ベルリク戦記 ー 戦争の生涯 ー   作:さっと/sat_Buttoimars

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*7-01と2/3話「西マトラ奪還作戦助攻」・ナルクス候補

 

 万歳! 西マトラ奪還作戦開始。

 セルチェス川の源流たるケテシュ山を北から越えて第一○一独立山岳旅団の雄がシレビシュ地方に巣食う悪逆たるバルリー共和国の南部軍を夜襲せり!

 北のワゾレ方面軍、中央のマトラ方面軍と違い、ケテシュ山南麓からダヌア地方に至るシレビシュ地方は原生林生い茂る未開発地域で大型砲の移送、配置が困難である。我等が労農兵士の革命精神赤熱し、人民軍の火砲熟練度は世界に冠たれど火力の不足は代替手段に頼らざるを得ない。

 即ち、軽砲と山砲と突撃砲、梱包爆薬に火炎放射器に毒瓦斯弾、銃弾擲弾肉弾そして精神力と突撃力に革命力。不足無し。

 バルリー南部軍の配置は分散傾向にあると我が軍精鋭の偵察兵同胞同志諸君が突き止めた。敵のシレビシュ防衛方針は非正規戦と国境線維持を志向し、要塞都市一つを中心に不当主張する国境線沿いに哨戒所を分散配置するというもの。哨戒所のどこかに襲撃があれば狼煙が上がり、早馬伝令が出され、中心都市より主力が投入されて逐次対処される仕組みだ。

 第一○一独立山岳旅団の労農兵士達は北部より全面に対して散開襲撃。バルリー南部軍に攻撃方向を広く見せ、対応するために敵兵が出払う。

 そして我々、三角帽子の古参親衛師団”三角頭”は百番要塞より一直線にシレビシュ中心都市ザモイラを襲撃する。

 作戦開始時点を決めるのはケテシュ山の向こうにいるベルリク=カラバザル・グルツァラザツク・レスリャジン総統閣下。物理的に直接観測が不可能なので、竜跨兵が空中投下する落下傘付き照明弾が合図となる。

 開始の合図と同時に哨戒所は軽砲により粉砕された。そこから先陣を切るのは偵察兵に並ぶ精鋭を集めた親衛突撃連隊”前進”。迅速果敢に連隊先駆けは前進して砲撃跡地に突っ込んで拳銃を連射掃射、棍棒で悪徳に染まった怯え竦み銃弾から逃れていたバルリー兵の頭蓋を打ち砕いて回り、壊走させ、残存敵を尻目に後続部隊に掃討させた。

 そして今、夜の山道を走り、偵察兵同志が先導し、つけた目印を頼りに定期的に投下される照明弾が照らすザモイラ市に肉薄。作戦開始と同時ではなく、第一○一独立山岳旅団が敵兵力を誘引してからの行動。

 軽砲兵大隊、砲兵旅団は悪路に阻まれており工兵が道を拓いているが到着は遅れる。地形にも制限があって地雷も設置されていない。だが行動の選択肢はいくらでもある。

 全周を囲む散兵、その主力の選抜射手がザモイラ要塞外にて警戒する敵兵を排除し、随伴工兵が素早く城壁内外に毒瓦斯弾頭火箭を発射、全体的な抵抗力を減じる。

 毒瓦斯の薬効は、捕らえたバルリー人で行った人体実験と結果は同様で、目や呼吸器に刺激を受けて苦しみ咳き込んでしばし行動不能。

 親衛突撃連隊”前進”連隊長大佐として指揮に棍棒を振り上げ労農兵士を鼓舞する!

