首輪付きが今度はキヴォトスを荒らすようです 作:AC組んでSS書いてる人
「セリカちゃん、ほんとごめんね?ラーメン奢るから許してよ~」
「怒ってませんっ」
媚びへつらうホシノに対してふんっと顔をプイッと背けるアヤネ。
あの後、ひとしきり暴れたアヤネはその後全員を巻き込んでお説教をしたのだ。シロコも先生も正座させられて足がしびれている。
先んじて脱出して、戻ってきたホシノと山猫にも説教をした。流石のホシノもこたえていた一方で、山猫は聞いてるのか聞いてないのかよくわからない表情と態度をとりながら右から左に聞き流していた。
「ところで山猫さんも反省してますか??」
「え?うん、してるしてる」
「ホントぉ??」
「ホシノ先輩が言える立場ですかっ」
「ゑ???」
「wwwwww」
そんな会話をしながら6人は柴関ラーメンに入っていく。
カウンターに人影。どうやら先客がいるらしい。見慣れない服装だ。新規の客らしい。
「性懲りもなく良く来たわね」
先んじてアルバイトに来ていたセリカが声をかけてくる。真面目なことだ。
「ここ以外に集まれる場所なんて学校しかないでしょ~?それにお腹すいてたしね~」
席に着きながらホシノが言う。
「そう。で、注文は?」
「塩。もやし増やしてよ」「ん、醤油。チャーシュー多め」「豚骨☆」「醤油でお願いします」「”豚骨でよろしく”」
「ん、かしこまりましたー。・・・山猫は?」
「いらない」
「ラーメンは?」
「いらない」
「ほかにも頼めるわよ」
「いらない。ここにおいてある水でいい」
「くそ客がよ‥‥」
山猫以外の注文を聞き、山猫にべーッと舌を出しながら厨房に入っていく。しばらくして、厨房から出てきた彼女にカウンターに座っている人影が声をかけた。
「あ、あの!!」
「はい!ご注文ですか?」
「こ、この柴関ラーメンを一つ!小鉢4つお願いします!!」
「ひとつ、ですか?わかりました!それで以上ですか?」
「は、はい!」
「かしこまりましたー!」
注文を受けるとセリカは再び厨房に入っていった。
「ふふふ・・・何事にも解決策はあるのよ。全て想定内だわ」
「えへへっ、流石アルちゃん!」
「はぁ……」
それを見送りながら余裕を持たせた態度と表情でカウンターの4人組は会話している。
「仲いいんだねぇ、あの子ら」
「どこの子でしょうね~☆」
それを見ながらホシノとノノミが話している。しかし、山猫はコップの縁を適当になぞりながらじっと見ていた。
一見、ただの無害な4人組。だが山猫にはわかる。わかれてしまう。理解できる。あいつらは自分と同じ傭兵だ、しかも新人。*1
なんだかんだ同業者を見ると無性に嬉しくなる。まぁ結局つぶすときはつぶすけど、潰すまではいい顔したいじゃない?そうだろう?
