家庭教師と友人A   作:灯火円

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 そして国際通りに着いた訳だが、店がずらーっと並んでいるのもあってここではそれぞれ別行動を取ろうという話しになったのだが。

 

「その前にひとつ良いか? 実は相談がある」

 

 風太郎は先ほどの話を姉妹達に聞かせる。

 

「みんなでお揃いの記念品ね。フー君にしては気が利くじゃない」

「私も上杉さんのアイディア、とっても良いと思います!」

「私も大賛成! きっと一生の思い出になるよ」

「どんなものがいいかな?」

「みんなで気になったお店で探してみましょう」

 

 五つ子達の反応も悪くなく、そうして各々が良いと思う店へと向かうことに。

 さて、俺はと考えていると一花と二乃がまだ残っていて俺は声を掛けてみる。

 

「行かないのか?」

「あ、セージ君。お店に行く前にどういう方針で記念品探すか決めておこうと思って」

「やっぱり身に着ける物がいいかしらね。せっかくなら持ち歩きたいわよね」

「なら、ホタルガラスのアクセサリーがいいかもしれない」

 

 一花から出た案は女性ならではというか。やっぱ女性陣はアクセサリー関係の方がいいか。

 

「ホタルガラス? 蛍石のこと?」

「そっちじゃなくて沖縄の海をイメージして作られた青のトンボ玉だ」

 

 ガラス工芸品のひとつで沖縄では有名なお土産のひとつでもある。

 

「そうそう。あっちにお店あったけど、ネックレスとかピアスとか色々あって良い感じだったんだ」

「へぇ、いいじゃない。青ならフー君やあんたも似合いそうだわ」

「アクセサリーか」

 

 男の俺達に似合うかどうかだが。

 

「ふふ、私がセージ君に似合うの選んであげるよ」

「あー、それなら助かる」

「大体二万円くらいだしね」

「まぁ、それくらいならありね」

 

 さらっと話すから俺も流されそうになったが、二万はちょっとあれだろ。

 特に風太郎の事を考えるとこのまま中野姉妹の金銭感覚に合わせると危ない気がする。

 

「あー、ホタルガラスの他にも色々あるだろうし他も見て回ろう。他に気になったのなかったのか?」

「あとは有名な染め物があったわよね。名前はえっと」

「染め物か。小物なら手軽そうだね。着物もあったりするのかな?」

「どうせなら本場の職人さんの所に行ってオーダーメイドなんて」

 

 小さな小物ならと俺も考えていたら話は着物、そしてオーダーメイドの話へとなっている。

 

「まてまて。オーダーメイドなんて時間かかるだろう」

 

 それにそれも金額がとんでもなくなるのは間違いない。

 

「なら、あんたは何か案ある訳?」

「俺か? そうだな」

 

 とりあえず、風太郎の事も考えると予算設定だよな。

 

「手当たり次第候補あげても大変だろう。ここは条件を絞った方がいい。そうだな。まずは予算」

「予算?」

「あ……そうだよね。予算も大事だよ。うんうん、私もそう思うな」

 

 さすが一花、俺の気持ちを汲んでくれたみたいだな。

 

「ほら、堅実な金銭感覚っていうのかな。こういうお土産ひとつとっても普段から心がけが試されるよね」

「なに? 急にどうしたのよ」

 

 俺としてもそんな深い意味で言ったつもりはないが。

 

「大切なことを思い出しただけだよ! お財布の紐はしっかりしておかないと。ちゃんと家計簿つけたりしてさ」

 

 そういや、アパートの時は一花が生活費出して管理してたみたいだもんな。

 

「経験者はわかってるってわけか」

「まぁね。毎日、数字とにらめっこで大変だったよ。ま、まぁそのおかげでこういうのは得意になったような気がするし?」

「稼いでいるならその辺はあまり気にしなくてもいいが、やっぱり家計のやりくりは大事だからな」

 

 あのアパートの生活で一花もお金の大切さを身にしみたか。

 いや、そもそも中野姉妹は先生と一緒になるまではアレだったらしいからな。

 本来ならお金の大切さわかってるはずなんだろうけど、慣れって怖いな。

 

