没落令嬢の悪党賛歌   作:もちもち物質@布団

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4話「ダーツで決めますわ」

 ごきげんよう!ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアよ!

 私は今、エルゼマリン近郊の森に来ていますの。

 今日はここで増やしやすくて適度に強い良い感じの魔物を捕獲しますわ!

 そして増やして隣国にばら撒きますわ!魔物の群れに突如として襲われる隣国は、私達から武器や薬を買うのですわ!儲けますわ!

 

 

 

 ……崩落させた地下道から出ると少しだけ早いんですの。ええ。穴掘りは無駄じゃありませんでしたわ。

 私達はそれぞれ違法改造済みの空間鞄片手に、夜の森の中を散策中ですわ。

 夜になると活性化する魔物が多いですから、魔物狩りをするなら夜の方が効率的でしてよ。ただその代わり、人間が狩られる可能性も上がりますからジョヴァンはお留守番ですけれど。おほほほほ。

 

「狙い目はどこだろうな」

「スライムだと残念な強さしかありませんから、武器よりも駆除剤が売れそうですわね。いっそスライム駆除剤を大量に用意できれば、それもアリですけれど……武器と薬の在庫をどうにかする、という意味では、やっぱり強くて増えやすい魔物を使うのが一番良くってよ」

 スライムは馬鹿みたいに増えやすいですからお手頃なのですけれど、やっぱり強さに問題がありますわね。どう足掻いてもスライムはスライムですわ。

「……となると、ゴブリンの類か?あれはそれなりに繁殖が早いが」

「それでも数か月は掛かりますわよね?……それだと時間が掛かりすぎでしてよ」

 生物の限界と言うべきかしら。生物が子供を産んで子供が育ってまた子供を産んで、とやるのにはどうしても時間が掛かりますわね。特に、獣に近い形であったりするとなると、本当に。

「なら植物系か?ローパーとか?」

「武器が必要な植物系の魔物ってあんまり居ませんのよねえ……」

 何と言ってもローパーもそうですけれど植物系の魔物って、自力でほとんど動きませんもの。遠距離から火矢だのなんだので攻撃すればそれだけで済みましてよ。

 勿論、大量に植物系の魔物を植え付けてその土地一帯を不毛の地にして食糧難に陥らせる、とか、そういう使い方はできると思いますけれど……うーん、何にせよ、即効性に欠けますわ!

「動物でも植物でもない魔物?そんなの居る?」

「居ますわよ。まあ、こいつらも一応は動物、ですけど。……はい、こういうところに」

 

 私がそこら辺の石をひっくり返してみたら、案の定、そこに巨大な芋虫が居ましたわ。

 

 

 

「ひっ……」

「あ、キーブ。あなたもしかして虫、苦手ですの?」

「は、はあ?んなわけないだろ。別に苦手じゃないし」

 腰が引けてますわよ。ええ。まあ折角強がっているのですから何も言いませんけれど。おほほほ。

「こいつらなら2週間もあれば立派に増えますわ」

「そんなに……?」

「増やしたことありますもの。分かりますわよ」

 キラーワームは人間の胴体ぐらいの太さのバカでかい芋虫ですわね。私はそれをよいしょ、と抱え上げて、鞄の中に入れますわ。

「できれば成虫も欲しいですわね。キラーモスが居れば、それこそ本当によく増えますわよ」

「なんでお前はこんなの増やしたことあるんだよ!」

「毒を取って飲むためですわねえ……」

 一応この芋虫達、毒がありますのよ。芋虫1匹で鹿1頭ぐらいなら仕留められますわね。よく人間も仕留められて死んでますわ。

 まあ、こいつらは動きがトロいですから、適当に潰すなり殺すなり、いくらでもやりようはありますわね。けれど、スライムよりはずっと厄介でしてよ。特に、大群を成してやってきたら、それこそ本当に剣で斬り払っていくようになりますわね。

「さあ!森の中にはいい魔物が沢山ですわ!早速集めて頂戴!」

 ……ということで私達、魔物集めを始めましたの。

 

 

 

 森は良いですわね。魔物の宝庫ですわ。特に、普段でしたら取るに足らない虫系の魔物も、人に迷惑をかけるという観点から見ればとても有用でしてよ。

 数時間森を散策するだけで、相当数の魔物が得られましたわ!

