首輪付きが今度はキヴォトスを荒らすようです   作:AC組んでSS書いてる人

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とある場所
「ねぇ、社長」
「なに?」
「あの大人の人、いたでしょ?」
「大将?」
「いや、客席にいた人」
「・・・そういえばいたわね、それがどうかしたのよ?」
「あれ、多分【シャーレの先生】だよ」
「ゑ?」
「あと一緒にいた子たちは多分アビドスだと思う」
「えぇっ?!」

「あ、あの時始末しておくべきでしたか・・・?!」ジャコンッ
「ハルカ、そういうのはよしなさい!え、じゃあ私たちにおごってくれたあの人も…?!」
「可能性はある、なんか距離近かったし。でも、それだとわかんないことがある」
「「「?」」」
「なんで、あの人はアビドスにそこまで協力的じゃないんだろう…?」






喧嘩

「ん、つれてきた」

「先輩たち、遅いですよ!」

対策会議室に入るとすぐさま後輩たちから非難の声が飛んできた。先生も何とも言えない表情を向けている。

 

「ごめんねぇ、おじさん眠たかったからさぁ」

「私も眠いんだよね」

「ん、嘘。関節折ろうとしたとき素早かった」

「”なにしてるの?!”」

「いやいや、シロコちゃんがなめた口きいたからさぁ」「ホントホント」

「ん、事実いつもぐーたらしてるから無罪」

「うへぁ、これは手厳しい」「まぁホシノはともかくグータラしてるのは事実だが」

「山猫それどういう意味よ」

「こいつ夜な夜なパトロールしてんだよ。眠れないのかもだが、少なくとも何もしてないってことはないぜ」

「うへ、それだったら山猫だってよく一緒にパトロールしてるじゃん」

「それは言わねぇ約束だろうが、ヨ」

「二人とも素直じゃないんですねぇ~♠」

そんなこんな離す皆々。先生はそれをほほえましく見つめる。やはり生徒同士が仲良しなのは気分的にいい。

 

「”ホシノと山猫、仲良くなってきた?”」

「「いや、全然」」

「”あれぇ?!”」

「ん、いつものことだから気にしないで」

そう言いながら二人の腕を引っ張るシロコ。しかし、二人はびくともしなかった。

 

「ん、2人とも脚踏ん張らない!」

「まぁまぁ背伸びしようとしてただけだし」「足裏で真空作ってる最中なんだよ」*1

2人が更に粘っているとノノミが消防斧をもって立ち上がる。

 

「あらら~、ずいぶんと我儘な体なんですね~?☆」

「許して」

「殺意。かかってこい」

「やめなよ山猫ちゃん!」

すっと構える山猫に即座に待ったをかけるホシノ。普段から雑な会話をしている二人だが、スタンスは全然違うようだ。

 

「しょうがねぇな1000円くれよ」

山猫はすっと掌を見せてくる。

 

「ハイハイいつもの」

対してホシノは差し出してきた掌に己の掌をポンと乗せる。

された山猫は嫌そうな顔を浮かべ、手をスカートでごしごしし始めた。

 

「ねぇ今のスゴイ傷ついたんだけど」

「よだれついてたんだよばっちぃな」

「え 嘘だよね?」

「うん」

「殺すぞ。というかいつも手袋してるんだから別に気にしなくていーじゃんか!」

「あはは」

そんなことを言いながら2人はよっこいしょと席に座る。片方は机にもたれかかり、もう片方は脚を組んでふんぞり返っている。

 

「2人とも、やる気ありますか?!」

「あるある~」「探検隊~」

アヤネの大声にものんびりと返す二人。

 

「ん、2人ともあまり頼りにならないから私達だけで進めるべき」

「そうよ!この二人暴力と暴言でしか頼りにならないわよ!」

「うへへ、酷い言いざまだね」

「ろくな打開策言えない面々が言える立場かよ」

「ホントだよね」

 

「というわけで少し案を持ってきた」

 

「へーそうなんだー ・・・案?」

流そうとしたホシノだが思わず二度聞きしてしまう。他の面々も思わずといった様子で二度見していた。

 

「あん…?あんってあれでしょ?饅頭とかに入れる」

「それは餡だな、腹減ってんのか?」

「あんってあれですよね?お坊さんとかが住んでる小さなおうちですよね?」

「それ庵な。即身仏にでもなるか?」

「案って…あの?」

「あぁ、案だ。考え・策だな」

 

