名も無き傭兵達の戦場 作:狐狐
オラに感想をくれぇぇぇ!
《周辺に敵性反応無し。ミッション終了、お疲れ様でした》
「はぁ、面倒な依頼だった。オペレート感謝する、いつもすまんな」
《仕事ですし、あなたの依頼は払いがいいので。もし敵対したら容赦なく弱点とか言うので、その時は恨まないでくださいね》
「わかってて頼んでいる。情報の提供や不足情報の補足はオペレーターの仕事だろう」
《……専属契約しようとかは思わないので?》
「別に、だな。お前が望むならしても構わないがお前はそれを望まんだろう」
《ま、そうなんですけどね。言ってみただけです》
「そうか……はぁ……」
《どうしました?珍しく深い溜息なんかついて》
「いや何、チビ共にしばらく会えてないのでな。少し恋しくなっただけだ」
《珍しいですね。あなたがそんなに郷愁にかられるなんて。どんなところなんです?》
「ただの孤児院だよ。ただの、な」
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惑星キログの郊外にて、緑あふれるその場所に大きな建物がひとつ、ぽつんと建っている。薄汚れてはいるが、人の手による手入れは行われているその建物では、子供の声が響いている
「それぼくのだぞ!」
「ちがうもん!わたしの!しーくんのはあっちでしょ!」
「ふ、ふたりとも、けんかしないで……ゆ、ゆーちゃんもなにかいってあげて……?」
「……」
喧嘩をしている子と、それを収めようとする子。そしてそれをただ眺めている子。4人の子供が騒いでいる。そんな中で静かな足音が鳴り響く
「こーら、喧嘩はダメですよ?」
「いんちょーせんせー!」
「せんせ」
「きいてよせんせー!アルちゃんがぼくのとったんだ!」
「とってないもん!しーくんのはあっちっていってるのにきいてくれないの!」
「そうなんですか?ならまずは二人共、一回落ち着いて深呼吸しましょう」
場を取り持つように、子供たちと同じ目線になるようしゃがみながら彼女は、2人に優しい声で話しかける。2人は彼女に言われた通りに1度、深呼吸を行った
「まずアルとシフル、周りを見なさい。ベルとユリが止めようとしてましたよ?迷惑をかけたならごめんなさい、ですよ」
「でも……」
「でもじゃありません。喧嘩で二人に迷惑をかけたのですから、ちゃんとごめんなさいしなさい」
「はぁい……ふたりとも、ごめんなさい……」
「ごめんなさい……」
「だいじょうぶ!なかよくしたほうがいいもん!」
「きにしてない」
「はい、よくできました。それで二人はなんで喧嘩したんですか?」
アルとシフルは顔を見あって
「だってこれ、アスにぃのくれたプレゼントだもん……」
「ぼくもアストラにいちゃんからこれもらったもん、だから……」
「そうですか。ふふっ、二人共アストラさんの事が大好きなんですね」
「うん!だいすき!かっこいいもん!」
「だいすき!いつかにいちゃんみたいなえーしーのりになるんだ!」
「ぼくも!ぼくもすき!」
「おかしくれるからすき」
「みーんな大好きですもんね。なら、シフル。一回自分の宝物箱を見てきなさい。ね?」
「うんっ、わかった」
「いいこいいこ」
そうやって頭を撫でて、彼女は子供が自分の部屋に行くのを眺める。先程出た名前に、想いを寄せながら
(……アストラ)
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彼女が彼に出会ったのは、たまたまだった。まだこの孤児院の子がアルとシフルの2人しかいない時、3人で買い出しに出ていた時に2人がはぐれてしまった
当然、彼女は大いに焦った。なぜなら子供を攫うなんてことも日常に潜んでいるのだ、大切な子が攫われ酷い目にあったら、なんて想像もしたくない。だからそこらじゅうを走り回って、聞き回って。なんの情報も得られなくて
彼女が絶望しかけたその時に、携帯電話が鳴り響く。番号を確認すれば、孤児院からの電話だった
「もしもし!?」
『わ、いんちょーせんせー!だいじょーぶ?』
「アル!?シフルは!?」
『しーくんもいっしょにいるよー?せんせーがどこかにいっちゃったからさきかえってきたの!』
「そ、そうですか……」
元気な声に、安心する。だがふと、違和感を覚える。孤児院からここまでの距離は子供からすればかなり遠い距離だ。この時間で孤児院に着くとは思えない