「同胞同志諸君! バルリーの悪辣卑劣侵略漢を皆殺しにするのだ! 行けよ突撃、敵を殺す突撃兵!」

『わー突撃! 突撃粉砕大躍進!』

 然る後に突撃兵の最新火力、突撃砲を盾に、手押し車のように押して進んだ。敵兵の有効射程圏外からの照準がいい加減な銃撃を防盾で防ぎつつ、毒瓦斯に苦しみながら発射された砲弾が見当外れな位置に飛んで行く中で配置を行って攻撃地点を確保。

 一台、砲弾の直撃を受けて防盾が圧し曲がり、回転して押していた労農兵士が勢いで持ち手を掴んでいた手を折り、回転した砲身に膝を砕かれたが被害微小。

 突撃砲は後方に二脚を広げて設置して反動を殺す状態にし、ザモイラの東門前町へ榴弾を撃ち込んで破壊。木製家屋が砕けて木片を散らして隠れていた敵兵に突き刺さり引き裂く。木材は砲火の前ではむしろ防御施設とならず凶器と化す。

「のわっ!?」

 顔が横向いた!? これは科学的に計算された曲面を描く鉄兜と、衝撃吸収素材で象徴の三角内帽、そして闘争精神が練り上げた首が悪しきバルリーの銃弾を反らし受け止めた証拠か。敵兵にも狙撃手がいる、当然か。

 突撃砲が並べられ、火力集中可能な状態に移行。缶式散弾を発射して崩れた東門前町、城壁の上や銃眼の向こう側の敵兵へ制圧射撃。それから東門、砲台、銃眼、堅い目標へ狙いをつけて徹甲榴弾発射。破壊開始。

 防毒覆面をつけた突撃兵が前進、城壁前に掘られた塹壕へ拳銃射撃をしながら接近、手榴弾を投げ入れて更に敵を抑える。

 安全確保が一時的にされてから随伴工兵が火炎放射器で塹壕、届くならば銃眼に向けて燃える燃料を放射して内部を一掃。毒瓦斯刺激より丸焼きが苦しいようで、携帯した火薬を炸裂させながら暴れて倒れて丸くなる。

 そして我々突撃隊の先駆けが塹壕に梯子を渡して足場にし、越えて橋頭堡を確保する。

 先駆けが鉤縄で砕いた城門上部に取り付いて登攀し制圧し、続いて選抜射手も昇って突入地点を確保。追加の毒瓦斯弾頭火箭が城壁内に撃ち込まれる。

 城門に取り付いた先駆けが普段は塹壕に渡されている巻き上げ式の橋の縄を切って落とし、架ける。

 随伴工兵が徹甲榴弾で雑に崩した東門へ爆薬を設置して再度吹き飛ばして掃除。撤去に時間が掛かる瓦礫の上に板を渡す。先駆けは突撃砲の二脚を掴んで手押し車のように押して突入。

「突入突入! 革めっ! 万歳っ!」

『どおぉりゃ! ほうぉりゃ!』

 軽量化されているとはいえ大砲。板が渡されたとはいえ瓦礫上。防盾に砕ける銃弾が押し返してくる。後ろから仲間が小銃、擲弾銃で反撃。城壁の上からも支援射撃。

 毒瓦斯の効果は甚大。しかし即死するわけでもなく、建物や物陰、風向きによっては元気なまま。反射的に布で口や鼻を覆えば薬効軽減。更に目が見えずとも音と勘、位置記憶を頼りにできれば敵兵は無力ではない。奴等からの銃弾が飛んでくる。

 缶式散弾を突撃砲に尾栓から、防盾の陰から装填、雷管を付けて発射紐を引いて発射。

「世代を捧げろ! 連ぽっ! 万歳っ!』

『おうぉりゃ! そおぉりゃ!』

 ザモイラは僻地。かつてのダヌア入植失敗の代わりにとこの開拓困難な地域に余剰人口を投入しているとはいえ限界があり、中央のように田畑放牧地や川に恵まれておらず、戦略的価値に資本主義的近視眼価値しか付与出来ぬ怠惰な人間の国防意識では古典式要塞程度の建設に留まって脆弱。ただし、要塞は要塞であり、数的劣勢を覆す能力を保持する。

 毒瓦斯制圧の中、全周囲に散っていた散兵が集結。城壁の上を担当する切り込み隊が走って回って掃討、防御力を削ぎ、鉤縄でよじ登ってくる散兵達を引き入れてザモイラ要塞を肉薄包囲する。

 まずは突撃砲を東門から中央広場に通る道に設置して道を確保。動く影あらば缶式散弾を発射して粉砕。

 空が見える!?

「衛生兵さーん!」

「僕が衛生兵さんです!」

「大佐殿が倒れちゃった!」

「それは大変だ!」

 襟首を掴まれた? 引き摺られる!

