ORT襲来
存在するかもしれない観測者諸君。
俺の名前はORTである。
どうしようもない絶望として創作された侵略生命体にして最強の攻性生物である。
存在するだけで宇宙嵐を巻き起こし、有害な宇宙線を放射するばかりか触れた物を結晶化させて捕食吸収する能力や、周囲の環境を元いた結晶の世界に置換する侵食固有結界・水晶渓谷を常時発動している化け物である。
そのことを自覚しているのは異世界人が死亡した後に俺に憑依転生しようとしたのを捕食吸収して人格と自身に関する知識を得た為である。
つまりは異世界の知識と明確な意思を得たORTであるということだ。
これがどれだけの脅威であるかは観測者達も理解できるだろう。
自身の能力を把握して戦略的に操作、利用するORTとか地獄以外の何者でもない。
そんな当たり前の事実を認識した俺は能力のオンオフを切り替えられるようにした。
こうすることで無闇矢鱈に生命体を傷付けずに済むからだ。
そんな俺自身の目的としてはやはり食事である。
ORTとは本能的に自身以外の全てを餌としか認識していない生物であるからしてその行動原理は単純である。
食べて生きること。それが俺の使命である。
しかし人格を得た俺は星を喰らうのを躊躇うようになってしまった。
ならばどうするか。
俺は悩んだ末にチビチビと他の生命体達と同じ食事を摂るようになった。
水晶化させての捕食ではなく、本体の炎を角質で作った人間体に押し込めて水やら肉やらを口に入れて食べるようにした。
その時の衝撃は凄まじいものであった。
星も栄養満点で美味しいのだが、肉やらは別種の旨味が口内に広がって大変美味である。
その為俺は現在グルメを求めて体から銀糸を出して宇宙を旅している。
見つけた星には片っ端から墜落して生命体を探し、発見すれば調理して食べるというのを繰り返している。
以前までの俺と比べると随分と穏やかになったものだ。
前までは星々を食べ尽くしながら移動していたというのに。
滅ぼした銀河系も数百を超えている。
真っ当に生物しているとふと思ってしまう。
今の俺なら地球にも馴染めるんじゃないかと。
その為に態々人間体も用意した訳だし、今なら地球の美味しい食べ物を食えるのではないか。
そう思い至ってしまってはたまらない。
俺は早速地球を探す旅に出ることにした。
銀糸を出して星間航行する。
しかし地球が何処にあるか分かっていないというのに今の速度では遅すぎる。
銀糸を改良して移動速度を上げよう。
そうだな。具体的には世界に風穴を開けてワープしよう。
そうすればすぐに地球も見つけ出せるだろう。
地道な作業になるが無限を生きる俺には関係ないことだ。
寧ろ俺が到着するまでに人類文明が滅ぶ心配の方が強い。
だからこそ急ぎで作業せねばなるまい。
俺は自己改造を施して銀糸を改良する。
新造された銀糸は世界に穴を開ける。
その先には一つの星が見える。
見覚えのある青い星だ。
正確には知識にあるだけなのだが、何故か郷愁を抱く。
人格はあくまで俺のものだが多少は元になった魂の影響もあるということだろう。
兎に角、運が良いことに一発目で地球を引いた。
早速日本の近場の海に落ちよう。
間違っても陸に墜落してはいけない。
もし街中とかに墜落すれば大惨事だからな。
なので日本海側の海に向かって突撃する。
地球にダイナミックエントリー!である。
海に突撃した際の衝撃で海水が弾け飛び津波となって押し寄せていくのが見える。
これはやらかしたかもしれん。
しかし懸命に生きる人間達なら被害なく生き残ってくれる筈だ。そうだと信じたい。
取り敢えず目の前の惨劇から目を逸らして移動を開始する。
現在の姿は金髪碧眼の欧米風イケメンであるので人外と捉えられることはないだろう。
俺はのそのそとした動きで陸に向けて移動する。
魔術師達に見つかったら面倒だからなるべく目立たないように生きよう。
そうして俺は地球での生活を始めたのだった。
◇
地球に来て一ヶ月。
実に平穏に過ごしている。
現在の俺の仕事は日雇いの交通整理やら皿洗いやら倉庫整理やらを行っている。
身分証も免許もない外国人を雇うだけあって内容はかなりブラックだ。
しかしそこは疲れ知らずの地球外生命体。
休憩も寝る間もなく働き詰めでも問題なく活動できる。
寧ろ動き足りないくらいである。
まあ俺が本格的に動くということは山が一つか二つ程消し飛ぶということなので当然だが。
体内では常に核融合でエネルギーを生み出しているので偶に発散させてやらないと溜まっていく一方だ。
何処かで使い道を見つけないとな。
ちなみに今住んでいるのは東京都練馬区のボロい安アパートである。
ここの大家さんがホームレスしていた俺を見兼ねて住まわせてくれたのだ。
