首輪付きが今度はキヴォトスを荒らすようです 作:AC組んでSS書いてる人
ヘルメット団を追い払った後、教室は紛糾していた。
「だぁーかーらぁー 私の体質は他人のあれこれ無視すんの。何回言わすんだよ」
「なんで知ってるならとどめさしたの?!」
如何やら山猫とアビドス全員が言い合っているようだ。
「見せしめ 言わんくてもわかるだろ」
「見せしめって…そこまでする必要性は」
「つーか撃てって命令したのはこいつじゃねぇか、なぁ?」
親指で先生を指さしつつ目線はアヤネの方に向けてのたまう山猫。
「先生、嘘だよね…?」
「”いや、お願いはしたよ…でもこんなことになるなんて思わないじゃないか!?”」
「・・・それは、そうですけど」
「”それにとどめをさせまで私は言って無かったよ!ねぇ山猫!”」
「知らん。どうでもいい」
「”どうでもよくはないよ!!”」
なぜこんなことになっているのか、時間を少し巻き戻そう。
「あれが理由。私が攻撃すると普通にキヴォトス人の神秘貫通するんだよね」
山猫が銃をしまいながらのたまった。
その目線の先には血を流して倒れているヘルメット団リーダーとそれに助けに走っている団員。そして呆然と立っているアビドスの面々がいた。
「”なんで・・・先に言ってくれなかったの…?”」
先生が思わずといった風にこぼす。それに対して山猫は横目でちらっと一瞬見た後はっと笑って答えた。
「なんでって 聞かれなかったからだが?」
「”たったそれだけの理由で…!”」
「じゃあアビドスの奴らに聞いてみろよ。あいつらも全く質問しなかったじゃないか、なぁ?」
今度は視線をアヤネに向けた。
「た、確かに質問しなかった私たちも悪いかもですけど…!」
「ま、撃ったもんは仕方ねぇわ切り替えて行け」
そう言いながら彼女は窓から飛び降りた。
先生とアヤネが止めようとするも遅く、もうすでにヘルメット団リーダーの目の前まで近づいていた。
「負傷者って手間かかるんだよなぁ」
そう言いながら寄り添っていた団員を蹴り飛ばすとリーダーをけって背中を向けさせると背骨に向かって弾丸を数発打ち込んだ。
「あ、がぁ…!」
「お、お前ぇ!!」
「はいはい」
リーダーが苦悶の声を上げるそのさまを見て、蹴り飛ばされた怒りと怯えをあらわに団員が銃を向けてくる。
対して彼女は何も焦ることはなく、銃弾をお見舞いし、胸を貫いた。
「あ…? かはっ」
そのまま力なく倒れる団員。それを見たほかヘルメット団は死への恐怖を感じて皆逃げ出していく。
「おーい、忘れものだぜー」
山猫は二人を掴んでそのまま背を向けて逃げていく奴らに投げ飛ばす。団員はもんどりうちながらも負傷者2名を担いで逃げて行った。
「これで一件落着だな」
目の前で、自身で起こした凄惨な光景になんてことないような言葉を放つ山猫。
アビドスの面々には、先生にはあまりにも不気味に映っていた。
「言い訳するつもりはない。人を撃った事実は変わらないし…私に手伝うことを願ったのはお前らだろ?w」
指を顔側面に添えつつ、半笑いで言う山猫。
「・・・なんで笑ってるの」
ホシノが低い声で言う。
「なんでって、なんでだろうな。もう笑うしかないとでもいうべきか?」
「笑うなよ!!人が死んだんだぞ!!!」
ホシノが胸ぐらをつかみにかかる。しかし山猫はするりとよけると言った。
「あれ死んでねぇぞ」
「・・・は???」
「急所は外した。激痛と後遺症にこそ苛まれるだろうが・・・死んでないだけラッキーじゃない?」
「そういう話じゃないでしょ・・・後遺症って責任とれるの」
「??? なんでとる必要性があるんだ???」
「重傷なんだよ?!もっとこう、医療費を支払ってあげるとか、そういうのあるじゃん!!」
「おかしなことを言うなぁ、お前w
ヘルメット団は学生証がないから人権なんてないだろ」
その言葉にホシノはあっけにとられた。とられてしまう。
「・・・はぁ?」
「攻め込んできたのはあいつらだ。私の手伝えとずっと言ってきたのはお前らで・・・今回指示したのはこいつ。私は従ってやっただけだぜ?w
