没落令嬢の悪党賛歌   作:もちもち物質@布団

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21話「どうしてみんな死んでしまうの?」

 ごきげんよう。ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアよ。私、麻薬を売ることに決めましたわ!

 その麻薬はどこから得るかって?

 私から!得ますわ!

 

 

 

「ということで私の血をめっちゃ薄めて麻薬として売りますわ」

 多分、私の血もとんでもなく薄めれば大体麻薬っぽくなりましてよ。やったことないですけど多分いけますわ!

「……ほんとに?」

「ええ。きっとぶっ飛びますわね。天国が見えましてよ。何なら試してみますこと?あなたに見えるのは地獄かもしれませんけど」

「いやいやいや!お前の血って、だって、アレだろ!?もげたり腐ったりして死ぬんだろ!?絶対嫌だからな!」

「あなたどこから薬キメる気ですの……?」

 流石に股間にぶちまけるのはどうかと思いましてよ……?

 

「……まあ、試してみる価値はあるんじゃーないの?」

 チェスタがぎゃあぎゃあ言ってるよこで、ジョヴァンが存外冷静な顔してますわね。流石、頭脳派名乗るだけありますわ。

「お嬢さんの血って要は、魔法毒なんでしょ?なら、ちょいと加工すりゃあホントに薬になるかもよ」

「あら。それは朗報ですわね。あ、じゃあジョヴァン、あなた試します?」

「俺は嫌だぜ、お嬢さん。けどドランならやってくれるってさ」

「ジョヴァン。俺を売るな」

 冗談ですわ。おほほほほほ。

 

「1つ気になることがある」

「何ですの?」

 折角いい案だと思いましたのに、ドランは妙に深刻な顔してますのね。眉間に皺寄ってますわ。

「薄めるとはいえ、お前の血を多くの人間に接種させていいのか?耐性が付く可能性もある。いずれ敵になるかもしれない相手が、お前の切り札に耐性を持ったら厄介だ」

 あー、それは考えてませんでしたわね。

「いや。俺は大丈夫だと思うね。だってお嬢さんの血ってほんの少しでドラゴン殺せるんでしょ?……それを麻薬として使えるくらい薄めてたら、流石に別物になる。想像してみろよ。薬中やってるチェスタでも薬を一気に一万回分ぐらいキメたら死ぬだろ」

「あー、それは死ぬわ」

「でしょ?お嬢さんの血ってそういうもんだと思うけど」

 まあ、そうですわね。

 もし私の血の矢一発で死なない相手が生まれてしまったら、もう一発ぶち込めばいいだけでしてよ。おほほほほほ。

 

 ……けれど。

「……もしそういう方が現れたら、ちょっぴり嬉しいですわね」

「え?」

「なんでもなくってよ」

 ほんのちょっぴり……憧れが無いわけじゃ、なくってよ。

 

 

 

「じゃあ適当に薄めたものを実験動物に与えてみて、様子をみましょう。それで調整すればよくってよ」

「その実験動物ってのは?」

「そこら辺のゴロツキですわねえ」

「……最初は牛か馬か魔物か何かにしておけ」

「あら、了解ですわ」

 さて、これで明日からの予定も決まり、ですわ!今日はよく眠れそうでしてよ!

 

 

 

 ということで、翌朝。

「おはようございます!さあチェスタ!行きますわよ!実験動物探しですわ!」

 アジトに入ってすぐ声を上げたら、ソファの上で寝ていたらしいチェスタがもぞもぞ起きましてよ。

「……なんで俺?ドラン連れてけばいいじゃん」

 昨日の薬の影響か、随分気だるげですわね。でも関係ありませんわ!

「ドランはジョヴァンの護衛ですわ。また店を出たところで襲われたら今度こそヤバいかもしれませんものね」

「え?あー……そか」

 チェスタは起き上がって、それでも立ち上がろうとはせずにもそもそしてますわ。諦めが悪いですわね。ケツ引っ叩かれたいんですの?

「……1時間待って。駄目だ。動けね」

「全く、仕方ありませんわね」

 けれど、動けないというならケツ引っ叩いても動けないでしょうから引っ叩きませんわ。引っ叩き損になりますものね!意味も無く野郎のケツを引っ叩いてやる趣味は有りませんわ!

 

 

 

 結局、1時間半待ってから出発しましたわ。

「ところでお前さあ、昼間に出歩いてていいのかよ」

「ドランの許可は得ていますわ。顔を隠していて、かつあなたが一緒なら構わないそうよ」

「へー」

 また兵士が来たら面倒かもしれませんけど、今のところ、エルゼマリンに兵士の姿はありませんわね。多分、王城はさぞかし混乱していることだろうと思いますけれど。派兵にはきっと、まだもう少し猶予がありますわね。

「で、実験動物って何使うんだよ。馬?牛?」

「馬や牛を買うお金が勿体ないですから魔物を使いますわ」

「……魔物で実験して人間にその結果使えんの?」

「調整は必要でしょうけれど、大雑把な指標は得られるはずでしてよ」

 何せ私、自分の血を薄めて使ったことってありませんもの。どのくらい薄めればいいのか、サッパリ見当もつきませんわ。ということで、今回の目的は見当をつけること、ですわね。正確な結果なんて端から求めてなくってよ!

