家庭教師と友人A   作:灯火円

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第14話 新しい先生?と新しい生徒?
14-1


 それから数日、五つ子はどうにか風太郎の誕生日プレゼントをあれこれと考えている様子。

 その風太郎はというと学級長としてそれなりに頑張っている。

 相方が四葉という事もあって結構上手くいっている。

 

「えー、我々も三年生になったということで」

「すみませーん! 上杉学級長、声が小さくて何を言っているのか聞き取れません。もう少し大きくお願いします。ね?」

 

 しかし、その中で何かと風太郎に突っかかる奴がいた。

 あの武田だ。

 そんな突っかかるような人物ではなかったと思うが、風太郎をライバル視してたみたいだからそれでか?

 

「いよいよ始まります……全国模試」

「修学旅行ですね!」

 

 四葉、ナイスフォロー。

 本当、相方でありがとう。

 

「修学旅行か。ね、長尾君」

「ん?」

 

 隣の毛利さんが俺に声を掛けてきた。

 

「普段から写真撮ってるの?」

「え? あー、そんな頻繁ではないけど、どっか出掛けたりした時とかは」

 

 北条さんの手伝いの時とか普段行かないような場所とかの時は必ず持ち歩いて写真を撮ってたりはする。

 写真に興味ない側からしたら頻度は多いとは思う。

 

「この間は星撮りに行ったよね」

 

 俺の答えに付け足すように具体的に答えたのは一花だった。

 

「星? 星とか難しいんじゃないの?」

「えっと、撮り方教えてもらう為にこの間ちょっと撮ってきたんだ」

「結構本格的なんだ。だったら」

「おい、お前ら」

 

 三人で顔を合わせて話していたら流石に目に止まるようで風太郎の鋭い視線が向けられた。

 

「ごめんなさーい」

 

 毛利さんは手を合わせ、俺の方に向いていた体を前へと向けた。

 

「……まさか」

「一花?」

 

 後ろから聞こえた一花の声がどこか不安そうで俺は振りかえようとしたが「長尾」と風太郎が名字で名指しするもんだから振り返って確認する事はできなかった。

 

「ちょっと」

「ん?」

 

 放課後、昇降口で靴に履き替えてると声を掛けられ振り返ると二乃がいた。

 

「今日、あんたバイト?」

「俺は休み。そういや、二乃は今日からか」

「……まぁね」

 

 どこか落ち着かないように見えるのはやっぱりバイト初日だからってのもあるのか?

 

「今日は風太郎がいるから何か困ったらあいつに声掛けろ」

「何よ。先輩風吹かせて」

「実際三人の中じゃ俺が一番長い。てか、その確認の為にわざわざ声掛けたのか?」

「いや、あんたも一緒だったら協力してもらおうかなって」

 

 協力という言葉に思い浮かぶのはひとつ。

 風太郎との恋仲になるためだったら困るんだが。

 

「あんたもいれば上手く欲しい物を聞き出せるかと思ったのよ」

「あ、そっち」

「なに?」

「いーや、てかバイト中そんな余裕あればいいけどな」

 

 初日なんて覚える事が多いだろうからな。

 

「ふん、私を誰だと思ってるのよ」

 

 どうって毎度試験回避の為に必死で教えなきゃならない俺にやたらと厳しい生徒。

 

「ふん!」

「あっぶね。思いっきり足踏もうとすんなよ!」

 

 二乃が俺の足を狙ってきたのがわかり避けたが急になんだよ。

 

「失礼なこと考えてそうだったから」

 

 一花以上に俺の心を読んでいるとか何それ怖っ。

 

「とにかく、初日頑張れよ」

「言われなくても頑張るわよ」

 

 そう言って二乃はカバンを揺らして昇降口をあとにした。

 

「長尾君って一花ちゃんだけじゃなく姉妹全員と仲良いんだね」

「ん? 毛利さん」

 

 今度は毛利さんが先ほど二乃が立っていた所にいて俺と二乃を交互に見ていた。

 

「二乃の場合は仲良いとは言えないけどな」

「えー、あんな風に話してたのに?」

「あれが仲良いように見える?」

「見えるよ?」

 

 それは見間違いだとそのうちわかるだろう。

 風太郎に対する態度見たら俺がどれだけ邪険に扱われてるか。

 

「あ、それより。長尾君にお願いがあるんだけど」

「お願い?」

 

 そう言って毛利さんは俺に向けて両手を合わせる。

 

「連絡先、交換しよ?」

「は?」

 

 改まるから何かとんでもないお願いかと思えば。

 

「別にいいけど」

 

 俺はすぐにスマホを出すと彼女も「ありがとう」と言ってスマホを出し、俺達は連絡先を交換した。

 

「じゃ、あとで送るね」

「あぁ」

 

 そうして俺は流れのまま毛利さんと昇降口を出る。けど、彼女は部活があるようで部室練の方へと行ってしまった。

 

「……改まってお願いされる事でもなかった気はするが」

 

 身構えた自分が過剰に意識していたようで恥ずかしくなり俺は足早に帰路への道を歩いた。

 その夜、言葉通り毛利さんからメッセージが飛んできた。

 

 特に何か変わった事はなくクラスの話しだったりと何度かメッセージを交わしていると俺のカメラの話しになった。

 

「あー、お願いってこれか」

 

