名も無き傭兵達の戦場 作:狐狐
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【MISSION BRIEF】
ミッション名:ACバトル
依頼主 :クライス
前払報酬 : 0 C
成功報酬 :68,000 C
近日中に、我々クライス主催で開催されるACバトルへの参加者を募集する。
このバトルは各界の著名人やら一般の市民達に、AC同士の戦闘でギャンブルを楽しんでもらう一つのイベントだ。
もちろん、君たちにもメリットがある。戦闘の勝者には、通常の依頼に相当する金額の報奨金を進呈する。
対戦相手はこちらで決定させてもらう。使用する武器、装備等に制限は無い。
諸君の積極的な参加を希望する。
【END OF BRIEF】
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クライスが定期的に開催する、傭兵達を集め実戦形式で戦闘を行い、どちらが勝利するかのギャンブルを行うイベント。このイベントにトップランカー達が参加することはこれまで1度も無く、賭けが成立するように調整が行われていた。さらに言えば、ギャンブルの参加者以外も楽しめるように、ランクまで隠して戦わせていた
大きなイベントのように様々な出店を開いて、大きなモニターにAC同士の戦いを映す。ACが爆発する様子を見ながら、皆があれこれと騒ぎ立て、実況がそれを盛り上げる
『パイルバンカーの強烈な一撃が決まったァー!これには如何に重量級といえど耐えられず爆発だぁ!勝者!赤コーナー!』
「ちゃんと動かせよ!あんな機体に近距離挑んだら負けるに決まってんだろ!」
「読み通り!いつも儲けさせてくれてありがとよぉ!」
会場は大盛り上がり。ただ眺めている人も、これを賭け事として楽しむ人も、純粋にAC戦を楽しんでいた。なぜならこれは、生死がかかっていないから。シミュレータでの戦いだろうから
『さぁここまで楽しんでくれたかな!?そんな時間も次で最後だ!悲しいねぇ、俺涙でちゃう!でも?今回は?いつもとちがぁう!』
『なんとなんと、特別ゲストがこれから現れちまうのさ!特別に招待したヤツがどんなヤツか、みんな気になるよなぁ!!』
「そんな盛り上げどうでもいいからさっさとしろー!!!」
「なんでもいいから儲からせろー!!!」
『ヒュゥ、冷たい声ありがとう!それじゃぁ勿体ぶらず紹介するぜ!このイベント初めての!特別ゲスト参戦だ!』
皆、なにか有名人が来るのだろうと考えた。当然だ、これまで特別ゲストなんて呼んだことがないイベントなのだ。芸能人かなにかが来て楽しませてくれるのだろう。そう考えていた
『ランカーって言葉、知ってるかい?傭兵達の中でランキング上位に贈られる言葉だ。実は今までもランカーってやつはここにいた。ランク隠してるから見えないだけでな』
『だが!こいつに関しちゃ隠す意味がない!何故かって?そんなの単純。ランカー程度じゃねぇ、トップランカーと呼ばれる数少ないヤツの一人だからだ!』
『今回の特別ゲストはこいつだ!ランク3位!ウンディネの駆るステインが登場だぁぁぁぁ!!!』
このイベントは、どこまで行ってもAC同士の戦いを見るイベントなのだった。当然、何も知らされず現れたトップランカーに会場は大騒ぎ
「は!?ステイン!?誰が勝てるんだよ賭けにならねぇじゃねぇか!」
「かっこいー!あれ本物!?本物かな!?」
「嘘!?本当にウンディネ様!?」
一体誰がこんな化け物を相手にするのか。1体1のルールが基本のこの場で勝てるわけが無い。蹂躙劇が見れるのか、なんて皆が考えていると聞こえてくる実況の声
『今回は特別ルールだ!ステインVS二機のAC!この二機も侮っちゃいけねぇぜ?なんせ今回きた奴らの中ではめちゃくちゃ上のランクのやつだ!さぁ!どっちに投票するか、どっちに賭けるか!オッズはステインが2.3、二機の方が8.9だ!ほぉらスタートだ!』
「二対一……それならまだ賭けになるか…?」
「おいおい、二対一なんて話にならねぇだろ。結構前に一位が四対一で勝ったって聞いたぜ?こんなものステイン一択だ」
様々な声が聞こえる。賭けにならないなんて声もあれば成立しているという声もある。ただ純粋に、応援する声も上がっている
『さぁ!投票終了!賭けも終わりだ!どっちが勝つかの投票結果は……これだっ!63%対37%!応援票も入ってるからかステイン優勢だねぇ!さぁどうなるか!それでは、バトルスタートォ!』
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戦いの合図が聞こえる。廃都市という、ビルのそびえ立った立地。まさか二人でとはいえトップランカーと戦わされるとは思いもしなかった
「打ち合わせ通りにだ」
《おめぇこそ裏切んじゃねぇぞ?》
「利が何処にある。勝たねば生きても帰れんのだぞ」
《はっ、そりゃそうか。簡単に稼げると思ったんだけどねぇ》
こちらは、中量二脚。相方は軽量二脚。触れられればまず勝ち目がないだろう。だが初対面で上手くいくとも思えない
「お互い助けず、狙われている方は逃げに徹する」
《で、狙われてねぇ方が後ろから狙っていく。全く上手くいくもんかねぇ》
「行かなければ死ぬだけだろう」
《ハッ、そりゃそうだ》
遠くから、風を切る音が近づいてくるのがわかる。説明ではこちらのアセンは伝えられていないと言っていたが、本当かどうかは分からない
《噂通りだな。凄まじい勢いで近づいてやがる》
「あのアセンで近距離戦を選ぶ理由がわからん。中距離で戦うものだろうあれは」
《だからむしろ近づいて圧力かけてんじゃねぇか?こっちには蹴りがありますよ〜ってな》
そう話していると、モニターに警告が出る。警告は……上方!
《チッ、垂直パルスか!もうこっちの位置把握してんのかよ!》
「スキャンを撒け!このままでは引き潰されるだけだ!」
《んな事わかって――――》
鉄が潰れる大きな音が、横から聞こえる。そちらを見れば、コアの部分が潰れた軽量逆関節の上にいる、黒と赤紫の重量逆関節
《あは》
《みィつけたァ……!》
「ステイン、いつの間にこの距離に……っ!?」
《いつの間にィ?簡単でしょ》
《逆関節なんだからビル蹴って飛んでくることぐらい、想像できない?》
「そんなこと想像できるわけないだろうッ、第一するやつが存在するわけッ」
《私は実際にしたけどねぇ?》
レーザーとパルスミサイルが飛んでくる。片腕のレーザーはチャージを開始しているのが見える
《あはは!こいつみたいに簡単に死んでくれないでね!》
「ほざけ、生きて帰るのはこちらだ!近距離戦はこちらに分がある!」
相手がQBで近づいてくるのを確認し、
「なんて無茶な起動を……!」
《アハハ!楽しまなくっちゃなぁ!》
まずい、まずい!じわじわとAPが削られていく、ミサイルもレーザーも避けきれない!一旦引いて体制を立て直さなければ……!
《隙だらけ♪》
ブーストキックを決められて、機体がACS負荷の限界を告げ
《つまんないね、死ね》
青白い光で爆ぜ散った
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『……えっ、と…しょ、勝者!ステイン!圧倒的な試合だった、な……』
会場の空気は、冷えきっていた
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