白の双星、ターフを駆ける   作:瓶詰め蜂蜜

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双星、育つ。

 転生したら馬だった。なんて、ネット小説で使い古されたような事を果たしてしまった。事実は小説よりも奇なりと言うべきか。

 

「私たちの場合、もっと奇妙なことになってるでしょう?」

 

 広いとは言い難いが、自由に駆け回る程度のスペースはある放牧場でぼんやりと考え事をしていたら、先程まで走り回っていた僕の片割れがそばにやってきて、思考に割り込むように喋った。

 

「まあねぇ……。なんとも複雑怪奇な事だよね」

 

 そう言い返しながら、僕たちの状況を思い返す。

 

 僕は、僕らは馬に転生した。けど、前世を人間として生きた自覚はあるが肝心な人間だった頃の記憶は無い。覚えているのは日本語の知識や人間社会の常識などぐらいだ。前世がどんな人間だったのかを知らないのは少し淋しく思いながらも、もしその記憶を持ったまま馬に転生していたら発狂していたのだろうなんて、考えてしまう。

 

「それだけじゃ無いでしょ?何が原因か分からないけれど、私達は二つに分かれた。私も、兄さんも、元は一つの魂だった」

「……思考を読むのはやめてよ。怖いじゃん」

「何となく伝わってきちゃうのよ」

 

 ふんっ、と鼻息で返事する僕の片割れ、僕の双子の妹。

 双子だからか、元は一つの存在だったからか、お互いの考えている事が何と無く分かるし、離れていても何処に居るのか、方角をぼんやりと感じ取れる。

 そして、一番重要なのが、近くにいるとひどく安心するのだ。まるで、こうあるべきと感じるほどに。

 

「いずれ僕らは競走馬になるのだし、少しずつ耐性をつけないといけないんだけどねえ」

「人間の知性を持っていても、私達は所詮獣。本能の方が強いのよ」

 

 そう言いながら、体を擦り付けて僕の鬣をはむはむとする妹。本能のままに全力で甘えてくる妹を可愛く思いつつも、中身は僕と同じ魂だという事を思い出し、何ともいえない気持ちになる。

 

「甘えるなら、お母さんのところに行ったらどうかな?暫くすれば、離乳でもう会えなくなるだろうし」

「それなら、兄さんも母さんに甘えるべきじゃ無い?」

「……精神が成熟していると、親に甘えに行くのが気恥ずかしいんだよ」

「それは私も同じなのよ、兄さん」

 

 グルーミングを一切止める事なく妹と会話をしているが、この甘えっぷりでは、本当に恥ずかしいと思っているのか甚だ疑問だ。

 

「兎にも角にも、速くなければ末路はサクラか家畜飼料か。今のうちに鍛えましょうよ」

 

 そういって走り出す妹。もう少し日向ぼっこを満喫していたかったが、仕方ない。

 前世の記憶の中に僅かに残るレースを思い出しながら、妹と自分達だけの模擬レースを始めるのだった。




 昔馬肉を食べた事がありますが、美味しいですよね。
 因みに、サラブレッドも食用可能な品種らしいですね。


 この小説は鬱、曇らせ展開がないようにしますので、安心して下さい。
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