つたないところもありますが、大目に見てください(´;ω;`)
(この中に、城ヶ崎を殺したやつが、いる。)
城ヶ崎を殺したやつを特定し、処刑する。そのための裁判。そう頭ではわかっていても、やはり現実味がない。
本当は誰も殺してないんじゃないのか、自殺だった可能性はないのか。
違うとわかっていながらも、考えずにはいられない。
周りを見回すと、やはりというべきか、全員がお互いを信じれないという顔をしている。元からだれも信用などしていない宝生はまだしも、関わってきた中で一番平和主義であろう桜羽ですら同じ顔をしていた。
この重い空気を破るように話し始めたのは、蓮見だった。
「さて、まずは何から話すべきかな。」
「それはもちろん、犯人を示す明確な証拠からですよ!」
「それは、あるってことでいいのか?橘。」
自信満々な顔をして言っていた橘へ問いかける。すると、橘は自信満々な顔で答えてきた。
「ええもちろん!お任せください!私が見つけた証拠……ズバリそれは、ダイイングメッセージです!!」
「ダイイングメッセージねぇー……死者が死に際に残すメッセージであってるよな??」
「そんなもん近くにあったか……?」
紫藤が疑問を口にする。心当たりがないのはシンプルに死体のある現場へ行っていないだけなのか、はたまたどれのことかわかっていないのか。
おそらく、橘の言っているダイイングメッセージは近くの蝶の絵のことを指しているのだろう。
「ええ!死体をよく見てください!ノアさんの死体の後ろ、そして周囲……そこに血で書かれた蝶が描かれているんです!あれはおそらく被害者が最後まで持っていた【筆を使って】描かれた伝言―――――」
「ちょっとまった!」
橘の話を聞いていると、急に桜羽が話をさえぎっていた。
普段の桜羽は人の話を聞かずに遮るような奴ではないとわかっているため、何か違和感を感じたのだろうと察す。
「筆を使って書かれたって言ってたけど……本当にそうなのかな?」
「え?確かに筆じゃなくてもいいと思いますけど……。」
「確かにノアちゃんはスプレーアートをメインにしたアーティストだったけど……そういうことじゃないのよね?」
宝生も大方察したのだろう。そう、ノアは―――――
「魔法で書いた……そう言いたいんだろ?桜羽。」
「……!う、うん!……みんなノアちゃんの魔法って知ってる?ボクは本人から聞いたけど……どうやら彼女は液体を操作する魔法。そうやって絵を描くんだ。」
橘が何かに気づいたかのようにあっ、と声を上げる。
魔法についての可能性を無視していたのはしょうがない部分もあるだろう。話していくうちにわかったことだが、彼女は自分の力をどうやら最初は魔法として認識していなかったらしい。ミステリーを学んだであろう小説にも魔法はなかったのだろう。失念していてもおかしくはない。
「そもそも、ノアちゃんのあの出血量で筆を使って絵を描くなんて……物理的に不可能だと思うわ。」
「……自分の血であんなに大きな絵を描くだなんて、普通なら不可能だろうね。だがこの牢屋敷においては物理法則に次ぐ第二の法則……【魔法】という選択肢が入ってくるというわけだね。」
「ノアさんは死に際、魔法を使って一瞬で絵を完成させた……確かにそう考えると辻褄は合います!……しかし、そうなるとやはり結論は一つ。あの絵が、ノアさんのダイイングメッセージだったんですよ!」
橘が変な方向に走り出した。まずい。
彼女はおそらく、というか当たり前だがまともに推理をするような機会がなかったのだろう。ダイイングメッセージであることが主軸の考えになってしまっている。
あくまで一つの可能性ではあるが、別の意見を橘に提供しておく。
「橘ずっとダイイングメッセージって言ってるけどさぁ……そんなことないって可能性、ない?」
「……どうしてそうお考えになったのですか?詳しく聞きたいです!!」
「……まず理由としては、ダイイングメッセージにしては目立ちすぎる、ということ。犯人が去った後に書いた可能性もあるといえばあるのかもしれないが、城ヶ崎の出血量から見るにおそらく刺されて一分もしないうちに失血死したはず。犯人を待ってる余裕はなかったんじゃないのかと思う。さすがにこんな大々的なダイイングメッセージなんか残されたら、犯人は消すだろうしな。」
