家庭教師と友人A   作:灯火円

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「おおおおお。これが沖縄の空気! これが南国!」

「うわぁ、テンション高いな」

「飛行機が着陸したあたりからずっとああだね。テンションが振り切れてるよ」

「まだ空港だってのに」

 

 一花や四葉の言葉通り、沖縄の玄関口である那覇空港に着いて早々風太郎のテンションはすでに高い。

 

「声が大きいわよ。周りの人がこっち見てるじゃない」

「すまん! しかし本州とはまったく違うんだな! 同じ日本とは思えん!!」

「二乃の言葉なんて聞いちゃいないだろ」

 

 むしろさらに声がデカくなってる。

 周りは俺達と同じく旅行客が多いがここまでテンション高いのは風太郎だけだ。

 

「ごめんなさい。こんなお兄ちゃんで」

「らいはちゃんが謝ることないよ」

「三玖の言う通りだ。風太郎はこういう日常とかけ離れた事になると妙にテンション上がるからな」

「上杉君の気持ちもわかります。なんというか非日常な場所に来たという感じがしますから」

「うん、ワクワクする! 連れてきてくれてありがとうございます!」

 

 本当、小学生だというのに出来た妹さんだな。らいはちゃんは。

 

「いえいえ、みんなで沖縄を楽しもうね」

「あぁ、お前も無事に来られて良かったぜ。試験も合格! 晴れて堂々と卒業旅行だ!」

 

 唯一の懸念だった一花も無事卒業でき、こうして笑顔でこの地にいられるわけだ。

 

「二人のおかげだよ。ありがとね。セージ君、フータロー君」

「夏休み以降はずっと一花の勉強は誠司担当だったから俺にお礼は」

「いやいや、みんなを無事卒業させてくれたのは二人のおかげ。姉としてお礼を言わせてよ」

 

 そもそも、俺達が家庭教師としての本来の目標は五人を卒業させることだったわけだしな。

 

「けど、一花も頑張ったよ」

「うん! ちゃんと仕事と両立出来てたのはさすがだね」

「お? これはお姉ちゃんとしての威厳もアップしちゃったみたいだね。ふふーん、もっと褒めてくれてもいいよ?」

「調子に乗らない」

 

 三玖と四葉の言葉に鼻高々にする一花にすぐさま釘を刺す二乃。

 風太郎もテンション高いけど、一花も結構高いよな。

 

「じゃ、まずは旅行プランの確認をしておきましょ。フー君たちにはまだ説明してないわよね」

「そうだね。えっと」

 

 二乃の言葉に一花はカバンを探る。

 

「はい、これ。らいはちゃんもどうぞ」

 

 一花から渡されたのは冊子、そして表紙には卒業旅行のしおりとまで書かれている。

 

「わざわざしおりを作ってきたのか。気合い入ってるな」

 

 しおりにさらにテンションを上げる風太郎。

 俺は渡されたしおりの表紙をめくると最初のページは日程が書かれていた。

 日程は六日間、だけど今日と最終日は移動にあててるから実質四日。

 明日は定番の首里城、その後に国際通りと美浜アメリカンビレッジ。

 三日目、海洋博公園。有名な美ら海水族館がある所か。その後は海。

 四日目は、おきなわワールドとその周辺。

 最後はまた海行ってバーベキューか。

 

「すごい、盛りだくさんだ!」

「あぁ、見てるだけでワクワクしてくるぜ」

「えへへ、お褒めにあずかり光栄です」

「これでもかなり絞り込んだよね? 四葉」

「うん! 沖縄って行きたくなるところがたくさんでかなり悩んだよね」

 

 俺達も沖縄を提案する時に色々と観光地やら楽しめる所多いから選んだからな。

 

「試験勉強と平行でよく作ってくれたよ。お疲れさん。ありがとうな」

 

 俺は一花の頭を撫でるとさらに一花は俺の方へと距離を詰める。

 

「えへへ、今日はたくさん褒められてる」

「はいはい」

 

 実際、よくやってくれたと思うからな。

 

「今日はもう、どこにも行かないってことだよな?」

「うん、ホテルにチェックインして夕食にしようか」

 

 一花の言う通り、ホテル着く頃には夕食の時間になりそうだ。

 

「じゃあ、さっそくタクシーで」

「いやいや、それはもったいないぞ!」

 

 四葉が目の前のタクシー乗り場へと向かおうとするのを風太郎が止めた。

 

「沖縄に来たんだし、ゆいレールに乗ろうぜ!」

 

 ゆいレール、沖縄はほぼ車が必須というほど電車等の交通網が少ない。その唯一がゆいレールだ。

 

「あ、はい。そうですね。せっかくですし」

 

 風太郎の勢いに押され、四葉は風太郎の案へと変更する。

 

「ですが、ゆいレールに乗るならば出口はここではありませんね」

 

 五月の言うとおり、タクシーで移動を考えてたからタクシー乗り場のある出口に俺達は来たからゆいレールの乗り場とは違う。

 

「なに!? なんてこった。出だしから躓いてるじゃないか! 急ぐぞ!」

「躓いた原因は風太郎だろ。と、その前に一枚撮るぞ」

 

 俺は今すぐにでも駆け出そうとする風太郎を引き止め、カメラを向ける。

 そうして一枚撮り終えた所で俺達はゆいレールに乗ってホテルへと向かった。

 

 

「すごーい」

「これは……想像以上だな」

「中野先生に感謝だな」

 

 ホテルに着いて早々俺達は立派なその内装に驚いていた、

 内装だけじゃなくプールやフィットネスセンターも完備していて施設も充実。

 さらに観光地からアクセスしやすい立地。

 結局、宿泊代は中野先生が出してくれる事になった。

 最初は断ったんだが、家庭教師としての依頼達成と卒業のお祝いと押し切られてしまった。

 