そもそも悪いのは攻め込んできたあの馬鹿どもだろ?実力差とか何も思考に入れてなかった末があれだ。自業自得だろ。
それともなんだ、敵にも情けかけるのか? 優しいなぁ?w そんなんだから
「・・・でもね、聞いて山猫ちゃん。
力だけで何かを果たしても後から恨まれたり辛いことになるんだよ」
すると山猫は少しけげんな顔を浮かべると再び口を開いた。
「・・・・それ、お前の考えか?」
「うん、そうだよ」
「にしては少し剥離しているように感じるな。見てて解る。お前は前に出たがっている」
「何のことかな…」
「誰かの受け売りかは知らないがそんなくだらない言葉は今忘れろ。コイツがいたところで、今状況を大きく改善することはかなわん」
「・・・くだらない?」
「その恨み辛みどうこうは今この場において思考することじゃない。頭のいい奴ほど先を先を考えるが、今がダメなら先もダメだ。
アビドスには市民を引き付ける何かはない。故に外敵において行政は死に体、ヴァルキューレや、連邦生徒会もここを捨てている。つまりお前らはお前らしか味方がいない。
お前の言っている報復への恐れは、余裕のあるやつが云うことだろ。お前らにあるか?そんな余裕が」
沈黙。この場だけが極寒とも思えるほど空気が冷たくなる。日差しはカンカンに照り付け、窓から貫いてきているはずなのに。
「”・・・ねぇ、山猫”」
「んー?」
「”なんで、人を傷つけたのに、殺しそうになったのに、そんなに平然としてられるの…?”」
「あー・・・」
彼女は頭をポリポリとかく。少し思案する素振りを見せると次にこう言った。
「知らん。記憶の一部が欠けていている私が動揺していないってことは・・・元々なんだろうな。生死がどうでもいいのかもしれない」
「”気持ち悪いって、思わないの?”」
「思わん。そもそもお前からしたら銃弾受けても五体満足なキヴォトス人の方が気持ち悪くないか?」
「”思わない。私は、生徒の味方だからね”」
「それは、お前の意志か?」
「”うん。これが、私の意志”」
「それはどこからきた?なんか昔にあったのか? 目の前で誰かを守れなかったか?」
「”それは・・・”」
先生の言葉が濁る。それに少しけげんな目を一瞬向けたがもうどうでもいいのだろう。
「まぁ、どうでもいいわ。興味ないし」
「”え”」
「で、どうする?私を砂漠に置いて捨てるか?別にそれでもいいが」
「・・・謝ろうよ」
ホシノがぽつぽつと話し出す。
「謝ろうよ・・・。暴力だけじゃどうにもならないんだよ、世の中って」
「・・・」
「さっきも言ったけど、暴力だけだったら恨みが恨みを呼んで取り返しのつかないことになっちゃうから・・・だから、謝ろうよ。それで清算しよ?私もさ、ついていくから」
「・・・」
山猫は差し伸べられたホシノの手を見る。少ししてはっと鼻で笑うと答えた。
「それがどうした?」
「・・・は?」
「暴力で暴力を塗りつぶして、恨みが恨みを呼ぶ?いいじゃないか、取り返しがつかなくなっても。
ここは既にもう取り返しとかどうとかのレベルじゃないし。手段を選べるほど恵まれているわけでもあるまい。この勢いであいつらの前哨基地探し出してぶっ壊そうぜ」
「”山猫”!!」
「お前が私を咎めれる立場か?暴力を指揮して肯定するお前が 今この状況を非暴力で成し遂げれるつもりか?」
「”力だけじゃ足りないんだよ!皆の気持ちだって大事なんだ!”」
「その気持ちも力がなければ意味をなさない。非暴力不服従が成し遂げれないことなぞ、歴史が証明してきた。
革命もレジスタンスも、ましてや治安維持組織も、結局は暴力に意味を与えてこそだろ?違うか?」
「”意味がない暴力なんてそれはただの害悪なんだよ!”」
すると急に山猫は真顔になった。急な感情の急変に全員が少し戸惑う。
「じゃあ私は大丈夫だな」
「”え?”」
「私はアビドスを守りたいから暴力を使った。死人も出していないしなっ」
ふんっとしたり顔でのたまう山猫。