 

「私は卵を中心に虫系の魔物を集めて参りましたわ!キラーワームですとか、アーミーワスプですとか、ポイズンアントですとか、ベノムマンティスですとか。あ、ベノムマンティスなんて卵7つぐらい見つけましたわ!これ全部孵化させたらとんでもないことになりますわよ!」

「ほぼ全部毒虫か……」

 毒があっても私なら素手で触って鞄にポイ、ですわ!雑魚の魔物の毒程度、私にとってはおやつにもなりやしませんわね!

 

「おお怖え怖え。……あー、俺はなんかでっかいハチの巣あったからそれ、拾ってきた。アーミーワスプ?っつうんだっけ?」

 チェスタは私と同じく、虫系の魔物を適当に拾ってきたみたいですわね。まあ、私と違って彼は毒耐性がありませんもの。私のように多くは集められていなさそうですけれどね。

「ですわね。巣ごと持ち帰ってきたのは正解ですわ。そいつら、巣の中に女王が居ますし……あと、幼虫や蛹をたっぷり巣の中に蓄えてますのよ」

「そう言われると気持ち悪ィなあ……」

 ちなみにそれらは煮付けて食べると割と美味しいですわ。まあゲテモノ料理の域を脱しませんけど。

 

「……別に虫じゃなくてもいいんだろ?僕はこれ拾ってきた」

「あら、デモンラットですの?」

 キーブが拾ってきたのはネズミですわ。バカでかいネズミですわね。犬ぐらいの大きさはありますわ。あと歯が鋭いですわね。

「こいつもそれなりに早く増えるだろ」

「まあ、虫程じゃあありませんけれどね。……最初は虫系の魔物を放出しておいて、後からネズミを投下してもいいですものね。ええ。蓄えられるものは蓄えておきましょうか」

 それにしても、本当に虫、苦手ですのねえ。なら、キーブに虫系の魔物を触らせるのは酷かしら。今後もそこは勘弁してやることにしますわ。

 

「最後は俺か。それほど多くはとってこられなかったが」

 ドランはそう言いながら空間鞄の中に手を突っ込んで……出しましたわ。

 ……ゴーストを。

 

 

 

「あー、そっち方面もアリでしたわねえ……」

「それ何!?それ何だよ!なんで掴めるの!?」

「銀の指輪をしてきた」

 ゴースト、というのはまあ、便宜上の名前ですわね。幽霊なのかどうかなんて分かりゃしませんわ。

 でもゴーストの特徴は、体が透けてて浮いてて、触れることができない魔物、ということですわね。概ね大人しい魔物ですけれど、攻撃的な奴は魔法で攻撃してきますわ。

 そんなゴーストは、魔法か銀の武器でしか倒せませんの。……今、ドランは銀の指輪を嵌めているみたいですわね。銀に触れているゴーストは実体化する、といういい例ですわ。

「こいつは増えるだろう」

「増えますわねえ……」

 ……そして何より、こいつら、増えますのよ。それはそれは増えますわ。……条件さえ整えば。

「魔力と怨念、でしたっけ?」

「そうだな。戦場の跡地や処刑場で多く増えるらしい」

 少し特殊な条件ですけれど、ゴーストってそうやって増えますの。というか、湧きますの。

 戦場の跡の荒れ地なんかには戦いの魔法の残りが残っていたりしますから、そこからゴーストが生まれたりもしますわ。

 そして当然、元々そこにゴーストが居れば、増える速度は段違いですのよ。今回はそちらを狙っていきますわ!

