今話はウォーズマンの仕草がアタル兄さんっぽいかもしれません。
タイトルから察する人もいると思います()
「魔法が発現した?」
「──うん、昨日の夜にステイタスを更新したんだ。その時にね」
ちらりとベルを見てみると、相変わらず顔をクッションに埋めて、何か呻きながら悶えている。
───魔法、とはまた違うかもしれないが、それを聞いて脳裏に浮かんだのは悪魔超人達の使う奇っ怪な術達だった。
特にプラネットマンの人面プラネット、いやあれは魔技と言っていた気が……
「しかし……魔法か、完全にオレの専門外だな。そんな突然振ってくるもんなのか?」
「いや、そんなはずは無いはずなんだけど……なんでこんなタイミングに──ん?」
「どうした?」
するとヘスティアはいつの間にか床に落ちていた一冊の本を拾い上げた。
「こんなの今まであったか?」
「いや……買った覚えもないしここに初めて来た時も置いてなかったし……」
そう言いながらペラペラとページを捲っていくヘスティア、すると捲る度に表情がより深刻なものへと変化していく。
「お、おい大丈夫か?」
そして本を閉じると、深刻な表情でこう告げた。
「────これは、
「ぐり…もあ?」
「なんだそれは?」
「簡単に言っちゃえば誰でも使える魔法の強制発現書……」
その瞬間空気が凍りついた。
「そ、そんなの絶対高価じゃ……」
「【ヘファイストス・ファミリア】の一級装備と同等、いやそれ以上と言えば分かるだろう?」
「ヒュッ」
「それが一体どうしてこんなとこに?」
「実は………シルさんにお客さんの忘れ物って……借りてきました…デス」
「ッス────」
手を額に当て天を仰ぐヘスティア。
やがて何も言わず魔導書を手に棚を漁り始めた。
「か、神様?」
「───二人とも、僕たちの間の言い伝えではこんなのがあるんだ」
片手には魔導書とライター。
「お、おいヘスティアまさか──」
「
オレは急いでロックアップの要領でヘスティアをなんとか止めた。
「落ち着けヘスティア!!おいベル!!早くその本を返してこい!!たとえ無駄だとしても!!」
「でっ、でもっ!?」
「待つんだベルくぅぅん!!!」
「グオォ……!?」
な、なんて力だ……!?まるでバッファローマンと初めて戦った時の…!?
「早く行け!!このままじゃジリ貧だ!!」
「はっ、はいぃ!!!!」
「ベルくぅぅぅん!!!!」
「ハァ……ハァ……」
「ゼヒュー…ゼヒュー…」
廃教会の地下、そこには脱力し横たわったオレとヘスティアがいた。
「な…なんて…パワーだ…」
「たとえ地上に……降りても……く、腐っても神だから…ね……」
「と、とりあえずオレは……買い出しにでも行ってくる…」
「い、行ってらっしゃい…」
フラフラと立ち上がりながらオレは外に出掛けた。
「…ん?あれ、あのナイフがない……?」
*
────さて、一方その頃ベル・クラネルはと言うと。
「【ファイヤボルト】!」
『グギャッ!?』
何故かダンジョンにいた。
その経緯をお話しよう、まず【豊穣の女主人】へと(元)魔導書を返しに行ったベルはシルになんども頭を下げていたが店主、ミアの「んな高いもんを間抜けにも置いていった馬鹿が悪いだろ、気にするんじゃないよ」という鶴の一声により、何の大きい問題もなく済んだ。
ここまでは良かった。
さて、ベル・クラネルはまるで子供のように「早く魔法を使ってみたい!」と思いついてしまった。
念の為ヘスティア・ナイフは持ち出していたので、そのままの流れでダンジョンへと向かった。
始めは一、二階層で試したら帰るつもりだった。だが調子に乗ったのか初めての魔法で浮かれていたのかは分からない。が、そのまま行けるだろうとのことでもっと深くへと潜っていった。
そして現在──5階層へと至る。
「………やっぱり凄いや」
手の平を標的に合わせ、詠唱を口ずさめば敵がただの魔石へと化した。
初めての感覚と威力に己の心は興奮していた。