「はは、そうだよね」

「……なんなの。このやりとり」

「どうしたの? 二乃」

「別に。おしゃべりはこれくらいにして記念品探し再開するわよ。私は違う所見てみるわ。恋人二人の邪魔したくないし」

「ちょっと二乃」

 

 そう言って二乃はひとりで行ってしまった。

 余計なひと言はあったが、二乃なりに気遣ってくれたのはわかる。

 

「とりあえず、二人で回るか」

「う、うん」

 

 そうして俺と一花は二人で回ることに。

 すると織物を扱っている店の前で三玖を見つけた。

 

「三玖」

「何か良さそうなのあった?」

「セージ、一花。これ、スマホケース可愛いなって」

 

 そうして見せてくれたのは織物のスマホケースだ。

 

「お揃いの柄のパスケースもあるんだ」

「あ、サコッシュもある! これは揃えたくなっちゃうな」

 

 一花と三玖は他の小物類も見ていく。

 こういうのも女子が好きそうだもんな。

 

「記念品にもいいかな。お揃いのポーチとか。柄は同じだけど色違いとか逆に柄は違うけど色は同じにしてみるとか」

「でも、フータローとセージには似合わないかも。ポーチは可愛すぎる」

「そりゃそうだろ」

 

 せめてパスケースくらいが俺達男性陣には丁度いいだろう。

 

「えー、でも可愛いの持っている男性も……ごめん、セージ君とフータロー君で想像したけど」

「勝手に想像して笑うなよ」

 

 俺の方は想像しただけで鳥肌が立つってのに。

 

「あ、バレッタも可愛い」

 

 三玖はそう言って手に取った。

 髪留めだよな。

 

「これとか三玖に似合いそう」

「そうかな?」

 

 そう言って一花は三玖に似合うそれを取って髪に当てる。

 俺も並ぶ商品達を眺めていると一花に似合いそうなバレッタを見つける。

 

「一花」

「ん?」

 

 俺の呼びかけに振り返った一花にバレッタを当てる。

 

「うん、一花も似合ってるな」

「え、えーっと……あ、ありがとう? でも、その」

「ん? 好みじゃなかったか?」

 

 俺としては似合うと思ったけど本人は違うか。

 そう思って一花の頭に乗せていた手をどけようとしたが。

 

「ち、ちがくて! その、頭撫でられてるみたいで。ちょっと恥ずかしいかなって」

「な、なに今更……昨日だって」

 

 これまでだって撫でる事くらい何度もしてきたってのに今更恥ずかしがられると俺も感化されるわけで。

 

「そうなんだけど」

「おほん」

 

 突然の咳払いに俺と一花は距離を取る。

 

「別に二人が仲良いのは良いけど、私がいること忘れないで」

「わ、忘れてるわけないじゃん! ほら、記念品探しに戻ろう!」

「そ、そうだな。とりあえずこれも候補には入れておこう」

「はぁ……四葉達もこれくらいだといいんだけど」

 

 それから待ち合わせの時間になり全員集まったが、記念品探しでこれという物はまだ誰も見つけられていない様子。

 次に行くアメリカンビレッジでも引き続き記念品探しとなった。

 

 

 

「また雰囲気がガラッと変わるな」

 

 アメリカンビレッジ。その名前の通り、アメリカの街並みのリゾート地らしい。

 商業施設はもちろん観覧車もあってちょっとしたテーマパーク感がある。

 

「観覧車から海見えるのかな?」

「見えますよ! 何なららいはちゃん、四葉と乗りましょう!」

「わー! ありがとう! 四葉さん!」

「その前に記念品探しな」

「あ、そうだった。観覧車は時間あったらにしようかな」

「あ」

 

 風太郎の発言に少し気を落とすらいはちゃん。

 さすがに風太郎も妹ラブなだけにその姿には少し焦る。

 

「でしたら夕陽が見える時間にしますか? きっと綺麗ですよ」

「それいい! 五月ナイス! 夕方に乗りましょう。らいはちゃん」

「うん!」

 

 また笑顔に戻ったらいはちゃんを見て風太郎はひと安心な様子。

 

「夕陽と言えば。ここ、ビーチも近いんだよ。サンセットビーチっていうところ。名前の通り夕陽がよく見えるんだって」

 

 さすがしおりを作ってくるくらいだ。しっかりここに何かあるか把握している一花に俺は感心してしまう。

 