すると山猫は立ち上がり、紫色の少女の横に腰掛けてくる。
「ふぇ?!」
急に隣に人が来てびっくりする彼女。他の3人もびっくりしていた。
「なぁなぁお前、ここの住人じゃねぇよな?見たところゲヘナか? どうしてこんななんもない辺鄙なとこに来た?」
ニヤニヤしながら話しかける山猫。その顔はいつもの小ばかにしているようではなく、少し気さくな雰囲気を纏わせていた。
「そ、それは…」
おどおどしながらも返答しようとする少女。多分仲間以外にこんなに気さくに話しかけられたことが無いのだろう。
それと同時に、何か話しづらい内容も抱えているのだろうと察する。いや、何となくだが彼女は勘づいてはいた。
「まぁわかるぜ。ここうまいんだろ?知ってるよ。知る人ぞ知ってるもんな。 腹いっぱい食うのは原初の幸福感だしなぁ、三大欲求は生きる上で大事だぜ」
それを感じた山猫はさりげなく話題を変える。知らぬふり、時には大事だ。
4人組も少し雰囲気が緩くなった。やはり警戒していたのだろうか。いや、警戒するだろこんなやつ。
「そ、そうですね、フヘヘ…」
「いい顔してんなぁ、俄然興味がわいてきた。お前、名前は?」
「い、伊草ハルカです。便利屋68の、平社員です」
「へぇ便利屋68、いい名前じゃないか」
「そうでしょ?ふふんっ、私が名付けたのよ!」
「いいセンスだ、誰から学んだのかな?」
「私由来、オリジナルよ!」
「Good. 名前から考えるに、何でも屋って奴?」
「そうだね~♪」
「金さえ払えば何でも受け持ってくれるんだろ?どこまでやってくれんの?」
「あ、アル様が望めばなんだってします」
「へぇ、その あるさま? って人が大好きなんだねお前。で、あるさまって誰?どれ?コイツ?」
そう言いながら彼女はパーカーの子を指さす。
「違うよ」
「違ったか。見てくれ一番年長者だからそうだと思ったが・・・じゃあこいつ、はないな」
「くふふ~よくわかったね♪」
「どう見ても組織の天辺に立つ顔してねぇからな「なんか含みない??」ない(断言) ということはあんたか」
「そ、そうなんです!コ、この方です…!」
「紹介に預かったアル様こと陸八魔アルよ、よろしくね」
そう言いながらアルは手をひらひらさせてくる。
「ふーん・・・」
そう言いながら山猫はじろじろとアルの姿を上から下まで隅々と不躾に観察する。
服装も小ぎれいだし容姿もいい。口調も悪くないし、清潔感もある。
傭兵というか便利屋というには少し小ぎれいすぎるし着られてる気もするが、いい感じにもまれて様になっていくだろう。
そんなことを考えながら山猫はハルカに肩を組んでくる。ハルカはきょどりながらも受け入れた。
「うぇ、ウェええっ…?!」
「伊草ぁ、お前凄い当たり引いてんなぁ。大事にしろよぉ?こいつ絶対伸びるぞ」
「そ、そうですよね?!アル様は凄い人なんですよ!」
「わかるぜ、オーラが違う。そこら辺の木っ端じゃあ相手にもならん。いずれお前らは上から見下ろせるさ。
知ってるか?上から有象無象を見
ニヤつきながらハルカに耳打ちする山猫。それは甘美な誘いであり、破滅がちらつく猛毒であり、それ故に上を目指す理由になりえた。
「う、上に行けば…私をいじめてた人達を見下せますか…?」
「あぁ、見下せる」
「ぎゃふんって、言わせれますか?」
「ぎゃふんどころじゃあない。もっと欲張ろうぜ」
「欲張る…?」
「あぁ。他者より強く、他者より鋭く、他者より先へ行く。餓えろよ、どこまでも渇いていけ」
「餓える…?」
「あぁ。力は水だ。求めて手に入れて、更に求める。強くなるには餓えないといけない。何が欲しい?どれが欲しい?何を望む?何を求める?
