首輪付きが今度はキヴォトスを荒らすようです 作:AC組んでSS書いてる人
シャーレも例外ではない、彼女の前では
翌日、アビドス自治区。
閑散で、無人。人の気配などないさびれた元住宅街。ゴーストタウンと化したそこは見ると雑草が生い茂り、砂は無造作に、無慈悲に積もっていた。そんな街を先生は歩いていた。
流石にアビドス校舎に泊まるわけにもいかないので郊外のビジネスホテルに泊まり、シッテムの箱も充電完了。地図も現代のアレコレに更新して読み込んで暗記した。
今は現地を見て脳と照らし合わせている最中である。そんな先生の前にふらっと人影が現れる。
「あ」
「”え”」
あの時逃げ出したセリカであった。
二人は思わず視線をそらした。互いに気まずいらしい。だが同時に彼女からは申し訳ないという雰囲気と、警戒心がにじみでている。
「何よ…」
「”あ、え、おはよう、ございます”」
警戒心をむき出しにし始めたセリカにとりあえず先生はあいさつした。挨拶は大事。百鬼夜行の古文書にもそう書かれている。
思わずがくっとなった彼女は思わず大きな声を上げる。
「な、何がおはようよ! 馴れ馴れしくしないでくれる!? 私、まだ先生の事認めてないから!」
やっぱりこうなった。
「”ご、ごめん。でも、こっちも引くに引けないから許して欲しい”」
「許して欲しいって…なんでアンタが謝るのよ!」
「”・・・ごめん”」
「もういい!と、とりあえず、まだ認めてないから!」
「”まだって・・・私にもまだチャンスがある…ってコト?!”」
「急に態度変えないできしょい!あ、そんな泣きそうな顔しないで…」
先生の二転三転変わる態度に振り回されるセリカ。なんだこの大人。
「”コ、コホン それはまぁさておいて”」
「うわぁ急に落ち着くな!」
「”もしかして、これから登校?”」
「別に、私がどこに行こうと関係ないでしょ? 朝早くからこんな辺鄙なとこウロついていたら、それこそダメ人間みたいに思われるわよ?」
「”ひどい言い様だね・・・まぁ一部ダメ人間なのは否定できないけど”」
「そこはせめて嘘でも否定しなさいよ!」
それだけ言って彼女はもう話す事はないと言わんばかりに背を向けた。怒気がこっちに伝わってくる。
「じゃあね せいぜいそこでだらだらのんびりしていれば?」
ふんっと顔を少し上に向ける彼女。一昔前のツンデレヒロインみたいだ。ステレオタイプ。
「”これ以上は流石に本気でダメ人間になっちゃうからなしで。折角だし、学校行くなら一緒に行く?”」
「は? 何で私があんたなんかと仲良く学校に行かなきゃいけないわけ?バカ?」
「”そ、そんなつっけんどんにしなくても”」
「泣きそうな顔しないの……悪いけれど今日は自由登校だから、学校には行かなくていいのよ」
「”そうなんだ。自由登校なんて受験シーズン終わった時か大学ぐらいしかなかったなぁ、自分は。 で、行くの?”」
「行かないわよ」
「”じゃあどこへ?”」
「……そんなの、教える訳ないでしょ!バーカバーカ!
