翌朝……
ベル・クラネルは自身のファミリアの本拠である廃教会で目を覚ました。
あの後、なんとか新入団員らしいウォーズマンさんに肩を借りながら本拠へと戻って疲れてそのまま寝ちゃって……それで……
うんうんと唸りながら昨夜の出来事を思い出していると
「起きたか」
不意に上から声がかけられた。そこに居たのは───
「……ど、どちら様で…?」
謎の長身の男だった。
だが自分にかけられた声から気づく
「もしかして…ウォーズマンさん?」
「あぁ、そうだ。この姿の訳は後で話す。早速だが身支度を整えたらナイフを持って外に出てこい」
そう言ってウォーズマンさんは外へと出ていった。僕は急いで着替え、いつも使っているナイフを片手にウォーズマンさんを追いかけるようなかたちで外へと出ていった。
「よし、来たか」
本拠からそう遠くない空き地のような場所にウォーズマンさんは居た。
「あの、ウォーズマン…さん。一体何を…?」
そう聞くと、少し考えるような素振りを見せた後に、答えた。
「ひとつ言うことがあったな、この姿の時はウォーズマンではなく"クロエ"と呼ぶようにしてくれ」
「は、はい!クロエさん!」
「さて、何をするかだがな……一度実力を測るための手合わせをする。それ次第でどう鍛えるか決めよう」
そう言うと手に何も持たないまま構え始めた。
「……さぁ、いつでもいいぞ」
「ちょ、ちょっと待ってください!クロエさん鎧とか武器とかは…!?」
「オレの得意は肉弾戦なのでね、……もしかして、傷つけてしまうとでも思っているのか ?」
その言葉に僕は頷いた。しかし
「言っておくが…オレをあまり舐めない方がいいぞ?」
……まるで、
でも立ち止まる訳にはいかない!
「……行きます!」
僕はナイフを構えながらクロエさんへと立ち向かった───
「ふむ、こんなものか」
「ぜぇ…ぜぇ……ばい゛」
あの後僕はナイフを当てるどころか掠り傷さえ負わせることが出来ずに、振るった腕は先読みされ、クロエさんのフェイントに容易く引っかかり、投げられ転がされまた投げられて………終わった頃には土にまみれていた。
「ベル、お前は少し正直過ぎる。もう少し卑劣さというのを身につけた方がいいな」
「…は゛い゛……わ゛か゛り゛ま゛し゛た゛」
するとクロエさんはしゃがみこんで、地面に転がっていた僕を起き上がらせた。
「…ベル、攻撃の極意とは何か知っているか?」
「い、いや……知りません」
「よく聞いておけ、攻撃の極意とは"天使のように細心に"、"悪魔のように大胆に"だ!これだけは絶対に忘れるな!」
「っ!!はい!!分かりました!!」
その後、本拠へと戻り神様に昨日の分のステイタス更新をして貰った。
何故か神様は少し怒ってるようだったけど……
そんな事を考えていたら、もっと大事なことを思い出した。
「どうしたベル、出かけるのか?」
「はい、実は……」
僕はクロエさんに昨日の夜、食い逃げをしてしまったことを話した。
「……なるほど、それは早く行った方が良いな。その後はダンジョンに行くのか?」
「はい、そのつもりです」
「それじゃあオレは先にダンジョンに行くことにしよう」
「分かりました、ではまたギルドで!」
「あぁ、それじゃあな」
そう言って僕は豊穣の女主人へと走っていった………
今、俺の目の前には巨大な塔が立っている。
昨日の夜は俺がダンジョンから出てきたこともあってか冒険者だと思われて難なくダンジョンに入れたが……今の俺の姿じゃ無理そうだな。
俺は冒険者登録を行うためにギルドとやらのカウンターへと向かった。
「すまん、冒険者登録を頼みたい……君、大丈夫か?」
「あ〜……あっ、すみません、お待たせしました、冒険者登録ですね。ではここに氏名とファミリアの記入をお願いします」
担当してくれた女性職員の目の下には隠しているのだろうが酷い隈が出来ていた。
「これでいいだろうか?」
「えぇ……"クロエ・ボルコフ"さんで所属ファミリアは…"ヘスティアファミリア"、ですか…」
「……おい、本当に大丈夫か?少し休んだ方がいいぞ?」
「大丈夫です…お気になさらずに…」
そうして彼女は下がって行った……心配だ。
そうしてしばらく待っていると、冒険者登録が完了したらしい。
「お待たせしました……これで冒険者登録は完了です。あなたの担当アドバイザーは私──ミィシャ・フロットとなりましたので、ギルドやダンジョン等、何かご不明な点があれば私にお聞きください…」
「あぁ、ありがとう。よろしく頼む」
そうして俺はダンジョンへと入ろうとし……た所で少し聞いてみることにした。
「すまない、ダンジョンの構造について詳しく教えてもらうことは可能か?」
「……分かりました、ではついてきてください」
そうして案内されたのは小さな個室だった。
待っているように言われ、少し待っていると……なにか分厚い本を数冊抱えてきた。
「……これがダンジョンの構造についてと…あとはモンスターについて…あとこれは…」
そうして去ろうとしたので、俺は急いで呼び止めた。
「……なんでしょうか?」
「いや、少し休んでいた方がいいだろう。今にも倒れそうだぞ?」
「…いえ、仕事がありますので」
「それじゃあ"アドバイザーとして新人冒険者にダンジョンについて教えていた"という建前でここで休んだらどうだ?それならオレを"途中でサボっていない"という証人に出来るだろ?」
「…中々話が分かる人ですね」
そう言うと彼女は椅子に座り……すぐに静かな寝息が聞こえた。
思っていたよりも早かったことに驚きつつも、ダンジョンの構造についてなどの情報をオレは読み込んでいった───
その後、飛び起きるように目を覚ましたミィシャを落ち着かせた後、ベルと合流しオレ達はダンジョンへともぐっていった。
次はやっとヘスティアナイフ登場ですわ