嘘つきの詐欺少年。   作:お疲れのスーパーマン

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一応伝えておくと、主人公は虚言癖とかではなくて嘘が得意なだけです!!ほんとに!!!


第一章1話~その2~

翌日。

 

まだ氷上……は起きていないようだ。

朝6時から地下牢を出入りできるようなので、先に食堂へに向かうことにした。

 

 

「行ってきまーす。」

 

 

起こさないよう小声で一応言っておく。

 

 

 

♢♦♢♦♢

 

 

 

地下牢が開いてからすぐ食堂に向かったから、予想はしていたが食堂には誰もいなかった。

どうやら食事はバイキング形式らしく、テーブルの上にいろいろ……黒い何かが置かれていた。

 

 

「これ料理か……?ほんとに囚人の生活と変わらんな、これは。」

 

 

そこには料理と形容すべきか怪しいダークマターが陳列されていた。唯一リンゴがあったので食べようとしたが、下のほうが腐っていて食べれるような状態じゃなかった。

溜息をつきながらダークマターをいくつか取り、席に座った。

もくもくと食事を進めて数分、みんなが入ってきた。氷上も起きたようで、桜羽、橘、遠野たちと一緒に歩いてきた。

黙って食事を続けていると、意外な人物が声をかけてきた。

 

 

「隣、いいかしら?」

 

「……宝生か。別に構わんけど、どうして俺なんだ?蓮見とかいるだろ。」

 

 

そういうと宝生はニヤリと色っぽい笑顔を張り付けた。

 

 

「最初に集まった時からあなたのこと気になってたのよねぇ♡」

 

「それは俺のことが好きってことか?あいにく、俺はお姉さん系じゃなくて年下系が好みなんだなこれが。」

 

「あら、振られちゃった……お姉さんはいつでも歓迎よ?」

 

 

本心で語っているのかわからない、つかめないところが自分と似ているな、と感じた。

 

 

「それで?俺の何が気になるってのさ。ごくごく普通の男子学生だけど?」

 

「だって、あなた私と同じ目をしているんだもの。そんなの気になっちゃうじゃない。……あなたも()()()()の人間なんでしょう?」

 

 

恐らく、宝生が言っているこっち側というのは人を騙す側、ということなんだろう。

宝生もどうやら自分と似た過去を持っているらしい。詐欺師か、あるいはそれに似た何かをここに来る前やっていたんだろう。以前からそんな雰囲気があったのは感じていた。

 

 

「よくわかったね、否定はしないよ。実際そうだし。」

 

「あら、案外素直に認めるのね。もっと言い逃れするのかと思ってたわ。」

 

 

おそらく自分だったら言い逃れしたのだろう。明らかにこいつは自分自身と俺のことを少しだが重ねている節がある。

だが、自分と宝生では決定的な違いがある。

 

 

「それで、結局俺に何の用なんだ?ちんたらこんな会話をしてても始まんねえだろ、さっさと話せよ。」

 

 

宝生はつれないわねぇ、と言いつつ真剣な顔をして俺にその話を持ち掛けてきた。

 

 

「ねえ……取引をしない?」

 

「……取引?」

 

「この場所ではいずれ殺人事件が起きる……そうなったら、あなただって疑われることがあるかもしれない。そうなったときのための取引よ。」

 

 

宝生はどうやら……というより当たり前のことだが、生き残りたいらしい。取引の内容は

 

1.二人のどちらかが疑われているとき、もう一方は疑われているやつをかばう。要は口裏合わせに乗るということ。

2.殺人事件が起きたら裁判の前にお互いが見つけた証拠品、そこから推察される推理をお互いに共有する。

 

大きく言うとこの2つだ。

要はお互いに不利益が起きないようにかばいあう……つまるところ共犯にだってなるということだ。

一見すると、お互いに利益しかない取引だ。だが、取引なんてものはほぼどちらかが一方的に裏切ることでなくなってしまうものだ。

だったらそんなの、答えは一つしかない。

 

 

「却下だ。」

 

