首輪付きが今度はキヴォトスを荒らすようです   作:AC組んでSS書いてる人

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そういえば、山猫ってホシノ以外の名前呼んでなくない?

怖いこと言うなよ

(あちらの世界線の掲示板より一部抜粋)




会議

「・・・では、定例会議を始めます!!」

 

あの後、そのままアビドス校舎にかえった皆々。そこで雑魚寝し、次の日の朝となった今、アビドス対策委員会部室にて、定例会議を開こうとしていた。

前からも何回か開いてこそいたが、今回はヘルメット団の消滅及び補給路の確保がなされていることにより、皆進展を期待している。

アヤネの声に席に着いた皆が姿勢を正す。先生も例外ではなかった。山猫はニタニタと嗤いながら皆を把握できる位置に座している。

 

「今回は先生も来てますし、いつも以上に踏み込んだ会議ができそうです! あと真面目にできそうですし…

 ですよね先生?!」

「”え、うん。まかせて”」

「うへぇ、頑張ろうか~」

「ワクワクしますね~☆」

「ん、いつも真面目」

「先輩たち、まじめにやってくださいよ?!」

「今日は実るといいなぁ?www」

「山猫もよ!!」

にぎやかになる室内。ようやく明るさが戻ってきたと言えるだろうか。

そんな中、ホシノが話を切り出す。

 

「えっと、まずはアヤネちゃんから話があるんだっけ~?」

「はい。カタカタヘルメット団とセリカちゃんをさらったグループの件です」

「・・・なんかわかったの?」

「はい。あの病院の後、私個人で気になる点があってもう一回廃工場跡にいったんです」

「「「「「”・・・・”」」」」」

「そうなのか?気分は?」

「よくはなかったですが・・・それで、調べたんです。結果、従来の爆弾とは何かが違うことがわかりました」

「・・・違うって、何が?」

「爆弾ならば周囲が焼けていたりすることはよくあると思います。ですが、こちらを見てください」

そう言いながら彼女は写真を数枚取り出す。全員が集まって注目した。山猫は一歩引いたところから覗き込んでいる。

写真には砂上にガラス片のようなものが見受けられる。

 

「”ガラス…?”」

「そうなんです。砂がガラスになるには摂氏約8100度必要になるんです。キヴォトスで流通している爆弾では到底なせない温度です」

「”・・・こちらでいう原子爆弾レベルか”」

「げんし、ばくだん・・・?」

「”外の世界の負の遺産だよ。核分裂を利用した悪魔の兵器さ。大勢死人が出た”」

「それが…キヴォトスに持ち込まれたと?」

「”いや、その可能性は低い”」

「なんで?」

「”原子爆弾ならばもっと爆風も爆心地も広いはずだ。だけど、この廃工場を消し飛ばすぐらいの爆発ということは…もっと別の何かってことでしょ?ガイガーカウンターがあればもっとわかるんだけど・・・”」

「がいがーかうんたー??」

「”空気中の放射能を検出できる装置だよ。音が大きかったら周辺に大量の放射性物質がまき散らされてるってこと。よくはないね”」

「話を、戻しても…?」

「”あ、ごめん。続けて”」

「はい。・・・で、資料も車も粉々に砕けてました。が、壊され方がおかしいんです」

そう言いながらアヤネは写真をまた取り出す。そこには明らかに破壊され、もう二度と使えなくなっていた戦車がうつっていた。

 

「爆心地から少し離れた場所でした。粉々に砕かれて、何の部品があったのかすらわからない始末でした」

「派手に壊れてるねぇ」

「でも、爆風で壊れたとは思えないんです。誰かが意図的に証拠隠滅したんじゃないかって睨んでるんですけど…」

「・・・確かに、そうね。壊され方が爆発じゃないように見えるわ」

「特にエンジン部分や内部機器を破壊されてるように見えますね~☆」

皆が写真を睨みながら話しているとホシノが少し思案する顔を見せた。そして口を開く。

 

「つまりはさ、誰かが裏で糸を引いてる可能性があるってこと?」

「・・・可能性としては」

「・・・警戒するに越したことはないか。で、他にも話すことあるでしょ?」

「はい。セリカちゃんを襲撃したグループについてです」

再び写真を複数枚出す。全員がそれを見た。写真にはこちらに背を向けて逃げている白い上着を着た集団がうつっている。

 

