プロローグ
─壊れゆく街。
五条悟が両断され、日車に悠二、脹相ら他の皆も一時的に戦闘不能になった今、彼は一人で立っていた。
黒く焦げた街の中心。
大穴から立ちのぼる呪力の渦が空を軋ませ、満身創痍の男…加茂刹那は、血塗れの腕に反転術式をかけて引きずりながらも、なお前を睨み据える。
その視線の先には、最強を殺した怪物。
“呪いの王・両面宿儺”
黒い瓦礫が積み重なり、血と呪力と絶望が溶け合った廃都。
…終わりの音だ。
加茂刹那は、震える足を無理やり前へ運んだ。
赤い呪力が血管を焼きながら流れていく。
「……残りは貴様か。赤血操術使い」
両面宿儺の声は不気味なほど静まり返っていた。
だがその手に宿る呪力は、世界を消し飛ばすほど濃密だ。
宿儺の声が、崩れたビルの谷間に響く。
その声は淡々としていて、退屈すら混じっている。
刹那はゆっくり立ち上がった。
薄く笑った。
喉から漏れる血を指で拭いながら。
「……さっきから思ってたけどよ」
刹那は、ゆらりと構え直した。
「“王様”ってわりには、ずいぶんと俺に話しかけてくるじゃねぇか。寂しいのか?」
宿儺は一瞬黙り…次に深い嘲笑を漏らした。
「今の言葉、後悔する暇も与えんぞ?」
空気がひび割れた。
次の瞬間、刹那の視界から宿儺が“消え”──
背後から灼熱の呪力の奔流が迫る。
「──ッ!」
刹那はとっさに血を内部で操作する。
『赤鱗躍動』
全身の血液を瞬間的に加速させ、筋力・神経伝達速度を跳ね上げる。
刹那の輪郭が赤い残光を引きながら跳ぶと、宿儺の斬撃が地面を三百メートルほど抉った。
地形ごと、消し飛んだ。
刹那は、呼吸を整えながら思う。
(……おかしいだろ、これが“素”って。ふざけてんのかよ化け物)
「逃げるなよ?
楽しむのはこれからであろう?」
宿儺がゆっくりと振り向いた。その目に、戦意というより“暇つぶし”の色しかない。
刹那の拳が震える。
宿儺は笑う。
「ほう……その死に際の気迫、悪くない」
なに一つ“褒め言葉”ではない。
だが、構う必要はなかった。
「せいぜい足掻け」
斬撃が無数に飛んでくる。
ズドンッッ
「シン・陰流…『簡易領域』」
斬撃を中和した。
簡易領域で中和したとは言え、かなりのダメージを刹那は負った。
『落花の情』の方が良かったか…と刹那は思いつつ、目の前の呪いの王に集中する。
「その腰に下げた刀は使わなくていいのか?」
「刀はサポートだからな」
赤血操術を使うにあたって、当然両手は開けておかなければならない。
『解』
宿儺の斬撃。
今回は術式対象が空間になっている。
『赤鱗躍動・載』
かろうじて避けた。だが当然こんなので終わるわけがない。
五条が倒れた。夏油ももういない。
家入でさえ当たり前だがここにはいない。
夜蛾学長も…同じ2年の先生だった、簡易領域を教えてくれた日下部も、
生徒の…憂太に真希に棘、パンダに野薔薇に悠二、恵も今はいない。
脹相もいない。
誰もいない。
誰も助けには来ないし、来れない。
残っているのは自分ただ一人。
自分1人でこの化け物に勝つしかない。
「……赤血操術」
刹那は掌に血を集中させる。
しかし宿儺の呪力の前では、それでも“足りない”。
だから——
限界を超えるしかない。
《超新星》
赤光が膨張し、空気が震える。
脹相が一度だけ見せてくれたオリジナル。
それを数を減らす代わりにさらに圧縮した自分なりの超新星。
宿儺の表情がわずかに変わる。
「……ほう。」
それが彼から取れた唯一の“本気”の反応だった。
宿儺が指を上げる。
『解』
世界が裂ける。
刹那の放った超新星と、宿儺の斬撃が正面からぶつかり、
光と破壊で夜空が白く染まった。
「…つまらん」
…ほとんど無傷だった。多少焦げてるところもあるが、それも誤差に含まれるだろう
(逆にどうやったらこいつに勝てんだよ…!…こんの…化け物が…!!)
「仕方ない…領域展開…!《血戒熾殿(けっかいしでん)》」
世界が、赤い。
加茂刹那の領域展開には二つに効果がある。
一つ目、人などを相手にするときは相手の血をも操作できる。
二つ目、人でも、それ以外でも、この領域の中で相手に触れた血は、相手を錆びさせる。
今現在両面宿儺は、自身の血を操作され、血を抜かれ、自身は錆び、尚且つ刹那に攻撃されていると言う三重苦に陥っている。
宿儺の表情が初めて、険しくなる。
「……小癪な」
「いくら呪いの王様でも……この中じゃ、領域も使えない今じゃ逃げられねぇ!」
「赤縛──!!」
宿儺が血によって固定される。
「良い…良いぞ!もっと俺を楽しませろ!」
次の瞬間、宿儺の呪力が沸点を超えた。
「だがこれは力ずくで叩き潰すまでだぞ?」
領域がビリビリと震え始めた。
刹那は歯を食いしばる。
(無理だ……そりゃそうだろ。
王の領域を封じるなんて、普通に考えたら不可能なんだよ……!)
それでも、足は止めない。
体中の血を、さらに篭める。
もしこの領域を破られれば、刹那の身体は跡形もなく消えるだろう。
だが──それでも。
「一応まだ生徒が見てるんでね、まだまだ時間稼ぎさせてもらうぞ?」
「赤血操術…『赤翼』」
肩から血の翼が生えて、刹那は"飛んだ"。
「やはり良い…良いぞ加茂刹那!貴様は俺の想像を超えた!誇れ!」
宿儺は意外にも感嘆している。空を飛ぶなんてあり得なかったからだろうか?
「こちとら5分しか飛べないんだがな!」
上空で斬撃を避けつつ、どうせバレるから限界を伝えた刹那。
「ところで呪いの王さんよぉ…」
唐突に刹那は宿儺に話しかける。
「なんだ?」
宿儺は怪しみつつも答える。
「周り、血が多いよな?」
…宿儺の周りには凝縮された小さな血がたくさんあった。
「…血翼から血を垂らしたのか!」
「赤血操術…『超新星・破』」
脹相の超新星を威力特化にした自分だけの超新星。
あたり一面に赤が広がる。
しかし…
「何度も言っであろう…効かないと」
かなり消耗はしているが、それでも軽症と言えるような傷だった。
「これで貴様もこの鬱陶しい領域も終わりだ」
"龍鱗"
"反発"
"番いの流星"
(まずい…!!)
「赤血操術…極ノ番…!」
「遅い」
『解』
その瞬間、刹那の身体は半分以上吹き飛び、
意識は薄れていく。
(……くそ…!届かなかったか……)
反転術式をかけようとするも、血の味だけが残った。
宿儺が歩み寄ってくる。
「五条悟とまでは行かなかったが天晴れだ」
「赤血操術でここまで強くなれた者を見たのは初めてだ」
「誇れ」
「はっ…ありがたく…受け取っとくぜ…」
その言葉のあと、
刹那の意識は途切れ…
……そして、加茂刹那の生涯は幕を閉じた。
……………はずだった。
どうだったかな…楽しんでくれたら嬉しいです!
ユメ先輩助ける?
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