「あら、どうしてかしら?お互いにとって悪い話ではないでしょう?」

 

「……まずお前は勘違いをしている。そもそもだ、どうして人のことを1ミリも信用していないやつの取引に応じなきゃならない。いつ裏切られるか分かったもんじゃないんだ。不安因子は少しでも減らしたい。そしてもう一つ、俺にメリットがないからだ。」

 

「別に取引に信用なんてものはいらないわ。お互いの利害関係のためだけに動く……それで取引は十分じゃないかしら?それに、あなたにだって裁判で疑われにくくなるというメリットがあると思うけれど?」

 

「なら、もう少し俺との関係値を深めてからもう一度来ることだな。お前の取引は裁判に直結することだ。土壇場で裏切られたらそれが原因で投票されることだってあるかもしれない。俺は少しでも生き残りたいんでね。」

 

 

そういって俺は食べ終わった食器のトレーとともに席を立つ。

遠野が桜羽たちに魔法の披露しているようで、踏ん張りながら低空飛行をしていた。

 

 

(空飛べる奴もいんのか……)

 

 

城ヶ崎と紫藤がいないのが気になりはしたが、まだ来ていないだけだろうと思考をやめる。にぎわっている氷上たちのテーブルを横目に、俺は食堂を後にした。

 

 

 

♢♦♢♦♢

 

 

 

食堂から出ていった後、自分は娯楽室へと足を運んだ。

娯楽室は本当に娯楽目的で作られたようだ。フィルムだが映画、ビリヤードなど様々なものがある。

やわらかいソファが部屋の中心にあり、そこには佐伯が妙にデコレーションされたスマホを弄っている姿があった。

 

 

「娯楽室なのに、スマホばっかり弄ってて楽しいのか?」

 

「うわぁぁ!!!びっくりした!!」

 

 

あまりにも大きなリアクションを取るものだから、こっちまで驚いてしまった。どうやら自分が部屋に入っていたことに気づいていなかったらしい。

 

 

「あ、えと、その、ごめん、誰だっけ……。まだ顔と名前が一致してなくて……。」

 

「いや別にいーよ、どうせ長い付き合いになるんだし。俺は唐崎シュウ。佐伯……であってるよな?スマホばっか見て何してんのさ、SNSが見れるわけでもないのに。」

 

 

このスマホで何かできることはないかといろいろ自分も試した。が、何も収穫はなかった。

このスマホにはそもそも外部のインターネット自体がつながらないようで、内部の情報以外一切の確認ができないようだった。連絡先の交換でメッセージ、通話ができるようだが誰とも交換していないので実際に試すことはできなかった。

 

 

「あぁいや、スマホ弄ってたら猫耳の子が急に映ってさ……さっき驚いちゃったのはシュウ君のことに気づかなかったのもあるけど、急にこの子がスマホの画面に出てきたのに驚いちゃって……。」

 

「あぁ、だからさっきあんなでかいリアクションしてたのか。」

 

「お、お騒がせしました……。」

 

 

そんなことを言いながら佐伯のスマホをのぞき込む。そこには沢渡ココの姿が映っていた。どうやら彼女は前から配信者をやっていたようだ。明らかに配信慣れしている。

彼女の行動原理はどうやら『推し』にあるらしい。推し以外どうでもいい、私と推し以外みんな死んでしまえばいいのに……。

そういった言葉が聞こえてきたあたりから、なんの示し合わせもなく自分と佐伯は配信を閉じた。

 

 

「推し以外死ねばいいってめちゃめちゃに物騒だなこいつ。」

 

「あはは……おじさんもさすがにちょっと驚いたなぁ……。」

 

 

佐伯ミリアはどういった理由かは知らないが一人称がおじさんらしい。別に興味がそそられるものでもないからわざわざなぜか聞いたりはしないが。

 

 

「えっと……なんでシュウ君は娯楽室に来たのかな?なんか用事でもあったのかい?」

 

「用事っていうか……まあ探索かな。ここで一生過ごすってのも嫌だし、一応ね。あと牢屋敷に慣れておく必要もあるし。」

 