「アル?孤児院までどうやって来ましたか?」
『えっとね、えっとね!』
『えーしーにのってきたの!』
「……は?」
えーしー……AC?何故、ここに?まさかあの子たちを人質にして……
『そこからは、俺が説明しようか』
「ッ……あなたは……」
聞こえてくるのは、若い男性の声。威圧的なものは感じない。だがどこか、存在感が溢れるような強い声。こいつに大切な子が攫われたのか、なんて事を思いながら電話越しに話を始める
『名前は……必要ないか。まぁしがない傭兵だ』
「……なにを求めているのですか、孤児院には何もありません。ですが子供たちになにかするのであれば……!」
『凄まじい勘違いをされてるな。……チビ共、興味深そうにこっち見るな。AC見てきていいから邪魔しないでくれよ』
通話越しに2つの元気な声が聞こえる。何もされてはいない事に安堵する。だけどなぜこんなことを……
『……行ったか。なら、話させてもらうぞ。まずひとつ、こんなチビ共から一瞬でも目を離すな。何しでかすか分からんのだからどこへ行くかもわからん。お前以外に寄る辺はないのだろう?』
「……え?」
『次にふたつ。俺はあの二人が攫われそうになった所を助けて、家に届けようとしたらこんな郊外まで届けさせられた。正直あの場で探すべきだったと後悔している』
「あ、あの……」
『最後にみっつ。……女手一つでよく頑張っている。少し話したがチビ二人がお前のことを慕っているのがよくわかる。俺には出来んことだ』
「あ、ありがとうございます……?」
もしかして、本当に。ただの善意でこんなことを?こんな不条理に溢れるこの世界で?
「すっ……」
『ん?』
「すみませんでした……!」
『わかればいい』
「重ねて、申し訳ないのですが!私が帰るまで二人の面倒を見て貰えないでしょうか……!」
『ん、あぁいいぞ。もとよりそのつもりだった。急いで戻るといい』
そうして彼女は急いで孤児院に帰る。恩人に何か返さなければならない、せめて料理だけでも食べてもらわなければ。そう考え、彼女は急いで帰る
「たっ、ただいま戻りました!」
「せんせー!おかえりっ!」
「おかえりせんせ!」
「戻ったか」
そこで目にした、一人の男性。傭兵を名乗るとおり屈強で、だけど細い見た目をした彼
「申し訳ありません、ご迷惑をお掛けしました!この子達を助けていただきありがとうございます……!」
「気にするな、見過ごせなかっただけだ」
心優しい人。こんな人に自分は疑いをかけたのか……!本当に申し訳なく感じてしまう、なんて彼女は彼に対して思う
「よろしければ、ご飯を食べていきませんか?ご迷惑をお掛けきたのでそれくらいさせて頂ければ……」
「そこまでしようとしなくていい。そんな余裕ないだろうに」
「そこまで気遣って頂いて……申し訳ありません」
「アストラにいちゃん!もっと話聞かせてよ!」
「アスにぃもっと!もっと!」
「先生が来たら終わりと言ったろう、また今度だ」
「「えー!」」
「アストラ……?」
「はぁ、教えるんじゃなかったな。アストラだ。傭兵をしている」
「えっと、ルシアと申します。この孤児院でこの子達を育てています」
「よろしく、ルシア。じゃあ俺は帰るぞ」
「えー!もういっちゃうのー!」
「もっといっしょにいよーよー!」
「ええい引っ付くな。また来てやるから、な?」
「「ほんと!?」」
「あぁ、ほんとだ」
彼の目線がこちらに向く。それに気づいた彼女はにこりと笑い、うなずいた
「じゃあ、またな」
「「またねー!」」
「また来てください!」
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あの後彼は何度も孤児院に顔を見せてこの子達の相手をしてくれた。本当に暖かい人。無愛想なあの人の微笑みが、すぐに脳裏に浮かぶ
……知らない内にうちの口座に金が沢山入ってるのは正直やめて欲しいのだけれど
夜、星を眺めながらそんな事を思う
あなたはなんとも思っていないのだろう。出来るからした、それだけなのだろう。だけど、それは私にとって
あなたを想うのに、十分な理由なのだから
今あなたも、こうして星を眺めてますか?
……彼女は星を眺める。彼女にとって、救いの象徴だから。だが星は星を眺めない
対等な物を、眺める理由がどこにあろうか
読んで頂き感謝感激雨霰ぇ!