江端さんから上杉君と長尾君の事を聞かされ、そして私たちは新たなる決意をしたその夜。
皆が自室へと戻り眠っている深い時間にリビングへと来ていた。
いつものテーブルに目が行く。そして最後の一日を思い出す。
自分がいつも座るところに座り、膝を抱える。
上杉君の別れの言葉は私たちに届いた。
でも、長尾君はそれすらも告げる事なかった。
彼は一体いつから考えていたのだろう。
「私が……」
自分の行動が引き金だったのではないかと思ってしまうのは心当たりがあるから。
二乃との喧嘩もあるけれど、それ以前から私は彼に迷惑を掛けてしまっていた。
だけど、一番は。
「触れちゃいけなかった」
彼が触れられて欲しくない部分に私は幾度も触れてしまった。
「っ」
自分の言動を思い出すと視界が揺らぐ。
泣いてはダメ。
これではまるで自分が被害者になってしまう。本当の被害者は彼なのに。
「五月ちゃん」
「っ……いち、か」
名前と共に背中から優しく包まれる感覚。
「わたしの……せいです」
我慢していたものが溢れる。
「五月ちゃん……ううん、五月ちゃんのせいじゃない」
私の頭を撫でながら私に掛けてくれた一花の言葉に私は首を振る。
「……言葉が違うね。五月ちゃんだけのせいじゃないよ。これはきっと私たち皆のせい。結果を残せなかったからね」
「勉強の、ことだけじゃ、ないんです。わたし、長尾君が、触れてほしくないことに」
「!」
踏み込んではいけなかった。
なのに私は踏み込んでしまった。
「ただ、知りたかった……でも、それで彼は」
「……私はね。引いちゃったんだ」
「一花?」
私の体を包む一花の力がギュッと強くなるのを感じた。
「おかしいって気付いてた。でも、あと一歩が踏み出せなくて。彼の為だって言い訳して……でもね。こうなるなら引くべきじゃ無かった」
意外だった。
一花はやりたい事にずっと向き合って常に前へと向かって行ってると思っていたから。
「でも、セージ君がどう思ってたかなんて結局は彼から聞かないとわからないから」
一花は私から離れて窓の方へ行きカーテンをそっと開いて空を見上げる。
「だから、彼と向き合う為に頑張る」
あぁ、こういう時一花は紛れもなく私たちのお姉ちゃんなのだなと思う。
誰よりも先に私たちの前を歩こうとするその姿を私はいつも見てきた。
「私は、謝りたいです。彼に」
「多分、本人は謝るなっていうと思うよ」
一花の言うとおり、そう言う彼の姿は容易に想像できる。
彼は常にそうだった。
触れられたくない事に触れた時はいつも悪くないとそう言ってくれていた。
「それでもです。これは私の気持ちの問題なので」
「なら、まずはその顔を綺麗にしてからだね。涙と鼻水でグチャグチャだよ。ほら、お姉ちゃんが拭いてあげる」
「じ、自分でやれますから」
そうだ。
まずは謝ろう。そしてもう一度向き合う。
そのために、まずは私たちがやるべき事をやらなければ。