「シュウ君はえらいなぁ……おじさんなんかずっと無気力に過ごしちゃってるよ。なんか現実味なくてさ。」

 

 

佐伯の言うことはもっともだ。そもそも、この場所自体が不思議でならない。現代においてあまり見ない洋式の館。相当昔からあるのだろう、建物の老朽化も進んでいる。

 

 

「じゃあ俺、ほかの場所探索してくるから。またどっかで。」

 

「うん!なにがあるかわからないからね。気を付けて探索するんだよ。」

 

 

俺は佐伯に適当な相槌を打ち、娯楽室を後にした。

 

 

 

♢♦♢♦♢

 

 

 

来たのは図書室。

そこには想像以上の本の数があり、中央には一本の木が置いてあった。

 

 

(えぐいなここ……普通に高校の図書館くらいはあるんじゃないか……?)

 

 

そんなことを考えながらあたりを見回していると、桜羽と橘を見つけた。どうやら本を見漁っているらしい。

 

 

「やほ、奇遇だね。」

 

「えっと……唐崎さんでしたっけ?どうも!」

 

 

自分の適当なあいさつに橘は元気よく返してくれた。初めて会った時からずっと感じていたが、こいつの活力は底なしらしい。

やはり彼女たち同士では名前で呼び合っているのに、自分はいまだ名字で呼ばれることがある。これが異性との壁ってやつなのか、くそう。

 

 

「シュウでいいよ。それより、何の本見てたんだ?」

 

「あ!そうそう!シュウ君もこれ、見てくださいよ!」

 

 

そういって彼女が見せてきたものは、本に書かれた血文字だった。「憎い」と書かれている。

 

 

「うわ、今どきこんなことする奴いるんだ。」

 

「きになりますよね!何か脱獄のヒントになるかもしれませんし、ほかにもこういった本を探してみましょう!!!」

 

「ん、手伝うよ俺も。どうせやることないし。」

 

「いいんですか!ありがとうございます!」

 

そうして血文字の書かれている本を探して数十分。桜羽が一冊の本を持ってきた。

その本には「←」とページの端に書かれていたため、そのページをさらにめくった。

 

そこには、大量の血が使われたであろう血文字がびっしりと書かれていた。今までのような短い単語ではない。もっと長い、長い、呪詛ともとれるような文が書かれていた。

 

そして最後のページにはこう書かれていた。

 

 

【今これを読んでいるお前も死ねばいい】

 

 

その文字を見た瞬間、これはやばいと本能が言っていた。

その本をナイフで突き刺し、開かないように固定したが抵抗むなしく、本は肥大化していく。

 

 

「マジでこれはやばい!!早く逃げろ!!!!」

 

 

そう二人に言って二人を避難させる。

二人は俺のことが気がかりだったようだが、すぐに逃げてくれて助かった。

 

 

(俺がこいつを食い止める……!)

 

 

ナイフを取り出そうとした瞬間、図書室の隅で本を読んでいる宝生を発見した。

 

 

(なんでこんなとこに……!いや違うだろ、今はそんなこと言ってる場合じゃない!!考えるのは後だ!)

 

 

宝生を抱きかかえ、図書室の扉へ走る。最初は宝生もどういうことかわからないといった様子だったが、すぐ緊急事態だと察してくれたようで、無抵抗でいてくれた。

図書室の扉を出て、間一髪のところで扉を閉める。

しばらくドスンドスンと扉にぶつかる音がしていたが、次第に収まっていった。どうやら本が元に戻ったらしい。

 

 

「はぁ……はぁ……助かったぁ~~……。」

 

「……ありがとう、助かったわ……。」

 

「ほんとだよ!!マジお前普通物音とか気になるだろ!!隠れろよせめて!!!」

 

 

宝生は言い返す言葉もない、といったような表情をしていた。妙に大人びているから忘れていたが、こいつも同じ15歳なのだ。大人ほど冷静に対処できるわけではない。

しばらくすると、図書館に橘と桜羽が走ってきた。

 

