嘘つきの詐欺少年。   作:お疲れのスーパーマン

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ネタバレにならないネタバレ
今回、蓮見レイア死す!!


第一章1話~その6~

「……さて、なんだったかな。」

 

「あまり覚えていないよ。」

 

返ってきた返答は、嘘にまみれたものだった。

明らかに嘘をついている目をしている。こんなにもわかりやすい嘘はないというほどに。

 

 

(これでほぼ蓮見が犯人というのは確定したか……?まだほかの可能性もあるにはあるが、今の段階では間違いなく容疑者筆頭だな。)

 

 

蓮見はあくまでも何も覚えていない、というスタンスを取るつもりらしい。みんなの質問にのらりくらりと答え続けている。このまま時間まで逃げ切るつもりなのだろうか。

そう考えていると、蓮見がついに反論をしだした。

 

 

「たしかに私にはアリバイがない……だけれど、それはとても些末なことだと思わないかい?ボウガンが使えないとわかった今、ノアくんが直接刺されて殺されたことは明らかだろう……。しかし、私は空を飛べないんだ。私には【塗料を超え】、入り口から数メートルほど離れたノアくんに矢を刺す手段はない……。それに、検死結果が間違っている可能性だってある。私はよっぽど、ハンナくんのほうが怪しいと思うけ―――――。」

 

「まって……。本当に塗料を超える必要なんてあったのかな?」

 

 

桜羽がまたもや指摘をする。今日の桜羽はどうしたのかと思うくらいに冴えているようだ。

 

 

「犯人は空中を飛ぶ以外の方法で刺した……。そう考えることはできないのかな?」

 

「具体的にどうやるのかしら?そんなの、相手がダーツの達人か、腕の【リーチを伸ばせた】か……それとも、そんな魔法に心当たりでもあるのかしら?」

 

 

宝生がおちょくるように桜羽に質問をする。

こいつはこいつで何を考えているのかがわからない。アリバイがある以上、犯人である可能性は限りなく低いといえるが……いかんせん胡散臭さが出てしまっている。口が裂けてもそんなことは言えないが。

 

 

「そう……犯人はリーチを伸ばせたんだよ。」

 

「伸ばすって……どうやるんですの?」

 

 

遠野の質問に答えるように、桜羽は一枚の写真を見せてきた。掃除用具入れのようだ。

そこには、柄の部分が取り外されている状態のほうきが映っていた。

 

 

「これは魔法の箒でも何でもないから空を飛べたりはできないけど……これを使えば、ノアちゃんを刺すことはできたはずだよ。」

 

「は?棒高跳びでもしたん?」

 

「いやこの長さで棒高跳びは無理だろ。」

 

 

沢渡があまりにも拍子抜けなことをいうものだから、思わずツッコんでしまった。

コホンと咳ばらいを一つして、桜羽はまた話はじめる。

 

 

「犯人はこの先端に矢を括り付けて即席の槍を作ったんだ……そうすれば部屋の外からでも、ノアちゃんを刺せるはず……!」

 

「……昔の長槍は、10mを超えるものもあったそうよ。武器としては成立するわ。」

 

「でもでも、それだと少し距離が足りなくないですか?その箒だけだと、せいぜい2mくらいですよねー。外からノアさんの位置までは、少し足りない気がするんですけど……。」

 

 

1mは身を乗り出すことで埋めることはできるだろう、残りは大体2m。

そうなるとその長さを埋めることができる長いものは……!

 

 

「まさか……蓮見のレイピアか!鞘と剣を使えば距離は足りる!!」

 

「確かに……!私たちの中で長いものを持っているのはレイアさんかナノカさんくらいですわね……!」

 

 

蓮見のほうを一瞥してみる。

するとそこには、完全な無表情で桜羽のほうを見据えていた。見た目こそ人間ではあるが、彼女の中に得体のしれない何かを感じた。

 

 

「……やれやれ、何を言い出すかと思えば。すべてただの憶測だね。失望したよエマくん。君の推理は、仮説に仮説を積み重ねただけの机上の空論じゃないか。第一、私が作った証拠もなければ、そんな物が存在した証拠すらない。」

 

「証拠ならあるよ……。それが、これ。」

 

 