こんな得体の知れない外国人に一室貸してくれるなんてなんと心の広い大家さんなのだろう。
俺は感謝の印として手作りの唐揚げをお裾分けした。
そんなこんなで平穏に過ごしているのだが、異様な魔術師を見かけない。
東京ならば一人か二人出会ってもおかしくなさそうなものだが、見掛けるのはよく分からない生命体ばかりである。
未知の生命体は一つとして同じ姿を持たず、また妙な力を保有していた。
一応不味そうなので今は食べていないが久しぶりに結晶化で捕食するのもアリかもしれない。
今日は帰りに路地裏にでも寄ってあいつらを食べてみよう。
そんなことを考えながら最近できたスイーツ店に向けて歩いていると、スイーツ店の入り口で白髪の青年と出会す。
青年は俺を見た瞬間に警戒心を最大まで引き上げて一歩後退した。
そして冷や汗を流しながら俺に問い掛けた。
「アンタ、何者だ?」
「え?一般人ですけど…何処かでお会いしましたっけ?」
「アンタみたいな一般人がいて堪るか!」
青年は何やら感じ取っているようだ。
魔術師という訳ではなさそうだが、普通の青年である筈もない。
特に瞳に何かしらの能力を持っている。
此方を見る瞳が酷く不愉快に感じる。
入り口でそんなことをやっているものだから他のお客さんも何事かも騒いでいる。
不味いな。下手に騒ぎになって身元がバレたら困る。
一先ず青年と中に入って話を聞こう。
「外で話すのもなんですし、どうせなら中で何か食べながら話しませんか?目立つのは好きではないので…」
「……分かった。乗ってやる」
青年は警戒を解くことなく提案に乗る。
そして二人で来店してスイーツを頼む。
「俺はジャンボチョコレートパフェで」
「…苺パフェで」
青年は警戒の瞳を向けながらも店員さんに注文する。
その異様な雰囲気に注文を受け取った店員さんはパタパタと慌てて戻っていった。
そして漸くといった様子で青年が切り出す。
「で、実際アンタは何なんだ?先ず人間じゃねえだろ」
「断定的だね。どうしてそう思うのかな?」
「アンタには呪力がない。そんで俺の本能が全力で警鐘を鳴らしている。これだけで充分だ」
「ふむ…」
呪力という単語に俺は引っ掛かる。
もしやあの謎生命が持っている未知のエネルギーのことだろうか。
確かに薄らと日本人からも呪力の気配がある。
その中で一人だけ呪力を持たないというのは不自然極まるだろう。
「成程。誤魔化してもしょうがないしはっきり言おう。俺は宇宙人だ」
「は?」
青年は素っ頓狂な声を上げた。
それに構わず俺は話を続ける。
「俺の名前はオルト・シバルバーということになっている。地球に来たのは一ヶ月前で目的は─」
「待て待て待て待て!話が急すぎる!宇宙人!?」
「余り大きな声で言わないでくれるかな」
俺が注意すると青年は何とか疑問を飲み込んで小さい声で口を開く。
「証拠はあるか?」
「本体を晒せば信じざるを得ないだろうね。その場合人目にも付くが」
本体というのは嘘である。
角質で作った巨大な蜘蛛型の端末をそう偽っているだけだ。
実際の本体は緑色の炎である。
名前も知らない妙な相手に全てを晒す訳もない。
青年は長い沈黙の末にゆるゆると息を吐き出した。
そして枯れ果てた声で名乗った。
「俺は五条悟。呪術高専の二年生だ。取り敢えずアンタの話を信じて身柄を拘束させてもらう」
「何故に」
「アンタが危険過ぎるからだ」
俺の抗議する視線をお構いなしに五条は携帯を取り出して誰かへと通話を掛ける。
そして暫く話し込んだ後に疲れた様子で俺に声を掛けた。
「アンタは大人しく付いて来る気はあるか?」
「場合によるな」
「と言うと?」
五条の真剣な表情に対して俺も真剣な顔で告げた。
「美味しい物が食えるなら付いて行く」
「……なんか真面目に考えてる俺が馬鹿なのかと思えてきた」
五条は疲れ切った顔でそう吐露した。
生憎俺はパフェ一つで釣られる現金な侵略生命体だ。
何を期待されてるかは知らんがSF映画の宇宙人みたいなことはしない。
そこで注文していたパフェが届く。
「お待たせしました。ジャンボチョコレートパフェと苺パフェです」
「おお!」
俺は巨大なチョコレートパフェに感嘆の声を上げる。
そしてスプーンでワクワクしながら食べ始めた。
「もういいや…」
五条は考えるのを放棄して目の前のパフェに集中することにしたようだった。
・オリ主
優しい侵略生命体。
その気になれば瞬時に星を結晶に変えることが可能。
・呪術界
突如襲来した宇宙人に大混乱している。
総監部は捕らえて実験しようと企んでいるようだ。
天内理子について
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