 

「あ、あれ……?あの本はどこに?」

 

「図書室の中で今は静まってるよ。いつ暴れだすかもわかんないし、しばらくは出入りを禁止たほうがいいかもな。」

 

「そのことなんだけどさ……アリサちゃんならなんとかできるかも……!」

 

どうやら桜羽によると、紫藤は指先から小さいが炎を出すことができるらしい。

うらやましい限りだ。生活においてガス代が浮くのはとても大きい。自分も指から水を出せる能力が欲しかったものだ。

 

 

「へぇ、ちょうどいいじゃんか。で、その本人は今どこにいるん??」

 

「えっとその……朝見かけたんだけどアリサちゃん懲罰房行きになっちゃったみたいで……。数日間は戻ってこらないと思う。」

 

「シュウ君の魔法で何とかできたりしないんですか??」

 

橘に魔法について問われ、俺は頭を回転させた。

正直、今現時点で魔法について教えるのは利益がないどころかマイナスでしかない。そこで、俺は一つ【嘘】をつくことにした。

 

 

「……俺の魔法は単純だよ、【自分を意識の外に追いやる】魔法だよ。例えばそうだな、クラスでも存在感の薄いやつがいただろ?あれを自由にやれるってだけだ。」

 

「地味ですね!!」

 

「やかましいわ。わかってるわ俺もそんなこと!!」

 

 

橘に刺さる言葉を言われてしまい、思わず言い返した。

嘘とはいえど、地味と言われるのは嫌なものである。男の子はかっこいいところを見せたいものなのだ。

 

 

「あれ!マーゴさん!いつの間にそこに!!」

 

「図書室で本読んでたところ、シュウ君にたすけてもらってね……。お姉さん、ドキドキしちゃったわ♡」

 

 

最初に反省して縮こまった宝生はどこに行ったのか。いつの間にやら元の調子に戻っていた。

先ほどの魔法の質問でふと自分がみんなの魔法を知らないことに気づき、聞いてみることにした。

 

 

「そういえば、みんなの魔法は何なんだ?俺全然みんなと話せてないから魔法知らなくてさ……」

 

「ふっふっふー、よくぞ聞いてくれました!シェリーちゃんはなんと!!【怪力】の魔法を持っているのです!!」

 

 

どうやら話を聞いてみると橘はリンゴを軽く握りつぶせるくらいの力を持っているらしい。末恐ろしい限りだ。

橘に続いて宝生も魔法について話す……のかと思いきや、帰ってきたのは想像と違う返答だった。

 

 

「私は言わないわ……だって、この牢屋敷で殺人事件が起きるのだとしたら……手持ちのカードをさらすなんて、愚かだと思わない?」

 

 

冷静に考えたら宝生は元からこういうやつだ。自分が不利になるようなことは絶対にしない、人を騙した経験のある典型的な性格だ。言わなくても何ら不思議なことはない。

最後に桜羽の魔法を聞こうと思ったが、帰ってきたのはまた別の意味で想像もしていない返答だった。

 

 

「ボク、魔法が使えないんだ……。だからほんとに間違って連れてこられたみたいで……。」

 

「それは気づいていないとかじゃなくて?ほんとに持ってないん?」

 

「うん……。ちょっと前にシェリーちゃんやハンナちゃんといろいろ試してみたんだけど、何もできなかった……。」

 

 

自分だけ魔法が使えないことに疎外感を感じているのか、桜羽は少ししょんぼりしているように見えた。

自分は魔法が使えるだけまだマシなのかもしれない、あまりよくないとわかってはいる。が、そう思ってしまった。

 

 

「そろそろ地下牢に戻る時間よ、看守に連れて行かれる前に早く戻りましょう?」

 

 

宝生のその一言で図書室から一度地下牢に戻ることになった。その場にいるみんなで話し合った結果、図書室はしばらく立ち入り禁止にするという結論になった。これをみんなに伝えるのは少々気が重いなぁと感じつつ、みんなそれぞれ地下牢に戻っていくのだった。




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