今必要なのは、希望だろ。伊草」
「希望…」
「あぁ。現状維持ではもはや到達できない高み…その高みを望むのはなぜだ? それは、誰よりもいい暮らしをしたいとか、誰よりも強くなりたいとか、誰よりも成功をしたいとかいう、希望だろ?」
「そ、そうです!そうなんです!皆アル様を馬鹿にしてくるんです…!許せないんです…!!」
「ハルカ・・・」
「そうだな、馬鹿にされるのはつらいもんな。わかるよ。・・・なぁ、陸八魔」
「は、はい」
突然声をかけれたアルは思わず姿勢を正した。
「お前はこれでいいのか?部下に悲しい思いをさせるのは、お前の本意か?」
「ち、違うわよ!」
「そうだ、そうだよなあ? そこの二人、お前らはそれで妥協できるのか」
「・・・流石に、無理」「ちょっときついかなぁ…」
「だろ?だろだろ?だったらもっと餓えろ。もっと求めろ。いいじゃないか、求めても。人は我欲のままに生きてもいいんだよ」
「・・・私、今まで正直諦めかけてたのよ」
「…続けて」
「私は、アウトローになりたいの」
「ほうほう」
「でも、私は頭も要領も良くないし、皆がいないと何もできないし…それに見栄っ張りよ」
「そうなの?」
「そんなことないと思いますけど…」「…まぁ、見栄っ張りなのは事実」「頭はいいと思うけどなぁ」
「でも、もう少し頑張ってみるわ。欲張ってもみる。餓えてやる。でも、気高く餓えたいの。
きっと、それは必要なことだから」
するとそれを聞いた山猫はニッコリと笑顔になった。聞きたいことを聞けたという顔だ。
「Good! それでいい!最高だ。せっかくのいい気分だ。おーい、大将ー!」
「なんだいなんだい、いつにもなく上機嫌じゃないか」
「こいつらに柴関ラーメンをあと3つ出してやってくれ。金は私が払う」
その言葉にアビドス全員が驚愕する。まさかあのドケチでがめつくてカスの山猫が誰かのために金を払うなんて。
「何でその意気を私達にしてくれないのよ!」
タイミングよくラーメンをカウンターに持ってきたセリカが詰め寄る。
「お前らに私が払うほどの魅力も熱も感じてねぇんだよカスが。自惚れるなよ」
「こっちには毎度せびってくるくせに?」
「どうせ借金返済してるのに10万くらい誤差だろ。払う相手が違うだけだ。良心的だろ?」
「冗談もほどほどにしなさいよ。で、アンタはほんとにいらないの?」
「いらん。腹減ってないしな」
「じゃ、じゃあこれ、どうぞ・・・」
するとハルカが小鉢を一つ、すっ・・・と差し出してきた。
「んぁ?なにこれ」
「あ、あの、私、小食なんです…少し食べてくれませんか?!」
「嘘コケ。さっきからずっとお腹の音がうるさいんだが」
「わがままです!もっと欲深くなれって言いましたよね?!一緒に食べて欲しいんです!」
「・・・」
するとぽかんとした表情を山猫はするがすぐにニヤッと笑うとセイカに言った。
「おい、大将。こいつらに餃子もつけてやれ。気に入った」
「いいのかい?」
「いいんだよ。新しい門出祝いだ。盛大にやろうぜ」
山猫は万札をちらつかせながらそう言う。
「あ、ありがとうございます!」
ハルカがきょどりながらもお礼を言ってくる。対して彼女はほっぺたを指で挟みつつ視線を合わせた。
「う、ゆぅ…?!」
「礼は私じゃない。お前のリーダーに言え。お前のリーダーに感銘を受けたから私も払う気になったんだ」
「え、でも」
「お前らの答えがしょうもなかったら声をかけるだけで済ませるつもりだった。
だが、そうじゃなかった。そうじゃなかったんだ。お前らは強い奴だからな」
「つ、強い…ですか?」
「そうだ。暴力とか知能とかではない。ありかた・精神性の話。前に向かって進もうとしてる…現状に甘んじてぬくぬくしてる奴等とは比較にもならん。励めよ」
「・・・グスッ」
「おいおい、何で泣いてんだよ」
「だ、だって、初めてだったんです…!こんなに理解してくれて、優しくしてくれた人…!!」
「そいつらは勿体無いことしたよな。お前の目、奥に燃えてるものがあるのにさ」
そうしている間に4人の前にラーメンと餃子が置かれる。空腹もワクワクも最高潮に達する。
「「「「いただきまーーす!!」」」」
「おう、食え食え」
4人がニコニコしながら手を合わせる。それを山猫は期待する目で見ていた。その目には様々な思惑が含まれているはずだが…生憎全員それに気づかなかった。
続く
「少欲知足でいられるかよ」