「「「「「「”え~~~~~っ??!?!”」」」」」」

 

「うるさっ」

全員が驚愕する。あの山猫が、野次飛ばすだけ飛ばして何もしない山猫が案を持ってきたということが信じられなかったのだ。明日はサーモバリック弾が空から落ちてくるのだろうか。

 

「え?!持ってきたの?!」

「おう、最高の策だ」

「ん、気になる」

「任せろ、これ通せば稼がなくてもいいぜ」

「そ、そんな素敵な策なんですか?」

「あぁ」

「是非教えて欲しいです~☆」

「おう」

すると皆が静かになるまで少し空白を置く。皆がまだかまだかと待ちわびている中、再び口を開いた。

 

「まず、前提としてカイザーに借金をしている。そうだな?」

「うん」

「つまりお前らは生殺与奪の権をカイザーに握られているわけだ」

「・・・確かに、そう言えるね」

「そうとしか言えないの間違いだろ。それは置いといて、だ。

 その生殺与奪の権を取り戻したいとは思わねぇか?キヴォトス人、特にヘイロー付きの得意な方法で、だ」

「「「「「?」」」」」「”…まさか”」

「あぁ、そうさ」

笑みを耳まで裂けるほど深くして山猫は言い放った。

 

「カイザーを滅ぼせばいい。

シャーレの指揮・アビドスの戦力/役割分担の手際の良さなら、それができる」

 

一瞬、沈黙が走る。皆々即座に理解ができなかったからだ。しかし、反芻し、理解した直後、感情はぶわっと大波のようにあふれ出す。

 

「”できるわけがない!!!”」「それは…ちょっといただけないかなって」「あんたキチガイ?!?!無理よそれ!!!!!」「荒唐無稽なのもいい加減にしてください!!!!」「ん、アホ」「期待したのがバカでした~♧」

 

すさまじい拒否と罵倒、しかし山猫の顔はあまりにも涼しげだった。馬耳東風だろうか。薄い笑みを浮かべながらそれらを受けていた彼女。

 

しかし突如机に拳を叩きつけた。バ キ ィ ッ と激しい音を立てて机が割れる。上に置かれていたお茶や筆記道具・書類が舞い散る。

それと同時にアビドスの面々と先生は思わず怯んだ。基本嘯いて文句言って毒を吐くことしかしない彼女が直接的な暴力行為で黙らしてきたからである。

 

「いつまでぬるま湯気分だお前ら」

再び口を開いたとき、彼女は真顔だった。いつもニタニタしているあの顔とは一変、まるで生気も人情も感じさせない顔になったのだ。

 

「お前らが明日を望める立場でもねぇくせに何綺麗ごとだけでやろうとしてる。私言ったよな?暴力は弱者ができる抵抗手段だって。

 お前ら全員弱者なんだよ、自覚できてないだろうが」

「”この子たちが、弱者?”」

「あぁそうさ。外様かつ連邦生徒会長直々に作った自治区の法に縛られない特権階級組織の長であるシャーレにはどうせ理解できないだろうから直々に教えてやる。

 こいつらは大金借金してる弱者なんだよ。命も住処も、全部カイザーの一振りにつぶされるようなお前らが、何で手段を選んでられると思ってるんだ?本気で理解ができない」

怒りをにじませながら話す山猫。全員が口出しできない中、ホシノがおずおずと口を開いた。

 

「で、でも、おじさんはアビドスが大事だから」

「それでこいつらも借金漬けに巻き込んだってか?!あぁ?!!

山猫が声を荒げる。なんだかんだ我慢していたのだろうか、かなり怒っているようだ。

 

「お、落ち着きなさいよ山猫!私たちは気にしてなくて…!「黙ってろ雑魚が!」雑魚?!」

お前(ホシノ)がうだうだしてずっとここ(アビドス)に残ってたから、お前(ザコ)も!お前(犬っころ)も!お前(メガネ)も!お前(ご令嬢)も!わざわざ来なくてもいいところに来たんだろうが!!

 

後輩を地獄に道連れにした責任とれよカスが!!!

