名も無き傭兵達の戦場 作:狐狐
速さを求める者が集う。
その熱気が、俺たちを包み込む。
ここは戦場じゃない。
火薬の匂いも、死の影もない。
あるのは、磨き抜かれたマシンと、ひたすらに速さを追う意志だけだ。
暴で解決? そんなものはナンセンスだ。
ここで語られるのは、技術と研ぎ澄まされた反応。そして僅かな度胸だけ。
観客達の声が、会場と俺たちを揺らす。
俺たちはただ、速さに手を伸ばしてここに立つ。
その一歩が、勝敗を分ける。
傭兵程度じゃ届かない。
5機5人、決まった脚部だけのチーム戦。
初めはタンクが駆け上がる。
重装の走りは派手じゃない?ここを見ないやつはシロウトだ。激しいぶつかり合いによるコースの取り合い。それは重装甲のこいつでしかみれない。
次の繋ぎは中量二脚。
走りは素直で、癖もない。
だけどこいつはいぶし銀。緻密なコースの取り合い、読み合い。後に繋ぐはこいつの仕事。
3走目は軽量逆関節。
こいつで一気に流れが変わる。大地を蹴り、壁を蹴り。鋭く跳ぶ姿は鳥のよう。ここで置いてかれてちゃあ勝利は不可能。
そして4走目にくるのは中量四脚。
どれだけ地形があれようが、路面が凹もうが関係なし。4本の足で、力強く走り、偶に飛んで空を走る。軽量4脚は速すぎて禁止になった。
最後に走るは我らが軽量二脚。
こいつに求められるはただ一つ。
全てを抜き去り、置いていく。
スピードの向こう側へと行くように。
数千メートルを翔けていく。
順番もガチガチに決められて。
速さを目指すのに縛られて。
だけど、その不自由さが心地いい。
不自由を愛して、俺たちは速さを競う。
ここにあるのは戦争じゃあない。文字通りの競走であり、その向こう側の速さの世界。
ちょいとオンボロな相棒だけど、心は常に誰より速く。
行くぞ、やるぞとチームに声掛け、相棒のコックピットを撫でる。
いつか大規模大会のテッペンとるため、
まずはここで、勝利を掴む。
俺たちはまだ、Bリーグのへっぽこチーム。
だからこそ、ここから始める。
速さが嘘をつくことはない。
積み上げた時間は裏切らない。
残るのは必ずタイムのみ。
誰しもが、レコードを目指して突き進む。
スタートゲートのライトが点灯する。
まだ俺の出番じゃないけれど、汗が滲む。
それだけこの世界に熱中している。
俺たちのチームは、ここから始めるんだ。
最強へと、名乗りをあげるため──!
そしてこの後、普通に負けた。
───────ここは名も無き傭兵達の戦場にあらず。
ここに火はなく、真っ直ぐ照らす光だけ
フォーミュラ・フロントの開幕は、まだ遠く。
ご感想、評価の程よろしくお願いします。