「とりあえずショッピングでいいのかな?」

「そうね。時間が余ったら他も行ってみましょう」

 

 三玖の提案通りまずは店を見て回ることに。

 

 

「思ってたより店が多い。つか、建物入り組んでるな」

「こりゃ、大人でも迷うぞ」

 

 風太郎の言う通り、店も多く建物も入り組んでいる為初めて来る俺達にとって迷ってもおかしくない作りだ。

 

「四葉なんて油断したらいなくなってそう」

「ありえる」

 

 一花の言葉に三玖も頷く。

 

「つーわけだ。しっかり掴まえてろよ。風太郎」

「わ、わかってる。いざという時はスマホで」

 

 俺がそれなりにパスを出してみたがそういう事じゃないんだよ。

 

「はぐれないように手を繋げって話だ」

「……あ。そう、だな」

 

 これで本当にキスまでいけるのか?

 そんな心配をしつつ店を見て回ると一花は家具屋の前で足を止めた。

 

「記念品にはちょっとあれだろ」

「そういうんじゃなくて少し興味があって見てただけ」

「興味ね」

 

 見た感じアメリカの家具中心って感じだ。

 中野家ならこういうのも合うだろうな。

 

「え、えっと……新しい家具ってよくない? 部屋は一緒なのに新生活って感じがしてさ」

「まぁ、その気持ちはわかるな。んで? 一花はこういうのが好きなのか?」

「なになに? セージ君はお姉さんの好みが気になる?」

 

 出たな。このお姉さんテンション。

 

「気にならないって言ったらウソにはなるな」

「そっか……なら、ゆっくり教えていってあげる。私の好きなもの全部。だから、セージ君も教えてね」

 

 そういや、まだまだ一花の事で知らない事たくさんあるもんな。

 

「わかった。んで、家具はどんなのが好きなんだ?」

「それは、まだひみつ」

「なんだそれ」

 

 教えてくれるって言ったそばから秘密はないだろ。

 

「はは、ところでセージ君は引っ越したあとの事とかもう考えてたりする?」

「引っ越したあと?」

 

 どういう意味だそれ。

 一花の質問の意図がわからず俺は首を傾げる。

 

「と、特に何ってわけじゃないんだけど。いつまで一人暮らしするつもり。とか」

「いつまでって。とりあえず在学中はずっとだろ。あとは就職先次第ではあるが。地元戻ってくるかどうかで変わるからな」

 

 東京ならそのままだし、地元なら実家戻るのも視野には入る。

 一応、母さんひとりだしな。

 

「あー、そう、だよね」

 

 昨日もそうだったけど、なんかやっぱおかしいよな?

 煮え切らないというかなんか引っかかるところを一花に感じる。

 

「なぁ、一花」

「長尾君、ちょっと良いですか?」

「ん?」

「あちらの建物が素敵でらいはちゃんと写真撮りたいなと」

 

 五月が指差したのはいわゆる映えスポットと言う所。

 思い出作りのため、断る理由はない。

 

「あぁ、わかった」

 

 そうして俺は五月に頼まれらいはちゃんと五月の写真を撮る。

 せっかくだから他の姉妹もと思って振り返ったが一花達はいない。

 

「風太郎、一花達はどうした?」

「あいつら、なんか気になる店があるって行っちまった」

「そうか。て、戻ってきたな」

 

 そうこう話している間に姉妹達は戻ってきた。

 

「おーい、せっかくだから写真撮るぞ」

「らいはちゃん! 四葉とも撮りましょう」

「うん、いいよ」

 

 その前に風太郎と撮るという発想にならないのか?

 その風太郎は関係ないみたいな態度だし。

 それから風太郎も交えて二乃、三玖と撮っていく。あとは一花だけど。

 五月とまだ何か話している様子。

 

「一花、写真撮るけど」

「わっ、セージ君!?」

「驚く事ないだろう。てか、随分と話し込んでたけど良い記念品でも見つかったか?」

「あ、いや、それは」

「そうじゃなくてそろそろお腹空いたねって五月ちゃんと話してたの」

「なるほど。そりゃ、大事な話だ」

 

 五月にとっては死活問題だろうしな。

 

