家庭教師と友人A   作:灯火円

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「そっか。フータロー君、お父さんと話すんだ」

 

 夕食の時間、中野先生の計らいで一花と俺の分はホテルの人が持ってきてもらい俺たちは部屋で食事を取りながら風太郎の件を俺は一花に話した。

 

「それも一人でな。四葉が間に入ればまだ話しやすいだろうに」

「フータロー君なりの覚悟ってことかな」

 

 明日、風太郎は先生と二人きりで話すという事になった。

 それも場所は万座毛という海岸沿いにある風景の良い場所、ただ断崖絶壁らしいが。

 

「ふぅ、ごちそうさま」

「食欲はまったく無いって訳じゃなさそうだな」

 

 ホテルの人が気を遣って食べやすい物を用意してくれたのを少しは口にしているからそこは心配なさそうだ。

 

「熱はまだあるみたいだけどね」

 

 食べる前にまた熱を測ったが。昼間と変わらず。その証拠に頬もまだ紅い。

 

「とりあえず、一晩様子見よう。あ、四葉呼んでくるから体拭いてもらえ」

 

 さすがに付き合っているとはいえ、まだその、あれだ。

 体の関係までいってないから汗をかいた体を拭くのは四葉にお願いしている。

 

「わかった」

 

 いつもの一花だったら多分「セージ君が拭いてくれても良いんだよ?」とかいつもの茶化しを入れてきたかもだけど、今日はその元気はもうない様子。

 

「あれなら、部屋、姉妹の誰かと変わるか? 俺よりかは安心できるだろ?」

「俺よりかって……そんなことないよ。むしろ、いてほしいかな」

 

 比べるものじゃないのはわかっているけれど、一花の中で俺が姉妹達よりもいて欲しい存在である事に俺は嬉しく思ってしまった。

 

「そっか。んじゃ、四葉呼んでくる」

「うん」

 

 俺はそっと一花の髪を撫でて四葉を呼びに行く。

 そして四葉が一花の体を拭いている間、俺は風太郎達の部屋で待機するのだが。

 

「誠司は、なんて言ってあの人に話したんだ?」

「フー君、そこはこいつに聞かないで自分の言葉よ」

「うん。フータロー自身の言葉が大事」

「私も二人に同意見です」

「お兄ちゃん、こんな時でも誠司くんに頼るんだから」

 

 どうやら明日の決戦の為の作戦会議中だったようで他の姉妹達も集まっていた。

 そして俺が来ると風太郎は俺にアドバイスを求めてきたが、それにダメだしをする中野姉妹。

 らいはちゃんにまで言われるとは。

 

「けど、セージはなんて言ったのかは気になる」

「ま、参考程度に聞いてみるのもありだとは思うわ」

 

 結局、俺に矛先は向けられるわけかよ。

 俺に向けられる視線は二乃や三玖はもちろんだが、五月やらいはちゃんまで興味津々でこれは逃げられないと俺は悟る。

 

「別に普通だよ。一花と付き合う事になりましたって」

「本当にそれだけなんですか?」

「あぁ」

 

 あとは先生の信頼を裏切った事について謝罪したけど、その辺は俺の勘違いというか余計な心配だったようだったし。

 

「でも、それが成り立ったのはある意味あんたとパパの信頼関係あってのものよね」

「うん、セージはお父さんからも信頼されてる」

「それじゃ、まるで風太郎はされてないみたいな言い方だぞ」

 

 そんな俺の言葉に五月は首を横に振る。

 

「事実、上杉君とお父さんの関係はお世辞にも良好とは言えないかと。しかし、最初からと言うわけではないとは思うのですが」

「それは……くそ、あの時の俺め」

 

 五月の言葉に風太郎は自分の過去の言動に少々後悔の念を抱いているのを横目に俺は先生とのこれまでの付き合いを思い出す。

 俺の場合は昔からの積み重ねがあってだからな。

 数年の付き合いで出来た信頼を一年そこらの風太郎と比べるのはさすがに。

 

「とにかくだ! 背水の陣の気持ちで俺は挑む!」

「お兄ちゃん、がんばれ!」

「おう!」

 

 風太郎が気持ちを固めて意気込んでいると四葉が戻ってきた。

 

「なんか、上杉さんが燃えています」

「四葉の為にな」

「へ」

 

 一花に負けないくらい四葉は熱くなった様子。

 もちろん、一花みたく熱はないだろう。

 

「んじゃ、俺は戻る。四葉、ありがとうな」

「それじゃ、私たちも戻りましょうか」

「そうね。気持ちを固めたみたいだし、私たちはお邪魔ね」

「フータロー、がんば」

「うーん、私、お邪魔かな?」

「らいは! 何言ってんだ!」

「そ、そうですよ! むしろ私としてはらいはちゃんにいてほしいくらいです!」

 

 なんてやり取りを横目に俺たちは部屋をあとにする。

 

「なにかあれば連絡よこしなさいよ」

「わかってる」

「セージ、一花をよろしく」

「あぁ」

「では、おやすみなさい」

「おやすみ」

 

 二乃達とも別れ、俺はそっと部屋に戻ると一花はすでに寝ていた。

 やっぱりまだ体調は戻ってない様子。

 

「明日、回復してるといいだけどな」

 

 起こさないように一花の顔を覗きながら一花の体調が戻る事を願う。

 ただ、そう簡単に願いは叶うことはなかった。

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