首輪付きが今度はキヴォトスを荒らすようです 作:AC組んでSS書いてる人
侵入
「"うぅ・・・"」
某日、アビドス某所の道路で誰かが倒れていた。
見てくれは男性。ヘイローはない。白いスーツを纏っている。汚れとかが凄い気になりそうだが・・・そんな事お構いなしに地面に体を預けていた。どうやら遭難しているようである。
見たところ、水筒他色々必要な物資を持っているようには見受けられない。砂漠をなめてきた奴にはお似合いの姿だろう。
だが、捨てる神あれば拾う神ありということなので・・・・・
「ん?大丈夫?」
自転車のブレーキ音と共に声がかけられた。
見ると銀色の髪に狼の耳がついている。首元には青いマフラー。
彼女は倒れている人を憐憫の目で見つめている。
「み、水・・・」
倒れている人間はかすれたうめき声と震える手で天を仰いだ。
~☆~
「っはぁ!生き返ったぁ!!」
倒れていた人はもらった水筒の水をあおりながら大きな声で生命力あふれる声を出す。いかにも単純な奴である。
間接キスになったんじゃないかと少し思いながらも狼女は話を切り出した。
「そのスーツに腕章…連邦生徒会の人?」
「”あ、うん”」
「こっちには私達の学校くらいしかないけれど・・・」
「”そうなんだ、アビドス高等学校が目的地。救援の手紙をもらったからね”」
そう言いながら彼は胸ポケットからもらった手紙を取り出した。彼女がそれに目を通すと、確かに自分の同級生と同じ執筆だと気づく。
「そっか なら久々のお客様だ。案内してあげる、ついてきて」
そう言いながら彼女は立ち上がるとついて来いとでもいうようなそぶりを見せた。
雰囲気は少し柔らかくなっている。無理もないだろう。
アビドスは今過疎化が進み、残っているのは物好きな奴等と外に飛び出すこともできないような奴等しかいない。他にいるとするならば企業や不良・傭兵共だろうが・・・今は詳しく話すことでも無いだろう。
そんな中、救援の手紙を提示しつつこちらに歩み寄ってくれる大人は貴重だった。逃がす手は無いのだ。
連邦生徒会自体は信用できないが、こうしてきたこの人は少しだけ信用してもいいと思う。それが彼女の判断だった。
「”・・・乗せてくれない?足が、限界なの”」
対して彼はがくがくと小鹿の如く足を震わせながらよろよろと立ち上がる。見るからに無理そうだ。彼が遭難して倒れていた場所は交通の便も無いような場所だ。自転車の一つなければ移動も難しいだろう。一応居住地と言えばそうなのだが・・・ここら一体彼女以外誰も住んでいない。
「・・・う~~~ん」
彼女は少し悩む。この自転車は一人乗り用で二人乗りには設計されていない。一応かばんを後ろに括り付けているのでそれを椅子代わりにしてあげてもいいのだが…乙女の尊厳がそれを許さなかった。
「”おんぶでもいいから…助けて”」
彼は懇願する。杖の一つでもあれば大分違ったのだろうが・・・そんなもの用意できるほど彼には金銭的余裕も心理的余裕も無かった。
彼の理念は『子供を助けること』。そのためなら闇の中でも懐中電灯ももたずに突撃だってするような精神性なのだ。はっきり言って何か過去にトラウマでもあって強迫性概念にでも囚われているといった背景がある方が納得できるが・・・少なくともこの場にいる全員が彼の背景を知らない。
「・・・まぁおんぶなら。あ、でも汗かいてるし」
「”大丈夫。汗なんて皆かくから”」
「・・・ん、乙女的には少し減点」
「”ごめん”」
そんなこんな言いながら彼は彼女におんぶしてもらうとそのまま自転車の風にあおられながらアビドスに向けて出発した。
ほのかに香ってくるシャンプーとリンスの香り、そして汗の酸っぱささ。青春だなぁと感じながらも彼は目前の問題に挑まんとしていた。
「ん、ここがアビドス高校。私達の学び舎」
到着すると彼女はそう言いながら彼を案内する。
そして教室の一つのドアに手をかけて開け放った。扉の上にある看板には「廃校対策委員会」と書かれている。
「ただいまー」
「おかえり、シロコ先ぱっ うわっ!? 何!? そのおんぶしているの誰!?」
「わぁ、シロコちゃんが大人を拉致してきました~~!」
「拉致?! 死体?!! シロコ先輩、ついに!