「衛生兵さん! 私はこけただけだ!」

 胸の鞘に収めた科学的に計算された強度を持つ拳銃に悪しきバルリーの銃弾が当たり砕けたのだ。

 跳ね起きる。腕を上げて屈伸して腰を捻る。

「共和国大統領候補は志半ばにして死なず!」

「本当だ! 大佐殿は志半ばにして死んでいない!」

 設置した突撃砲の両脇にある建物へ突撃兵が突入。扉を破って手榴弾を投げ込み、扉閉めて爆破を待ち、爆破したら突入、拳銃と棍棒で敵の兵士か住人か知らないがまとめて皆殺し。

 脇の建物を制圧したら突撃砲は一軒分前進する。

「戦い続ける僕等が掴むぞ! 勝利っ! 万歳っ!」

『よいしょっ! こらしょっ!』

 ザモイラには東西南北の城門がある。城壁上部を切り込み隊の一部、散兵が制圧したら、東から雪崩れ込む部隊が左右に分かれて他の城門から突入を試みる。

 城壁内側沿いの制圧が完了したところから、安定して城壁の上からの散兵、選抜射手の狙撃支援がうろつく敵兵を捉えて倒す。

 突撃砲で道を抑え、敵の逆襲を缶式散弾で粉砕。突撃兵と随伴工兵が両脇の建物を順次制圧して中央広場を目指す。

「永続革命、階級粉砕! 闘そっ! 万歳っ!」

『えいしょっ! どっこいしょっ!』

 到達したら広場には入らず入り口近辺で待機。

 門からの直進道を制圧確保しつつ、脇道にも突撃兵と随伴工兵は侵入して制圧を一軒一軒確実に行う。

 悪辣な富裕層の屋敷など汚らわしく突入制圧にも時間が掛かる建物は火炎放射器が燃やす。大きな建物は安心とみたか多数の住民が愚かにも詰まっていたようで、バルリー人の末路に相応しく盛大に悲鳴を上げて喚いている。

 照明弾の光量が落ちてきて、城壁内部に滞留する毒瓦斯も地面に下がって来た。代わりの燃える建物が主な光源と化す。南北からの突入も行われ、通りと建物を制圧する銃声と砲声、火炎放射器が作る炎が見えてくる。

「突撃兵は敵が殲滅されるまで油断しない! されても油断しない! 動く者は殺せ! 寝てる者には追撃だ!」

『突撃兵は油断しないぃ!』

 東から圧力、それから南北から圧力。遅れて西からの突入が始まる。他正面が進展する間、労農兵士達は転がる人間共に棍棒と銃剣の一撃を加えて回る。

 中央広場には城郭を兼ねる教会があり、分かりやすい程に全周囲から圧迫を受けた敵兵に住民がそこへ避難を始める。分かりやすい結果になる。

 通りを制圧し、建物を虱潰しに制圧。大きな建物や雑多過ぎる貧民街は焼却。

 窓を銃眼にして最後まで抵抗する教会と庁舎と商館には突撃砲から榴弾を撃ち込み、衝撃で麻痺している瞬間に銃兵を揃えて制圧射撃を行い、随伴工兵が隙を狙って接近して火炎放射器で焼く。身を守るべき建物が篭る人間を焼く窯に早変わり。

「敵を焼却、悪徳を焼き尽くせ! 社会主義は銃口と炎より生まれる!」

 我々古参親衛師団”三角頭”は、ザモイラ占領後はシレビシュ地方の国境線を封鎖する任務があるので早々に、この地点の封鎖、山岳旅団が北から追い込んでくる敵部隊を迎撃する部隊を残して引き払い、前進しなくてはならない。残る哨戒所や域内の村等は第一○一独立山岳旅団の仕事だ。

 

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 身軽さを優先するために荷物は最小限。ザモイラで殺した人間の肉を食いながら急ぐ。

 突撃砲装備などの重量物は後続部隊に任せて親衛突撃連隊”前進”は名の如く前進。まずは国境線をなぞり、抵抗頑強な拠点があれば無理攻めをしないで迂回して行く。偵察結果は後続部隊に送られ、それに対して適切な処置が取られる。

