家庭教師と友人A   作:灯火円

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「しかし、まさか同じ墓地だとは」

「世間は狭いな」

 

 今日はバレンタイン。

 世間が甘い雰囲気である中、俺と風太郎はそんな雰囲気とは遠い場所である墓地に早朝から訪れていた。

 俺達がここに来た理由。それは丁度一ヶ月前、珍しく五月がいなかった家庭教師の日。

 その理由を姉妹達に聞くと母の月命日に五月は必ず墓参りしているとの事。

 そして何か気になる事でもあるのか風太郎はその月命日の墓参りに行くと俺を誘った。

 聞いた墓地の場所は俺もよく知る場所。俺の妹と父さんが眠る場所でもあった。

 

「て、あれじゃないか?」

 

 俺の視線の先には墓の前で手を合わせている五月がいた。

 

「本当に毎月いるんだな」

「上杉君、長尾君。なぜ……」

 

 俺達の存在に目を丸くして振り返る五月。

 とりあえず俺達も線香を上げさせてもらい、手を合わせた。

 

「全員家庭教師案ですが、良い傾向にあります」

 

 手を合わせ終えると五月の口から例の風太郎案の話が出た。

 五つ子はそれぞれ得意科目が違うということに風太郎も気づいた。そこの目をやり、俺達が家庭教師じゃない日やいない時でも得意な教科の人物に教わる。

 それが全員家庭教師作戦。

 

「以前、長尾君が言ったとおり。教わること以上に教えることで咀嚼できることもあると実感しました」

「だろ?」

 

 五月自身も教える立場になってわかったなら今後は俺に教わることを拒否することはないだろう。

 

「すみません。でも、もっと早くすべきでしたね」

「俺らなんて必要ないと言いたいのか?」

「それはそれで良いと俺は思うが」

 

 自分達で教え合って勉強できるならそれはそれで良い事ではある。

 バイト代が掛かっている風太郎には困る案件かもしれないが。

 

「まだ教わることはありますから!」

 

 五月は俺の方を見てそう強く言ってきた。

 

「まぁ、君らが必要としてくれるならそりゃ続けるけど」

 

 こうも必死に言われるとは予想外。

 すると俺の言葉に安心したのか五月の表情が和らぐ。

 

「ありがとうございます」

「お礼を言われるほどじゃないんだが」

 

 真っ直ぐにお礼を言われると照れくさいなと視線を泳がせていると五月は再び墓の方へと向き直る。

 

「……私はあの時の気持ちを大切にしたい」

 

 そしてもう一度彼女は手を合わせる。

 

「私、先生を目指します」

 

 高校三年を目前としたこの時期、彼女は自分のやりたい事を見つけた様子。

 俺はそんな彼女を素直に羨ましいと思った。

 今の俺は何をやりたいのだろう。

 

「では、家に帰りましょう。せっかくだから寄って下さい」

「そうだな。この間の模擬試験の結果も発表したいしな」

 

 五月と風太郎が中野家へと足を向ける中、俺はその場を動くことはなく。

 

「悪い。先に行っててくれ。ちょっと忘れ物でな」

 

 俺はある方向へと視線を向けると風太郎は察してくれた様子。

 

「わかった。先に行ってる。行くぞ五月」

「え、あ、はい。長尾君、また」

「あぁ」

 

 風太郎に感謝をしつつ、俺は五月達とは逆方向へと歩き出す。

 そして中野家のお墓から数列離れた場所で足を止める。

 

「珍しいだろ。お彼岸には少し早いもんな。六花、父さん」

 

 俺の家族が眠る場所で手を合わせる。

 

 

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