家庭教師と友人A   作:灯火円

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 修学旅行から帰ってくると一気に夏が近づいたようで日差しの強い日々ばかり。

 

「よし、掃除おわり。母さん、花と線香」

「はいはい」

 

 花を生け、そして線香に火をつけ母さんと一緒に手を合わせる。

 

 修学旅行の話をしてやりたかったけど、楽しい話があまりなくてごめん。

 けど、それなりに楽しくやってるよ。

 六花、父さん。

 

 この日は六花と父さんの命日が近く、毎年この時期に墓参りに来ている。

 梅雨明けと同時に夏が来るそんな時期に二人は逝ってしまった。

 

「この時間でも暑いわね」

 

 涼しい時間にと朝早くに墓参りに来たけれど、帰る頃には汗が顔から流れていた。

 

「あ、三者面談の希望日。書いておいたから忘れないでよ」

「へーい」

「んで、あんた進路どうすんの? いくつか絞ってるとは言ってたけど」

 

 高校三年となると三者面談の内容なんて進路の事がメインなのはわかりきっている。

 あまり息子の動向について口出しをしない我が家でもさすがに今回ばかりは聞いてきた。

 

「……東京、行きたいと思ってる」

 

 いつぶりだろう。

 母さんに自分の将来について話すのは。

 きっと小学校以来だ。

 

「俺さ……」

 

 俺は今考えている事を全て母さんに話し、母さんの反応を待つ。

 

「そっか……なら、まずは部屋探しか」

「ちょ、もっと言う事あるだろ? なんでそうしたいんだ?とか地元じゃダメなのか?とか」

 

 すでに俺の東京行きを見越しての発言に思わず俺から母さんに聞いてしまっていた。

 

「その答えも今さっきあんたから聞いたじゃない」

「そうだけど」

「しっかり目標とそれに向けてどうすればいいのか。そこまで考えてるなら言える事なんてない。うちの息子はその辺しっかり考える子に育ったからね。いやー、親御さんの育て方が良かったんだね」

「はいはい」

 

 もうツッコむ気力もない。

 けれど、育て方が良かったのは認める。

 絶対に口にはしないけど。

 

「あとは残りの高校生活、大事にしなよ? 悔いが残らないようにね」

 

 何気ない言葉だけど、その言葉は今の俺に強く刺さる。

 修学旅行最終日の一花が俺に言ったあの言葉。

 その言葉通り、一花はあの三日間がまるでなかったかのようにいつも通りだった。

 朝だっていつもの待ち合わせ場所に来て俺の隣で姉妹の事やクラスの事、仕事の話とか普段通りだった。

 それに俺は俺であの話を出したら本当に口をきかなくなるんじゃと思って俺もその事に触れる事が出来ていない。

 このままで良いのかと思いつつ俺は流されるまま残り少なくなっている一学期を過ごしていた。

 

 

「期末、問題なくいったな」

「あぁ、これまでいつも窮地に立たされていたがこんな穏やかな気持ちで迎えられるとはな」

 

 一学期、残るイベントは期末試験のみ。

 その期末は特に大きな心配もなく、無事に今日全員の結果が出て赤点は誰もなく終わった。

 

「誠司、夏休みの家庭教師なんだが」

「ん?」

 

 暑い日差しの中、ゴミ捨てに向かう途中で風太郎は俺にある提案をしてきた。

 

「宿題だけ出して家庭教師は休みか」

「もうあいつらも付きっきりで勉強見なくても問題ないからな。それに夏休みならあいつらも色々と予定入れたいだろうし」

 

 去年の風太郎だったらこんな発言出ただろうか。

 いや、きっと長期休みこそ勉強だと言っていたに違いない。

 でも今は勉強だけじゃなく姉妹の将来について手助けしてやりたいって思うようになった訳だしな。

 

「俺は別に構わない。むしろ俺にとっても助かる」

「どういう事だ?」

「夏休み後半は北条さんの手伝いで東京行くことにした。店長にはもう話して許可ももらってる」

 

 風太郎にも相談しようと今日思っていたが、風太郎がそう考えていたのなら俺にとっては好都合だ。

 

「けど、いいのか?」

「ん?」

「一花と話せてないんじゃないか?」

 

 風太郎からそんな事言われるとは思っていなかった。

 学校では俺達はいつも通りにしていたつもりだったからな。

 

「それ、風太郎も一緒だと思うけど?」

「な」

「結局、二人の告白にきちんと答えてないわけだしな」

「それは」

「おーい、上杉さーん! 長尾さーん!」

 

 上から俺達を呼ぶ声が聞こえ見上げるとベランダから俺達に手を振る四葉がいた。

 

「四葉! そんな遠くから大声で呼ぶな!」

「四葉も相変わらずだしな」

「ん?」

 

 俺の発言の意図を理解できるわけもなく、風太郎は何を言ってるんだという視線を俺に向ける。

 

「ほら、さっさと捨てに行くぞ」

「あ、おい」

 

 暑く日差しの強い青い空を見上げながら、高校最後の夏休みが間近に迫っている事を実感する。

 

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