「えっと、順路はこっちで」
「ぐあああ!」
「お、いたいた。風太郎」
草陰から現れた金髪ピエロにカメラを向けて一枚。
「て、なんだ誠司か」
「長尾さんひとりですか?」
仮面を外した風太郎の後ろには包帯ぐるぐる巻きの四葉が。
「ちょっと写真撮ろうと思ってな。はい、とりあえず風太郎と四葉並んで」
「は?」
「えっ?!」
俺の言葉に薄い反応の風太郎と体を跳ねさせる四葉。
「ほら、二人共もっと近く。風太郎、らいはちゃんに思い出話を聞かせるんだろ?」
「うん、そうだな。よし、四葉も協力頼むぞ」
「へ、あ、はい!」
「それじゃ、はい、チーズ」
なんとも奇妙な二人組の写真をゲット。
さて、次は驚かされる側を。
「長尾さんもせっかくだから参加してください」
「あ?」
そう言って四葉は図書室で付けさせられたあのメガネを渡してきた。
「私、嬉しいです。林間学校、お二人が来ないって聞いた時は残念で……だから、後悔の無い林間学校にしましょうね」
そう言って四葉は「ししし」と天真爛漫のいつもの笑顔を見せた。
「……仕方ない」
俺はそれを掛けて片目は前髪を垂らして不気味さを演出。
カメラは撮りにくいが、どうにかなるだろ。
そしてペアの姿が見えてきた。
「風太郎、まず見本を見せてくれ」
「あ? たく仕方ない。見てろ」
そうして風太郎はタイミングを見計らって。
「このように!!!」
「ひいいいいい!!」
「うわあああ!!」
男女ペアが驚いた瞬間、シャッターを切る。うん、良い写真だ。
しかしダッシュでその場を去って行ったが、前田だったな?
もう一人は確か松井。
あいつ、マジで誘ったのか。いや、一花に告白するくらいだもんな。そういう所は素直にすげえわ。
「ほら、次は誠司の番だ」
「四葉も一緒に行きますから」
「はいはい」
そうして次のペアが近づいてきて。
「俺の人生返しやがれ!!」
「食べちゃうぞー!!」
と驚かせてみたのだが、悲鳴は上がらず。
「セージ」
「四葉もいるじゃん」
「一花に三玖」
「なんだ。ネタがバレてる二人か。脅かして損したぜ」
「フータロー」
様子を見ていた風太郎も仮面を外して二人の前に出てくる。
風太郎の姿に三玖はなにやら急に落ち着かなくなっている。
この様子じゃまだ誘えてないか。俺はそっと三玖へと近づき小声で確認する。
「おい、三玖。誘えてないのか?」
「セ、セージ」
ここで三玖と風太郎の写真を撮ってもいいが、せっかくキャンプファイヤーという場があるから三玖の思い出にもそっちで撮ってやりたい。
「せっかくだから頑張れよ」
そう言って俺は励ましとして三玖の肩を軽く叩いた。
「うし、一枚撮るから二人並べ」
俺は三玖と一花にカメラを構える。三玖は撮られる事になれていないのかフータローがいるからかぎこちない。
「ほら、三玖」
その辺りを察するのはさすが一花。三玖の手を握ってこっちに笑顔を向ける。
「……」
「セージ君?」
「あ、悪い。撮るぞ」
そうして二人の一枚も撮って二人にはこの先の分岐は気をつけていけと忠告をする。
風太郎が言うには矢印と反対行くと崖みたいだからな。
二人を見送り次のペアが来るまでの間、俺は写真をチェックする。
「……」
「誠司、次くるぞ」
「あ、あぁ」
「上杉さんと長尾さんはまだ迷いがあります。もっと凝った登場の仕方で行きましょう」
「えぇ……」
四葉監督の指示で俺は木の上で待機することに。
風太郎が木に登る案も出たが、あいつの運動神経ではしんどいという事で俺が。
「そもそも写真撮る為に来たはずだよな?」
そのカメラは落とすと危ないからと四葉に預け中。
「長尾さん、来ましたよ」
「はぁ……もうやってやらああああ!」
俺はもうやけくそだと木から吊される形で登場するとそこには五月と二乃。
「わあああああ! もう嫌ですううう」
「五月、待ちなさい!!」
五月は俺達だと気付くことなく走って行き、二乃も急いでその後を追っていった。
「本当に苦手だったのか」
「みたいだな。そりゃ必死に風太郎を連れてくるはずだ」
「やりすぎちゃいましたね」
むしろ俺達の方があの驚きっぷりに唖然としていた。
だが、風太郎はある事に気付く。
「あいつら、どっちに行った?」
あの様子だと五月がきちんとルート確認して行けてるか怪しい。
「風太郎、行け。事故ったら楽しい林間学校どころじゃない」
「あ、あぁ」
身動き取れない俺はすぐに追いかける事は出来ない為、風太郎に二人を頼む。
そして吊された縄を解いてようやく俺も地面へ。
「長尾さんも行って下さい」
「いや、四葉が一人になるだろう」
女子ひとりは流石に出来ない。
「少し離れた所にクラスの子がいますから、私はそちらに合流しますから大丈夫です。それに楽しい林間学校にしたいですから」
「……わかった。気をつけていけよ」
「はい! お願いします!」
俺は風太郎に続いて五月達のあとを追った。
「崖に行ってなきゃいいが」
「あぁ……ああぁ」
「ん?」
なんかうめき声のような。
「……のぉ……ですかぁ」
耳をすますと何か言葉を喋っている。
俺は聞き取る為にその方向へと向かっていく。
「どこ行ったんですかぁ……二乃ぉ」
「五月!」
そこには号泣しながら歩いている五月がいた。
「ふぇ……い、いやあああ!」
俺の顔を見てまた逃げだそうとする五月。なんでだよと思ったけど、そうだ。メガネだ。
俺は急いでメガネを取り、髪をかき上げ五月の手を掴む。
「俺だ! 長尾だ!」
「へ……な、長尾くーん!」
安心したからか余計に泣き出す五月に俺はよしよしと一花のように宥める。
今度は避けられることなく、というかそんな余裕もなく五月が落ち着くまで俺はそうしていた。
「すみません」
「いや、俺が原因でもあるしな。それより二乃は?」
「わかりません。気付いたら二乃がいなくて」
五月が置いて行ったんだろうな。風太郎が見つけてくれたら良いが。
てか、ようやくまともに話せそうだ。
「五月、今朝の事だが」
「っ」
その瞬間、五月が緊張したのがわかった。
「俺、ちょっと魘されててさ。多分、一花はそれを心配してのぞき込んでたんだ。んで、寝ぼけて俺は一花の手を掴んでしまった」
「……男女の仲、と言うわけではないんですか?」
「またそれか」
なんか少し前からこういう話しばっかだな。
五月の件は俺が誤解させるような行動だから俺が悪いんだが。
「はい?」
「いや、てか、五月も姉妹大好きか」
「な?!」
じゃなきゃこんな心配しないだろうしな。
「私はただ……」
「ん?」
「男の人はもっと見極めて選ばないといけないと思ってるだけですから」
そう語る彼女は俺がこれまで見た事無いような厳しい表情でそう言い放っていた。
その後、二乃と合流出来たのだが俺と五月が一緒にいた事をうるさく言ってくるのかと思いきやなんだかご機嫌そう逆に不気味だった。
そしてそのご機嫌な理由はすぐに判明する。