 南方を担当する竜跨兵から通信筒が落とされる。第一○一山岳旅団の掃討作戦は順調。古参親衛師団の国境線封鎖は、砲兵の遅れ以外は順調。砲兵の代替戦力を送る、らしい。

 マトラ共和国大統領候補はミザレジ大統領の指針により、後の帝国連邦総統候補も目指すものである。帝国連邦は先進社会主義的に非世襲制。最も能力がある人物が勤めるが、能力の定義、評価されるべき項目は多岐に渡り箇条にして表すことは難しい。

 ベルリク=カラバザル総統が一つ明確に示すのは全軍の先頭に立つべき、最も優れたる軍事指導者であることだ。

 帝国連邦総統になる資格に種族は関係無い。マトラは様々な観点から未来の総統候補を育成する。仮に総統候補にならずとも、優秀な人材を育成することに代わりはなく、総統を補佐する役目でも、共和国を導くような、一将官、一労農兵士に留まろうともそれは損失ではない。最も優れる人材目指して多角的な人材を限界値まで揃えることが肝要である。

 愚かな資本主義、封建主義的な足を引き合う競争をするのではない。全人民が高次元に到達しようとする試みが継続されることが重要。結果として未来の何がしかの要職に、能力に応じて配分される。

 何れ大統領になるか総統になるか、今の立場、親衛突撃連隊”前進”連隊長である大佐に留まるか、それとも能力比較して劣り一兵卒に戻されるかは分らない。だがやるべきことは一つ、革命前進前進攻撃宿敵粉砕あるのみである!

「先は長いぞ! 革命力躍進剤服用!」

『服用!』

 皆がこの長距離悪路を迅速に踏破し、予定経路を通って目的地、要衝ラロデシツァ城を目指す活力を得る!

びっぽるぎゃっぴ(うっぎゃろばっぴ)れびょるぼるびゃ(らじゃるちょるみゃ)っぴょっぴゃっぴゃー(っきっちゃっきゃー)!』

 超力招来! 蜂蜜十割!

 足が回る跳ねるぞ活力増強! 革命烈士に革命力を足せば百になって一万倍!

 

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「一つ! 突撃するから突撃兵。前に出て攻撃、前進、打撃! 前進、打撃! 潰せ、潰せ、潰せ!」

『潰せ! 潰せ! 潰せ!』

 シレビシュ地方には哨戒所、国境警備施設が集約されずに散らばる。

 選抜射手の狙撃支援を受けながら突撃兵の突撃義務を果たして飛び込む。拳銃で掃射、棍棒でバルリー兵の穢れた知識の詰まった頭部を粉砕!

 粉砕したら前進! 昼は元気に戦う突撃兵。

 

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「二つ! 我等は革命最先端! 一歩の前進、革命前進! 前線拡大、領域拡大!」

『拡大! 拡大! 拡大!』

 村の一つ一つが小さい。我々が長年かけてケテシュ山より水源を断って迂回、農工業に利用しているため川が少なく枯れて、土地柄もあるがそれにより更に農耕に適さない。

 人口と経済と防衛能力は比例する。制度がそういった地方を補助するが後進文明はそれがなっていない。

 弱小町村の脆弱な防御施設、柵に浅くて雑な堀を越えれば訓練のなってない民兵をそこそこに排除すれば残りも滅殺!

 滅殺したら前進! 夜でも頑張って戦う突撃兵。

 

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「三つ! 科学に基づく現代戦! 軍事科学が勝利を導く! 指揮官死んでも停まるな進め! 前に出て攻撃!」

『攻撃! 攻撃! 攻撃!』

 悪路なりに人畜行き交う街道。進撃して道を拓いて安全確認、関門突撃、警備を排除。後続部隊が交通の要衝を基準に確保、通行封鎖。イスタメル州に南下する道、ウステアイデンに西進する道を封じてバルリー人を逃がさない。

 排除したら前進! 永遠に動き続けることは出来ないので休む時はちゃんと休んでうんちしてから寝るのが突撃兵。

 

 

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「四つ! 先進化学の現代兵器! 封建軍を殺せ! 侵略蛮族を殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!」