・・・とにかく、補給は感謝してる!指揮も、あとは病院で私たちにフォローしてくれたのも有難う!でも、借金は私たちの問題だからこれ以上は首ツッコまないで!!」
むすっとした顔でまくしたてる彼女。感謝はしてることを伝えるあたり、根はいい子なのだろう。
「じゃあね!野垂れ死ぬんじゃないわよ! ハゲ!おたんこなす!マヌケ!バカー!」
続けざまに思いつく限りの罵倒をしてどっかへ走っていく彼女。先生は追うことはしなかったが最後の一言と言わんばかりに去っていく彼女の背中に声をかけた。
「”まだはげてないよーーーーー!!!!!!”」
「うっさいわよハゲ予備軍!!!」
丁寧に返事が返ってきた。
「”ハゲいじりは流石にライン超えでしょ…”」
ふさふさの頭をがくッと下げてへこたれながら先生はとぼとぼとアビドス高校へ歩いて行った。セリカとは正反対の方向である。
~☆~
「”ってことがあったんだよ”」
「うへぇ、そりゃ大変だったでしょ。セリカちゃん素直じゃないからさ」
「”いや、それはいいんだけどね、さすがにハゲはないよハゲは”」
「ん、ふさふさだから心配しないで」
「そうですよ~今のところはげる兆候は見えませんよ~?」
「”これからもないから問題ないよ。ところで山猫は?”」
「山猫さんは…」
「ん、確か屋上で寝てるはずだけど」
「あそこいいお昼寝スポットだったんだけどねぇ~~~~~」
「確か奪われたんでしたっけ」
「そうそう。布団とかまくらとかは普通に返してくれたけど場所は返してくれなかったや」
「”そうなんだ・・・でも、セリカはどこに行ったんだろう?”」
「なんでそんなに気になるの~?」
「”いや、やっぱり心配じゃん?なんか悪い人にさらわれる可能性だって0じゃないじゃん?”」
「まぁ、それは、そうかもだけど・・・・気にしすぎじゃない?」
「”そうかな…そうかも…”」
「・・・まぁどこ行ったかは大体想像つくけどさ」
「”え、本当?”」
「うん。おおよそ予想つくよ。柴崎ラーメンってとこなんだけど」
「”ラーメン屋さんか・・・美味しそうだね”」
「ん、絶品。食べてみるといい」
「”でも、ほんとに行って大丈夫かな”」
「大丈夫だよ。折角だし、冷やかしに行くw?」
「”いやそれは流石に”」
───しかしその時、先生に電流はしる。
正直言うだけ言ってどっか行ったセリカ
そもそも子供の指標たる大人がそんなあさましいことで冷やかしに行くな
脳裏に様々な考えが疾走する。しかしその思惑はたった0.1秒であった。
「”・・・行くかぁ!!!”」
「「「「いぇ~~~~い!」」」」
はたから見たら手首くるくるの即決野郎である。なんだこの大人(2回目)
そして5人で意気揚々と校舎から出て行った。そして少し歩いた後に気づく。
「あ、山猫さん忘れてました」
「どうする?」
「とりあえず誘いましょうか☆?」
「じゃあおじさんが行くね」
「お願いします」
そしてホシノは走って校舎の中へ入っていく。しばらくしてまた走って戻ってきた。
「ただいま」
「山猫さんは?」
「あの子『腹減ってねーし動きたくねーからパス』って言ってたよ」
「動いてないからじゃないですかね」
「まぁまぁお留守番してもらってるからセーフセーフ」
「どこにセーフ要素が???」
のらりくらりとだべりながらホシノたちはそのままアビドス校舎から離れていった、後ろを振り向くことさえせずに。
対して山猫はこう答えた。
居住地も違法に住み着いているだけだしな。
今現在進行形で手のひらに転がされている馬鹿どものことを思いながら。
「いらっしゃいませー!」
そんなこともつゆ知らず、バイトに励んでいるセリカ。
バイトしているこの場所は『柴崎ラーメン』。アビドスにぽつんと置かれているラーメン店であり、なんだかんだ客が来てくれる優良店である。
殆ど人が消え、常に死の匂いがするアビドスの中でも数少ない憩いの場であり、今いる客も思い思い食事を楽しんでいた。
ガラッとまた扉が開き、お客さんが入ってきた。彼女は笑顔で対応する。
「いらっしゃいませー!」
「すいませ~ん、5名でお願いしま~す☆」