「でも、証拠がない以上ダイイングメッセージという可能性はありますよね?無意味にあんな大きい絵、私は書かないと思いますけど!」
まあ正直、こんなのは口から出まかせに過ぎない。確たる証拠がない以上、ダイイングメッセージという可能性はぬぐい切れないが、あの現場においてダイイングメッセージという可能性はかなり低いだろう。第一、わかりづらい。
そんなことを考えていたら、桜羽がまたもや口を開いた。
「ボクも、シュウ君と同じ意見だよ……これを見てほしいんだ。」
そういって桜羽が提示したのは、夏目のものであろうスケッチブックに描かれた一枚の蝶の絵だった。
絵を見ればわかる、城ヶ崎が書いたのだろう。
「事件現場に残された絵は、確かにノアちゃんの死に際に書かれたものかもしれないけど……でもこのスケッチブックの絵は前から書かれてたものなんだよ。」
『わがはいもこの絵についての意味は聞いている……ダイイングメッセージではないだろう。』
「……なるほど~、てっきり、蝶が書いてあったからマーゴさんかと思ったんですけど……確かにそう考えると違うかもしれませんね。それじゃあ、さっきの発言は撤回しちゃいます!」
橘はあっさり発言の撤回をしてしまった。まあ本人からしたらまた一つ謎が解けたくらいにしか思っていないんだろう。おそらく、発言の撤回による不利など微塵も考えていない。そう思わせるだけの笑顔が彼女の顔に浮かんでいた。
「……そんなに簡単に発言の撤回をしてしまってもいいのかい?とらえ方によっては、マーゴくんを犯人に仕立て上げようとした真犯人にも見えるよ?自分が捕まらないために……ね。」
「いいんですよぅ。間違えたのは納得しましたし!新しい情報を手に入れたら、考えは変わるものですよ。」
橘はそう言って素直に引っ込んだ。
すると、宝生が何か思いついたのか、にやりと笑みを浮かべてしゃべりだす。
「もしかして、あの蝶はノアちゃんの遺作だった、なんてことはないかしら……もしそうなら、すべて説明がつくわ。」
「どういうことですか?」
「ノアちゃんの死体の状況を思い出してほしいのだけれど……その死体はまるで真っ白なキャンパスに自分を長と見立てたかのように横たわっていたわ。自分の肉体を、最後の遺作に使う画材として使った美しい自死……。あの部屋の状況も、きっとノアちゃんが自分で―――――」
「……それは違くないか?」
宝生の発言を黙って聞いていたが、途中から雲行きが怪しくなっていったため一度遮ってやった。
彼女は城ヶ崎の死を自死だといっていたが、それは絶対に違うことが分かる証拠が一つだけある。
「お前さっき、城ヶ崎が矢を使って自殺したって言ったよな。……じゃあ、この床の大きな傷は何か説明できるか?」
「……作品の一部ではなさそうだし、矢が刺した後に抜け落ちたんじゃないかしら?矢が傷を作ったのよ。それなら説明がつくでしょう?」
「……いいや、つかないね。第一、矢と傷の場所が離れすぎてる。抜け落ちてできた傷なら、傷と矢が近くないとおかしいはずだ。それに、床の塗装がはがれている以上、矢にも白い塗料がついてないとおかしいはずだ。そう考えるとやっぱりこの傷はほかの原因……つまり他殺である揺るがない証拠だと思うが?」
宝生が口元を手で覆い、悩んでいるそぶりを見せる。事実悩んでいるのだろう。
この事件は床の傷からもわかる通り、明らかな他殺だ。今一度、その現状をかみしめる。
他殺という言葉にみんなが動揺する。
「そうね……確かにこの事件は他殺のようね。ありがとうシュウ君。おかげで議論が進んだわ♡」
「【誰かを処刑しなくてはならない議論】が、ね……。」
そう脅すように彼女は今一度議論の主軸について触れた。そう、元からこの議論は誰かを処刑するための議論なのだ。決しておかしなことではないが、動揺はしてしまう。
そんな空気を壊すかのように、また話を再開させる。
「……凶器について考え直そう。おそらく、というか凶器は血がついていることからもラウンジにあったボウガンの矢だろう。黒部によると、ボウガン自体は昨日の夜からすでに亡くなっていたらしい。」
「ちょっと!!ボウガンを盗んだ奴はだれでいやがりますの!?」
「いやそんなん聞いても出てくるわけないっしょ……十中八九そいつが犯人なんだし。」