「あの、生暖かい目が気になるのですが」

「いや、俺も腹減ってきたところだからな。んじゃ、写真撮り終えたらどっか店に入るか。ほら、写真撮ってないのは一花だけだぞ。五月と並べ」

「あ、うん」

「うー!」

 

 何故か五月は不満そうに唸っていたけど、別に腹が減ってる事を悪いとか思ってないんだけどな。

 そうして写真撮り、アメリカンビレッジ内の店で軽く食事を取る。

 その後も店を回って夕方には観覧車に乗ってそれからホテルへと戻った。

 記念品に関してはここでも見つからず。

 けど、まだ日程は残ってるから焦る必要もないだろ。

 明日行く場所でも色々見て決めれば良い。

 

「さて、夕食はさっき済ませたからあとは寝るだけか。このまま解散で良いよな?」

「だな。あとは各々で」

「あ、待って」

 

 俺は風太郎と共に部屋に戻ろうとしたら一花が呼び止めた。

 

「一花?」

「え、えっと」

 

 まただ。

 どうも旅行中は時より言い淀む時があるんだよな。

 

「フー君、長尾。急なんだけど今日から部屋割りを変えることになったわ」

「は? いつの間にそんな話を……さては一花が手に負えないくらい部屋を散らかしたか?」

「フータロー君、失礼すぎない?!」

「えっと事情がありまして、上杉君と四葉とらいはちゃんが同じ部屋という事になりました」

 

 それを聞いて俺は察した。

 つまり、四葉と風太郎の為に姉妹達がひと肌脱いだって事か。

 らいはちゃんがいるのはさすがに色々配慮してだろうけど。

 

「……は?」

「だとさ。風太郎」

 

 俺はポンッと風太郎の肩を叩き無言のエールを送る。

 

「それで、セージと一花が一緒で。私と五月は変わらず二乃が一人部屋。そういう」

「ん? 待て。なんで一花と俺が」

 

 三玖の説明を聞いて思わず口を挟む。

 

「えっと、私と上杉さんが一緒なら一花と長尾さんも一緒の方が公平かなと」

「それに、あんたは一花のあの癖が出た時もわざわざ部屋出て行くことだし。あんたら二人きりにしても間違いは起こらないでしょ」

 

 それは俺がかなり頑張った結果なのがわからないのか。

 いや、信用されてる事は嬉しいけどさ。

 

「そもそも旅行に来てまでこれ以上一花の面倒見たくないわよ」

「二乃、それが本音だろ。散らかる部屋を片付けたくないってのが本音だな!」

 

 俺が二乃に詰め寄ると視線を逸らされた。

 図星だな。こいつ。

 

「つまり、一花を誠司に押しつけるために俺は四葉達と一緒になったわけか」

「いや、むしろ風太郎達のあれで俺が」

 

 おそらく一花と俺の件はあくまでも風太郎と四葉を一緒にする為の延長線だと思うんだが。

 

「あー、うるさいわね。もう決まったことだから」

「厳正な協議の結果だから」

 

 三玖さんよ。その協議に俺らは呼ばれていないから果たしてそれは厳正なのか?

 

「なーに? お姉さんと一緒だと困るのかな? お姉さんと二人きりで」

 

 一花は一花でこっちの気も知らないで。

 

「一花……そういうの止めろって前々から言ってるだろ」

「あ」

「一応、大切なことだからさ。俺は出来ればそんな軽いノリでその、事を進めたくない」

 

 恋人同士になっても俺は一花のそういう冗談に対しての姿勢は変わっていない。

 

「……ごめんね。大事にしてくれてるんだね」

「当たり前だろうが」

 

 付き合う前から一花のこの手の冗談については注意してきたが、付き合ったからと言って許されるわけでもないというか。

 付き合ったからこそ冗談でそういう事をしたくないという気持ちがより強まっている。

 

「ねぇ、三玖。私たち、何を見せられてるのかしら」

「のろけ……」

「ま、まぁ。これで長尾君と一花が二人きりでもその、そういう事にはならないというのはわかりましたし」

「な、ななんか、すごい大人な会話を一花と長尾さんがしています」

「誠司、そういう話はらいはのいないところで頼む」

 

 俺だってするつもりはなかったっての。

 そうして部屋割りが変わり、風太郎が出て行くのを見届け俺は少し落ち着かない様子で部屋にいることになった。

 

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