赤血操術使い、キヴォトスへ   作:がす

4 / 8
今更ブルアカのアニメ見たら曲が良すぎて感動した


同級生?1人しかいねぇよ

結論から言うと――

入学式には、間に合わなかった。

 

いや、正確に言えば「間に合うも何もなかった」。

 

朝七時。

ミレニアム製、紫電を纏う問題児みたいな刀がようやく完成し、セツナは半ば放心状態のままアビドス自治区へ戻った。

そこから慌ただしく制服に着替え、鞘に刀を納め、太腿のホルスターにグロック17を固定して高校まで走った。

 

しかし間に合わなかった。

 

とりあえず呼吸を一つ。

(……落ち着け)

 

そう言い聞かせても、心臓の鼓動は妙に早い。

呪力も安定している。術式も問題ない。

 

それなのに、どうにも嫌な予感だけが拭えなかった。

そして校門前に立った瞬間、その予感は現実になる。

 

「……静かすぎだろ」

自分の心臓の鼓動を感じられるほど、静寂。

 

校庭は広い。

にもかかわらず、人の気配が一切ない。高専時代以上に人の気配がない。

 

朝礼台(?)の前には、かつて誰かが並んだであろう痕跡だけが残っている。

足跡はすでに砂に埋もれ、式らしきものが「行われた」という事実だけが曖昧に残っていた。

 

(……式、やったのか?それとも中止か?)

どちらでもいい。どちらにしろ遅刻なのは変わらない。

というか、この学校においてはその区別すら意味を持たない気がした。

 

「……まあ、砂しかないような学校だしな」

そう呟いて、セツナは校舎へ足を踏み入れた。

誰もいない校庭を横切り、セツナは校舎へ向かった。

 

 

 

校舎の中は、さらに静かだった。足音がやけに響く。

古い廊下。壁のひび割れ。一部だけ砂に埋もれている教室。

 

補修された痕跡はあるが、どこか“途中で止まった”印象を受ける。

案内板に従い、一年生の教室へ。

 

(……いや、マジで人いねぇな)

呪力を探るまでもなく、気配がない。

この時点で、セツナはある程度察していた。

 

――この学校、今はほぼ機能していない。

 

…一年生の教室。

 

扉の前で、セツナは一度だけ足を止めた。

(どうせ誰もいねぇだろ)

 

この学校にはどんな事情があるのか。

自分1人でどう過ごして行こうか。

そう思いながら、扉に手をかける。

 

 

ガラガラガラッ。

 

その瞬間、空気がわずかに動いた。

「……あ」と声が聞こえた。

 

教室の窓側、左手側。

窓際の席に、少女が一人だけ座っていた。

 

小柄な体躯。桃色の髪。

左右で色の違う瞳。

アビドスの制服をきちんと着て、机に頬杖をついている。

 

この広い教室に、たった一人。

「……おはようございます」

 

淡々とした声。

警戒はしているが、驚きは少ない。

「あ、ども……」

 

セツナは一瞬、言葉に詰まった。

(……一人?)

 

「……あなたも一年生ですか?」

 

「そうなるな。加茂セツナ。苗字は事情あって嫌いだから、名前で呼んでくれ」

 

「……そうですか」

少女は軽く頷く。

 

「小鳥遊ホシノです。一応、よろしくお願いします」

 

“一応”という言葉が、妙に重かった。

この学校の現状を、その一言がすべて物語っている。

 

だが、次の瞬間。

ホシノの視線が、ゆっくりと下へ落ちた。

 

セツナの腰元。

そこにあるのは――一振りの刀。

しかも、鞘の隙間から漏れる紫色の電光。

 

沈黙。

 

ホシノは視線を上げ、刹那の顔を見る。

そしてもう一度、刀を見る。

もう一度刹那に顔を向け、また刀に視線を移す。

 

「……」

 

数秒の間。

「……あなた、刀を使うんですか……?」

 

声は静かだった。

だが、その裏にある感情ははっきりしている。

 

――困惑と、若干の引き。

「……銃じゃなくて?」

 

セツナは内心で深くため息をついた。

(あー……初対面でこれはきついし…そんなことより…)

 

「まぁ……事情があってな」

 

「……危なくないですか、それ」

 

椅子ごと、ほんの少し距離を取られる。

 

(ホシノっつったか…?こいつ、呪力じゃない…

でも、何か別の“力”を纏ってるし量がおかしい!

五条並ってどういう冗談だよ!

怖ぇ…!怖ぇよ…!!)

 

セツナは緊張とちょっとした恐怖を隠しつつ片手を軽く上げる。

「振り回したりはしねぇよ流石に」

 

「……そういう問題じゃないと思います」

 

即答だった。

 

「普通、銃ですよね……それ」

 

「否定はできねぇ……!」

 

言葉に詰まりつつ、空いている席へ向かう。

机の数だけが無駄に多い教室。

生徒は二人しかいないのに。

 

腰を下ろすと、ホシノの視線は相変わらず外れなかった。

(完全に不審者だな、俺)

 

ふと、視線が合う。

「……あの」

 

ホシノが、小さく口を開く。

「一応、聞いていいですか……?」

 

「ん?」

 

「……それ、斬ったら……死にますよね?」

 

真顔だった。

セツナは少し考え、慎重に答える。

 

「キヴォトスの人間なら、ヘイローあるだろ?

銃弾よりちょっと痛いくらいだ」

 

「……本当ですか?」

 

「嘘つく意味ねぇだろ」

 

「……そうですね」

 

一拍置いて、ホシノは続ける。

「でも……あなた、ヘイローないですよね」

 

「ああ、ないぞ?だから撃つなよ?マジで死ぬから」

 

「……撃ちませんよ」

 

わずかに、ホシノの表情がわずかに緩んだ。

「それにしても……」

 

再び、刀を見る。

「なんというか…珍しい人ですね」

 

「よく言われる」

 

「ヘイローのない中学生がゲヘナにいた…って聞いたんですが引っ越してきたんですか?」

 

「…………さあな。っていうかどこ情報?」

 

「割と有名ですよ?キヴォドス中が知ってるんじゃないですか?」

 

「プライバシーとかないんか…?」

 

こうして。

一年生二人だけの、アビドス高等学校の高校生活は始まった。

入学式も、担任も、ホシノ以外のクラスメイトもいない。

 

あるのは、砂に囲まれた校舎と、

刀を差した不審者(?)と、どこか達観した少女だけ。

――前途多難、という言葉ですら、まだ生温かった。




一応活動報告のとこでいろいろ募集中なんで是非お願いします!
あと言い忘れてたんですけど1話であった赤翼は拡張術式です

ユメ先輩助ける?

  • 助ける
  • 助けない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。