「このグループについては一切わかりません。武装もキヴォトスの従来品ですし、何も違法なものはありませんでした」

「そこいらの不良グループじゃないの?」

「・・・にしては武器の規格や動きが統率されすぎているとは思いませんでしたか?」

「・・・確かに、そうね。手際が良すぎたわ」

「それに私たちが撃退した後すぐさま撤退するぐらいの余力を残していました。上着も統一されてましたし・・・いったい何者でしょうか」

「どこぞの秘密部隊の可能性は?」

「陰謀論の読みすぎだろ、ピンクバカ。傭兵の可能性も考慮しろ」

「傭兵?というかピンクバカって何??」

「不良よりも洗練されてる傭兵チームの可能性があるだろ?それだったら辻褄が合う」

「そうなんですか?」「ピンクバカって何??」

「あぁ。金で動く傭兵は違法なことでも平気でやる。誰かから依頼を受けていた可能性は?」

「・・・じゃあその依頼をした誰かがいるってことですかぁ?」「ピンクバカって何??」

「かもな…だがそもそもなんでお前をさらったのか全くわからん」「ピンクバカって何?」

「黙ってろアホ面」「アホ面?!」

山猫の言葉にホシノ以外の皆が沈黙・思案する。グルグルと頭の内を回すが、こんがらがった糸のようにわからなくなっていく。

それを見た山猫はだらだら突っかかってくるホシノのお腹を足で軽く突っぱねながらパンパンと手をたたいた。

 

「考え過ぎるな。簡潔に考えろ。最終的に全員斃せばそれでいい。自己防衛は大事だ」

「・・・うん、そうだね。確かにそう」

ホシノを筆頭に皆納得する。したことにした。

 

「あとはカイザーPMCが最近軍事訓練を無許可で行っているという点です」

「あれ私たちしょっちゅう止めてるのだけど・・・反省しないわよね」

「無人居住区を使ってやっていることが多いですけど・・・それでもよくないですよね」

「ん、なめられてる」

「まぁまぁ、みんな。PMCには抗議文送っておこうよ。で、次は…」

ホシノがアヤネに目配せする。対してアヤネが深く頷いて口を開いた。

 

「負債の、件です」

瞬間、山猫と先生以外の目が輝いた。

無理もない。「今の今まで補給どうしよう」とか「ヘルメット団どうしよう」とかそんな現状維持みたいな話ばかりだったのだ。ようやくともいうべきか、アビドスの根幹に関わる問題に取り掛かれると意気込んでいたのだ。

「ご意見のある方は挙手を」、とアヤネが挙手を促せば途端に椅子を蹴り倒す勢いで立ち上がった子がいた。

山猫は思う。まるで光によせられる蛾みたいだと。

 

「はいはいはい!!!」

「はいセリカちゃん早かった」

「対策委員会の会計担当としては、現在我が校の財政状況は破産寸前としか言いようがないわッ! このままだと廃校よ?皆それは分かっているよね?」

「うん、それはここにいる全員理解しています」「破産というか袋小路では?」「山猫ちゃん」「うーわ図星で怒ってやんのwww」

「うっさいわよ山猫!!!

・・・コホン、とにかく、毎月の返済額は利息だけで七百八十万円! 私達も頑張って稼いではいるけれど、正直利息の返済も追いついていないわよね?!」

「そう、ですね ギリギリです。払いきれてない月もかなりありますが・・・」

「ここまで指名手配犯を捕まえたり、苦情を解決したり、ボランティアをしたり、バイトするだけじゃ限界!」

「もうすでに限界だろ」「ん、水を差さない」「図星だからってそんな眉間にしわよせるなよwww 早死にするぞ」

「黙れ山猫!!!