「おーおー派手にやったなぁお前ェ それ息があるからとどめさしとけよ」
「皆落ち着いて、バレなきゃ犯罪じゃないのよ! とどめさして死体を隠す場所を探すわよ、体育倉庫にシャベルがあるから、それで」
「・・・」
慌てふためくクラスメイト達に彼女、シロコと呼ばれた少女は微妙そうな表情をする。確かに急にこんな人を連れてきたのは自分だがいささか自身に対する偏見が強すぎるのではないかと。
それを「仲いいね」と言いたげな表情で見ながら彼はおんぶから降ろしてもらうと自己紹介をした。
「”待ってくださいね、皆。私は死体でもないし拉致されたわけでもないよ”」
脚がまだかくかくふるえているが武者震いだろうか。脱水症状かもしれない。早急に椅子に座らして差し上げろ。
「死体が喋ってる」
「ノノミ先輩急に落ち着かないでください?!」
「え、拉致じゃないんですか?!」
「足震えてるぞ。死にかけでもないのに」
好き勝手言い放つ少女*1たち。
「いや・・・普通に生きている大人だから、うちの学校に用があるって」
シロコが助け舟を出す。対して他三人はは少し訝しむような目線を、一人は意味深な目線を向けた。
当たり前の話である、突然自分たちの学校にやってきた大人の男性。彼女達の今の状況を考えれば警戒するのは当然と言える。いや、一人は最近来たばっかりではあるのだが・・・
「お客さんなのは分かったけれど、一体誰なの?」
「……えっと、遭難してて少しノンデリな人」
「「「……?」」」「・・・」
3人の頭の上に疑問符が浮かぶ。1人はなんか意味深な目線をそのまま向けていた。はっきり言ってただの不審者としか思えない情報である。
「”シロコさん、だっけ? それだと何もわかんないよ”」
「……違うの?」
違わないんだよなぁこれが。
彼は半笑いでそう思った。実際遭難していたのは事実だしノンデリ発現しちゃったのも事実だった。
微妙な空気がその場を包む。だが、そんな中金髪の巨乳が手を軽くたたくとはつらつとした感じで声を上げた。
「まぁ、それは置いておいてお客様がいらっしゃるなんて、とっても久々ですね!」
流すことにしたようだ。
元々シロコは突発的なことが多い。ずっと一緒に生活してきてそれを知っているので流すことにしたようだ。いい判断である。
「そ、それもそうですね……でも来客の予定ってありましたっけ?」
「”んんッ! えぇと、私はこういうものです”」
彼は首にかけているネームホルダーを手に取ってみせる。全員の視線がそこに集中した。少しむず痒い感覚を覚えながらも彼は言葉をつづける。
「”最近新設された連邦生徒会直属組織のシャーレ、その顧問である先生です。今失踪している連邦生徒会長の置き土産ってことで・・・まぁ、ここに来たのは私個人の意思だけど、よろしくね?”」
どこか誇らしげだ。まぁ今の今までいい所見せれていなかったのでご愛敬である。子供を優先する大人であろうと多少の自己顕示欲はあるというものなのだろう。
「「「「えぇ?!」」」」「…ふむ」
その場にいた5人全員が人それぞれとはいえ反応を示した。
シャーレ・・・今失踪している連邦生徒会長用の置き土産であり、独立連邦捜査部。
キヴォトスの外から呼び出した彼、「先生」を顧問・トップとして、規約や法律による規制や罰則を免れる超法規的機関。どの学園にも介入でき、そしてどの生徒にも協力を要請できる特異点ともいえる存在だ。
サンクトゥムタワーの制御も握れる正に夢のような権力だが・・・その権力は早々に彼自身が放棄している。
故に弱点もある。
法律や規則にこそ縛られはしないが・・・それゆえに世間の目からは逃れられないこと。
そして、生徒ではない存在には何も介入する権利がないということ。
シャーレはボランティアのような組織であって警察/軍組織ではないのだ。そして、生徒の味方故に善悪の区別もない。
場面を戻そう。
4人は手を取り合って喜び、1人はその輪に入らずに思考する素振りを見せた。
「ん!ん!!ようやく届いた…!」
「連邦捜査部シャーレの先生!?」
「わぁ、支援要請が受理されたのですね! よかったですね、アヤネちゃん!」
「はい! これで……弾薬や補給品の援助が受けられます!」
まるで天から希望が降ってきたかのような喜びっぷりだ。それだけ彼女等は追い詰められていたのだろう。
「”あ、そうだね。弾薬や補給品の援助のサインをもらわないと”」
そう言いながら彼はタブレットを取り出すとすっと画面を向けてきた。そこには文章とサイン表記欄が書かれている。
アヤネと呼ばれた少女はそれを隅から隅まで目を通すとサインにアビドスの名前を書いた。
「あ、早くホシノ先輩にも知らせてあげないと……あれ、ホシノ先輩は?」
「委員長は隣の部屋でお昼寝中、私が起こしてくるから」
「お願いします、セリカちゃん!」
どうやら黒髪の猫耳はセリカというらしい。彼女がホシノと呼ばれる先輩を起こしに教室から出て行った。それを見送ったアヤネが先生の方へ向き直ろうとしたとき、異音が響く。
「っ、銃声?!」
如何やら銃声らしい。グラウンド・・・もっと正確に言えば校門の方からだろうか。
