結局、修学旅行の班は中野姉妹で一つの班となった。
二乃辺りは不満そうな視線をずっとこっちに向けてきたが無視だ。けど、先に俺達で班決めてたのは不幸中の幸いかもな。
そうして修学旅行前、バイトもない休日だけれど俺は北条さんと街に出ていた。
「しかし、お前が人を撮る事に興味持つとはな」
「以前よりはって話です。それに事情があって友達にカメラの事をちょっと教えてて。北条さんにきちんとまた教えてもらおうかなって」
北条さんの手伝いとは関係なく、俺は北条さんにカメラの事を聞くために北条さんの予定が空いている日に教えてもらう事になった。
そして、ある程度撮り終えて昼食を食べながら撮った物を見ながら北条さんに講評してもらっている。
「てか、人撮るなら最初に言えって。誰か頼んでモデルになって」
「いや、そこまではさすがに」
「だけど、野郎の写真じゃつまらないだろ」
人を撮るとなると勝手にそこら辺の人達を撮るのは失礼な為、そうなると被写体は北条さん。
俺の今日のフォルダには北条さんの写真ばかりだ。
「次は誰かに頼んで女性のモデルで撮るか」
「別に」
「男女だとまた違うんだよ。色々撮ってみた方がいい」
確かに北条さんの仕事場の動きというかカメラを向ける時、男性と女性とでは少し違っているのは見ていてわかる。色々経験していた方がいいかもな。
そして北条さんに奢ってもらい店を出る。
「ごちそうさまでした。今日はありがとうございます」
「良いって。じゃ、気をつけて帰れよ」
「はい」
そうして俺は北条さんと別れたが、もう少し何か撮って行こうと街をぶらつく。
「そういや、修学旅行で必要なものを買っておくか」
ついでにと俺は近くのショッピングモールへと足を伸す。
「何故話せないのか私にはわかります! それは未練があるからです!」
「なーんか聞き覚えのあるな。このバカでかい声」
ある程度買い物をし終わって歩いていると響く声。俺は自然とその声の方へと足を向ける。
そしてとある店の前で声の持ち主である四葉。さらに風太郎とらいはちゃんがいた。
「さぁ! 話してすっきりしちゃいましょう!」
「話したくても注目されてそんな状況じゃないだろ」
「あ、誠司くんだ」
「やぁ、らいはちゃん。しかし、なんだ? 三人で仲良く買い物か?」
「いや、五月も一緒だ。そうだ誠司」
「ん?」
風太郎は俺の方へと来たと思えば顔を寄せてきた。
「あいつらの誕生日知ってたか?」
「あいつらって、四葉達か? いや、知らんけど」
言われてみれば知らないな。聞く機会もなかったし。
てか、風太郎がそんな事を気にするなんて。
「なら、お前もプレゼントを渡してないな?」
「プレゼント? なに? 誕生日なのか?」
「いや、過ぎてる。5月5日だったらしい」
大型連休の最終日。
全国模試も終わって家庭教師も休みだったから中野姉妹にも会ってなかったから俺も知らなかった。
人の誕生日はあれこれ悩ませたり、聞いたりしてたのに自分達の誕生日は俺達に何も言わないって。
いや、自分達から言うのは催促しているみたいなのはわかるが、けどな。
「プレゼントを貰った身としては俺も渡すべきだろう」
「まぁな」
「けど、俺だけでは思いつかん。だから」
「わかった。俺と風太郎で少し遅れたプレゼントって事だな」
「あぁ!」
しかし、風太郎がこういう事気にする時って大概あれだよなと俺はらいはちゃんを見ると彼女はニッコリと笑顔を向けてくれた。
出来た妹さんな事で。
「上杉さん! まだ話は終わってませんよ! さぁ!」
「うっ」
俺達の会話が終わったタイミングで四葉はまた風太郎へと詰め寄る。
「ところでさっきから四葉は何をそんな風太郎に聞きたがっているんだ?」
「お兄ちゃんの持っている写真の子の事だよ」
「正確には持っていただ」
「え? お前、写真どうしたんだよ」
「色々あって今はもう手元にない。四葉、写真の子は京都で偶然会った女の子だ。名前は零奈」