「おおー、思った以上に良い感じ!」

「ここ、レストランの評判もいいんですよ。様々なジャンルを網羅していてスイーツも極上だとか」

 

 四葉が周囲を見渡してる横でスマホでここのレストランの情報をチェックしている五月。

 

「ラウンジからの夜景も素敵らしいわ。夜になったら行ってみましょ」

「お前ら、平然としてるが旅行ではいつもこんなホテル使ってるのか?」

 

 俺達よりも感動が薄いというか慣れている姉妹達に風太郎は気になった事を質問すると三玖が首を振った。

 

「さすがにいつもじゃない」

「せっかくの卒業旅行だからとお父さんが少し奮発してくれたようです」

「これで少しなのか」

「中野家ってこういう家だったな」

 

 慣れたつもりでいたけど、中野家が俺達とは数ランク上の生活を送っていることを思い知らされる。

 

「では、このホテルを拠点に沖縄を目いっぱい楽しみましょーう!」

「ああ! 当然だ! ガッツリ楽しんでやるぜ!」

「二人共、騒ぐのはそこまでで。周りに迷惑かけてしまいますよ」

「あはは……」

「すまん……」

 

 やっぱ、こういう所はお似合いだよな。この二人。

 

「お待たせ。チェックインすませてきたよ」

「おう、ありがとうな」

 

 一花はチェックインを済ませ戻ってきた。

 

「予約はツインルームが四部屋なんだよね。部屋割りどうしよっか」

「間取りはどこも一緒ですか?」

「うん、広さも設備も全く同じ」

「同じ階の並びで取ってあるって」

 

 中野先生、本当色々と気を利かせてくれてるな。

 一花と四葉の説明に改めて俺は先生に感謝する。

 

「じゃあ、上杉さんはらいはちゃんと一緒がいいですよね。あ、それとも長尾さんと」

 

 部屋割りについて四葉からまずそう提案された。

 

「あんた、それでいいの?」

 

 そんな四葉の案に二乃がもう一度四葉に確認する。

 

「え? なんで?」

 

 四葉としては何も変なことは言ってないと思っている為、二乃の問いに首を傾げる。

 正直俺もその案は悪くないと思っているが。

 

「なんでって」

 

 二乃も呆れて言葉が出てこない様子。

 

「えーっとね。四葉さんはお兄ちゃんと一緒じゃなくて良いの?」

「ららら、らいは!?」

 

 そこに気を利かせてずばっと言ったのはらいはちゃんだった。

 

「へ……?」

 

 そして数秒後に顔を紅くし汗をかく四葉。

 

「はぁ、まったくもう」

「どうする? フータローと一緒にしておく?」

「そそ、そ、そんな恐れ多いことを!?」

 

 二乃がため息を漏らす横で三玖が四葉に改めて聞くが四葉は首を勢いよく横に振った。

 

「なにそれ、意味分かんない」

「うーん、四葉はらいはちゃんよりお子様だったか。さすがに心配になっちゃうなー」

「で、ですが! さすがに同じ部屋は問題があります! いくら、その……お付き合いしているとはいえ」

「と、当然だ。ここは俺と誠司が同じ部屋で。らいはは……四葉と」

「うん、私はいいよ」

「俺も風太郎の意見に賛成かな」

 

 俺はちらりと一花の反応を見る。

 

「なら、あとは上から順番で行こうか。私は二乃とで」

 

 特に何も言わず率先して部屋割りの案を出す一花。

 そんな一花に俺は少し拍子抜けした。

 同じ部屋が良いって言われたらそれはそれで嬉しいと思う男心というか。

 てか、もしかして俺は一緒の部屋が良いと言われるのを期待してたのか?

 あー、健全にとか思いつつ実は期待してたとかなんかハズい。

 対して一花はその辺は弁えてる感じ。

 

「いいけど、散らかしたら追い出すから」

「あははは、善処しまーす」

 

 そういや、撮影で借りてるホテルの部屋もひどいよな。

 

「最後のひと部屋は私と三玖ですね」

「うん、いいよ」

「では! 部屋割りも決まったことですし、さっそくレストランへ向かいましょう!」

 

 そう先陣を切るのは五月。そうして俺達は荷物をベルパーソンに任せ、食事を先にする事となった。

 しかし、こういう場では姉妹達の方が慣れてるな。

 てか、高校生の卒業旅行にこんな良い所に泊らせてもらって本当に良いのか?

 

「ふふ、大丈夫だよ。セージ君」

「ん?」

 

 スッと俺の隣に来て俺の肩を叩く一花。

 

「なんか、気後れしてるみたいだけど、たまには贅沢したって怒れないって」

「俺、顔に出てたか?」

「フータロー君ほどわかりやすくはないけど、見てたらわかるよ」

 

 やっぱ、一花には気付かれるんだな。

 

「落第寸前だった私たちを無事に卒業させて自分も難関大学に合格するほど頑張ったんだよ。そのご褒美。それにお父さんだって楽しんで欲しいと思ってるよ」

「……だな。うし、こうなったら思う存分楽しむか」

「うんうん。それじゃ、沖縄料理を堪能しに行こう。って、四葉。いつまで惚けてないで行くよ」

「はっ!」

 

 一花に声を掛けられるまで四葉の思考は別の所へと行ったままだったようで。

 そして四葉はらいはちゃんに励まされつつ、らいはちゃんと手を繋いでレストランへと向かう。

 四葉と風太郎、この旅行で少しは進展あるといいんだが。

 

 

 

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