「あっ、もう5階層まで来ちゃった……」
ふと落ち着いて周りを眺めれば、壁が薄青色から薄緑色へと変化していた。これは4階層から5階層へと深くなったという証であり、正直に言ってしまえばこんな防具もなしに来ていい場所ではない。
「そろそろ戻らな───きゃ?」
突然視界が歪んだ。
すると次の瞬間に倦怠感が襲いかかる。足元はおぼつかず視界はぐるぐるりと回転しているように見えた。
「─────きゅう」
そしてそのまま倒れ込んでしまった。
────さて、魔法というのは無限に撃てるわけではない。全てのものに限度というものが存在するように、魔法にも撃てる回数には限界がある。
魔法とは、
これが、【
「───ベルはまだ帰ってきてないのか?」
「そうなんだよ……そんなに時間はかかるはずないんだけど」
買い出しから帰ってきてもベルはまだ帰ってきていないらしい。
まさかやはり……
「わかった、それじゃあオレが【豊穣の「そういえば、ウォーズマンくんが出かけたすぐに気づいたんだけどね。あのナイフがないんだよ」───なんだと?」
おかしい、あのナイフはダンジョンに潜る時以外の持ち出しは殆ど無いはず。
それが無い…?
発現した魔法
何故か無いヘスティア・ナイフ
心なしか興奮していたあの表情
「────まさか」
「えっ、なにか分かっ「すまん!この話は後だ!」そ、そんな状況なのかい!?」
「あいつは───ベルは今ダンジョンにいる!!」
オレは一目散に走った。
目指すはギルド、ギルドの職員であれば誰かしらはベルの姿を見ているに違いない。
通行人の不思議がる視線は無視だ。それよりも早くギルドに!
「あ、貴方は「すまん!ベルを見なかったか!?」──ベルさんを?」
オレは運良く空いていたエイナのカウンターへと直行した。
「少々お待ちくださいね……」
そう言うとエイナは他のカウンターにいた職員と少し話をした後、戻ってきた。
「ベルさんなら、少し前にダンジョンに潜って行ったとの証言が……」
「そうか、助かった!」
「えっ、ちょちょっと!?何かあったんですか!?」
引き止める声を無視し、オレはダンジョンへと潜って行った。
「階層主の単独討伐───皆が喜ぶだろうな」
「……うん」
ダンジョンの下層から、そんなことを話しながら上がってきている冒険者が二人いた。
【ロキ・ファミリア】所属の【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインと【九魔姫】リヴェリア・リヨス・アールヴである。
ロキ・ファミリアの精鋭の精鋭であるこの2人だが、リヴェリアが殆ど無傷であるのに対し、アイズの方はというとかなりボロボロで装備は半壊、いやそれ以上であった。
そしてアイズの背中には巨大な黒い塊が背負われていた。これはとあるモンスターのドロップアイテムで、たとえロキ・ファミリアであっても未知数のものである。
「それにしても、だ。アイズ、それは今のお前には少々辛いだろう。代わりに私が運ぼう」
「ううん、大丈──分かった。途中までお願い、リヴェリア」
(……やはり、いつもよりやけに聞き分けがいいな…)
リヴェリアは不思議に思った。
昔っからこの娘の無茶には振り回されていたが、今日は何故か色々な場面でちゃんと自分を頼ってくるのだ。
今回の階層主討伐も、いつもならモンスターに単独で突っ込んでいくはずなのだが、面と向かって協力して欲しいと言われた際には一瞬別人かと錯覚してしまった。
理由を聞いたところ、「仲間を頼れ、友を信じろ」とある男に言われたらしい。
「なぁ、アイズ。その男が誰なのかは分からないのか?」
「……うん、見たことない人だった。──でも、すごく強そうだった」
すごく強そうと思った。その言葉がリヴェリアの疑問をより深めていく。
(……後でフィンとガレスに相談するか……いや、ファミリア全体でした方がいいのかもしれないな…)
