家庭教師と友人A   作:灯火円

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 そして期末試験当日の朝。

 俺は早く家を出て、屋上へと来ていた。

 

「よしよし、遅刻せずにきたな」

 

 屋上から中野姉妹の姿を確認。すると少しして屋上の扉が開く。

 

「良いんだな? 風太郎」

「あぁ」

 

 風太郎の手にはスマホが握られていた。

 それは風太郎の物ではない事を俺は知っている。

 そして風太郎はどこかに電話をかけ始めた。

 その相手は俺達の雇い主、いや俺の場合はもう雇い主じゃないか。

 風太郎は報告を済ませたあと、本題へと切り出す。

 

「今日をもって家庭教師を退任します」

 

 昨日の帰り、風太郎は俺にとある提案をしてきた。

 

 

「誠司、俺は家庭教師を辞めようと思う。だからお前が引き続きあいつら」

 

 まさか風太郎も俺と同じ考えに至っていたとはと驚いたが、ここ数日こいつは俺と同様に思う所があったんだろう。

 

「悪いがそれは無理だ」

「勝手だとはわかってる。だが」

 

 風太郎は俺に頭を下げる。

 今日は謝ったり謝られたりの日だな。

 

「俺が家庭教師なのは今日まで。そう雇い主に話してきたし了解も得た」

「……は?」

 

 風太郎の顔が上がって目を丸くして俺を見る。

 

「残念でした。俺の方が先に辞める話をつけてきたって訳」

「な?! どういう」

「ま、俺もさ。何も成果出せないと思ったから。中途半端でただの給料泥棒は嫌だから辞めさせて欲しいって言ってきた」

「そんな事」

「悪い。もう決めた事だし決定事項だ。力になれなくてすまん」

 

 今度は俺が風太郎に頭を下げる。

 協力してくれと言われて始めたが、あまり力になれなかった。

 

「なら、やっぱり俺も辞める」

「あのな」

「この一週間、俺は勉強を教えるだけじゃダメだと痛感した。あいつらの気持ちを考えてやれるやつが教えるべきだと。それは誠司だと俺は思ってた」

「過大評価だ」

 

 たまにこいつの中で俺はとんでもない高評価になっているが、そんなことはない。

 

「辞めるってのを撤回するって事は」

「ない」

 

 俺はキッパリと風太郎に言うと風太郎も俺の決意を察した様子。

 こいつも俺の性格をよくわかっている。

 そして俺も。

 

「風太郎も考えを変えるつもりはないんだな?」

「あぁ」

「俺としてはお前だけでもやっていけると思ってる」

「それこそ過大評価だ」

 

 風太郎は俺の言葉に首を横に振る。

 それでも俺は再度、風太郎に家庭教師を続けさせようと話をする。

 

「お前はしっかりあいつらを勉強の場に五人集めた」

「俺は何もしていない。あいつらが自分で解決したんだ」

 

 まったく、腐れ縁ともなると思考も似てくるのか?

 

「はぁ……良いのか? 破格のバイト代が消える」

「それは……仕方ない」

 

 名残惜しそうだな。

 それでも辞める覚悟をしたならもう俺から言う事はない。

 

「わかったよ」

 

 そんなやり取りを交わしたのが昨日の帰り道。

 

 

「少しは父親らしいことしろよ! 馬鹿野郎が!」

 

 屋上に風太郎の声が響くと風太郎はスマホの通話を切った。

 さすがに俺は馬鹿野郎とまでは中野先生には言わなかったぞ。

 

「……誠司」

「ん?」

「今月の給料、ちゃんと貰えるかな」

「新しいバイト先、見つけような」

 

 そうして数ヶ月という短い俺達の家庭教師は終わった。

 

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