追記:誤植があったので訂正しました。
第一章1話~その1~
とある屋敷のラウンジに集められた13人の少女……と1人の少年。
全員なにがなんだかわからない、といったような面持ちをしている。しかし、その顔とは裏腹に部屋の隅でうずくまっている少女もいれば、勝手に物の配置を変えて遊んでいる少女やこの謎めいた状況に興奮している者もいた。
そんな中、剣のようなものを携えた少女が口を開いた。
「みんな初対面だろうから、よかったら自己紹介をしていかないか?先に名乗らせてもらうよ、私の名前は蓮見レイア。」
「……ふんっ、遠野ハンナですわ。以後、お見知りおきあそばっ……あそばせせせ?」
次に口を開いたのは緑色のゴスロリ調の服を着たいかにもなお嬢様。お嬢様のような喋り方を初めて見かけて、思わず目を見張る。
「現代でまだお嬢様がいるってまじか……」
「ちょっと?失礼じゃありませんの?わたくしはれっきとした!!お嬢様ですわよ!!!」
「わ、悪かったって……俺は唐崎シュウ。よろしくな。」
そういって自分も自己紹介を済ませる。名前以外に話すことも特にはないので、そのまま口を閉ざした。
「はいはーい!私は橘シェリーっていいますっ。事件あるところに私あり!この名探偵にお任せください!」
「ボ、ボクは桜羽エマ!」
「わわわ、私の名前は、ひっ、ひっ、ひ……氷上、メルル、です……っ」
立て続けに何人か自己紹介をした。橘はどうやらミステリーオタク、氷上はどうやらあがり症らしい。桜羽は……特に特筆すべき点はなさそうだ。
「あっ、あっ、あの、エマさん。」
「えーと、何かな?」
「怪我、しちゃってます……」
桜羽は気づいていなかったようで、自分のけがを見て驚いていた。
氷上はその怪我が自分の近くに来るよう膝立ちし、傷の箇所に手をかざした。すると、氷上の手が光はじめ、桜羽の傷口がみるみる塞がっていく。
「えぇ……?まじ?」
「……その不思議な力について詳しく聞きたいけど、まだほかの子も残っているよね?お互いの自己紹介を優先しようか、次。キミいいかな?」
あまりに非現実的な状況に思わず変なリアクションを取ってしまった。そんな自分を引き戻すように、蓮見は自己紹介を続けるよう促す。それに続くように、猫耳のヘッドフォンを付けた少女が自己紹介をし始めた。
「あーあてぃし?あてぃしの名前は沢渡ココね。んでさぁ、ちょっといい?あてぃしあんたのことテレビで見たことある気がして。」
「あーわかる。俺も見たことある気がするんだよねー。誰だっけあんた……出てきそうで出てこない。」
彼女は蓮見のほうに歩み寄り、無遠慮な視線を彼女へと向ける。
沢渡の疑問に呼応するように、自分も同じ疑問を口に出す。蓮見と直接会ったことがあるわけではないものの、どうにもぬぐえない既視感があったのだ。どうやら橘までも同じような疑問を抱いていたらしく、興味津々な目で彼女のほうを向いている。
「芸能事務所に所属しているからね。いろいろ活動はしているよ。舞台が一番多いけど、テレビにもよく出たりする。」
「あー!あの蓮見レイアか!!どーりで見たことがあるわけだ、俺あんたの舞台何回か見にいってるよ!」
「本当かい!それは嬉しいことだ!是非ともまた来てほしい。」
謎が解けたところで、自己紹介に戻っていった。
佐伯ミリア、宝生マーゴ、紫藤アリサ、夏目アンアン、黒部ナノカ、二階堂ヒロ、城ヶ崎ノア。
それぞれ一見するとただの少女だが、皆それぞれ違う特徴を持っていた。
例えば佐伯は一人称がおじさんであったり、夏目はしゃべることなくスケッチブックを使って筆談をしたり……。
彼女らはみな総じて日本ではあまり見ない服装をしており、かくいう自分もまたあまり見ない服装に着替えさせられていた。赤いバンダナに白いTシャツにジーパン。上着は装飾のついた黒色のものを着ていた。ネックレスまでついている。まるでアニメのキャラクターのようだった。腰にはナイフが数本刺さったベルトのようなものがまかれている。
それぞれの自己紹介が終わりしばらくすると、1羽のフクロウがテーブルに降り立った。
「あっ……人がいっぱい……えっと、改めまして。この牢屋敷の管理を任されています。ゴクチョー、と申します……。定時とかもあるので、さっさと説明しちゃいますね……。」
その後、ただひたすら現実味のない話を延々と聞かされ続けた。
自分たちは国の検査に引っ掛かり、この牢屋敷に幽閉されたこと。自分たちは『魔女』という災厄をもたらす存在になりえること。魔女になったものは『なれはて』になってしまうこと。この牢屋敷から一生出ることはないということ。