『殺せ! 殺せ! 殺せ!』

 難民をまとめる正規兵部隊を確認。数が多く、軍事科学的に考えれば単純に突撃すべきではない。だから兵器を使う。毒瓦斯弾を擲弾銃で発射して浴びせる。足手纏いの民間人が混乱して暴れ、それを統制しようと正規兵が防御を疎かにする。

 突撃兵は単純一列横隊整列、三百名。隅々残さず殺すように並ぶ。両翼に散兵を配置して逃散する敵に備える。

 防毒覆面を被った皆が両手に拳銃を持って構える。有効射程に入った敵の群れを撃つ。選抜射手が既に敵士官狙撃を開始済み。混乱は収まらず。

 二発同時発射。撃鉄を上げて輪動弾倉も回り、引き金を引いて四発目。敵が倒れる、バルリー人が倒れる。敵兵の応射は混乱の中だが我等が突撃兵に命中する。防具が防ぐ。防具の隙を縫って当たる。倒れたら衛生兵さんが後送。だが労農兵士は負傷しても不屈の闘志で復活する!

「戻って来い同志、気合だ!」

 銃弾に倒れた労農兵士に気合の張り手を打ち込んで革命精神を注入。するとその者は「ふんがー!」と過剰増血分を鼻から噴出して立ち上がる。

「不思議と元気!」

「革命精神が溢れた結果だ」

「そうなんだ!」

 脱落者を脱落とせず、突撃隊を壁にして後方から肩越しに銃兵、擲弾銃兵、後方から曲射に迫撃砲分隊が支援射撃を行う。施条有りとも拳銃の有効射程は短い。ならば他の火器でその隙を補うのだ。これこそ軍事科学!

 六発、八発、十発、十二発。小銃のように命中率は高くないが確実に敵の数を撃ち減らす。拳銃だけでも既に合計四千発近く発砲、構成によるが旅団一つ消滅させられる。それでも群れが平らにならないのだから相当に本格的な疎開集団である。

 弾が切れた拳銃を胸の鞘に戻して防具とし、もう一丁の拳銃を手に歩いて迫り、掃射しながら突撃発起の機会を窺う。

「手榴弾用意!」

『手榴弾用意!』

 片手で拳銃を撃ちながら、一発二発。防毒覆面で聞こえ辛い命令を皆が復唱して広める。三発四発、片手で手榴弾を鞄から取り出し、手首につけた火縄箱に導火線を差込み、点火、投擲! 五発、六発。

「突撃用意!」

『突撃用意!』

 撃ち終った拳銃を鞘に収め、銃弾が装填された最後の拳銃とバネ柄の棍棒を手に取る。

 手榴弾爆発! 後方部隊の支援射撃で十分に敵の群れは混乱、銃殺爆殺状態だったがここで更に吹っ飛ばした。

「吶喊! 吶喊! 突撃に進めぇ!」

『わー! 突撃撃砕バルリー殺し!」

 肉薄する前に拳銃一発、まだ立っている敵兵を撃つ。

 棍棒振り上げ、非武装のバルリー人の頭を砕く。

 棍棒で叩く! 叩いて叩き殺して、肉薄し過ぎたら鉄兜で頭突き! 距離を取って、群れの中から武器を持った脅威度の高い敵を見つけ出して拳銃で撃って、転がってる敵の肋骨を踵で蹴って砕く!

 撃って殴る! 撃って殺す! 殴って殺す! 踏んで殺す! バルリー人に生きる価値は無い。

 棍棒はいくら敵の頭を砕いて血塗れ脳みそ塗れになっても鈍らない。何度叩いても敵が死ぬ。

 敵の群れを粉砕! 闘争と殺戮に懲りず、次の目標へ向けて攻撃するのが突撃隊だ!