沢渡の言う通りだ。馬鹿正直に出てくるとしたら、相当な馬鹿か自殺志願者だろう。しかし、俺の知る限りそんな奴はここには―――――。
「あ、それ私です。」
「「…………は?」」
前言撤回。いました。ここに相当な馬鹿か自殺志願者の人間が。
「ですからぁ……ラウンジからボウガンを持ち出したのは私ですよ?」
「いや、え、えぇ?なんたってそんなこと……。」
「だって、危ないじゃないですか。誰でも殺せるような道具が、誰でも使えるラウンジに飾ってあったんですよ?当然、気になりますよね!」
前々から思ってはいたことだが、橘はやはり少しずれている。
それが意図的なものなのかは天然のものなのかは真偽不明だが、こいつと話していると自分の理論が通じなく、頭が痛くなってくる。
「それじゃあ君が、盗んだボウガンでノア君を撃ち殺した……ってことかい?」
「まさかまさか~!そんなバレバレなことしませんって!ボウガンが犯行に使われた時のために、分解して構造を知っておこうと思ったんですよ。でもなんか戻せなくなっちゃいましたけど……。それに、私が持ち出した時にはすでにもう矢はありませんでしたし。」
「あのさ、もしかして分解したボウガンって……これのことかな?」
そこで桜羽が見せてきた写真は、鉄バケツの中に入った何かの部品の写真だ。
中には木製のもの、金属製のものがそれぞれ入っており、形状などからして明らかにラウンジにあったボウガンそのものだった。
「彼女は矢がなかったと言っていたけれど、それは本当よ。私が保証する。ボウガンそのものは昨日の夜無くなったようだけれど、矢は実際ボウガンが消える前からなくなっていたわ。……彼女が矢を盗んだ後、本体を盗んだ可能性は否定できないけど。」
「えぇー!だから盗んでませんって。だとしたらわざわざ自分から名乗り出ませんって。疑われるだけじゃないですかー。」
実際橘の言っていることはごもっともだ。完全にシロというわけではないが、わざわざ自供する理由はないはずだ。犯人にとってデメリットにしかならない行動を、わざわざとるだろうか?
「ま、もう考えても無駄だ……水掛け論だからなそうなったら。」
「では、アリバイの確認をするというのはどうですか!いわゆる現場不在証明、です!!」
そう橘は目を輝かせながら発言した。
実際、検視結果で死亡時刻もわかっているのだからアリバイの確認は有効な手段だろう。
「そうだな。一度、アリバイについて確かめよう……。検死をした感じ、死亡時刻はおそらく昨日の20~21時あたり。まあ、素人の付け焼刃だけど信用してもらっていい。親父が医療関係で働いてたからそこらへんは詳しいんだ。つまり、昨日の夜からのアリバイを一度、洗い出そう。」
「は!?死亡時刻とかそーゆーの最初に言えよ!!バッカじゃないの!?」
「いうタイミングがなかったんだよ……許してくれ、決して隠そうとしたわけじゃない。」
検死結果については本当だが、親父が医療関係者だなんて嘘でしかない。我ながら、こんな嘘でさえ信じさせられるのはなんともまあ奇妙な【魔法】だなと思ってしまう。使い方によっては、議論で冤罪をかけることだってできるのだろう。何ともご都合主義な魔法だ。
「20~21時なら……おじさんと、ココちゃんは配信の準備してたよね。ココちゃんはきっとできないと思う。」
「それでいったら、私たちも娯楽室で話していたわ……確かその時は、エマちゃん、シェリーちゃん、ハンナちゃん、シュウ君、アリサちゃん、ナノカちゃん……そして私もいたわね。時計も見ていたから、時間も間違っていないはずよ。」
「なんなら、俺はそのあと配信の手伝いもしたからな。時間的に殺すことは不可能なはずだ。」
「わ、わたしとアンアンさんも……い、医務室にいたので、できません。」
「あ、あら……?ならその時大半の人にアリバイがありますわね……いったい誰が?」
「あ?お前気づいてないのかよ。……長時間アリバイのない奴が、ちょうどそこにいるじゃねえか。」
どうやら遠野はまだ気づいていないらしい。
たった一人、アリバイのない人物に。
「……なあ、蓮見。……お前、昨日の夜どこで何をしてたんだ?」
主人公の魔法強すぎますね。書いててほんとに何でもできそうだなって感じしますマジ。やりすぎました。