アイズの言葉通りであればそれは自分達と同等、もしくはそれ以上な可能性まである。
リヴェリアがそんなことを考えていると、2人はなにかを知覚した。
それは魔法の発動によって霧散した魔力の漂いと、何かの炸裂音だった。
他の冒険者の邪魔になってしまう、そう思いルートを変えようとした。が、意外と近かったのか、魔法の使用者であろう少年が目の前に倒れていた。
「ふむ、音からしてもう少し遠いと思ったが、意外と近かったのか。威力が低い魔法なのか?───それよりもこの少年を」
「………え?」
そこに倒れていたのは、以前に自分たちが逃がしたミノタウロスのせいで被害に会い、挙句の果てに【豊穣の女主人】にて身内に虚仮にされて飛び出していってしまったあの少年であった。
アイズにとっては助けた時に逃げ出して行ってしまった為、少し話がしたかったと思っていた相手でもあった。
その時アイズ・ヴァレンシュタインに電流走る。
ここで倒れてるこの子を、起きるまで介抱してあげれば名前を聞けるしあの時なんで逃げていったのかも聞き出せるのでは──!?と思いついた。
この間わずか二秒。例えるならモーターマンが真っ二つにされる迄である。
早速アイズはリヴェリアに念の為離れたところにいて欲しいと伝えた後、倒れ込む少年の元へ座り込み───少年の頭を膝に乗せる、所謂「ひざ枕」をした。
そんな様子をリヴェリアは驚きながらも、成長したなぁと少し感じていた。
*
それから少しの時間が経ち。
ベルは目を覚ました。
すると目の前に居たのは────
「……起きた?」
あの憧れの人だった。
「………?」
起動したての脳を徐々に覚醒させていくと、その脳は我が身の重大さをどんどん理解していく。
憧れの人+ひざ枕+(推定だが)まぁまぁ長い間
=
「わぁぁぁぁぁぁぁあ!?!?!?」
そのまま叫びだし、逃げ出した。
だが、遠くから走ってくる者を見て、立ち止まった。
「ベルーーーーーーっ!!」
目の前からやってきたウォーズマン、いやさクロエは減速しながらベルの前に立ち止まった。
ベルはこの場から急いで逃げ出したい一心でクロエに声をかける。が──
「く、クロエさ─────
バシィ!!!
伝えるよりも前に、乾いた音と共に右手から答えが返された。
「……?えっ…?」
ベルは突然、左頬を抑えながら動揺する。が、クロエの顔を見てハッとした。
自分は、発現したばかりの魔法を、すぐ帰るし大丈夫だろうという安易な気持ちで、連絡もせずに振り回していた。
もしあの人が来てくれていなかったら、もしモンスターがその後やって来ていたら。今頃ダンジョンの中で、人知れずに───
「ご…ごめんなさいっ…!」
ベルの目から涙が溢れてきた。
申し訳ないやら自分が情けないやらで心はぐちゃぐちゃだった。
「……新しい力を得て喜ぶのは分かる。が、試したいならオレかヘスティアに一声かけろ。……お前が死んで一番悲しむのは他でもないヘスティアだ」
「はいっ…!」
そう話終えると、クロエはベルと共に歩いていこうとした。
だが、大事なことを思い出し、アイズへと振り返った。
「お前のお陰でベルが死なずに済んだ。……ありがとう」
そう言い残し、その2人は去っていった。
「あの男が、お前の言っていた者か?アイズ」
「………うん」
「確かに、あれならお前の言っていた通りだな……」
(これは……本格的に相談しなければな)
リヴェリアは去っていった二人の方向を、見つめ続けた。
〜もしもウォーズマンではなくストロング・ザ・武道だったら〜
ベル「魔法だぁ!」
武道「惑わされるな」
ベル「魔法…凄いや…もっと深くまで行こっと!」
武道「惑わされるな」
ベル「で、でもまだそんなに疲れてもないし「惑わされるなと言っておるーーーーっ!!!!」ハヒィッ!!すみませんー!!!」
普通に考えて発現したての魔法を基本知識なしに試しに行くの危なすぎるだろ!?
感想と評価どしどしお願いしまぁす!!!