 とにもかくにも、このままじゃ埒が明かないって事! だから埒をあけるために、何かこう、でっかく一発狙わないと!」

「まぁ、そうですね。利子しか払えていないのは事実です」

「でっかくって・・・どうするの?」

シロコが頭上に疑問符を浮かべながら話すと、彼女は待っていましたといわんばかりの笑みで鞄に手を突っ込み、色鮮やかな一枚の紙をバッと取り出した。 

 

「これよ! 町で配っていたチラシ!」

テーブル上にそれをバンッと叩きつける。皆がその神をのぞき込んでみた。どうやらチラシらしい。色遣いが鮮やかで知らぬ人が見れば購買意欲を沸かせる代物だ。

セリカの表情は満面の笑みで、皆はチラシの文字をそっと目でなぞった。

 

「ゲルマニウム麦飯石ブレスレットで、あなたも一攫千金……」

ホシノの呟きが、音の消えた部室にそっと響く。何かを察したのか山猫はあくびをかみ殺した。

 

「そうッ、これでがっつり稼ごうよ!」

「”………これは”」

相変わらず何も疑っていないセリカの笑みに、チラシの内容を理解した全員の口元が引き攣る。山猫はニタニタ嗤っている。

それに気付かず、セリカは自身のチラシを手に入れるまでの経緯を捲し立てる。

 

「この間、街で声を掛けられて説明会に連れて行って貰ったの!親切な人たちで、運気を上げるゲルマニウムブレスレットってのを売っているんだって!」

「こんなカスの掃きだめみたいな場所で説明会?とんだもの好きだな」「人の心とかないんですかぁ?☆」「あぁ、砂漠が持って行った」

「運気…」「ん、風水」「”あれは本来身の回りを掃除して気分と体調をよくするための生活術だから・・・”」

「そう、身に着けるだけで運気が上がるの!で、これを周りの三人に売れば───」

ドンドンまくしたてるセリカ。それに対し、全員が微妙そうな雰囲気を漂わせていく。

 

「おい、あれ騙されてるだろ」

「タブンネ・・・」

「あんな馬鹿が会計でいいのか?もっと適任いるだろ」

「でも、空いてる役職があそこしかなかったんだよね…」

「あぁ、人数少ないもんな。馬鹿と鋏は使いようっていうし、アイツもスケープゴート的な意味で役に立つのか?」

「じゃあ君は何なのさ」

「留守番だろjk」

「自宅警備員とどこが違うのさ」

「荷物ぐらい運んでやると言ってんだ。金払えよ。いつも言ってるけど10万からだ」

「勘弁してよ・・・」

ホシノと山猫が言葉で刺しながら会話をしているとセリカが雰囲気を感じ取ったのか少し不思議そうな顔をする。

 

「……みんな、どうしたの?」

「ん、不採用」

「えーっ!? 何で、どうしてっ!?なんで破くのよ!!」

チラシをびりびりに破ったシロコに慌ててセリカが食って掛かる。そんな彼女を宥めながら、アヤネはそっと告げた。

 

「セリカちゃん、これ、マルチ商法だから……」

「まるちしょうほう???」

「ん、つまり詐欺」

「へっ!?」

「”そもそもゲルマニウムと運気って関係あるのかな…”」

「というか説明会の後なんかフォローとか入れてくれたの???」

「え、これ…」

「それ多分詐欺って売り逃げだと思うよ・・・」

「そ、そうなの? 私、二個買っちゃったんだけれど……!?」

「セリカちゃん、また騙されちゃいましたね、可愛いです☆」

「大バカの脳たりんのカスの足手まといがよぉ…会計止めちまえ」

「ん、言い過ぎ」

皆からボロクソに言われるセリカ。

 

「ハイ回収~~~」

落ち込んでいる彼女をしり目にホシノがつけてたブレスレットを回収した。

 

「それどうすんだ?」

「口八丁でどっかに売り飛ばすよ」

「どうせ詐欺商品だしやっすいと思うが」

「まぁまぁ、0よりかマシだよ」

「それはそうだな」

山猫とホシノが話している間にドンドン落ち込んでいくセリカ。それを見たほかの面々はフォローに走る。

 

「”ま、まぁ悪いのは騙した方だから”」

「ん、次から気を付けるべき」

「そ、そんなぁ・・・せっかくお昼抜いてまで貯めたお金で買ったのにぃ~!!」

「おっちょこちょいですね~~☆」

そんなこんなでノノミの胸にセリカは飛び込んだ。よしよしと慰めてもらっている間にアヤネはコホンと調子を取り戻すと話をつづける。

 

「では、次に案がある方どうぞ~」

「はぁい」

「ホシノ先輩早かった」

「珍しいな。いつもグータラしてて本気出さないナマコみてぇなお前が挙手とは」

「酷い言い様だね・・・まぁ、いいや」

そう言いながらホシノは姿勢を正す。山猫はそれを見ながらブレスレットを掌で遊びつつ握り砕いた。

 

「まず前提としてさ、そもそもうちは全校生徒が此処にいる数人だけだよね?」

「まぁそうですね」「死に急ぎ・物好き・身の程知らずの集まりだよな私ら」「ん、殺す」「やってみろよわんころ如きがよぉwww 咆えてみろよキャンキャンってさぁwww」「殺す」

「シロコちゃんやめなさい!山猫も喧嘩売らないの!

