家庭教師と友人A   作:灯火円

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「それらしいのあまりなかったな。風太郎は何か良いのあったか?」

「俺も同じだ。難しいもんだな」

 

 ショップを見たがピンと来るものがなく、この後はビーチの予定ではあるがもう少し海洋博公園を見て回る事になりまた自由行動となった。

 二乃も三玖も少し休憩なのかこの場ではあまり風太郎に構う事はしないようで風太郎と俺の男性陣だけで今は行動中。

 

「ん? 五月と一花か」

 

 風太郎の視線の先にはイルカショーが行われる施設の前に一花と五月がいた。

 俺と風太郎は二人と合流することに。

 

「あの大きな水槽を見ながら?」

「すっごく良い雰囲気だったよ」

「なんの話をしてんだ?」

 

 一花と五月の会話に入る風太郎。

 

「あ、フータロー君にセージ君。えっとね。さっきセージ君と一緒に行ったカフェの話」

「カフェなんてあったのか?」

「私も気がつきませんでした」

「一花のとっておきだったからな。席も丁度水槽の目の前で魚もよく見えた」

「でも、居心地良すぎてすっかり長居しちゃったよね」

 

 結局、俺たちはあの大水槽くらいしか見てないことをあとになって気付いたからな。

 

「風太郎と五月はどこ見てたんだ?」

「俺はなんかそんな余裕はなかった」

 

 その時を思い出したのか風太郎はため息をもらす。

 二乃と三玖のあれで逃げ回ってたのか。

 

「えっと、私は色々見て回ってましたが印象的なのはサンゴの水槽でしょうか。魚も沖縄の生態系を再現していて、普段では見れない魚も多く見ごたえがありましたし。場所によって景色が違う海中の生態系の多様さを思い知りました」

 

 おすすめの飲食店を教えてくれる時と同じくらいの熱量で五月は俺たちに見たものを説明してくれた。

 

「五月ちゃん、めちゃくちゃ生き生き話してるね」

「あ、すみません。つい」

「ううん、もっと話してよ。聞いてるだけで楽しいから」

 

 五月の話は俺も興味深く聞き入っているくらいだった。

 

「あぁ、ただ見てるだけじゃなくて学ぼうとしていたんだって伝わってくるぞ。感心、感心」

「風太郎、教師目線だな」

「そ、そんな。たまたま係の人の説明を聞く事が出来ただけで。丁度、餌やりの時間になって係員さんが解説してくれたんですよ」

 

 当たり前だけど、水族館だと係員さんは専門的知識持ってるよな。

 

「それで、驚いたんですが、魚の中には一週間に一度しか餌を食べない種類もいるそうなんです! 一週間に一度だけですよ!」

「え、そんなに驚く事か?」

「上杉君何を……驚きしかありません! 食事の楽しみが週にたった一回だなんて考えられませんよ」

 

 五月からしたら考えられないだろうな。

 五月が一食なんてなったら俺も心配するくらい五月にとって食はただ生体維持に必要というだけでなく、人生の彩りにもなっているから。

 

「毎日に食事が楽しみなのは人類共通の想いでしょう?」

「そういう考えもあるよな」

 

 風太郎はそこまで共感を持っていない反応を見せる。

 こいつ、食とかあんまこだわり無いもんな。

 

「え……まさか上杉君は週に一度でいいんですか?!」

「良いとう言うか。それで生きていけるなら便利だと思うぞ? 飯に掛ける時間を節約できる」

「合理的で風太郎らしい答えなことで」

「そ、そんな考えがあるなんて……長尾君もまさか」

「いや、俺は風太郎ほどじゃないから。ま、集中してると飯面倒になることはあるが」

 

 実際、武田との全国模試の時とかは普段よりあまりしっかり飯は食ってなかったし。

 

「なんか、セージ君の一人暮らしが急に心配になってきた」

「いや、さすがに俺も倒れるようなことにはならないって」

「約束だよ?」

「あぁ。むしろ風太郎の方が」

 

 俺の言葉に一花や五月も共感するように風太郎を見る。

 

「俺だってそこまでにはならん」

「どうだろうな?」

 

 俺は風太郎に疑いの視線を向ける。

 これまではらいはちゃんが何だかんだ世話焼いてきたようなやつだからな。

 

「四葉にはしっかり風太郎と連絡取り合ってもらって様子がおかしくないか確認してもらうか」

「なんでそこで四葉が」

「なんでってそりゃ、風太郎の彼女は四葉だし」

「っ」

 

 あーあ、いちいち彼女って言葉に顔を紅くして。

 一花じゃないが、からかいたくなる気持ちもわかる。

 

「ですが、そういうのと関係なく。日頃からお互い連絡を取り合うのは大事だと思いますよ。ただでさえ遠距離となるのですから」

「わ、わかってるさ」

 

 やっぱ、そういうの大事なんだろうな。

 これは俺にとっても他人事ではないからな。

 一花の方を見るとどこかぼーっとしている様子。

 

「一花?」

 

 声を掛けるがワンテンポ遅れて一花は反応した。

 

「へ?」

「どうした?」

「あー、ううん、何でも無いよ。そろそろ移動だなって考えてただけ」

「そういえばそろそろ待ち合わせの時間ですね」

「それじゃ、戻るか」

 

 一花の言葉に五月と風太郎は待ち合わせの場所へと向かう。

 それに続いて一花も歩き出すのだが。

 

「なぁ、一花」

「ん?」

「大丈夫か? なんかぼーっとしてたけど」

「あー、ちょっと考え事してただけ。ほら、四葉だいぶ混乱してたみたいだから」

「混乱しない方が無理だろ」

 

 急に姉妹達が想い人にまたぐいぐいと攻め始めたんだからな。

 

「うん、だからちょっとフォローしようかなって」

「……やっぱ一花はお姉ちゃんだな」

 

 五つ子だとはいえ、一花はしっかり長女という意識を持っている。

 それが今でこそ自分のやりたいことでもある女優にも繋がっている。

 

「てな訳で、ちょっと先に行くね」

「あぁ」

 

 そういう事なら俺は引き止める訳にもいかず、一花を先に行かせた。

 この卒業旅行は俺と一花の思い出作りってのも大事だけど、それと同時に姉妹達の思い出作りでもあるからな。

 それから少しして全員が待ち合わせの場所に集まったのを確認し、一度ホテルへと戻り支度が終わり次第海へと繰り出す事に。

 

 

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