リタルにはあまり馴染みが無いのでしょうけれど、私やキーブにはある程度お馴染み、ですわね。

 ええ。この魔石、カジノの闘技場で使われているものと同種ですわ。即ち、『魔物を一定の距離から離れられないように縛り付ける』ようなものですわね。カジノではこれを使って魔物同士を戦わせて、どの魔物が勝つかの賭けをやっていますのよ。

「人為的なもの、となると……ソーラスの仕業、かしら?」

「かもね。やってくれるじゃん」

 誰かがクラーケンを魔石の範囲外には出られないようにして閉じ込めて、エルゼマリン近海でずっと暴れさせていた、ってことですから……まあ、面白くなって参りましたわねえ。

「これはいよいよ、潰し甲斐がありますわ」

「だね。いいじゃん、やっちゃえよ」

 キーブも好戦的に笑ったところで、私は魔石をオペリアのどこに沈めておくか考えつつ……タオルでキーブの頭をわしゃわしゃしますわ!

「ちょ、おい、ヴァイオリア!ヴァイオリアったら!」

「水気が残っていてよ。水の魔法のかかりが甘いんじゃないかしら。これじゃあ風邪ひいちゃいますもの、ちゃんと水気は拭いておかなくてはね」

 キーブは恥ずかしがってましたけれど、偶にはかわいい子のお世話をさせてくださいな!

 ちょっと不貞腐れた様子で髪を拭かれているキーブって、こう、何とも言えない可愛さがありますのよねえ!

「あ、あの、水でしたら僕が取りましょうか?」

「お前は黙ってろ」

「あ、はい……」

 ……ちょっぴりリタルには悪いですけれど!ううん、もうちょっとここは仲良くなるといいんですけれど……ま、あんまり口出しはしませんわ。

 

 

 

 さて。私達はそのままオペリア近海まで船を動かして、夜の間に魔石とクラーケンを海に放ちましたわ。いってらっしゃいまし。頑張って大暴れなさいね。

「うわ、容赦ないじゃん」

「ええ。我が国に楯突く無礼者に容赦など不要でしてよ」

 ……ええ。割と容赦のない位置に放ちましたわ。オペリアの港が目と鼻の先、というところにクラーケンを設置しちゃいましたわ。

 クラーケンはようやく解き放たれて、今までの鬱憤を晴らすかのごとき大暴れを繰り広げていますわ。そしてクラーケンが暴れるのに合わせて、港に停泊してあった船や港自体までもが、どんどん被害を受けていきますわねえ。あれ、間違いなくオペリア側は大損害でしてよ。ざまあありませんわねえ!

「では戻りましょうか」

「急ぎましょう。クラーケンはヴァイオリア様に遠慮しているようですが、いつ巻き込まれるか分かりません!」

 ということで、私達もクラーケンに巻き込まれて海の藻屑にならない内に撤退、ですわ。それぞれに空間鞄からドラゴンを取り出して、さっさと夜闇に紛れますわよ!

 ……あっ、オペリアの港から火の手が上がってますわね。これは思った以上の大損害になるのではないかしら。おほほほほ。

 

 

 

 はい。こうしてオペリアの港が死にましたわ。港どころか、港にあった貨物や何かも一気に死にましたから、オペリアはしっかり大打撃を受けた、ということになるかしら。

 こっちの処理はまた後で色々やるとして……次はいよいよ、舐めた真似してくれやがったソーラス王国の方ですわよ。

 

 さて。私達は森の地下道を通って戻って……懐かしきエルゼマリンのアジトへ戻りましたわ。

 ……今回、執務室を集合場所にするには、ちょいと後ろ暗すぎることをやりますもの。こういう時はひっそりと、に限りますわね。

「ドラン!チェスタ!そっちの首尾はどうですの?」

 そしてアジトに戻ると、そこには打ち合わせ通り、ドランとチェスタが戻ってきていましたわね。

「ああ、問題ない」

「ドランはすげえんだぞ!俺が1匹捕まえてる間に10匹ぐらい捕まえててさあ!」

「ドランの腕がいいのは認めますけれど、あなたももうちょいと頑張りなさいな」

 今回、ドランとチェスタには別の仕事を頼んでおりましたのよ。

「ま、よくってよ。では早速、ソーラス王国にゴーストを撒いて参りましょうか」

 

 そう。今回、ソーラス王国は未曽有のゴースト災害に見舞われるのですわ!

 それも……クラーケンに襲われて手一杯のオペリアには救援要請が出せない、というこの状況下で、ね!

 

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