「え、零奈って」
色々って。あんだけ大事にしてた物を。
どういう事なのか気になるところはあるが、それより今は四葉の反応だ。
零奈。
その名前に四葉もさすがに反応したようで何か考えをめぐらせている様子。
春休みの旅行で零奈という名前は彼女達の母親の名前である事を俺も知った。
母親の名前が出ればそりゃそういう反応にもなるか。
しかし、実際に京都で会った彼女の名前は零奈でない事は風太郎も気付いているとは思うんだがな。
「おしまい」
「おしまい?!」
風太郎はそれ以上話す気は無い様子。
一方、四葉は余計にもっと知りたくなった様子。すると俺に視線を向ける。
「長尾さん!」
「俺かよ」
「だって! あと聞けるとしたら長尾さんしか」
「つまり、お兄ちゃんの初恋の人だよね」
四葉への疑問に答えたのはらいはちゃん。
もっともそれが正しい情報かはわからんが。
「は、初恋!!」
「おい、誰もそんな事」
風太郎の否定をかき消すようにらいはちゃんのお腹が鳴った。
「えへへ、お腹空いちゃった」
「じゃ、じゃあ私が何でも買ってあげちゃいます! 上杉さんは五月を待ってる係です!」
そう言って四葉がらいはちゃんと共にその場を離れようとする。
「誠司、すまんがらいはがこれ以上余計な誤解を四葉に与えないように見てくれ」
「へいへい」
四葉の言葉通り五月を待つため風太郎はその場を離れられない為、俺が代わりに二人について行く事に。
「誤解っちゃ誤解か」
京都のあの子に出会うまでに風太郎は初恋を経験しているからな。
「それで、上杉さんの初恋の子ってどんな子なんです?」
「うーん、髪が長くて可愛い子。私も写真の姿しか見てないから。お兄ちゃん、あまり話してくれないし」
すぐ下の階のフードコートの前で話している二人を発見。
「はいはい、そこまで。らいはちゃん、何食べたい? クレープとかもあるぞ」
「クレープ! 美味しそう!」
らいはちゃんは店前にあるメニューを眺め、どれか悩み始める。
「待って下さい。長尾さん。らいはちゃんに奢るのは私の役目です。バイト代も入りましたからね」
「それは家賃に充てろよ。ほら、四葉も選べ。ついでだ」
「いや、自分の分は自分でって。長尾さん、上手く話を逸らそうとしましたね」
「あのな。風太郎があれ以上話すつもり無いなら聞くべきじゃないだろうが」
「……そうですけど」
四葉にしては珍しく引き下がらないよな。
「では、長尾さんはその子と会ってどんな子だと思いました?」
まさか俺に飛び火するとは。
チラリと四葉を見るとジーッと俺を見ている。
「誠司くん! 私、これにする!」
「ん? おう」
らいはちゃんの指さすものを店員に注文し、会計をしようとサイフを出すがその前に四葉が金を出す。
「あのな」
「ここは譲れませんから」
変な対抗心持ちやがって。
そういや、風太郎や五月の分もついでに買ってやるかと俺は上の階にいる風太郎へと視線を向ける。
「!」
だが、俺の視線はとある帽子に向けられた。
「悪い。俺、用事思い出したわ」
「え、長尾さん?」
俺は見失わないように視線をずっと帽子に向けて急いで上の階へと上がる。
帽子のおかげで見失う事なく、彼女がある店に入り彼女が試着室へと入ったのを確認。
「あの、お客様」
「はい?」
「何かお探しですか?」
「え」
ふとこのお店がどういった店か今になって気付く。
俺の周りには女性物の下着が並んでいる。
「あー、その、そこの彼女待っています」
「あ、そうでしたか。失礼しました」
俺はチラリと試着室へと視線を向けると店員も察して離れていった。
しかし居心地悪いのは確かだ。俺は試着室が見える店の外で待機する事にした。
そして試着室のカーテンが開いた。
「はぁ」
「よぉ」
「え」
「まさか、零奈だったとはな。五月」
「な、長尾君」
彼女は驚いているようだが、俺だって驚いている。