 

今度はホシノが怯んだ。下を向き、口をつぐんでしまう。しかし山猫は態度を崩さない。更に追い打ちをかけんとくっちを開こうとしたその時、声をかけたものがいた。

 

「”山猫!言いすぎだよ!!”」

「連邦生徒会が後ろ盾にいるお前がいっちょ前に味方面してんじゃねぇ!そのタブレットが無ければ何も出来ねぇ癖しやがって!!うまいのは指揮だけか!!!」

「ちょっと 山猫さん落ち着いてください!いくらなんでも言っていいことと悪いことがあります!!」

「なんだメガネテメェやるか!お前も後ろでコソコソ指示出しするだけしか取り柄の無いだろうが!その頭脳を借金返済にもう少し充てたらどうだ!」

「充ててますよ!」

「足りねぇから言ってんだろうが!!」

「山猫さん、ちょっと落ち着いてください☆」

咆える山猫に拳を振り下ろすノノミ。さすがにこれ以上は看過できないと踏んだのだろう。対して咆えていた山猫は振り下ろされてくる拳を視認すると軽く払いのけた。

直後、素早く椅子を倒しながら立ち上がった山猫はノノミのこめかみめがけて左拳を振った。その拳は直撃し、彼女は明滅する視界とめまい・吐き気を引き起こしながらその場に崩れ落ちる。

 

「んだお前。セイント・ネスティフの令嬢が偉そうにしやがって、帰る家も継ぐ会社もあるお前に帰る家すら不安定なこいつらの気持ちが本気で理解できんのかよ」

「山猫、さすがにそれはダメヨ!謝りなさいよ!!」

「うるせぇノータリン!テメェここまででいくら詐欺に引っかかってんだ!こないだなんか誘拐までされやがって!!お前みたいなやつが組織を崩すんだよ役立たず!!!」

「なんですってぇえええええ!!!!」

セリカがつかみかかろうとするが、山猫はそれよりも先に首を掴むと締め上げながら壁にたたきつける。

 

「ごえっ」

「なんだおめぇこんな弱い癖しやがって威勢だけはいっちょ前かぁ…?お前みたいなやつは下で従順なのが精いっぱいなんだから変に思いつくんじゃねぇよ、機械の方が役に立つわ」

手に力を徐々に込め、首を絞めていきながらセリカをつめる山猫。しかし、その首筋に衝撃が走る。

 

「・・・なんだよ」

「ん、暴れすぎ」

見ると砂狼シロコがいた。手がチョップの形をしているのを見るに、さっき首筋に叩き込んだのは彼女だ。山猫はそれを理解すると同時にセリカの首から手を離す。

 

「がはっ ごほっ」

息を一気に吸ってせき込む彼女をよそに山猫はシロコと対峙する。

 

「お前さぁ、いつ銀行強盗するの」

「ん、それは今じゃない。それよりもこの惨状に謝って」

「なんで?」

「なんでもそんでもない。悪いことしたら謝るのは人として当然」

「悪いことしたらだろ?・・・あー、さすがに机壊したのは悪かったよ。ついカッとなっちまった」

「それもあるけど、ノノミ先輩とセリカには真っ先に謝るべき」

「こいつらから先んじて仕掛けたのにか?所かまわず殴ったり首絞めたわけじゃないだろ」

「それはしってる。でも、私たちは仲間。形だけでも謝罪はすべきだと思う」

「・・・そうだな、一応そうだ。お前の言うとおりだ」

「ん」

「・・・・フゥーーーーーーーー、お前らすまん。今の現状についつい爆発しちまった。お前ら殴って変わるわけじゃないのにな」

「ん」

「んーんー五月蠅いな、言いたいことあるなら言えよ」

「・・・山猫、あなたの懸念もわかる」

「・・・」

「今のアビドスに希望がないことは私も漠然と理解してる。でも、それでもと前に進みたいの。だからこそ、シャーレに助けを求めた。外部の人間を入れたら、現状への打開策が浮かぶんじゃないかと思って。

 今すぐで結果なんかでない。でも、積み重ねこそが大事だと思う。強盗もあくまで手段であって目的じゃない。ホシノ先輩の提案である拉致は…悪い考えじゃないと思う。ヘルメット団とか、仲間に引き込むことができれば、かなり変わるはず」

「でもアピールポイントがない」

「そう、ない。だからこそ、ホシノ先輩の案は元から破綻してる。他自治区と不和を生じてしまえば、恐らく、アビドスはつぶされる」

「武力か政治か借金のどれかでつぶされるだけだわな」

「うん」

「どうするよ」

「どうしようね」

重い沈黙が教室を包む。

全員が声を上げることができない中、誰かの声が聞こえた。

 

「・・・てるよ」

それはあまりにもか細い声だった。一瞬誰だと皆が思う。いや、山猫はもうすでに察知していた。

彼女はすっとシロコを軽く押しのける。「ん」と軽い声を上げつつそのまんまなされるがままの彼女。

 