 

 

 

 町を出て少し行けば、平野に出ますわ。そして平野からまたもう少し行けば森に入りますの。

 この大樹の森、とにもかくにも、木がとんでもない大きさですの。人間の身長を越える幅の木が大量に立ち並んでいて、しかも所々、そんな木が倒れては行く手を阻んでいますの。

 でもこの大樹の森の中は絶好の狩り場ですわね。どれくらい効率がいいかというと警備員が居て、一般人の立ち入りが禁じられてる程度ですわ。おほほほほほ。

 ……要は、危険ですのよ。ええ。

 

 森の周囲は一際太い木が倒れたものに囲われていて、この森はまるで1つの城砦のようになっていますの。おかげで森の中の魔物は外に出てこない、という訳ですわね。

 そして、この絶好の狩り場には人間の手が入っていまして……森をぐるりと囲む倒木の塀の一部だけが切り取られて、そこがこの森への出入り口、となっていますわ。

「見張りが居るぜ。どうする?」

 そしてこの森を見張る専門の警備員が、森の出入り口を張ってる、というわけですわね。

「無視しますわ。こっちよ」

 けれどもそんな見張りなんて無意味ですわ。

 

「あんな抜け道あるんだなー」

「ええ。私が作りましたの」

 背の高い草がわさわさと生えて隠れた分かりにくい一角。木が腐って脆くなって、天然のトンネルができている個所がありますの。言わずもがな、そういう場所を選んで私が掘削した代物ですわ!

「いつの間に?」

「学院にいる間の休日ですわね。或いは、平日の夜に抜け出して来ていましたわ」

「へー。不良じゃん」

「とんでもない。私、これでも優等生で通ってましたのよ」

 案外、『優等生』だと思われていれば、不良よりもよっぽど不良なことができますのよ。私、学力試験は真面目にやりましたけれど、実技試験はほとんどハッタリで通り抜けてきましたもの。それが許されたのも、休日の度に狩りをしたり裏通りを歩いたりしても特に怪しまれなかったのも、全ては優等生だったからですわ!

 やっぱり何事も、真面目にやるべきところは真面目にやるべきでしてよ!

 

 

 

 さて。雑談しながら森の中へ入っていきましてよ。

 少し森の中を進めば、すぐに魔物と出くわしましたわ。

 ゴブリンが5体。ホーンラビットが3匹。奥に居るのはミドリスライムかしら?豪勢ですこと!

「さあ……お楽しみの時間ですわ!」

 私は鋼鉄の指輪を嵌めた拳を握りしめて、魔物に向かいましたわ!

 

 

 

「生け捕りって案外、難しいんですのね……」

「な。あーあ、普段こういう手加減とかしねえからなー」

 殺したらいけないと思って、弓矢でも剣でもなく、素手で戦いましたのよ?まあ、指には殴る時用の鋼鉄の指輪を嵌めましたし、靴も仕込み靴ですけど。

 ……でも、それでも、小さめの魔物だと案外殺してしまいますのね……。残念ながらホーンラビットとミドリスライムは全滅ですわ。まさか一発蹴っただけで頭蓋骨だの核だのまでやっちゃうとは思いませんでしたの。反省していますわ。

「ま、いいですわ。とりあえず生け捕りにできた奴から試してみましょう」

 けれども、比較的人間に大きさの近いゴブリンを数体、生け捕りにすることに成功しましたわ!

 さあ!実験の時間ですわ!まずは10倍希釈ですわ!いきますわよー!

 

 

 

「次こそは……!次こそはきっと、流石に、そろそろ……!」

「……なーんかまた駄目な気がすんだよなあ……」

 ……ちょっと想定外だったのですけど。

 まず10倍希釈の毒を一さじ分与えたところ、あっさり死にやがりましたの。

 まあこれは仕方ありませんわね、と思って20倍希釈を与えてみたら、これもあっさり死にやがりましたの。

 まさかと思いながら30倍希釈を与えてみたら、また死にましたわ。

 それで祈るような気持で40倍希釈を与えてみたら、やっぱり死にましてよ。

 ……それで今、この場で100倍希釈を作って、最後のゴブリンに与えようとしていますわ。

「いける!いけますわ!今度こそ!今度こそ流石に……!」

 私の血100倍希釈の毒を口元に近づけられたゴブリンは、必死に抵抗しようとしますわ!大丈夫ですって!ちょっとラリるだけですのよ!多分!

 

 ……そして。

 

「死にましたわ!」

 やっぱり死にましたわーッ!

 

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