名も無き傭兵達の戦場 作:狐狐
ACに乗り、山を昇る。
より高所を目指して、山を昇る。
ただ単純に、綺麗な日の出を見るために。
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きっかけはなんてことも無い、知り合いのつぶやきだった。
日の出みてぇな
そのつぶやきに、俺を含めて3人が反応して。
いいな、年末登るか。
いやいや、なんのためにAC乗ってんだ。この為だろ。
などと、話していた。
間違っても、俺たちがACに乗ってるのはそんな事のためじゃない。
生きる為、金を稼ぐために乗っている。
ただまぁ、たまには。
こうしたなんて事ないことに使うのも、悪くはないか。
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この近辺でいちばん高い山。俺たちは4人でACを使って登る。
登ると言うより、昇る、だろうか。
なんせほとんど空の旅。周囲は真っ暗で連れ立ったやつの機体の光とブースターの光しか見えない。
そんな状態でも、ACのカメラはよく見える。
事故もなく、難所もなく。すっと頂上付近に到着する。
こんなことして事故って命を落とすなど、一生笑われ者だろうな。…居そうなのがまた嫌だな。
俺たちは機体から降り、日が昇る方を酒を片手に喋りながら待つ。
今年は何があったかを駄弁る。
企業の配信者が死んだ。
フォーミュラフロントはいつ開催するんだ。
未確認兵器の情報が入ったらしい。
ペイルグレア、暴れすぎだろ。
そんなことを、4人で馬鹿みたいに笑いながら。
話をツマミに、酒を飲む。
そうして話してると、青色の光が目に入った。
どうやら、同業者が似たような考えでここに来たらしい。
頭部がこちらを一瞬だけ向き。
俺たちとは少し離れたところに着地させていた。
…だが、あの形。どこかで…?
そんな疑問を持ったのは俺だけなのか。他の奴らはお前も飲め、だのこっち来て飲め、だの好き勝手言っている。
酔っ払いどもめ。調子が良すぎるだろう。
機体の影は、膝立ちの体勢を取り。
手をコックピットの前まで持ってきて、停止。
その機体のパイロットは、機体の掌の上に座る。
そしてこちらに、瓶とコップを掲げていた。
あいつも飲む気なんだろう。それに気づいた酔っぱらい共は、さらに騒いで飲んでいた。
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珍しい。先客がいるとは思わなかった。
だが、なにかする訳じゃない。ここに来て日の出を見に来ただけだろう。
既に出来上がってるやつばかりだ。気持ちのいいバカだ。
自分の秘密基地が知られたような気持ちもありながら
これから訪れる素晴らしい景色を共有できる者が現れたことに喜びを覚える。
少しづつ、光が差す。
橙の暖かな光が、ゆっくり、だけどはやく広がって。
大地の先から、新たな日の出が登っていった。
こうして、今年も。
陽はまた昇る
今年もよろしくお願いします!