「魔力はお前かキーブが提供してくれ。あとはエルゼマリンの貴族街の広場の空気を空間鞄に入れてやれば増やせるんじゃあないかと思ったが」

 あー、そういえばあそこ、100人以上が一気に毒殺されましたものねえ。きっとゴーストも増えますわね。ええ。

 

 

 

「ということで、虫系の魔物はすぐにでも使えますわね。というかあんまり長く放っておくと鞄から溢れてきそうでしてよ……」

 特に私が拾ってきてしまったベノムマンティスの卵!あれ、1個の巨大な卵からうん百うん千のベノムマンティスが生まれてきますのよ。子供が森で見つけてうっかり家に持って帰って孵化してしまって大惨事、という話は時々聞きますわね。

「これで頭数は何とかなりますわね。後は質ですけれど……」

「……まあ、害虫の域を脱しないか」

 そうなんですのよねえ。スライムよりはずっとマシですけれど、虫系の魔物ってやっぱり雑魚が多いんですの。頭数だけは揃いましたけれど、これじゃあ対策し放題ですわ。

「やっぱり大物も欲しいですわ!ドラゴンとか!」

「うちで飼ってる奴は駄目だぜ?まだ子供だし!」

 ……ドラゴン、と試しに言ってみたら、チェスタが敏感に反応しましたわね。

 ええ。チェスタ、うちの子供ドラゴンが気に入ってるらしいんですの。ラリってない時はよく戯れてますわ。ラリってるときはお察しですわ。

「分かってますわよ。……ですから、新たにドラゴンをどこかからか捕まえてくる、というのは如何ですこと?」

 この際ドラゴンじゃなくても良くってよ。でも、少しっくらい大物が居ないと、戦争の雰囲気になりませんわ!

 

 

 

「……で、俺はまた留守番?」

「留守番兼飼育員ですわね」

 ということで、私達は一度戻ってジョヴァンに空間鞄を預けますわ。一応、中に居るのは生き物ですもの。餌も水も必要ですわ。なのでジョヴァンに任せますわ。

「はいはい、わーったわーった。仕入れ継続しながら飼育員もしといたげるから安心して行ってらっしゃい」

「話が早くて助かりますわ」

 了承も得られたことですし、私達は早速、ギルドへ行くことにしますわ。

 そこでいくつか討伐依頼を見て、大物の出現情報を漁りますの。そして……それぞれに分かれて、大物狩りをしますわ!

 

 

 

 そして7日後。

「ナイトメア3頭。デュラハン1体。リッチ1体。スケルトン56体。スケルトンドラゴン1体。以上だ」

「俺はキラーグリズリー3頭とサケニクワレベアー5頭。あとグリフォン3頭とキマイラ2頭。……あー、ちょっとショボいな?」

「オーク45匹にオークキング1匹。おまけでヘルハウンド8匹とサイクロプス1体。悪くないだろ」

「ワイバーン17匹!サンドリザード28匹!サラマンダー30匹!ミズクラゲドラゴンモドキ5匹!そしてドラゴン4匹!ヒュドラ1匹!勝ちましたわ!」

「お前、ドラゴン大好きだよなぁ……」

 大好きですわ!今回もドラゴン一点狙いでしたわ!

 ……ということで、ボチボチ大物も揃いましてよ。これだけ揃えばまあ、後は適宜の追加で何とかなるんじゃないかしら。

「後は虫とネズミとゴースト、ですわね。何ならスライムも追加しても良くってよ」

「スライム入れとけば餌にもなるしね。実際、俺のここ7日の仕事っていやあ鞄にスライム放り込むことだったし」

 ジョヴァンは上手くやってくれていたようですわね。鞄の中では卵が孵ったり成長したり産卵したりで魔物が順調に増えているようですわね。良いことですわ。

 

 さて。

 これで無事、小国1つを困窮させる程度の魔物が揃いましてよ。

「あとは、これをどこの国にぶちまけるか、ですけれど……」

「エルゼマリンから武器や薬を運びやすい位置ならどこでもいいぜ」

「つまり海を挟んだ向こう側か、海伝いに行ける国、ですわね?うーん……正直、どこでもいいですわ。却って迷いますわね」

 ……少し悩みましたけれど、こういうのは悩むだけ無駄ですわ。さっさと決めますわよ!

「じゃあダーツを投げて当たった国にしますわ」

 

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