しかし後悔なんてものはない。ないったらない。
◆翌日◆
博麗神社。そこには二人の妖怪と一人の人間が話をしていた。
「あー……いいわぁ……あったかいわぁ……」
「……そろそろ、話をしたいのだけど?」
「んー?……いいわよぉー……なんでもぉ……」
『……ゆうかりん。俺は博麗の巫女さんに話をしに来たんだが……どこにいるんだ?』
「貴方の中でぐうたらしてるのが博麗の巫女よ。」
『あぁ?この少女が?……んなわけwwwゆうかりんがこんな小娘に負けるわきゃないだろwwww』
「実際負けてるのよねー……それも、本気の戦いで。あー……[闘い]じゃないわよ?ガチな戦闘の方よ?」
『それこそないないwwwwこんな小娘に勝てるわきゃあ……まじで?』
「マジで、よ。」
「あー……そこの花妖怪……蜜柑とりなさい。」
「はぁ……ちょっとまってなさい。じゃあこたつむり、霊夢の話し相手よろしくね。」
『ゆ、ゆうかりんがオカンしてる……っと、お嬢ちゃんが博麗の巫女さんでいいんだよな?』
「………」
「ハァッ!?」
巫女さんがこっち向いて驚いてる。何か変な顔だったかね?
「こ、こ、こたつに顔が生えてる……」
『今更ですかい!俺は!妖怪のこたつむりってんだ!さっきから話してたよなぁ!?』
「そんなん全然聞いてないわよ!って寒ッ……」
あちゃー、そんなに急いで炬燵から出たら寒いに決まってんのに……。
「うぅ~、寒い寒い……暖かい……」
なんか、ゆうかりんの心がわかりますわ。こんなにも俺という存在を喜んでくれるなんて、心奪われますわ。
『あー、うんうん。眠かったら寝ていいからね。能力で気持ちよく寝られるはずだから。』
「だぁいじょうぶよぉ……眠くなんか……な……ぐぐぐぐぐ……」
うっわー、堪えきれなかったみたいだわー、すげぇ幸せそう。
「霊夢―、とりあえずこのくらい……って寝てるの?」
『幸せそうにね。この娘、霊夢ちゃんが寝ちまうせいで、まったく……話もできやしないぜ』
「ふふっ、あなた、とても嬉しそうな顔よ?」
『あったりまえだろ?俺のことをこんなに幸せそうに扱ってくれるなんて……人間だったら惚れてますわ……てか娘にしたい。』
「いきなり気持ち悪いことを言わないでちょうだい。……まぁ、わからないってことはないけれど。」
『俺が父でゆうかりんが母?』
「炬燵と結婚とかクソワロ。頭冷やすどころか凍らせて出直しなさい。」
『あちゃー、フラレたわー……んん?なんか腹のあたりがもぞもぞするな……』
霊夢さんや、そんなに動かないでくだせぇ。くすぐったいから。
「んん……父……さん…。」
『ゆうかりん!今俺、父さんって!?』
「だ、だだだ大丈夫よ、きっとこれは私のことを言ってるはず!」
『ダメだこいつ動揺してる!……こここ、これ、本当に俺のことかね?』
「た、たとえそうだとしても、何であんたのことを?」
『んー……きっと俺のことじゃないな。俺の能力のおかげで父親が出てくる夢でもみてるんだろう。』
「あー、[心地良い眠りに就かせる程度の能力]だっけ?それなら傾けるわ。」
しかし、父親の夢が心地良い?父親のことがよっぽど好きなのかね。
『この娘の父親も幸せだろうなー、反抗期なんてなさそうだわ。』
「……父親、ねぇ。」
『……どうしたんだ?ゆうかりんよ。』
「いや、この娘の父親ってどんな人なのかってね。」
『会ったことないのか?』
「この娘は小さいころから博麗の巫女として八雲紫に育てられてきたみたいだからねぇ……父親のことは覚えてないんじゃない?」
『……博麗ってのも大変なのなー。しかし、父親がいないってのも年頃の娘にゃ辛いだろ?』
「まぁ、親の温もりは知るべきだと思うわ。」
『そこで俺は考えた。父親がいない。この娘だって父親の夢を見るほど父親を想っている。』
「そ、そうね。とりあえず私に向けて顔を伸ばさないでちょうだい。」
『つまりはですな。俺が父親になろうと思うのよ。』
「……頭大丈夫?」
『正常です。』
「……少しでいい。少しで良いから考えてみて。自分は人間で、父親が炬燵に入った亀。……グレるでしょ?」
『最高ですな。』
「ダメだこいつ、早くなんとかしないと……」
良い提案だと思うんだがなぁ?まぁ霊夢ちゃんに判断を任せるか……。
「んん……んぅ?私、炬燵で寝てたのかしら……って、あの炬燵亀で寝てたのか……あら幽香。蜜柑もってきてくれた?」
「もう、ずっと前にね。幸せそうだったから起こすに起こせなかったのよ。」
「ごめんなさいね。何か……父親の夢を見たみたいで……あ、父親っていっても本当かどうかわからないわよ?雰囲気がそれっぽいから…まぁ、その雰囲気さえもわからないのだけど。」
『……霊夢さんや。』
「あら、亀さん。どうしたのかしら?」
『父親の夢を見たのかね?』
「……えぇ、そうよ。」
『そうか。父親はいないのか?』
「そうね。私には父親どころか親がいないわよ。いや、わからないって言った方が良いわね。」
『……父親、ほしいかね?』
「……何言ってるのかわからないけど、ほしいっちゃほしいわね。周りの話を聞くに、とても暖かい存在なんでしょ?」
『そうか。……どうだ、ここは一つ……この炬燵の娘にでもなってみんかね。』
「ハァッ!?」
『いやいや、嫌ならば断っても良いんだ。だって俺亀だし。炬燵だし。』
「えっと……父親になってくれるって気持ちは嬉しいのだけど、さすがに初対面ではね……あぁ、人間じゃないってのもあるけど。」
んー、やっぱりかぁ。娘ゲットのチャンスだと思ったのになぁ。
「まぁ、話し相手としての関係なら嬉しいわよ。……えっと、こたつむり?さんだっけ。今は、話し相手で良いかしら?」
『話し相手ってのも悪くはないな。……ん?今は?今後の気持ち次第で娘になってくれるってことか?』
「……そうね。妖怪の子供っていう人間もいるし。この気持ちが変わるかもしれないから。」
『それは嬉しいな。じゃあ、よろしく頼むよ。霊夢ちゃん。』
「えぇ。こちらこそ、よろしくね。」
あぁ……なんて良い笑顔なんだ。これは是非とも娘にしたい。これから頑張ろう。
◆◇◆◇
「いきなりあんなこと言うなんて思わなかったわよ。」
『可愛かったんだ。しょうがないでしょー。』
「はぁ……あの娘が本当に娘になるって言ったらどうするつもり?」
『責任を持って育てさせていただきます。てか、あんなに可愛いおにゃのこを大切にしない親なんていませんよい。』
「おにゃのこ……なんか気持ち悪いわね。てか、今回の話で思ったんだけど……」
『ん?』
「あなた、キャラぶれ激しすぎない?」
『うっせぇ!こちとら美人に囲まれて動揺してるんじゃい!』