 

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「五つ! 拳銃撃って、棍棒振って、敵を打って、戦に勝って! 訓練通りに戦え! 戦え! 戦え! 戦え!」

『戦え! 戦え! 戦え!』

 軍事科学的には何に対してでも戦意を持って突撃すれば良いというものではない。

 城に対する肉弾突撃は自殺に等しい。古い城でも石垣が積まれれば容易に突撃できない。

 この名前も分からない古い城を包囲しつつ、後続部隊の大砲が到着するのを待つ。手持ちの火器では城内に被害は多少与えられても陥落するに至らない。工兵が梯子を準備。

 城の周囲を偵察する。城壁には砲台、旧式大砲が設置されており、梯子だけで接近しても被害は甚大だろう。この城一つに対して無闇に死傷者を出すことは科学的ではない。

 ここに至って停滞はしない。威力偵察部隊を編制して先へ進ませ、進路を開いている。労農兵士は前進を止めぬ。

 大砲到着を前にして竜跨兵が城の上空に到達。そして、魔族であろうか小さい竜のような人型が一緒に飛んでいるではないか。

 そして臭う。とてもぷんぷん臭い。腐ったような、うんこの臭いに近い。

 城が火事になる。燃え盛るとまではいかないが火の手が上がり、白煙黒煙が噴き上がり、弾薬に引火して砲台が吹き飛び始めた。

『くっさー!』

 うんちくっさーの煙に巻かれ、城から敵が逃げ出している。城壁の上から飛び降りる姿も見える。

 防毒覆面を着用。接近し、城壁外の敵を棍棒で叩き殺してから梯子を使って城壁に登り、くっさー煙に苦しんでいる敵を掃討。

 我々の使っている毒瓦斯より強力なのか、屋外はまだしも屋内には防毒覆面をつけても進入できなかった。後に風がくっさーを飛ばした後に入城すれば、中にいる敵は全て死んでいた。

 あのくっさー小竜、何者なんだ?

 

■■■

 

 前進を諦めずに前進を続けた結果、ついにはマトラ共和国情報局特別攻撃隊が封鎖を試みているはずの交通の要衝、ラロデシツァ城に到着した!

 だが、我々が革命的な俊足で駆け抜けてしまったせいかまだ彼等の作戦行動形跡が見られず、翻っている旗はバルリー共和国の醜悪な意匠だ。

 この城はバルリー中央と南部のシレビシュ地方を繋ぐ回廊に位置する。ここ一点を抑えれば作戦地方の中部と南部が切断できる。悪戯に無計画に思慮浅く愚かな拡大政策を取ったバルリーの失敗がここに表れている。防衛計画も満足に策定できないくせにあちこちに触手を伸ばすから弱点だらけなのだ。いやらしい。

 戦術眼を開くためにラロデシツァ城に近づくと、ドーンと黒い丸が見えた気がした。

「へぶ!?」

 空と地面、雲と労農兵士が何故だか交互にぐるぐる見えた。

「衛生兵さーん!」

「僕が衛生兵さんです!」

「将校斥候中の大佐殿が砲弾で吹っ飛んじゃった!」

「それは大変だ!」

 衛生兵さん! 私はこけただけだ! だが声が出ない。そうか、胸が潰れたか。

 だがしかし我が名はナルクス、マトラ共和国大統領候補だ。肉体死すとも意志死なず、意志死なずば肉体死なず。私は滅びぬ膝折らぬ。意志は不滅、肉体は不滅、革命は終わらぬ。共和国大統領候補は革命前進、停滞を知らぬのだ。

「うんぶりゃー!」

 メキョボギョって鳴って胸が膨らむ。

「うぼげー」

 肺に溜まった血を吐き出す。

「ふんがー!」

 バキメギガチっと脊椎を伸ばして立ち上がって、過剰増血分を鼻から噴出。

 胸を触るとなんと、工業労働者さん達の生産闘争の結果得られた四つの拳銃が圧し曲がっているどころか、雷管が衝撃で起爆したらしく四つとも暴発して壊れた跡が見られる! 銃弾程度なら暴発しないはずだが、流石に旧式とはいえ実体砲弾の直撃は強過ぎたのかもしれない。

「大佐殿、まっかっかです!」

「革命精神が溢れた結果だ」

「そうなんだ!」

 ここも先の古い城と同様、容易に歩兵戦力だけで突撃はできない。またあのくっさー小竜がやってくれば良いのだが、後方攻撃部隊の作戦計画にこちらから注文を付けるのは難しい。伝令の竜が近くにやってくれば良いのだが、それは都合が良過ぎる。砲兵の到着を待つのが科学的だろう。

「うおりゃー!」

 大砲に匹敵する巨大な衝突音と、女の間抜けな掛け声が合わさった。

 バルリー人の苦しみ、我等の喜びを満たす叫び声が聞こえ、そこに英雄の怒号が混じった。

 城壁内から行く筋も白煙が上がり、苦しむべきバルリー人共の騒ぐ声が聞こえた!

