浅上怜士異世界未帰還録 ――置いてかれるとか聞いてない。―― 作:出落ち
夢の様に衝撃的な事件から、なんだかんだ約一週間の時が過ぎ去った。
その一週間は、まるで夢を見ている様な日々だった。
「まあ、なんだ。帰り損なったお前さんにこんなこと言うのは不謹慎なんだろうが、お前さんや、先に帰ったアイツらとは、二度と会えないだろうと思っていたからな。まぁ、なんだ?オレはまたこうしてお前さんと話せて嬉しいぞ、レイジ。……だから、な?」
右隣に座り俺の背中を撫でている髭面のデカいおっさん。……
「私もレイジさんとのお別れは悲しかったですから、また一緒に居れて嬉しいですよ?……ですので、ね?」
左隣に座り俺の背中を撫でている前掛けをした年下の女の子。……ギルド内に併設された酒場の売り子さんなんですけど。というか、
「そろそろ、な?/そろそろ、ね?」
……そして俺はといえば、現在進行形で酒が入っている訳でして。
「…………飲まなきゃやってらんねんだわぁっ!!」
テーブル席から立ち上がり叫ぶ俺。
人が疎らなギルド内に木霊する叫び。
集まる同情の視線。
両サイドから俺の背中を撫で慰めてくれている
憐れ、現実からは逃げられない。
「……目の前で閉じるとか冗談じゃん?!ドッキリでも笑えねえよ?!あとは、ゲートを開くのに必要な材料?!ナニあれ?!無理じゃんっ?!」
振り返る約一週間。
帰還当日。放心。
一日目。同上。
二日目。寝込む。
三日目。同上。
四日目。同上。
五日目。同上。
六日目。国の偉い人達からの謝罪やらこれからの事アレコレ。
七日目。ギルドでやけ酒。
今日、二日酔い。そして、現在へ至る。
「
必要なものその一。
「
必要なものその二。
「ユニコーンの尾?!こんどはユニコーン?!
必要なものその三。ユニコーンの尾。角の生えた馬。あと、処女過激派。必要なものらしいけれど何に効果があるのかは未だに判っていないらしい。ユニコーンの角には病を治す力が宿っているらしく、角と同様の効果が期待できるのではないかとのこと。
「グリフォンもしくはヒポグリフの羽根?!よく判んないけど必要ってなに?!ユニコーンの尻尾もだけどさぁ?!」
必要なものその四。グリフォンもしくはヒポグリフの羽根。こちらも必要なものらしいけれど何に効果があるのかは未だに判っていないんだそうだ。予想としては、ゲートを開くのに魔方陣を描くのだがゲートか魔方陣どちらかの魔力を安定させるのに必要なのではないかとのこと。
「あと、その他諸々?!雑?!余りにも雑?!頑張ろ?!もう少し頑張ろ?!必要なものが多くて面倒臭くなっちゃったのかなぁ?!違うよねぇ?!材料のこと伝えてくれてる時、もぉんのすごーく申し訳なさそうにしてたものなぁ?!まさか取り残されるとは思ってもなかったよね?!ごめんなさいねぇっ?!」
最後。その他諸々。人魚の鱗とかエルフの髪の毛とかドワーフの髭とか他にも色々。雑。余りにも雑である。
「……ハァ、ハァ、ハァ…………スゥー……ハァ…………アイゼンさん、マナさん。悪い、少しスッキリしたわ」
乱れた息を深呼吸して整え、席に着く。そのままテーブルに顔を埋めた。
頭には大きくゴツゴツとした手が乗せられ、背中には小さな手が添えられている。
「酒飲んで、溜め込んだもん吐き出せ。それでスッキリ出来たんなら、それはいいことのはずだ、レイジ。……まあ、飲ませておいて、止めに入ったオレが言うのも変な話だがな」
「それに、話を聞くくらいなら私だって出来ますから。ツラくなったら頼ってくださいね、レイジさん」
五年もこの世界に居たからなのか、そこまで心が追い詰められることはなかった。確かに負の感情は湧いた。それでも、あの日。あの場に来ていた人達にそれをぶつける気は、不思議と起きなかった。どれだけ親身になって対応してくれたかを知っているから。この世界に来て、右も左もわからない人間をどれだけ支えてくれたかを知っているから。差し伸べられたその手の温かさを知っているから。
「明日から……うん。明日から又、少しずつ頑張るよ」
シリアスを犠牲にしてコメディ路線でいくか、笑いを犠牲にしてバトル路線でいくか。