「んで、俺を呼んだのは勉強の為って訳じゃないよな」
今朝、一花に言われたとおり放課後俺は中野家のアパートに寄る。
今日は家庭教師の日じゃない。試験前でもないのに家庭教師の日以外に勉強するなんてあるわけない。
「あんた、小学校からの付き合いなんでしょ?」
「それは風太郎の事を言っているのか?」
「そうよ」
二乃から質問されたかと思えば風太郎の事。風太郎に恋しているならそうなるか。
けど、わざわざ五人揃っている場で聞いてくるという事は五人共同じ事を聞きたいって事か?
「えっと、つまり風太郎の関わる何かで俺は呼ばれた訳?」
「うん、フータローの誕生日がもうすぐだから」
三玖の言葉に俺はスマホの画面を見て今日の日付を確認する。
「あー、そういやあいつ四月生まれか」
「セージ君、忘れてたの?」
「長尾さん、上杉さんと小学校の頃から一緒なんですよね?」
「忘れるって事あるんですか?」
なんか俺の評価がとてつもなく落ちているような気がする。
「いや、そんなもんだろ。思い出したらそりゃおめでとうの一言くらいは言うけどさ」
そういや、女子って誕生日とか結構気にしているよな。仲の良いやつが誕生日の日とか学校で祝ってるし。
「ねぇ、こいつに聞いて意味ある?」
「でも、フータロー君の理解者だし」
「とりあえず、聞いてみましょう。私たちだけでは無理だから長尾君を呼んだわけですから」
話し合いは終わったようで五人の視線が俺へと向けられ、彼女達から出た言葉は。
「風太郎の誕生日プレゼントをあげたいから風太郎の欲しい物ね」
それで付き合いの長い俺に白羽の矢が立てられたという事らしい。
「簡単だろ」
その俺の言葉に五人は目を輝かせる。
「金」
すると深いため息を吐かれた。
「あのな、実際あいつに聞いたら絶対そう答えるからな」
「フータローなら確かにそう言う」
俺の言葉に誰も否定する事はなかったという事は五人も心当たりがあるという事。
でも、だからといって現金渡す誕生日プレゼントはな。
俺は風太郎との最近の会話で何かヒントがないかと考える。ふと教室での会話を思い出す
「あー、なんか。体力上げたいとか疲れが取れない。あと寝付きが悪いとか言ってたな。それと運気がどうとか」
「そういう事をもっと早く言いなさいよ!」
俺だって今思い出したんだよ。
「けど、全然的を射ない」
三玖の言う通り、体力上げたくて疲労回復、寝付きをよくしたい。最後には運気ときて並べると結構無茶苦茶な内容だ。
「どうしよっか?」
「いずれにしろ急いだ方がいいかもね」
「もうすぐですからね」
四葉の言葉に一花は部屋のカレンダーへと目をやると他の姉妹達も視線はカレンダーへ。
「んじゃ、俺は帰って良いか?」
「そういえばさ」
お役御免と俺は立ち上がって帰ろうとすると一花が俺のカバンを掴んだ。
「セージ君の誕生日はいつ?」
「……風太郎のは知っていて俺のは知らないと」
心がもやる感覚。
いや、子供じゃないんだし。
「上杉君の誕生日はこの間の旅行でらいはちゃんから聞いたので」
「なに? あんた自分のは知ってもらえてないからって」
二乃は面白いものを見つけたような表情で俺を見る。
「セージ、拗ねないで」
「大丈夫です! 長尾さんの時もお祝いしますよ」
なんか俺が不貞腐れているという前提の話しになっている。
モヤっとしたけれど、そこまでじゃないぞ。
「俺のはまだ先だ。今は風太郎の誕生日の事だけ考えろ」
「先じゃわからないよ!」
一花は俺のカバンを離すどころか強く引っ張る。
「引っ張るな!」
「教えてくれたら離してあげる」
「ガキかよ! あー! 8月25日だ! これでいいだろう!」
「8月」
誕生日を聞いて満足したのかようやく俺のカバンを離した一花はスマホを取り出す。
「よし、しっかり入れといたから」
スマホを見せたかと思えば俺の誕生日にしっかり予定として入れていた。
「そりゃどうも。んじゃ、俺は帰るぞ」
質問されただけなのになんかすごい疲労感。そして俺は中野家をあとにして家へと向かう。
その途中で俺のスマホが震える。
『欲しい物、考えておいてね』
「気が早いっつーの。てか、俺には直接聞くつもりかよ」
けど、悪い気はしていない自分がいた。