心優しき戦争男inダンジョン   作:鮭ノ神

7 / 7
いつの間にかに評価バーが真っ赤に!?
まるでベルリンの赤い雨だね()




冒険の、始まり

ウォーズマンが謎のモンスターに遭遇しているほぼ同時刻……

 

 

ヘスティアはベルのステイタスを更新していた。

だがいつものようなゆったりとしたものではない、額に汗を浮かべながらも焦らず、出来る限り速く、全てのアビリティを更新していく。

その理由は──

 

「ゴルル……」

 

──闘技場から脱走したシルバーバックに二人が追い詰められていたからである。

 

怪物祭を楽しんでいた二人は突如、脱走したモンスターの一体であるシルバーバックに追われ、ダイダロス通りの裏路地まで追い詰められてしまった。

今は何とか身を隠しているものの、複雑な路地故に救援も望み薄である。

 

そこでヘスティアはベルにある物を渡した。

 

とある知り合いに三日三晩何も食わずに頼み込み、莫大な借金を負うことも厭わず、ただベル・クラネルという初めての眷属のためだけに作成して貰った、この世にただ一つの一振…【神様のナイフ(ヘスティア・ナイフ)】である。

 

黒曜石のように黒く、鈍く輝く刀身にはステイタスと同じくヒエログリフが刻まれており…文字通り、使い手と共に成長していくナイフである。

 

さらにヘスティアはひとつの賭けをした。

ステイタス更新の時にいつも感じていた急激な成長速度、日の出前から行っているウォーズマン(二人目の眷属)との修行…泥にまみれながらも、何度投げられようとも諦めずに向かっていくあの姿──

 

───ヘスティアはベル・クラネルに、そしてウォーズマンにもまた賭けたのである。

 

そして遂に、全てのステイタスを更新し終えた。

ヘスティアはベルの背中を勇気づけるように叩いた。

 

「さぁ、行くんだベル君!そして見せてくれよ、君の凄さを!」

「はいっ!神様!」

 

ベル・クラネルは弾丸のように飛び出していった。

その姿には先程までの恐怖は微塵も感じられない、呼応するようにナイフも輝きを増した。

 

視界に入るのはシルバーバック。

獲物が自ら飛び込んできたのを喜ぶかのようにベルに飛び掛った。

 

──だが、遅すぎた。

飛び掛るよりも前に、ベルは動き出し、そして──

 

「はあっ!!」

 

すれ違いざまにナイフを振るった。

切り落とされたモンスターの右腕が宙へと舞う。

 

「グオッ──!?」

 

よもや反撃されると思っていなかったのか、失った右腕を闇雲に振り回そうとした。

 

しかし遅い、遅過ぎた。

繰り出される疾風のごとき斬撃はシルバーバックの身体を、戦意を削り落としていく。

 

そして耐えられなくなったのか、急所である胸を守っていた左腕が剥がれ落ちた。

ベル・クラネルは最高速度のまま、飛び込み───

 

「うおおおおっ!!」

 

──その胸にナイフを突き立てた。

魔石を貫かれたシルバーバックは力なく横たわり…崩れ落ちた。

その瞬間、ダイダロス通りの住民たちが大きな歓声を上げた。

 

それは、新たな英雄の誕生を祝福するかのようであった……

 

 

だがベル・クラネルにはただ一つ、大きな疑問を胸に秘めていた。

 

 

……飛び込む前、全身から湧き出てきた燃えるような力は何だったのだろう?

 

 

 

 


 

 

 

 

「…素晴らしかったわ、ベル」

 

 

ベル達から少し離れた民家の屋根の上。

そこにはある美神が先程の様子を眺めていた。

美神の名はフレイヤ──今回の脱走騒ぎを引き起こし、ベル・クラネル達にシルバーバックをけしかけた張本人である。

 

 

「でもあなたはもっと輝ける…あぁ、楽しみね」

 

 

その顔には万人が、神までもが魅了される微笑が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

「───それで、あなたは私をどうするつもりなのかしら?」

 

フレイヤは微笑を消し、冷酷な表情を浮かべながら振り返った。

そこには……

 

 

 

「コーー……ホーー……」

 

 

 

鋼鉄の熊の爪を後頭部へと突きつけながら、赤く光る目でフレイヤを見つめる褐色肌の男の姿があった。

 

その姿はまるで「いつでもお前の頭を貫けるぞ」と言っているようであった。

 

「……心配しないで、あの子を殺すつもりはないの。……冒険者は、冒険してこそ。でしょう?」

「………」

 

空気がますます緊迫してゆく。

その男の背後には、団長を含めたフレイヤファミリアの幹部達が、今にも飛びかからんと言った様子で待機していた。

 

やがて、その男は突きつけていたその腕を下げた。

そして───

 

 

 

 

 

 

 

──赤く光る眼光のまま後ろに待機していた幹部たちを見た。

 

 

 

 

 

「────ッ!?!?」

 

 

 

 

 

 

ある者は自身のトラウマを、根源的な恐怖を、そして……

 

 

 

 

 

 

「(ザルド……ッ!?!?)」

 

団長は、かつての圧倒的な強者を、想起していた。

 

 

 

 

動けないでいる幹部達を後目に、その男はベル・クラネルのいる方向へと去っていった。

 

 




執筆してて楽しかった今回のお話っ!

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