 ・・・オホン、ぶっちゃけ大問題なんだよねこれが。

 キヴォトスの学校・自治区は生徒数+市民数=自治区の力なんだよ。

 トリニティやゲヘナ・ミレニアムみたいに、生徒や市民の数が桁違いに多ければ毎月のお金だけでもかなりの金額になるよ?」

「えっ、そ、そうなんですか?」

「うん。生産力とか、流通とか、いろいろあるからね。

 だからまず生徒の数を増やす事からはじめてみな~い? そうすれば議員も輩出できるし、連邦生徒会での発言権も得れると思う、だよね先生?」

「”うん、まぁ、そうだね。

  連邦生徒会は各自治区から選ばれた人たちが多いんだよ。大きな声では言えないけど、皆自分の住んでた自治区の贔屓ぐらいしたいものさ。だから、いたら発言が通りやすくなるって言うのは、まぁ嘘じゃないよ”」

「それ言いふらされたら不味くないか??」

「今ここにいいふらす人なんていなくない???」「どうだか・・・」

「確かに鋭い指摘です。・・・でもどうやって……?」

その言葉を聞くとホシノはニヤッと笑った。

 

「各自治区のスクールバスからさらえばいいんだよ~

 

 特に幼少期がいい」

「「「「”ええ??!!”」」」」

「スクールバスをジャックして、うちの学校への転入学書類にハンコを押さないと降車出来ないようにするんだよ! うへ~、我ながら天才かな?」

冗談か本気かわからない表情を浮かべながらのたまうホシノに困惑する面々。だが、2名ほど違う反応を示した奴がいた。

 

「良いじゃねぇかホシノ。やろうぜ。20万からでどうだ?」「ん、その話興味ある」

山猫とシロコだ。片方はいつも張り付けている笑みを更に深くし、もう片方は目をキラキラさせながらふんすと意気揚々だ。

 

「20万は高くな~い?」

「生徒を集めて労働させれば20万なんてすぐだろ。自治区全土巻き込んだ国家プロジェクトみたいなもんだ。刺激的にやろうぜ」

「ホシノ先輩、すぐ行くのが吉だよ。ターゲットはどこにするの??」

「うーん、トリニティ・ゲヘナ・ミレニアムから選ぶとするなら・・・ミレニアムじゃない?あそこもやしの集まりが多いみたいだし」

「いや、ホシノ。零細自治区からさらえばいい。零細自治区でも数十~数百人くらいだ。

 ただでさえ土地が広いことしか能のないこの自治区だったら収容・処理する場所には困らないだろう?マンパワーで建物の再建設くらいはできるはずだ」

「うへうへマジだね」

「零細自治区は何時潰れるかわからない。だったら、吸収してしまえば場所は違えど生きることはできる。弱者は搾取されるのが常だろ?個人には目をつむればいいのさ。大義のための犠牲になってもらおう」

「”いや、それは良くないと思う”」

「冗談、冗談だよ~。拉致なんてしたら治安維持組織が黙ってないからさぁ。シロコちゃんも山猫ちゃんもそんな本気にならないでよ~」

すると山猫は笑みを消して本当につまらなさそうな表情になった。

 

「鏖殺すればすべて解決だぞ?ホシノ、お前ならやれるやれる」

「いやいや鏖殺って…それ本気で言ってる?」

「どうだろうな」

「あの、皆さん本気で改善案を言って下さらないと困るっていうか」

「じゃあてめぇあんのかよ。人に言うんだったらお前もあるんだろうなぁ?」

「い、いや、それは・・・」

「ねぇんだったらすっこんでろ。後方支援しか能のない雑魚がよ」

「山猫ちゃん、その言い方は良くないよね?」

「お、こっちが釣れたか。不満があるなら口じゃなくて行動で示せよ」

「・・・へぇ、ずいぶんと舐めてるんだね」

「こっちは本気でやってもいいんだぜ?お前がいいならさぁ」

険悪な空気が二人の間から漏れ出す。というか元々ホシノ自体、山猫をアビドスの一員に引き入れるのにかなり抵抗があった。

 