ゴクチョーが『大魔女』どうこう言ってはいたが、途中で話すのをやめてしまったため詳しくはわからない。
「あー、ちょっといい?俺魔法少女でもないし魔女でもないし……というかまず男だし俺。なんかの間違いじゃないの??」
「あのーそこらへんはお偉いさんたちに聞いてもらって……あくまでも私たちはここの管理が仕事ですし……。ま、外部と連絡は取れないんですけどね。連れてこられたってことはやっぱりあなたも魔女因子を持ってるってことなんじゃないですかね。」
ゴクチョーは軽い感じで答える。今までも男が連れてこられたことはあったのだろうか。
そんな中、二階堂が少しムッとしたような口調でゴクチョーに意見する。
「間違いです。私は悪ではない。」
相当な自信を持っているのか、その発言に迷いは微塵も見えなかった。そして、二階堂は桜羽を指さして災厄になるのはこの子のほうだ、と発言した。
彼女らの中には相当な確執があるのだろう、彼女の顔を見ればわかる。明らかに人を見る目のそれではなかった。
「……っ」
「エマさん……」
「えへへ、へーきへーき。」
口ではそう言っているものの、彼女は明らかに傷ついた表情をしていた。当然だ。こんなわけのわからない場所に閉じ込められ、ましてや知り合いから悪だといわれる。心が追い詰められてしまってもしょうがない。
そんなことを考えていると、二階堂が何かつぶやきながら火かき棒を手に取って看守へと向けて飛び出した。
「おい!!危ないだろやめろ!!!相手は人じゃないんだぞ!!!」
自分の忠告もむなしく、二階堂は止まる気配がない。そして、彼女はその凶器を、看守の頭へと振り下ろした。
ぐちゃぐちゃになっても、どれだけ血が出ようと、彼女は笑いながら看守をたたき続けた。その姿はまるで、ここに存在してはいけないものを消すさながら執行人のように見えた。看守もどれだけ殴ろうと、しぶとく生き残っていた。
だれも止める気配はない。当然だ。止めたら次は自分かもしれない。そんな恐怖が自分の中を渦巻いているのだろう。自分たちの命が大事なのだ。
しばらく殴り続けていると、看守が動き始めた。
やはり人外なのだろう。その恐ろしく速い速度とパワーで降りぬかれた大鎌は—————————
「……は?」
彼女の首を、本来あるべき場所から遠く離れた場所に飛ばした。彼女は少しふらふらとさまよってから、どさっと倒れる。倒れた遺体の下には、真っ赤な鮮血があたりを侵食していった。
彼女は死んだのだ。
その事実が急に頭を殴ってくる。気持ち悪さがこみ上げ、思わず自分は吐いてしまった。
あるものは困惑し、あるものは悲鳴を上げ、あるものはやれやれといった目で彼女を見ている。まさに、地獄絵図というしかない状況であった。
(マジかよ……これ……。)
悲しいことに、吐いてしまったら意外と冷静になってしまった。人が死んだのに、だ。
頭ではわかっているくせして、妙に冷静になってしまっている。こんな変な場所にきて気がおかしくなってしまったのだろうか。
そんな中、空気も読まずゴクチョーが口を開く。
「うわ~……しんじゃいましたね……掃除しなきゃ……。ああでも、魔女はこんな事じゃ死なないので、彼女は無事魔女じゃないと証明されましたね。やれやれ……よかったですね。」
みんなゴクチョーの発言に言葉を失っている。人が死んだのに、なぜそんなことがいえるんだ?とでも言いたげな目をしている。
そんな静寂を破るように、一本のナイフがゴクチョーをめがけて飛んで行った。
そう、自分は気づいたらナイフを投げていたのだ。自分でもなぜそうしたかわからなかった。どう考えても非合理的な行動でしかない。
そのナイフは簡単にゴクチョーに刺さった。致命傷だったのだろう、そのままでゴクチョーは吹っ飛んでナイフにくし刺しにされた。
みんなの視線が、こっちに移る。
「悪いみんな、やっちゃったわ。大丈夫、みんなに危害は加えないから。本当に。」
「ちょ、ちょっとあなた、そんなことより大丈夫ですの?こんなことしちゃったら、あなたまで看守に殺されてしまいますわよ!?早くお逃げになさったほうがよろしいんじゃなくて!?」
「ほんとですよ……私に危害を加えたら本来は処刑なんですよ……?まったく……。」
遠野の一言でひとまず逃げようと思った直後、ゴクチョーは何事もなかったかのようにテーブルの上に立っていた。看守も襲ってくる気配はない。
「私には代わりがいるので……殺してもどうにもなりませんよ。以後、お気をつけてください……今回は後処理が面倒なので見逃しますが、次はないですからね……。」