ここから先は間違いなく平行線だ。山猫は自分の力を振うことに遠慮する気がないし、皆はそれを振って欲しくない。
そもそも彼女とアビドスの面々は明らかに思想が一致していない。
「”・・・わかった”」
この事実を重く受け取った先生はいったん場を落ち着かせるために言葉を発する。
「先生…!?」
「”わかってる。・・・山猫 君の力は、あまりにも強すぎる。きっと君にも制御できないほどに”」
そして少し唾をのむとさらに言葉をつづける。
「”だから、君にはずっと留守番をお願いしたい。あと、ヘイローがついている子にはあまり手を出さないでほしい。ダメ?”」
「それ命令?」
「”違うよ。お願いだよ”」
「じゃあ金払えよ、話はそれからだ」
そう言いながら手のひらを見せてくる山猫。
「金とかどうとかの問題じゃないでしょ?!」
「そうですよ!!」
「いい加減にしないと本気で怒りますよ~?」
「ん、ほどほどにするべき」
「んへぇ、いい加減にしてよね」
非難囂々のアビドス。
それを横目で見た山猫は軽く舌打ちすると窓際にドカッと座った。
「しゃーねーな。今回はしたがってやるよ」
「”ホントお願いね”」
「・・・ハァ」
返事もせずにじぃっと外を眺める彼女。もう聞く気はないらしい。
「あーそうだ」
「”何?”」
「アンタ、コイツらが抱えている借金のこと知らねぇだろ。コイツらバカみたいな借金抱えてんだぜ?」
「や、山猫さん!どうしてそのことを!」
「どーせ言わなくちゃいけないことだろうが。ハリボテであろうと体面よくすんなよ」
「”借金・・・?”」
「あ、あの・・・」
「・・・」
言うだけ言った山猫は再び窓の外を眺めはじめた。ニヤニヤしているあたり、とことん性格が悪いらしい。
そんな中、ホシノが小声で皆に伝える。
「・・・みんな、出よう」
「ホシノ先輩?!」
「正直、今の山猫ちゃんはいろいろとそりが合わなくなっちゃうし‥‥でも、追い出す真似はしたくないからさ。私達だけで話をしよう」
「・・・わかり、ました」
そしてぞろぞろとアビドスの面々と先生は教室から出ていく。それに気づいたのか彼女は振り向いてあのにやけ面で声をかけた。
「いってらっしゃ~~~~いwww」
~☆~
「何よ、山猫の奴!拾ってもらった癖にあそこまでふんぞり返って!」
「ん、格の違いを見せつけるべき」
「まぁまぁ、あっちも我間せずって感じでしたし~?結果オーライということで☆」
好き勝手言うアビドスの面々。アヤネとホシノ、先生は困ったような笑みを浮かべながら廊下を歩いている。
「しかしぃ、困ったねこれ。あの子も頼りにしたかったんだけど…あれじゃあきついかもね」
「なにがですか?ホシノ先輩」
「いやちょっとね、計画立ててたんだよ」
「えっ、あのホシノ先輩が!?」
「うそッ…?!あのグータラでいつも寝てばっかの先輩が?!」
アビドスの面々がハトが豆鉄砲くらったかのようなリアクションを起こす。それを見て少し不服そうな顔を浮かべながらホシノは答えた。
「その反応はちょっと傷つくなぁ~~ 確かに寝てばっかりだけど、やる時はやるって知ってるでしょ?」
「まぁ、それはそうですが・・・」
「……で、どんな計画?」
セリカは腕を組みながら、明らかに不審そうな顔で問いかけた。そんなに信頼ないかなぁ、おじさん~……と呟きながら、ホシノは自身の考えを生徒の皆に明かす。
「ヘルメット団は…あいつらはまだあきらめてない。今回は大勢で攻め込んできた。山猫ちゃんがリーダーに重傷を負わせたけど・・・だからこそ今度はさらに大きくなって報復しに来る可能性がある」
「それは、まぁ、そうね」
「だから今、このタイミングでこっちから仕掛けよう。奴らの前哨基地を襲撃して損害を与えれば、暫くこっちに手を出す余裕もなくなるだろうし」
「えっ、い、今からですか?」
「さすがにこんな真昼間からじゃないよぉ?夕方…いや、日が落ちて暗くなった直後くらいかな。その時に攻め込もう」
「場所は…特定しているんですか?」
「大丈夫、今日みたいな日が来ることを見越して夜中ずっといろいろな場所張ってたから特定できてる」