ボロボロの状態でやってきた彼女。

どこからやってきたのかわからず、何をしていたのかも不明瞭。

手伝いも戦闘も全くせずに、何か頼みごとがあれば金を10万から払えと言ってくるがめつい奴。

恩義も何も感じていない彼女に存在に、ホシノ自身は辟易しているのだ。

 

だが、どっかに捨ておくわけにもいかない。それをすれば、自分はまた罪を重ねることになる。

自罰意識と、かつてした先輩との約束が、彼女をがんじがらめにしていた。

 

 

「ん、私にいい考えがある」

しかしそんな険悪な雰囲気を切り裂く光が一人。砂狼シロコである。威風堂々・準備万端・起死回生の案を思いついたような顔をしていた。

一人はにやつき、一人は期待し、一人は嫌な予感に、その他は静観。

 

「シロコ先輩、案を、どうぞ…」

嫌な予感を感じていたアヤネは彼女に案を促す。やらなければ話が進まないからだ。つらいなぁ、えぇ?

 

「銀行を襲う」

 

「はい!?」「「「「”えぇ?!”」」」」「ほぉ…」

予想をはるかに超える形で出された突拍子もない提案に、山猫以外の全員が驚愕する。アヤネに至っては顔面蒼白だ。

シロコは得意げに頷きながら、自身の温めていた計画を明かす。

 

 

「これが私の中で一番確実かつ簡単。

 

ターゲットも選定済み。ブラックマーケット市街地にある第一中央銀行が狙い目。

金庫の位置・金庫扉開錠用の鍵を持ってる責任者の情報・警備員の配置に動線・通報システムの遮断方法・監視カメラのジャック手段・現金輸送車の走行及び逃走ルートetc…

 

これら全部事前に把握しておいたから」

「えっ、は!?」「うへぁ…犯罪者予備軍」「何故ベストを尽くしたのか」

「五分もあれば充分。おそらく一億は稼げる。覆面も用意したから」

そう言いながら彼女はいつの間にか用意した紙袋から覆面を取り出した。丁寧なことに人数分ある。何故ベストを尽くしてしまったのか。

 

「へぇ、いいねぇ。折角だし教えてくれよ、この膠着(こうちゃく)した状況を破壊する方法を」

山猫に至ってはもうすでに乗り気だ。コイツ血の気が多すぎる。

 

「ん、耳かして」

すると気を良くしたのかシロコはごにょごにょと耳打ちする。山猫の笑みはどんどん深くなっていった。

 

「いいねぇ、すごくいい。お前、天才か?」

「ん、知ってる」

「咆えるしか能がないと思ってたが、まさかこんな才能があったなんてな。2000万払えば協力するぜ?」

「ん、4000万払う。6000万はアビドスの。山分け」

「ほうほう、気前がいいな。もっと詳細に教えてくれよ」

「ん」

 

「却下!!却下です!!!」

ノリノリな二人を叩きつぶすかの如くアヤネが咆えた。

 

「犯罪者にはさせませんよ~?☆」

「山猫ちゃんもおだてるのやめてよねぇ。シロコちゃんもその覆面しまって」

「馬ッッッッッ鹿じゃないの?!?!?!?!?!?!?!」

「”そういうのは流石のキヴォトスでも駄目だと思う”」

続けざまに他の面々からも非難が飛んでくる。それに対してシロコはしょぼくれながら覆面をしまいはじめ、山猫は肩をポンポンしてきた。

 

「ん…」

「そう落ち込むな、素晴らしい提案だったぞ。やっぱり最後に物言うのは暴力だな。弱者でも抵抗が許される一手だ」

「ん、ほんと?」

「マジマジ。折角だしふたりでやろうな。私とお前、不死身のコンビだ」

「山猫さんも助長させること言わないでください!」

山猫のフォローに少し気を取り直したシロコ。アヤネが素早く止めに入る。

 