そういって取り出したのは、白い塗料と、血液の付着している黒いリボンだった。おそらく、黒部が探していたリボンなのだろう。本人が分かりやすいくらいに反応している。

 

 

「これ……ナノカちゃんのリボンなんだ。アリサちゃんが湖で拾ったって。血はともかく、白い塗料がついている以上殺人現場にはあったはずだよ。」

 

「……そう、そんなところに……リボンをなくしたのは昨日のことよ。血液と塗料が付着するタイミングは、殺害のタイミングしかありえないわ。」

 

「そのリボンを使って矢を柄に括り付けた……。桜羽はそう言いたいんだよな?」

 

 

彼女は小さくうなずく。リボンに白色の塗料が付着しているということは、殺害現場の壁もしくは床のどこかには当たったということ……。つまりそれは、犯人も予期せぬ事態が起きたことを示している。

そう考えていると、代弁するかのように桜羽が話を続けてくれていた。

 

 

「きっと犯人も予期しないことが起こったんだと思う。……先端を結んでたリボンがほどけて、槍が崩れちゃったんだよ。最初にシュウ君が言ってた床の傷も、その時にできたものだと思う。」

 

「それに、空を飛べるなら何の痕跡もなく矢もリボンも回収できていたはず……それはつまり―――――。」

 

「―――――わたくしは犯人じゃないということですわ!!」

 

 

この推理には、さすがの蓮見でもどうやらこれには顔をしかめるしかないようだ。

しかし、なぜだか蓮見は笑い始めた。

 

 

「ハハハハハッ……仮にその推理が正しかったとして、私がやったという証拠にはならないのだよ。キミが証明したのは、何の意味もないことだ。」

 

「で、でも……アリバイから考えてもアンタしかできる人が……!」

 

「いや第一、エマくんの推理には不自然なところが多すぎるのだよ……。例えばそう、私が槍を組み立ててノアくんを殺したとしよう……なら、その間ノアくんは何をしていたんだい?ノアくんはただ棒立ちで、私に殺されるのを待っていたとでもいうのかい?私が長槍とやらを組み立てている間ずっと、そして真正面から刺されるときも?それこそおかしな話じゃないか。」

 

 

実際、蓮見の言っていることはもっともだ。むしろそこが現段階で一番謎な部分といっても過言ではない。

彼女の魔法は【魅了】だ。相手の興味を自分に惹く魔法。実際に自分も何度かやってもらったことがある。心臓が張り裂けそうだった。魔法を使ったにしろ、それは到底今回の殺人の状況に使えるとは思わない。

 

 

(ん?待てよ?相手の興味を惹く……?)

 

 

思考を巡らせているうち、ある一つの結論にたどり着いた。それが本当だった場合、蓮見はほぼ、というか犯人であることが確定する。

その結論を確かめるべく、まず最初に魔法について問いただすことにした。

 

 

「ははっ……なあ蓮見、お前の魔法嘘だろ?」

 

「え!?た、確かに魔法は自己申告ですし、嘘をつくことは可能だと思いますけれど……!」

 

「今回の殺人を再現するための魔法に必要な条件はいくつかあるが……それを満たす魔法が一つだけあるんだ。それは……ミスディレクションだ。」

 

 

ミスディレクション。

マジックなんかでよくやる視線誘導……あの概念そのものが魔法になっているのだろう。

 

 

「お前の魅了のタネはドキドキするから目が離せなくなるんじゃなくて、目が離せなくなるからドキドキするってことだ!!」

 

 

……蓮見は何も反論してこない。少しの間の静寂、だがそれがなぜだか永遠にも感じられるほど長く感じた。

しばらくすると、蓮見が口を開いた。

 

 

「私の魔法が魅了じゃない……?そんな論でいいなら、私だっていくらでもいえるよ。例えばエマくん、君の魔法はサイコキネシス……念動力で矢を操れば簡単に殺せるだろう。ほかにも、シュウくんは自分を意識の外に追いやることができるらしいじゃないか。よっぽど、私より殺しやすそうな魔法をしている。だけどそれは私の話も、君たちの話も証明できるものではない……この論じゃ、私が犯人だという確たる証拠にはならないよ。」

 