「ホシノ先輩…ちょっと見直した」
「"ちょっと"じゃなくて"すごく"でしょ~?」
そう言いながらホシノはシロコのこめかみをぐりぐりする。痛みで悶絶しながら手をぱしぱしと叩くシロコ。それを見ながら先生は口を開いた。
「”そう、だね。善は急げだよ”」
「先生、指揮は変わらず宜しくね~?」
「”まかせて。クラフトチェンバーとかで弾薬は補充できるよ”」
その言葉を聞き、一層気合を入れるアビドス一同。今夜、作戦は決行される。
「”・・・そういえば”」
「何?」
「”セリカのそのブローチいいね。どこで買ったの?”」
「いや、これ山猫がくれたのよ。自分で作ったブツだって。手のひらズタズタだったわ」
「”そうなんだ。だったら、きっと仲直りできるよ”」
「そうかしら・・・」
そう悩み、つぶやくセリカの右胸に、可愛らしい猫を模したであろうブローチがついていた。
「あ、もしもし?」
「どうやらヘルメット団の拠点潰しに行くらしいわ」
「え?追加報酬加算するから先んじてつぶしてくれ?」
「どんくらいくれるの?え?倍?いいねぇ、そう来なくちゃ面白くない」
「日が落ちたぐらいにやるらしいから私もそのタイミングでやるわ」
「ここがあの不良たちのアジトね・・・」
セリカが思わず声に出す。
あの後何事もなく全員出撃してヘルメット団の拠点にたどり着いたのだ。山猫はお留守番である。
「敵のシグナルを多数検知、まだ此方には気付いていません… 先手、獲れます!」
アヤネの声がアビドスの面々が持つ通信機に伝わる。それと同時に先生も続けて声を出した。
「”アヤネと私は物陰からサポートを行う。指示は追って出すから…自分の役割をこなしていこう。
編成は前衛・ホシノ 中衛・セリカ/シロコ 後衛・ノノミ。この順番で行くよ”」
その言葉に呼応し、銃器を掲げた皆は力強く頷く。
そしてその勢いですばやく突撃の姿勢に入り、走り出した。
直後、緑色の爆光が突撃しようとした廃工場を包み込んだ。
「ん、何の光ぃ?!」
シロコの叫びもかき消すほどの轟音と閃光が目の前を包む。猛烈な爆風をその身に浴び、吹っ飛びながらも状況理解に必死になる5人と1人。
光が消えていったその場には爆心地のようにぽっかりと空いた穴と、そこで体がばらばらになっていたり黒焦げになったりしている不良共の姿があった。
「な、何が…」
ホシノが脅えが混じった声色で呆然とつぶやく。
「”・・・あ、生存確認を”」
声の震えを必死に抑えながら先生は指示を出す。皆が素早くライトを取り出しながら周囲を散策する。
肉の焦げた匂いや鉄臭いにおいがあたりを包み、嫌悪感や吐き気を誘ってくるがなんとか耐える。
「あ…あ…」
いた、生存者が。物陰にいたのかもしれない。がれきの下にうずもれて血だらけだが五体満足。何とか意識を保っていた。
「大丈夫?!」
ホシノが急いで瓦礫をどかし始める。他のメンツもそれに加勢した。
「”大丈夫?!何があったの?!”」
先生が声をかける。団員である彼女はかすれるような声でつぶやいた。
「・・・わかんない。なんで・・・なにが・・・・」
「”わかる範囲でいい。教えて。お願い”」
「・・・・・・・・・屋根突き破って、何がきて・・・・それが、・・・・・爆発…」
そう言うと彼女は気絶した。
「救急車は」
「もうよんでいます・・・!」
アビドスの面々は必死に他の生存者がいないか探し出す。血や肉の焦げた匂いのせいか体調も悪くなってきた。ぜぇぜぇ言いながら救助活動をつづける。
救急車が到着し、病院に搬送されたヘルメット団たちの状態を応接室で待つアビドス。医師が沈痛な面持ちで彼女たちの元にやってきた。
内容は大多数が死亡を確認され、手術で何とか生き残った者は片手で数え切れるほどしかいなかったということだ。
つづく
セリカのブローチ
山猫がくれたブローチ。黒猫を模している。
彼女にとっては大事なブローチ。そして、山猫にとっても壊されたら困るブローチ。
真実はなんであれ、何かを隠すにはきれいごとが一番である。