「私の提案も聞いてくださいな~☆」

「えぇ・・・どうだか・・・ノノミ先輩、どうぞ」

すかさずノノミが手を上げた。辟易しながらも発言の許可をするアヤネ。こんな先輩共に囲まれて本気で可哀そう。

 

「アイドル活動とかどうですか~?☆」

「あ、あいどる・・・?」

「あぁ、停止時に自動的にエンジン停止して発進後に再始動するあの」「それアイドリングストップね」

「アニメで観たんですよ!学校を復興するのに定番の方法はアイドルだって!  「空想と現実の境目もわからないカスが…」「なんか山猫ちゃん今日あたり強くない???」  ハーイ黙ってくださいね~☆ で、私達が全員アイドルとしてデビューすれば…!」

「”むむッ!”」

「却下却下」

先生が反応するも、すかさずホシノが却下の声を上げる。ノノミは意外そうにホシノを見た。皆もそうだ。

犯罪性もない、詐欺でもない、皆の出した意見の中では比較的かなりまともな意見ではある。犯罪を助長させるようなこともしていない、きわめてクリーン。怪しい所などない。パーフェクトと言ってもいい。

 

「駄目なんですか?拉致よりかマシでしょう?」

「なんで?強盗よりかマシじゃないですか???」

「うへー こんな貧相な体が好きって云っちゃう輩なんてさ、人として駄目っしょー。ないわー、ないない」

「お前の貧相な体に飛びつく輩なんていねぇだろカスが。自惚れるなよ」

「そんなに言う???」

「自分にもチャンスがあると思ってるバカがよぉ…頭も良くなくてやる気も無くて中途半端でど貧乳のチビ。力以外取り柄ねぇのかお前」

「ボロッカスに言うじゃん。泣くよ???」

「決めポーズも考えておいたのに……」

少し落ち込むノノミ。

 

「いや、でもさ、アイドルって線は悪くないんじゃねぇか?」

しかしそこに意外な助け舟。山猫が肯定してきた。横にはボロカスに言われて落ち込んでいるホシノがいる。

 

「山猫さん?!」

「いや、少なくとも犯罪ではないだろ。ホシノと私以外のメンバーでやればいいんだ。

 お前ら全員馬鹿で「は?」身の程知らずで「ん」愚図で「え」ダメダメだが「良い度胸ですね~☆」、ルックスだけは悪くないんだからいけるいける」

「私は???」

「ホシノ、お前はセンターにおいても他面々の身長に埋もれるだけだから却下で」

「まさかの方向からのダメ出しが来たんだけど」

「山猫ちゃんはしないんですか~~~??☆」

「つまらなさそうだし労力に見あってなさそうだから却下で」

「こいつマジでカスだ…!」

「そんなこと言うなよホシノ、ここにいる時点でどんぐりの背比べってやつだ。私達でプロデューサーしようぜ。仕事の持ち込みは私で、代表取締役はお前な」

「こいつ徹底して責任おわないようにしてる・・・!」

 

「とうわけでシャーレ!お前の意見を聞こう!」

「”ゑぇ?!?!”」

急に矢印を向けてきた山猫に先生は驚愕する。全員が期待に満ちたまなざしで見つめてくる。思わず山猫を見ると、ニタニタと嗤っていた。

やってくれたなと一瞬思うが、すぐに思考を切り替えて思案する。

 

「まさか、アイドルやれなんて言わないわよねぇ?」

「アイドルでお願いします☆」

「ん(覆面を被る音)」

「私は拉致か強盗がいいと思う」

「山猫さんまだあきらめてないんですか?!」

「先生、お願い…!」

好き勝手言ってくるアビドス。先生は思案する。そして椅子を蹴り飛ばす勢いで立ち上がると大声で言った。

 

「”アイドルがいいと思う!!”」

 

「やった~☆」

「うへぁ・・・マジで??」

「良かったホシノ。代表取締役だ」

「うへぇ・・・」

「えぇー?!きついわよ!!」

「…ん(覆面を脱ぐ音)」

先生の答えに対し、三者三様の反応を示すアビドス。

 

「うへうへ、なんでアイドルを推薦したのさ~~~~?」

「”いや、詐欺とか犯罪と比べたら圧倒的にこれでしょ”」

「いや、まぁ、たしかに、そうですけど・・・!」

「枕は?」

「”させないから安心して。山猫もアイドルやる?”」

「お前の内臓売ってアビドスの担保にしても良いんだぞ」

「”ごめん、今のなしで”」

わちゃわちゃしだす全員。

 