「確たる証拠が、あればいいんだな?」

 

 

議論時間は残り数十分。このままでは確実に犯人が突き止めきれないまま終わるだろう。だが、確実に犯人を突き止められる証拠がまだ、俺の予想だとひとつだけある。

さきほどの桜羽の推理には一つの穴がある。それをうまく使わせてもらう。

 

 

「……なあ桜羽、そういえばさっきお前は床についた傷は箒で出来たものって言ってたけどさ……そうじゃないと思うんだ。俺。」

 

「え……?」

 

「まず、これを見てほしい。」

 

 

そういって取り出したのは城ヶ崎の近くに落ちていたスプレー缶の一つ。

そこの注意書きを見るようみんなに呼びかける。

 

 

「あっ……ほんとだ!木製のものにつくと、取れなくなるって書いてある!!」

 

「箒で出来た傷だとしたら、ちょうどリボンの上に落ちてかつあの大きな傷をつけないといけないことになる。となると、箒であの傷ができた可能性は限りなく低いだろう。しかも、あの傷はおそらくは固いものではないとつかないような傷だ。そしたらおのずと考えられる可能性は一つ。―――――蓮見のレイピアだ。」

 

 

全員が、蓮見のほうを見る。彼女は、痛くも痒くもないといった顔でレイピアを鞘ごと腰から抜いた。

 

 

「そんなに気になるなら、確かめればいいさ。私のレイピアには、白い塗料なんてついていないんだからね!」

 

 

そこには、白い塗料どころか傷一つない綺麗な刀身が見えていた。

自分を含めた全員が、困惑の表情を浮かべる。

 

 

(くっそ、あの口ぶりから見る限り、裁判の前にふきやがったな……!証拠は隠滅された。どうする……!?)

 

「……これでもういいかな?この話題はこれくらいにして、もっと建設的な話を―――――。」

 

「……待ちなさい、私は疑り深いの。……あなたの容疑はまだ晴れていないわ、蓮見レイア。」

 

 

どうすればいいか思考を張り巡らせていたその時、黒部が話題をつなげてくれた。

彼女の言葉に、蓮見はため息を漏らす。

 

 

「まだ私を疑うのかい?……そんなに信頼できないかな、私のこと。」

 

「信頼することと疑うことは、裏表の関係じゃないわ。疑心暗鬼になるのはいけないこと……でもだからと言って、盲目的に信じることもまた間違いよ。私は信じるために、疑うの。」

 

 

黒部が話をつなげてくれている間に、考え、考え、考え、考え続けた。

すると、ある一つの可能性が頭の中に浮かび上がった。

二人が議論しているのを遮るように、ある人物へと証拠品の場所について聞く。

 

 

「佐伯!沢渡!配信の時の大道芸のリンゴ!!持ってるか!?」

 

「あ、あてぃしは配信あと疲れてザコに全部片づけ任せてて……あ!!リンゴまさかもう食ったとか……!?」

 

「い、いや……!あれは、無駄にしないように後で食べようと思って……!ずっと、ポケットの中に……!」

 

(蓮見は配信前に城ヶ崎を殺した……とすると、大道芸をするまでレイピアの塗料に気づいていない可能性がある……!)

 

 

佐伯はしばらくポケットの中をまさぐると、一つのリンゴを出した。

そのリンゴには予想通り―――――白い塗料がレイピアを刺した場所に付着していた。

 

 

「これが、証拠だ。この事件の犯人は、お前だ!!蓮見レイア!!」

 

 

しばらくの間、何度目かの沈黙が裁判所の空気を支配していた。

突如それを破るように、蓮見が笑い出す。先ほどの笑いとは違い、完全に諦めきったであろう笑いだ。

 

 

「……あーあ、バレちゃった。……さすがに証拠が出たなら大人しくするしかないね。」

 

 

蓮見は以外にもおとなしく罪を認めた。さすがに形勢逆転は不可能だと判断したのだろう。

 

 

 

♢♦♢♦♢

 

 

 

投票では、満場一致で蓮見が選出された。

蓮見は、どうやら夏目のことを守るために殺したらしい。これだけ聞くと意味が分からないが、殺られる前に殺る。そういった考えに近しいものなのだろう。

しばらくすると、ゴクチョーが空気も読まずに話してきた。

 