 そして信号火箭が城の内側から空へ、曳火してポンっと炸裂。

 城門が爆発し、片側だけだが門扉が傾いて巨大な蝶番が金属の悲鳴を上げて千切れ、倒れた。

「突撃兵! 城門は破れた、突撃だ!」

 あれに見え、聞こえるは特別攻撃隊同胞同志。軍務を勤める労農兵士の鑑!

「うぉおぉー! 突撃兵は突撃だ、先駆けぞ! 革命前進突撃前進! 我に続けうんぼるりゃー!」

『大佐殿に続けうんばらびょー!』

 親衛突撃連隊”前進”は突撃する。人間に変装した特別攻撃隊の爆破工作に乗り、ラロデシツァ城に突入する!

 堀に渡される跳ね橋は警戒態勢以前で降りたまま。そのまま前進。

 門を潜れば火災に右往左往するバルリー人共が群がる城下町。目につき敵は拳銃で撃ち倒して棍棒で粉砕!

「突入! 浸透! 粉砕! バルリーの歴史を終わらせろ!」

『わー! 後進文明撃滅撃砕!』

 撃つ標的はいくらでもいる。拳銃は距離が遠いが素早く始末するべき武器を持った兵士を始末するために優先的に使う。民衆は弾丸の節約に棍棒で粉砕!

 頭を叩けば砕いて粉砕! 肩を叩けば一撃死は望めず、足は無事だから逃げてしまうことも。元気が無くなるまで肩に背中を砕いて鈍くして、狙い易く、頭を下げさせてから後頭部を粉砕!

 城下町は避難民が多いのかごった返している。親衛突撃連隊”前進”は続々と門を越え、持てる火器を全力発揮して動く敵を始末しているが中々に弾薬が乏しくなってくる。

「火えーん放射器ばびゅーん!」

 随伴工兵が通りを埋めて渋滞する敵の頭上に向けて燃える燃料を振り撒く。

「汚泥処理だぜオェーギャッギャー!」

 汚らしい貧民街諸共汚い人間が焼けて延焼していく。混雑し過ぎている場所は突撃するにも危険が伴い、火炎放射器で一掃するのが定石。

「全隊、敵を包囲して押して追い込め! 城壁沿い回って中心部に詰めろ! 特別攻撃隊の同志は各部隊長に道案内、攻撃を先導! 追い詰めてまとめて殺せ!」

「包囲しろ!」

「追い込め!」

「まとめて一緒にドカーン!」

 親衛突撃連隊”前進”の行動方針を突入押し込みから変更。

 突撃兵は棍棒で振り払うように人間共を、家畜のように追い立てて追い詰める。全体的な包囲と、それから漏れる敵に対する個別対処が混じり合うのは仕方が無い。

「手榴弾どーん!」

 逃走に失敗して固まった敵を手榴弾で粉砕!

「火炎放射がドピュピュピュ!」

 敵が建物に逃げ隠れしたところを火炎放射器が焼却!

 銃兵は、勿論敵に弾丸を当てるが威嚇に敵を追い払うように撃つ。選抜射手は賢しらに群れから離れて状況を打開しようとする敵を狙い撃つ。

 城下町の構造は網目のように複雑。先に潜伏していた特別攻撃隊員が各部隊長を案内し、通りを制圧、建物を制圧していって敵を追い詰め、一箇所に集める。

 親衛突撃連隊”前進”は城下町を、城壁内部から包囲して、建物に篭る敵を適宜排除、追い払ってどんどん攻めて迫って城下町の中央広場へついに追い込む。遊牧民が草原でやる巻き狩りの市街戦応用だ。

 中央広場には、万は流石にいないが数千の敵、バルリー人が集結している。建物だらけで最初は把握できなかったが、一連の包囲機動で散々に殺した心算がまだまだこんなに残存している。