やれやれといった感じでゴクチョーは見逃してくれた。なんともまあご都合主義なことだ。
何事もなかったかのようにゴクチョーは警告をしてきた。
「あ……最後に言うの忘れてました……魔女化が進むと、抑えきれないような殺人衝動や妄想に取りつかれてしまうことがあります……。面倒なことに、いずれ囚人間で殺人事件が起きるんですよ。」
「殺人事件!?」
その言葉を聞いた瞬間、橘は目を輝かせながら食いついた。人が死んだのに、よくもまあ殺人なんて言葉に興味が持てる。そんなことを考えているうちに、ゴクチョーは話を続ける。
「というわけで、殺人事件が起こり次第【魔女裁判】を開廷いたします。」
「【魔女裁判】だぁ……?」
「さっきも言いましたけど、男性だろうと候補ではありますから……。あ、魔女に選ばれたものは処刑されますので、まぁ頑張ってください……。」
詳しくは魔女図鑑をよめ、最後にそう言い残してゴクチョーは去っていった。
全員、生気を失ったような顔をしていた。
「ひっ……」
紫藤はこの状況に耐えられなかったか、地をけってこの部屋から出ようとする。
部屋の中をさまよっていた看守は、猛烈な勢いで紫藤を追っていた。その手には鎌が握られている。それは、彼女めがけて振り下ろされようとしていた。
(くっそ……!!間に合わねえ!!)
彼女に鎌が振り下ろされる瞬間、キィンと金属音が鳴り響いた。
蓮見が自分の腰に下げていたレイピアで紫藤をかばったのだ。舞台俳優をやっていたというだけあって運動神経は相当いいらしい。自分より早く彼女を助けるための態勢に入っていた。
「べつに紫藤はルール破ってないだろ。殺される理由はないんじゃないのか?」
自分がそういうと、看守はおとなしく引き下がっていった。元から牽制のつもりだったらしい。
紫藤は今の状況が恐ろしかったのか、がくがくとその体を震わせていた。
しばらくすると、看守は二階堂の遺体を持っていってそのまま退室した。
こうして、いつ終わるのかもわからない地獄のような生活が始まった。
♢♦♢♦♢
規則によると、そろそろ自由時間が終わろうとしていた。こんな気味の悪いところから出るためにいろいろ調べたかったところだが、蓮見の提案で一度地下牢に戻ることになった。
「氷上……だったっけ?ごめんな、男が同部屋で。」
「い、いえ……そんなこと……。それより、唐崎さんは嫌じゃないですか?その、私となんかと同部屋で……。」
「いやいやいや!!そんなことないから!!氷上さんと同部屋でいやな奴とかいないとおもうよ?マジで。」
そんなことを言い合っていると、交流を深めようという流れになっていった。その過程でお互いここに来る前何をしていたのかについて話をすることになった。
「んー……俺あんま誇れることではないけどさ、ここに来る前は詐欺師をしてたんだよね。親が小さいころに蒸発しちゃってさ、生計を立てるので一苦労だよ。だから仕方なく詐欺でお金を稼いでた。」
「えぇ……!?さ、詐欺はだめですよ……!」
「わかってるよ、生きるためだったからもちろん最小限しかしてないさ。ただ、まっとうに生きれたらなぁって何度も思ったよ。」
そう、本当に何度思ったことか。
周りが高校生になったらバイトする!とかなんとか言っている中、自分は詐欺でお金を稼いでいるのだ。犯罪という自覚もあったし、さっさとこんなことやめてまっとうに生きたかった。
普通に学校を卒業し、普通に会社に就職し、普通に家庭を持ち、普通に死にたかった。
そんな普通のことでさえ、この世界の神様はかなえてくれない。
そんな思考を無理やり途切り、桜羽の傷を治した力について聞くことにした。
「そういえば氷上さ、桜羽の傷一瞬で直してたじゃん?あれどういう仕組み?マジック?」
「ま、魔法ですよ……。私の魔法は【治癒】の魔法なんです。大きな傷は治せませんけど、小さな傷であればだ、大体治せます。」
「えーすご!!それめっちゃ重宝されるやん!!」
氷上の魔法は実際重宝されることだろう。傷が治せるなんて本当の意味で医者いらずだ。ぜひとも自分もそんな魔法が欲しかった。
「か、唐崎さんの魔法はいったい何なんですか……?」
「シュウでいいよ、んー……秘密かなぁ。乙女の心は、察してあげる物なんだぞ氷上さん。」
「し、し、シュウくん男の子ですよね……?」
どうやら渾身のボケが通じなかったらしい。めちゃめちゃ恥ずかしい。
それはそうと美少女に狼狽えながらも名前+くんで呼んでくれている状況が、俺はとてつもなくうれしかった。