 カメラの話しの流れで彼女から送られたメッセージに本当のお願いがこちらだという事を理解した。

 それは写真の撮り方を教えて欲しいというもの。

 あの林間学校で少し写真に興味を持って自分でも撮り始めたが納得いくものが撮れず、そして俺にという事らしい。

 彼女が使っているカメラの種類を聞いて具体的な事を文章として送ろうとしたが、あまりにも長ったらしい文章に説明している俺ですら読みたくないと思ってしまった。

 

「実践あるのみか」

 

 そう思った俺は毛利さんに明日カメラを持ってきてもらうようにお願いする。

 明日は家庭教師の日だが、放課後少しくらい時間は取れるだろうからその時間にでもと考えていると毛利さんからの返信がきた。

 

『ありがとう! また飲み物奢るね』

「別に気にしなくていいのにな」

 

 律儀な性格だが、そういう所が慕われている理由なのかもとここ数日で彼女の周囲に人が集まる現状を見てきたが納得した。

 

 

 そして翌日、いつものように通学路を歩く。

 

「やっほー」

「……最近、毎日いるな? 一花」

 

 コーヒーチェーン店の前で朝から甘そうな飲み物を片手に一花はいた。

 新年度が始まってから毎日のように一花とはここで会う。

 

「えっと、これを買いにね。そのついでに君を待っていた訳」

「朝からよくそんな甘い物を。コーヒーならわかるけど」

 

 いつものように一花と並んで学校へと向かう。

 

「セージ君は朝からコーヒー派?」

「まぁ、甘い物ではないな」

「そっか。あ、そうだ。今日の家庭教師だけど私は参加出来ないんだ」

 

 一花はそう言って両手を合わせて謝る仕草をする。

 

「仕事だろ? 仕方ないさ。それに最近は他の姉妹もバイト始めたからな。以前ほど全員一緒にってのは難しいだろ」

 

 三玖は結局、俺達がバイトしている向かいのパン屋に。四葉は清掃のバイトが受かったと聞いた。

 

「五月は決まったのか?」

「うーん、五月ちゃんは色々と考えてるみたい」

「五月なら食べ物関係とか」

 

 五月が得意そうな事を思い浮かべる。

 一番に思い出したのは食べるときはめちゃくちゃ幸せそうに食べる姿。

 

「それ、五月ちゃんの前で言ったら怒……りはしないか。機嫌損ねるよ」

「俺は風太郎かよ。本人目の前にして言わない。てか、別に飲食関係を思い浮かべてただけで」

「乙女心は複雑なんだよ」

「……そうですか」

 

 そんな風に話をして歩道橋を降りた辺りで前に中野姉妹と風太郎が見えた。

 

「歩くの遅いよな」

 

 大体いつもこの辺で先を行く姉妹達と合流する。

 風太郎は三玖と二乃に挟まれて大変そうだ。

 

「残念」

「ん?」

「お姉さんとの時間終わっちゃったね」

「あー、はいはい」

 

 いつものやつだなと俺は軽く流し、さっさと前の風太郎達を合流する。

 そして風太郎は助かったと二乃と三玖から離れ俺の元へ。

 一花が代わりに姉妹に合流し、俺と風太郎は先を歩いて学校へと向かう。

 教室に入り、風太郎は早々に自分の席へと向かう。

 俺も自分の席に行き、カバンを下ろす。少し遅れて姉妹達が入って来て一層教室は賑やかになる。

 

「おはよう」

「おはよう。明里」

 

 朝練のある部活に入っている生徒達が次々とくる中に毛利さんもいて友達と挨拶を交わしながら自分の席へ。

 

「一花ちゃん、五月ちゃん。おはよう」

「おっはー」

「おはようございます」

 

 一花と五月に挨拶し席に着くと「長尾君」と俺を呼んだ。

 

「おはよ」

「あぁ、おはよう」

 

 すると彼女はカバンからチラリと俺に何かを見せた。

 小さなポーチに見えるがカメラを入れる物だと俺はすぐに理解した。

 どうやらきちんと持ってきてくれたようだ。

 

「あとでな」

「うん」

 

 とりあえず、カメラの話は放課後になってからだ。

 ただ、俺は放課後までに色々と考えることがあった。

 

「あの機種だと」

 

 今日は体力測定があってグラウンドに出てそれぞれ測定している。

 待ち時間もあって俺はその時間で毛利さんのカメラの特徴を調べる。

 

「中野さん、6.9」

「すげえ! 6秒台!」

「鬼はええ!」

 

 男子も感心する記録を出したのは姉妹の中で一番の運動神経を持つ四葉。

 

「さすがだな」

 

 俺も感心している間に全員の測定が終わり後片付け。けど、確か体育委員休みだよな。

 と思ってると学級長コンビが代わりに指名された。

 四葉はまだまだ元気だが、風太郎はすでに体力ゲージはない様子。

 それでも使った道具を片付けようと入ったカゴを持ち上げようとする風太郎。

 うん、男を見せてやれと思ったがそのカゴは全然持ち上がってない。

 

「風太郎」

 

 俺は手伝うかと向かおうとしたが、見かねた四葉が風太郎と一緒にそのカゴを持ち上げた。

 

「ほら、やっぱりー」

「絶対何かあるよね」

 

 近くにいた女子二人の会話がふと耳に入る。

 彼女達は風太郎と四葉を見ている。そして四葉も彼女達の視線に気付いた様子。

 何か四葉の表情が優れない気がするが、風太郎達を手伝おうと二乃や三玖も加わりその表情は消えた。

 また何か思い悩んでなきゃいいんだが。

 

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