「”失敗した時のリスクとか挽回とか、アイドルだったらしやすいし・・・それになにより”」

「「「「「なにより?」」」」」

「皆の水着姿見たいなって」

「「「「「えぇ?!」」」」」「アイドルって水着で歌って踊るもんだっけ?」

この大人、性欲に忠実である。

 

「私の体に需要ないでしょ」「よくわかってるじゃないかホシノ」「殺すよ???」「キヴォトス人なら溺死がいいぞ」「何言ってるの?!?!」

「”いや、あると思うけどな私は”」

「こいつふたりで殺そうぜ」「良いね。どう殺す??」

「”二人とも本気でやめてね?!?!”」

ギャーギャー皆が言い合っているとアヤネが俯いてプルプルと震えはじめた。

 

「・・・加減に」

「「「「「「”ん???”」」」」」」

 

「いい加減にしてください!!!!!!!!!」

 

瞬間、机をちゃぶ台返しする彼女。舞う書類、飛び散る鉛筆。ひっくり返る椅子と人間たち。山猫とホシノはすぐさま窓から逃げ出した。

そして着地すると二人で校庭まで全力疾走した。後方からは銃撃音と怒号、そして悲鳴が飛び交っている。

 

「いやー、すごいな」

「アヤネちゃん怒るとあぁなるんだねぇ」

二人で呑気にはなしながら土嚢に座り込む。

 

「・・・そういえば、借金って結局アビドスのどこにかかってんだ?」

一息ついたとき、おもむろに山猫が口を開いた。

 

「どこって・・・どういうこと?」

「生徒にかかってるのかアビドスという組織にかかってるのかの話だが?」

「それって何が違うのさ」

「全然違うぞ。人にかかってるなら未来永劫借金を背負って、組織にかかってるなら少なくとも組織から抜ければ借金を背負わずに済むって話だ」

「・・・何が言いたいの?」

「カイザーにでも聞いてみたらどうなんだって話だよ。思考停止で金返すだけで終わるのか?お前ら」

「・・・でも、誠実にすればいつか恩が帰ってくるんだよ」

「それ、誰からの戯言?」

「たわごと・・・?」

「戯言だろ。アホ丸出しで、悪意を何も信じていない現実逃避の言葉だ。それ言ったやつの顔が見てみたいよ」

「この顔だと言ったら?」

「嘘だな。お前の所作・行動・言動を見れば本気でそうは信じていないだろう?誰の真似だ?」

「・・・卒業した、先輩の言葉だよ」

「じゃあその先輩はとんだ馬鹿だ」

「馬鹿だと…!!」

ホシノは山猫の胸倉につかみかかる。対して彼女は距離を軽くとると再び口を開いた。

 

「そいつがたたんでればお前も、後輩も、今借金に追われてないだろう。・・・いや、違うか。先輩の前の代が無駄にあがいたからつけ払わされてるのか。そっかそっか。

 訂正するよ。お前の先輩は現実をみれてはいないが、お前に優しさを教えた人だな。そうだろう?」

「…まぁ、そうだね。そうだよ。利口な人ではなかったけど、少なくとも、優しい人だった。卒業してからは、連絡付かないけど」

「良かったなぁ、お前。優しさはいいぞぉ。裏切られることもあるが、何より人を引き付けてくれる。

 お前の後輩がその証左だろう?」

「・・・」

「悪かった悪かった。謝るよ、ごめんね?お前の先輩を馬鹿にしてさぁ・・・w」

「・・・いいよ」

「まぁ最悪カイザーぶっ潰せばいいだろうし」

「流石におじさんでもそれは無理だよ」

「やれるだろ。私ならやれる」

「いや、山猫ちゃんの力はちょっと」

「あるものを使わずして何がベストなんだろうな???」

「使うべきではない力を使って果たすことはそれすなわちベストじゃなくない???」

「ホシノ、いずれ喧嘩しようぜ」

「望むところだよ」

そう言って二人は少し笑った。一人は冗談交じりで、一人は今後に期待して。

 

 

続く





この中に、嘘つきがいる
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