 

「あ、お話終わりました?時間も押してますし、そろそろ進行したいのですが……。各自の端末にボタンが表示されていると思うので、全員がそれを押したら処刑スタートとなります。グーッと長く押していただけますと……。」

 

 

処刑はあくまでも、自分たちのボタンの合図で始めるらしい。

まるで電気椅子の処刑方法のようだ。自分が殺したと考える奴も出てくるかもしれない。相当ストレスのかかる、悪趣味な執行方法だ。

 

 

(ほんと悪趣味だな、コレ……)

 

 

そんなことを考えていると、いつの間にか中央の台座が入れ替わっていた。ゴクチョーの仕業らしい。

そこには西洋風の天使像が鎮座しており、ゴクチョー曰くあの中に入るらしい。邪魔をしたりしようものなら、そいつもろとも断罪だとか。

 

 

「アイアンメイデンかよ……ほんとに悪趣味だな、お国さんは。」

 

「い、いやだ、待ってくれ!!【あれ】の中には入りたくない!!本当に嫌なんだ!裁判のやり直しを要求する!!」

 

 

蓮見の抵抗もむなしく、あっさりと彼女はアイアンメイデンの中にセットされてしまった。

中には、無数の青いバラと、同じく無数の細く長い針が敷き詰められていた。

 

 

「嫌だ!!お願い!お願いします!!これを閉めないで!!やだぁぁぁぁ!!!お願いだからほかの処刑方法にして!!!閉めないでください!!これだけはだめだ!!だって、みんなに見えないじゃないか!!!」

 

 

その一言に、違和感を抱く。ほかの者たちも同様で、眉をひそめる者や妙に納得した顔をしている者もいた。

 

 

「―――――やっぱね。みんなを守るためだなんて、嘘ばーっか。ノアを殺した動機、わかっちゃった。」

 

「あんたがノアを殺したのは、自分が一番目立たなかった状況が許せなかったからでしょ?」

 

 

あと少しで美しく死ねそうだった蓮見の死に様を、沢渡が軽々と踏みつぶしていく。

実際、自分もその理由に納得してしまっていた。おそらく、というか蓮見は自分が目立つことしか考えていない。

橘もどうやらしっくり来ていなかったようで、沢渡の理由を聞いてすっきりした様子だった。

 

 

「ちが、ちが……。」

 

 

蓮見は今までに見たことがないほど情けない顔をしていた。彼女の王子様キャラはどこに行ってしまったのか。そう感じさせるほどには、あの処刑方法、殺害動機を知られたことが苦痛だったのだろう。

 

 

「あ、ああ――。ああそうだ!認めるよ!!私は目立ちたかった!!一番目立たないといけなかった!だから、許せなかった!!城ヶ崎ノアに、舞台の主役を奪われて、あいつを殺さなきゃと思ったんだよ!!」

 

「これを閉めたら、みんなが私のことを見れなくなっちゃうじゃないか!!!もっと私を見てくれよ!!私だけをみてよ!やだぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

天使像は悲鳴を閉じ込めるかのように、静かに、ゆっくりと閉じていった。

蓮見レイアを見てくれるものは、もう誰もいない。

 

 

 

♢♦♢♦♢

 

 

 

「無事に終わってよかったですね。また殺人事件が起きたら、魔女裁判を開きます。それまでは、今まで通り囚人として慎ましく生活してください。これにて、閉廷とします。やれやれ、お疲れさまでした……。」

 

 

皆が、裁判所から出ていこうとしたその時。パン、と銃声が一つ響いた。またしても裁判所の空気が張り詰める。

放たれた銃弾は今にも飛び出そうとしていたゴクチョーを完璧にとらえており、ゴクチョーは地面にぽてっ、と落ちてしまった。見る限りは、明らかに死んでいる。

 

 

「いつまでこの茶番を続けるつもり?私たちの中に、いるんでしょう?このデスゲームの黒幕が。」

 

 

そう言った黒部の目の中には、確かな復讐の炎が宿っていた。




これで第一章の1話は終わりました……めっちゃ疲れました。
頑張ったので高評価、感想待ってます……。頑張った俺エライ。
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