「・・・わかってんだよ」

ここで山猫以外の全員が声の出どころを知覚する。小鳥遊ホシノだ。未だうつむいているが、手がわなわなと震えている。

泣いているのだろうか、と誰かが思った時、バッと彼女は顔を上げた。

 

「わかってんだよぉ!!」

その目には涙が溜まっていた。しかし瞳は山猫をしっかり見据えており、そして何より、後悔と憎悪と怒りと悲しみがこもっていた。

 

「わかってんだよ!私のせいで皆苦労してて、今お金で苦しんでることも!!」

「”そんなことないy「わかってんじゃん頓馬」山猫!!”」

「だけど、お前は金を稼ぐ気もない癖に!!私たちをずっと嘲笑ってるくせに!!!」

「金稼ぐ気はないのはそうだけど嗤ってはねぇだろ」「”なんで火に油をそそぐの!!!!”」

「お前なんか、お前なんかっ ここから出ていけーーーーーーーーー!!!!!

「後輩が拾ってきたんだから先輩のお前が責任とれよカスがぁ!!」

「減らず口をぉーーーーーーーー!!!!!!!」

次の瞬間、ホシノが山猫にとびかかる。対して山猫はしゃがんでそれを回避すると、流れるようにホシノにつかみかかって胸ぐらをつかむ。ドアを突き破り、廊下に飛び出した。

激しい音を立てて破片やガラスが飛び散る中、二人ともゴロゴロと転がる。双方すぐに飛び起きると、即座に走り拳が交差する。いわゆるクロスカウンターの形だ。しかし、両方とももう片方の手で防ぐ。それを見るやふたりは蹴りで互いの腹を蹴り飛ばすと無理矢理距離をとった。

 

睨み合いが起こる。片方は怒りを、片方は愉しみを瞳に宿しながら。

 

 

「久々に堪忍袋の緒が切れたよ。なめるなよ、部外者が」

「ほざけよ。何が堪忍袋だ、銃をぬいてさえいないクセして」

「つかったらお前、殺せるじゃん」

「そうだよ?」

山猫に笑みが戻る。薄く嗤いながら、腰のホルスターに収められているハンドガンを見せつけるようにとんとんと叩く。だが、それを見た上でホシノは、銃をぬく仕草すらしない。

 

「どうした、抜けよ。正当性はお前にあるぜ?キヴォトス人だろ、お前」

「・・・」

「・・・あぁ成程、そういうこと。

 お前、私に大義名分を与えないつもりか」

そう言うと山猫はいつでもとびかかれる体勢からすっと普段通りの姿勢に戻す。対してホシノは構えをしたまま言葉を発した。

 

「山猫ちゃん…君は狂っている。君の力・思考はキヴォトスにはあまりにも危険だよ」

「知ってる」

ホシノの言葉に山猫は返事する。その表情と態度は「知ってること聞くなよ」とでもいうようだ。

 

「そして自分でそれを抑える気もないでしょ」

「うん」

返事と同時に、山猫がニヤッと笑みを濃くする。そして即座に動き出す。ホシノは止めようとダッシュするがそれよりも彼女の方が速かった。

彼女は窓ガラスを突き破って外へ飛び出した。ガラスがキラキラと宙を舞う中、ゴロンと転がって着地すると全力で走り出す。校庭の土嚢をぴょんぴょんと飛び越えて後門から抜け出した。

 

それを見たホシノもまた、割れた窓ガラスから飛び出して追いかけていく。自分から出て行けと言った癖に追いかけるとはどういう料簡(りょうけん)かは知らないが、このままではまずいとでも思ったのだろうか。

 

カンカンと照り付ける太陽が窓から差し込む中、お通夜のような雰囲気を対策会議室が包んだ。

 

「・・・ん、アヤネ。対策会議を、しよう。山猫はホシノ先輩が対処してくれる、はず」

「・・・・・・わかり、ました」

重い空気の中、何とかシロコが言葉を出す。ノノミとセリカを先生が解放しながら、会議が始まった。

 

 

続く

*1
どっちも大ウソ





おかしいな、今回で便利屋襲撃までやる予定だったはず・・・なんか筆が乗ったらここまでなっていた・・・

というかこの回プロットではホシノと山猫が喧嘩して怒られてふたりで逃げだす回にする予定だったんですよ
なんでこんなことなってんですかね
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