名も無き傭兵達の戦場   作:狐狐

10 / 66
お前のスピードじゃ届かない!


いつか、最速に

 

速さを求める者が集う。

その熱気が、俺たちを包み込む。

 

ここは戦場じゃない。

火薬の匂いも、死の影もない。

 

あるのは、磨き抜かれたマシンと、ひたすらに速さを追う意志だけだ。

 

暴で解決? そんなものはナンセンスだ。

ここで語られるのは、技術と研ぎ澄まされた反応。そして僅かな度胸だけ。

 

観客達の声が、会場と俺たちを揺らす。

 

俺たちはただ、速さに手を伸ばしてここに立つ。

その一歩が、勝敗を分ける。

 

傭兵程度じゃ届かない。

5機5人、決まった脚部だけのチーム戦。

 

初めはタンクが駆け上がる。

重装の走りは派手じゃない?ここを見ないやつはシロウトだ。激しいぶつかり合いによるコースの取り合い。それは重装甲のこいつでしかみれない。

 

次の繋ぎは中量二脚。

走りは素直で、癖もない。

だけどこいつはいぶし銀。緻密なコースの取り合い、読み合い。後に繋ぐはこいつの仕事。

 

3走目は軽量逆関節。

こいつで一気に流れが変わる。大地を蹴り、壁を蹴り。鋭く跳ぶ姿は鳥のよう。ここで置いてかれてちゃあ勝利は不可能。

 

そして4走目にくるのは中量四脚。

どれだけ地形があれようが、路面が凹もうが関係なし。4本の足で、力強く走り、偶に飛んで空を走る。軽量4脚は速すぎて禁止になった。

 

最後に走るは我らが軽量二脚。

こいつに求められるはただ一つ。

全てを抜き去り、置いていく。

スピードの向こう側へと行くように。

数千メートルを翔けていく。

 

順番もガチガチに決められて。

 

速さを目指すのに縛られて。

 

だけど、その不自由さが心地いい。

不自由を愛して、俺たちは速さを競う。

 

ここにあるのは戦争じゃあない。文字通りの競走であり、その向こう側の速さの世界。

 

ちょいとオンボロな相棒だけど、心は常に誰より速く。

 

行くぞ、やるぞとチームに声掛け、相棒のコックピットを撫でる。

 

いつか大規模大会のテッペンとるため、

 

まずはここで、勝利を掴む。

 

俺たちはまだ、Bリーグのへっぽこチーム。

 

だからこそ、ここから始める。

 

速さが嘘をつくことはない。

積み上げた時間は裏切らない。

残るのは必ずタイムのみ。

誰しもが、レコードを目指して突き進む。

 

スタートゲートのライトが点灯する。

 

まだ俺の出番じゃないけれど、汗が滲む。

それだけこの世界に熱中している。

 

俺たちのチームは、ここから始めるんだ。

 

最強へと、名乗りをあげるため──!

 

そしてこの後、普通に負けた。

 

───────ここは名も無き傭兵達の戦場にあらず。

 

ここに火はなく、真っ直ぐ照らす光だけ

 

フォーミュラ・フロントの開幕は、まだ遠く。




ご感想、評価の程よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。