家庭教師と友人A   作:灯火円

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「うわー、流石に人が多いね」

「ま、京都って言ったら清水寺って印象も強いからな。けど、なんか天気怪しくなってきたな」

 

 改めて観光していく俺達だが、どんどん人が多くなっているのがわかる。

 けど、空はちょっと怪しい雲が見える。このまま降らずにいてくれたらいいけど。

 

「あ、あそこが有名な清水の舞台だね」

 

 一花の視線の先には清水寺といえばの場所である清水の舞台。

 そういや、風太郎と四葉はここで写真撮ってたんだな。

 俺は風太郎が大切にしている写真を思い出していると見覚えのあるリボンが見えた。

 

「四葉」

「え」

 

 こういう時、すぐにわかるよな。

 て、風太郎と五月が並んでるのを四葉が撮っている?

 いや、そもそも風太郎は三玖と話すって事なのにどうして二人といるんだよ。

 とりあえず、風太郎と合流してどうなってるか聞くか。

 

「おーい」

「セージ君、こっち行こう」

「へ」

 

 四葉達と離れる方向へと引っ張られたかと思えば一花が俺の腕を取って歩き出した。

 

「お、おい。一花?」

「いいから来て」

 

 そう言われたら俺はただ黙って一花に着いていくしかなく、たどり着いたのは緑が多く人もあまりいない目立った観光スポットのないただの林道。

 

「ここ」

「来た事あるでしょ?」

「は? あー、まぁ小学校の頃な」

 

 風太郎がいなくなったと聞いたのが丁度清水寺を散策してた時だっけな。

 

「小学校の修学旅行どうだったの?」

「どうって……前も言ったろ。まともに見て回れなかったって。風太郎と一緒に学校の先生にこっぴどく叱られたし」

「……嫌な思い出しかない?」

「いいや」

 

 ふと、あの子の事を話そうか躊躇った。けど、今更一花に黙っている事もないか。

 

「はぐれた風太郎と一緒にその日の夜、京都で会った子とトランプしたり撮った写真一緒に見たりしてさ。ま、楽しい思い出もある」

「!」

「昔の話はいいだろ。それより天気怪しいからもど」

「気付いているんだよね? その京都で会った子が私たち五人の誰かだって」

「なんで」

 

 怪しい雲が真上にあってひと雨来そうな気配がし、屋根のある所へ行こうと促すが一花の言葉にまた新たな疑問が生まれ、俺は足を止めた。

 京都の件、俺が話した事があるのはこの間の五月だけ。

 あと知っているとしたその出会った女の子である四葉だけ。

 そんな事を考えている間に冷たいものを体に感じた。そして一瞬にして雨粒が滝のように降り注ぐ。

 

「私……私だよ……私たち、六年前に会ってるんだよ」

「っ」

 

 なんで。そんな事言うんだ?

 あの子が四葉である事はもう五月を通して知っている。

 五月も四葉もウソをつく理由はないし、あの二人はウソが下手だ。

 だけど、目の前で泣きそうな表情で訴える一花がウソを言っているようにも思えない。

 でも、一花は演じる事が得意だから。もしかしたらこれは。

 だけど、そんな事をする意味ってなんだよ。

 

「ほら、さっきの清水の舞台でフータロー君との写真撮ったよね? セージ君が」

「っ……一花、やめろ」

 

 俺はその言葉で一花がウソをついているのを確信してしまった。

 そうであって欲しくなかったのに。

 

「おーい! そこの二人! 見学は中止! ホテルに戻るぞ!」

 

 この雨でさすがに観光は難しいと学校側も判断したようで教師が学校の連中に声をかけている様子。

 

「一花、まだちょっとおかしいぞ。冷静になれ。とにかく」

「ウソじゃないよ! 私は」

「俺は!」

 

 一花の声を俺は声を張り上げて遮った。

 それは一花にもうウソをつかせたくないと思ったから。

 だから、俺がハッキリと言うしかない。

 

「その子と清水寺を回ってないし、お前がどうして風太郎の写真を知っているのか知らないけど、あれは俺が撮ったものじゃない」

 

 俺のその言葉に一花は目を見開く。

 それがどういう意味を持つのか今の俺にはわからなかった。

 俺はリュックからタオルを取り出し、一花の頭に乗せる。

 

「風邪引く前に戻るぞ。林間学校みたいにまた一日潰したくないだろ?」

「……」

 

 返事はないが、先を歩き出す俺に少し遅れて一花も歩き出す。

 それから俺達の間に会話はなく、そのままホテルへ着いてしまった。

 

「シャワー浴びて、体冷やすなよ」

「……うん」

 

 一花と別れ、俺も部屋へと戻る。

 先に戻ってきた前田達はすでにシャワーを浴びた様子。風太郎は学級長の仕事で今は部屋にいない。

 とりあえず俺もシャワーを浴びに向かう。

 温かいシャワーよりも冷たいシャワーを浴びたい気分だ。

 

「なんで急にあんな事」

 

 せっかくまたいつも通りの距離感に戻ったってのに。

 京都の事を一花が知っていた。

 風太郎と四葉の写真も知っているって事は写真を見たことがあるって事だよな?

 考えられるとしたら五月か四葉が一花に話した可能性。

 風太郎が誰かに話す可能性もあるけど、簡単に話すとは思わない。いや、そもそもなんでそんなウソをつく必要があるって事だ。

 

「あー、もう」

 

 楽しい修学旅行にさせたいってのに。

 またこれだ。

 

「とにかく、また一花と話す必要があるよな」

 

 けど、明日は体験学習でコースを各自選んで行動する事になってる。

 

「事前に聞いておけばよかった」

 

 今から聞いたところでまた無視されそうだからな。

 

「……あぁ! もう運任せだ! 頼むぞ! 神様!」

 

 ここはもう神頼みしかない。

 俺はとりあえず体を拭いてジャージを着て出ると風太郎も戻ってきた様子。

 

「誠司、なんか叫んでたが大丈夫か?」

「俺の事はいい。 そっちこそ三玖とは」

 

 そう聞くと風太郎はあからさまに視線を逸らした。

 

「そっちもだめか」

「誠司もか? 一花と一緒に戻ってきたのを見かけたが」

「三歩進んで二歩下がるかな。いや、むしろマイナスだ」

 

 そうして二人してため息を吐く。

 

「だあ! 連日お前ら何なんだ! こらぁ!」

「これも青春というものだよ」

 

 そうして修学旅行最終日を迎える。

 




これまで原作ほど暴走してなかった一花ですが、ここに来て。
明確なライバルいなかったら暴走することもないと思ったので。
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