咄嗟に見るとそこにはヘルメットをかぶった不良共が多数攻め込んできていた。どう見てものんびりお話というわけにもいかないらしい。
視認した多数の表情がゆがむ。
「ひゃっはー!!」
「アビドスの連中も弾薬が尽きてるはずだ!!やっちまえー!!」
「校舎はできるだけ壊すなよ!!バリケード破壊しろ!!」
「ロケラン、ってーーーー!!!」
ヘルメット団の下卑た声を皮切りにアビドスの弾丸と爆発が飛び交った。かなりの数だ。武装を見るにマジなのだろう。
「あれは・・・カタカタヘルメット団です!!」
「ん・・・性懲りもなく」
アヤネが端末を叩きながら悲鳴染みた声を上げ、シロコは今にも飛び出さんと動いていた。女がガラッと窓を開けるとシロコはすぐさま飛び出した。
それと同時にセリカが誰かを抱えながら教室に飛び込んでくる。自身の武器も持っているあたり、短時間で準備完了したようだ。早いものだ。
「連れて来たわよ!ほら、ホシノ先輩!!寝ぼけてないで動いて!!」
「うへ~~~まだ眠いよぉ」
「襲撃が来てるのよ!動いて!!」
「うへぇ・・・いこうかぁ」
目をこすりながら引っ張られてきた子がホシノだろう。ぽやぽやしながらも銃は握られており、たてかけてあった盾を持つとずっと窓際に座っている女に声をかける。
「今日もよろしくね、山猫ちゃん」
「動いて欲しけりゃ金払え~」
山猫と呼ばれた女はそうごちる。
「うへぇ、山猫ちゃん。仲間なんだからそういうの抜きでさぁ~」
「じゃあ教室で待機しとくわ。丁度こいつらいるし」
「よろしくねぇ~」
いつものことだと流した彼女は窓から飛び降りた。
ヘルメット団とアビドスが本格的に交戦し始めた。アヤネが忙しく通信機と端末を叩いていく。
「数、把握できました・・・数にして40!!」
『多くない?!いつもは20とかでしょ?!』
『うへぇ、奴さん本気だねぇ』
『ん、なにがなんでもって感じ』
通信機からアビドスの声が聞こえてくる。その間にも銃撃音や爆発音がやむことはない。
「しかしヘルメット団も飽きないねェ、暇なのかな」
そんな光景を窓からニヤニヤ見ながら山猫は独りごとのように言う。銃すら手に握られていないあたり、本気でやる気がないようだ。
「山猫さんも手伝ってください!!」
「えーやだよ。金払われてないもーん」
「いっつもそんなことばっかり!たまには動いてくださいよ!!」
「だいじょーぶだいじょーぶ。どうせ勝つだろ」
アヤネの叫びにものらりくらりと返事する彼女。
「あいむしんかーとぅーとぅーとぅーとゥとぅーあいむしんかーとぅーとぅーとぅーとゥとぅー」
口笛すら吹き始めるのだから話にならない。
『ん……この数だと弾薬、ギリギリかも』
『山猫ちゃんもいつも通りだしねぇ…』
『このままだとじり貧です…!どうしましょうか?』
「”皆、聞いて欲しい”」
先生はそう言うと再び大きく息を吸い込む。そして口を大きく開けて通信越しに声を張り、全員の注目を集めて告げた。
「”私が戦術指揮をとる。従って、ください”」
全員が驚いたような沈黙、その空白が生まれた。全員の脳裏に様々な感情・思考がめぐる。
『ん…D.U地区での騒動の剣は私も耳にしたことがある・・・ここは従ってみよう』
『や、やってやるわよ!打開できる方法があるならそれに従うわよ!もし失敗したらただじゃ置かないわよ!!』
『賛成です☆お願いしますね』
「先生、お願いします!!」
『・・・おじさんも、今は信じるからね』
全員思うところこそあれど了承した。
「”じゃあ、今から指揮を執る!各員、したがって!!”」
~☆~
先生が指揮をとって徐々に戦線がアビドス優勢に傾いたとき、先生が近くにいた山猫にも声をかける。
「”山猫も、お願い”」
「えぇ~~~私もかよ 金払え」
「”まぁまぁそんなこと言わずに、お願い?”」
「チッッッッ」
「”凄い舌打ち!”」
彼女はそれを見るとしょうがねぇなぁとでもいう風に銃を外に向ける。やる気は一切感じられない。
「なんで私が滅多なことで打たないのか教えてやろうか」
そう言うと一発だけ打った。その弾丸は真っ直ぐ不良共のリーダーの腹に突き刺さると鮮血があふれ出す。
「あ、え」
リーダーは何が起こったのかわからないような声を上げた。他団員も何が起こったのかわからずに固まってしまう。
アビドスの面々も何が起こったのかわからなかった。
「あれが理由。私が攻撃すると普通にキヴォトス人の神秘貫通するんだよね」
そう言いながら彼女は何事もないかのように銃をしまう。シッテムの箱を持つ先生の手に思わず力が入った。
つづく
【キャラ紹介】
山猫
| 所属 | アビドス高校…? |
| 学年 | 不明 |
| 年齢 | 不明 |
| 誕生日 | 不明 |
| 身長 | 不明。目測では170以上はある。 |
| 趣味 | 不明 |
| CV | 伊藤〇紀 |
| デザイン | 稲〇航 |
| イラスト | N〇RA |
▶山猫という名前だがケモミミはない。
▶「一部記憶喪失」と本人は言っているが・・・?
▶武器はハンドガン。