古めかしい扉を開けて入ってくるは見覚えのある仲間とつい最近世話になった大人一人。一瞬意識を飛ばしそうになるがすぐに復帰すると思わず注文用の端末で口元を隠した。
「はっ・・・?!」
「うへ~~~、どうも~」
「お、お疲れ様です、セリカちゃん」
「ん」
「”ほえ~ここが柴崎ラーメンかぁ~ テンション上がるなぁ~”」
次々と入ってくる人間に思わず愕然とした表情を向けるセリカ。
「あっ…なっ…!!」
「”ゴメン、私は邪魔するのは悪いと思ってたんだけどホシノがどうしても食べたいっていうからさ”」
「うへ~~~先生だってノリノリだったじゃんか~~~w?」
今だ復帰できないセリカを横目に肘で先生を小突くホシノ。
「いやさ?そもそもセリカちゃんがココでバイトしてることは知ってたよ~? だから、せっかくだし、ね?」
「お、アビドスの嬢ちゃんたちか!そこの大人はどこの誰だか知らねぇが…お客さんなら歓迎だぜ!」
すると厨房からどう見ても2足歩行の犬としか言えない生物が顔を出してきた。この人が大将だろうか。
「セリカちゃん!お話もいいが、仕事もきっちりしな!」
「え、あ、そ、そうですね!じゃあ、こちらにご案内いたしまーす!」
ウィンクしながらそう言ってくる対象にセリカは返事するとアビドスの面々を案内し始める。案内された場所は5人で座れるくらい大きめな席だった。
「先生奥ね」
「”はいはい”」
「逃がさないですよ~?☆」
「”助けて!”」
即座に先生を奥に押し込むとすぐにホシノとノノミが席についてぎゅうぎゅうと押し付けてくる。
だが悲しいかな。ホシノはどこまでも貧層だ。絶壁。ナイチチ。まな板。先生の食指は全く動いてくれなかった。
そもそも生徒と淫行する大人なぞ死んでしまえ。*1
「ん、セリカのバイト服いいね。山猫からもらったブローチも似合ってる」
「え、そ、そうでしょ⤴?」
「うへぇチェキください」
「な、無いわよそんなサービス!!ご注文は?!」
「お客さんにそんな態度でいいんですかぁ?☆」
「く、クソ客がぁ…! ご注文は何になさいますか?」
口元が引きつりながらご注文を聞くセリカ。これには遠くで聞いていた山猫も爆笑。
そしてホシノが一番早く手を上げた。
「私はねー、特製味噌ラーメン、炙りチャーシュートッピング付きで!」
「私は、チャーシュー麵をお願いします☆!」
「ん、塩ラーメンを一つ」
「えっと……そうですね、私は味噌ラーメンで」
皆次々と注文していく。メニュー表にも目を通していないあたり、セリカのあずかり知らぬところで食べに来ていたりするのだろう。
そして先生はメニュー表をずっと読み込んでいた。初めてということもあり、どんな内容なのか目を通したかったのだろう。誰だってそうする。自分だってそうする。
「”あ、じゃあ、醤油で”」
そして決めた。全員被せていないあたり、非常にめんどくさい。だが、それにこたえるのもまた店である。
「注文は入りましたー!!!!伝票おきまーーーす!!!!!」
「あいよ!!!」
セリカの声に大将が威勢よく応える。
「”ところで、注文したはいいけど皆大丈夫なの?借金あるけど”」
「大丈夫ですよ~~~☆ 私もこのカードにまだ余裕ありますし~~」
そう言って見せてきたカードはゴールドカード。どっからどう見てもお金持ちのソレが持つカードだ。
何で持ってるのに使わないんだろうと先生は一瞬思ったが、その思考を切り捨てる。
生徒を疑って何が先生か。子供を信じずして何が大人か。
由来不明の信念が彼を打つ。
「”いや、奢るよ”」
「え?いいんですか?」
「”これでも一端の大人なんだ。いい顔させてよね”」
そう言いながら彼は財布を懐からすっと抜く。そこにはまさしく頼れる大人の姿があった。
「いいの~~~??じゃあ追加で餃子頼んじゃお」
「”それはちょっっっと聞いてないかな”」
「今思いついたからね。すいませーん、餃子追加でお願いしまーす!!」
「どの餃子ですかー?!」
「12個の奴でー!」
「かしこまりましたー!大将!5番テーブルに餃子12個一つ追加でーす!!」
「あいよー!」
「”即断即決が過ぎる…!”」
そんなこんなあって皆は食事を楽しんだ。先生の財布は消し飛んだ。さらばユキチ。
つづく
上層部も長い付き合いしたいのさ」