家庭教師と友人A   作:灯火円

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第19話 学園祭
19-1


『ご来場のお皆様は体育館にお集まり下さい』

 

 開始を知らせる花火が上がると共に校内放送が流れる。

 

『第29回、旭高校日の出祭、開会式を執り行います』

 

 開会式ともあって体育館には人が集結。

 

『まずは我が校誇る女子生徒ユニットによるオープニングアクトです』

 

 スモークと共に幕が上がると体育館の熱気も一気に上がる。

 イントロと共に舞台の照明も照らされる。

 数人の女子生徒が立っているが、そのセンターには二乃がいた。

 

「まぁ!」

「うわぁ……」

「結構似合ってるな」

 

 俺は舞台に向けてカメラを向けたい気持ちになるが、残念ながら手元にカメラはない。

 そして俺の隣に五月が歓声を上げるがその五月の隣では若干引いた声を漏らす三玖。

 

「なんだかんだ。二乃もお人好しだよな」

 

 四葉のお人好しが目立つが五つ子もその性格は持ち合わせている。

 

「お人好しは長尾君もですよね。クラスの出店の運営とか」

「舞台の代役」

 

 三玖の言葉に俺は冷や汗がじわりと浮かぶ。

 

「まて、何故知ってる?」

「何故ってポスターの出演者の欄にありましたよ」

「さっき見つけて驚いた。四葉は代役で出るとは聞いてたけど、セージも」

 

 それを聞いて俺は急いで体育館を出て掲示板へと向かう。

 各出店のポスターが並ぶ中で演劇部のポスターを見つける。

 そしてそこには初日は一部キャスト変更の注意書きと俺の名前があった。

 

「盲点……いや、大丈夫だ。今日一花は仕事のはず」

 

 一番観られたくない人物は今日撮影が入っているのは数日前に把握している。

 

「今日さえ乗り越えれば良いだけだ」

 

 とにかく今は出店と舞台の事だけ考えておこう。

 そうして学園祭の一日目が始まった。

 

 

 

「食材の鮮度はしっかり管理しろよ」

「裏切り者に言われなくてもやるっての」

「そうだ。裏切り者。俺らの特訓の成果を味わえ」

 

 今日最初に焼き上がったたこ焼きを俺に渡されるが、向けられる言葉もなんか熱を感じる。

 

「ん、うまい。前田、悪いな。お前に調理主導させる形で」

 

 俺はその第一陣のたこ焼きを焼いた前田へと声を掛ける。

 

「構わねえよ。俺は運営とか頭使うよりこっちの方が得意だからな。それに長尾は今日忙しいだろ」

 

 どうやら前田も俺が舞台に出る事を把握している様子で俺ににやついた顔を向ける。

 

「明日、松井との時間は作ってやるからな」

「なっ!」

 

 仕返しとばかりに俺は松井の名前を出すと予想通りの反応する前田に満足して俺はパンケーキの方へと足を伸す。

 近づくにつれて甘い香りが漂ってくる。

 そして用意したホットプレートには厚みのあるパンケーキが並んでいた。

 

「おー、店で見るやつだ」

「セージ」

「長尾君、男子の方はどうだった?」

「しっかり視察してきたの?」

 

 視察って俺はどういう立場なんだよ。

 両陣営の運営に関わってるだけなのにあっちには裏切り者、こっちはこっちでまるで潜入捜査している人間みたいになってる。

 

「俺はスパイじゃないっての。それより、パンケーキの販売状況によっては買い出しも考えられるから早めに判断しろよ。俺はずっとこっちに着いてる訳じゃないから」

「演劇の方あるもんね。長尾君」

 

 ひょこっと現れたのは毛利さん。

 

「四葉ちゃんも出るんだよね」

「私、観に行こうかな」

 

 女子の間ではもう周知の事実となっている模様。

 出来ればあまり知られないまま終わりたかったんだが。

 

「こっちは私が見てるから安心して」

「てか、毛利さん。たこ焼き派だったんじゃ」

「立ち回り上手いって言ったでしょ?」

 

 よくわからんが俺とは違ってうまく両陣営を行き来しているみたいだ。

 

「んじゃ、俺行くから」

 

 舞台の時間が迫っているから体育館の方へと向かう。

 

 

「ちょっと」

 

 その途中、声を掛けられ振り返ると茂みの中に鋭い視線を感じる。

 

「二乃、お前どこ行ってたんだ。たこ焼きの方」

「声が大きいわよ。仕方ないじゃない。なんかやたら声掛けられるようになったんだから」

「あー、開会式の影響か」

 

 あれによってファンが増えたのか開会式が終わると二乃に興味を抱く連中が増えた様子。

 

「それより、あんた今時間大丈夫?」

「俺は今から演劇部の方行かなきゃならん」

「……そう」

「なんかあったか?」

 

 二乃がわざわざ俺を呼び止めるなんて何かあったとしか思えない。

 

「五月が食堂で勉強してるのよ」

「マジで学園祭返上してまでやるつもりかよ」

 

 いや、五月ならやりかねないのはわかっていたけど。

 

「あんたなら何か五月にアドバイスしてあげれるんじゃって思って。ほら、勉強の事は一応頼りになるし」

 

 二乃にはあまり頼られていないと思っていたけど、そうでもないらしいな。

 

「時間見つけて様子は伺ってみる。教えてくれてありがとうな」

「仕方なくよ。仕方なく」

「へいへい」

 

 とりあえず、落ち着いたら様子見に行くか。

 今はやるべきことをしっかりやってからだ。

 

 

 

「長尾さん」

「女王様、遅れて申し訳ありません」

 

 控室に入るとすでに衣装に着替えメイクを終えた四葉が立っていた。

 

「まだ本番じゃないですよ」

「今からスイッチ入れておこうと思ってな」

「むー、ほら、長尾さんも早く着替えて下さい」

「はいはい」

 

 俺も急いで衣装に着替える。

 俺の衣装は主人公の敵らしく黒をメインにした衣装と武器となる剣を腰に。

 

「それじゃ、初日、いくぞー!」

 

 主役の勇者の気合い入れで控室に気合いの入った声が響き渡る。

 そして舞台の幕が上がる。

 順調に物語りは進む。そして終盤、俺達の出番が近づく。

 

「うー」

 

 出番が近づくと四葉は緊張からか落ち着きを無くす。

 

「大丈夫だ。失敗するときは俺も一緒だ。そして俺が失敗するときは四葉も一緒だ」

「それ、共倒れでは?」

「演技素人組、頑張ろうぜ」

「もう……でも、そうですね」

 

 少しだけ落ち着いたのか四葉の視線は真っ直ぐ前を向く。

 元々、集中すれば四葉はやれる能力を持っている。

 それに本番に強いからな。

 

「さて、我々の出陣です。女王様」

 

 俺はエスコートするように四葉に手を伸す。

 

「頼むわよ。私の頼もしい配下、アクア」

「御意」

 

 そして俺達の出番となる。

 

「ここまでよ! 勇者一行! あんた達をここで死なすのは惜しいわ。私の配下につきなさい」

「女王エメラルド!」

「誰がお前の配下になるものか!」

 

 不安そうにしていた数分前なんてウソのように四葉は堂々と舞台に立っていた。

 さて、俺も負けてられないな。

 

「非常に惜しいが仕方ないわね。アクア」

「はっ」

 

 上手から出た俺は剣を抜き構える。

 

「この剣と命は女王様の為に。配下にならなかった事を後悔するといい」

 

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