「追い詰めたぞ悪い奴等め! 正義の裁きを受けろ! 全隊構え!」

 突撃兵が拳銃、銃兵が小銃、随伴工兵各携帯火器を用意。

「突撃兵、銃兵、友軍誤射を防げ、足元を狙って撃て! その後、引き続き友軍誤射を防ぐ自由射撃!」

 拳銃小銃、全方位から下を狙って一斉射。数千のバルリー人の群れ、外周部が足腰を撃ち抜かれて崩れ落ちる。障害物と化した人間共がのた打ち回る。

『バルリー人を撃つと気持ちいい!』

 労農兵士が当然の感想。

「擲弾銃用意、撃て!」

 擲弾が発射され、群れの中に飛び込む。着発信管ではないので爆発するまで少し時間が掛かり、人間共が塊のまま混乱して押し合い転んで踏み潰しあって、足を撃たれた者達に躓きながら外へ逃げようとして爆発、群れが内側から弾けた。

「突撃兵追い返せ!」

 逃げようとする者達を突撃兵が棍棒で打ち、粉砕するか追い返す。

「バルリー絶滅!」

「昔やったことをやり返されてどんな気持ち?」

「ヒャヘービャッビャー!」

 友軍誤射を避けつつ銃兵が敵を撃つ。片翼包囲なら遠慮しないで連射させられるが、逃亡防止の全周包囲となるとそうはいかない。

 敵が怯えて固まるしかしなくなり、撃たれて死んだふりをする者が観測されるようになった。

「火炎放射器用意、外周部へ放て!」

 まとめて焼却処分。放たれた火炎放射が群れの外側を焼き、炎の壁を作って敵を囲い込む。

「オッピャピャー! バルリー焼きだ!」

「肉が焼ける焼けるぞー! 焼ける焼けるぞー!」

「革命烈火が古い澱を焼却処分!」

 素晴らしい。しかし、全周包囲してからの速やかな処分ができなかったようにも思える。もう少し効率的な処分方法は無かっただろうかと考える。

 炎の壁が渦を巻いて一つの火柱になり、叫びまくるバルリー人を丸焼きにする。焦げた服や焼け垂れた皮膚に脂肪をぶら下げて走ったり、うろうろして群れ外周から出てくる死に損ないは自由射撃で食い止められ、しつこくやってくるのなら棍棒や蹴り、単純な突き飛ばしで火柱へ戻すか粉砕。

「二度焼き!」

「三度焼き!」

「肉叩き!」

 城下町の掃討は大まかに終了。床板を剥がしたり倉庫を引っ繰り返して生存者を探し出すのは後だ。

 次は本丸。散兵が城の周囲に張り付いて敵兵を狙撃している段階。また本丸の門は打撃開放された形跡がある、市街巻き狩りに参加していなかった突撃隊が突入を試みている。

 次はあそこだ、城攻めだ。

「ナルクス大佐殿、突入はしなくても結構です」

「どういうことだね?」

 特別攻撃隊員がおかしなことを言う。

「あれをご覧下さい」

 人間もどきの彼が指差す高いところ、そこからはバルリー共和国の旗が次々に下へ放り投げられているではないか!

「彼女がかの軍務と労働英雄サニツァ・ブットイマルスです!」

「何とあの方が!」

 本丸の屋上、旗を捨て終わった鉄仮面の英雄、サニツァ・ブットイマルスが太くて硬くて巨大でぶっとくて強くてとってもぶっとい英雄棍棒を振りかざし、巧みな反復歩法で喜びを表現しつつ勝鬨を上げた!

「わっしょいわっしょいブットイマルス!」

『わっしょいわっしょいブットイマルス!』

 その革命的力強さに労農兵士達も勝利の舞をするに至る!

「わっしょいわっしょいブットイマルス!」

『わっしょいわっしょいブットイマルス!』

「わっしょいわっしょいブットイマルス!」

『わっしょいわっしょいブットイマルス!』

 勝利! 目標完遂! 革命的勝利、祖先を育んだ真なる故郷の奪還は間近である!

「わっしょいわっしょいブットイマルス!」

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